【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

153 / 387
 37日ぶりのプラス評価を戴きました。ありがとうございます!


153. 一輪車(アインラッド)級と呼びましょう

 ハイヴ10の攻略をつつがなく終えたトピア達戦闘班は、一旦コアベースへと戻り、昼食を摂っていた。そう、この連中は朝食から昼食の間にハイヴを2つ片付けたのだ。後2つももう今日中に片付くのではという楽観的雰囲気すら漂っており、実際その可能性は高いというのだから、大量の死者を出しながらそれでもBETAの侵攻を食い止めることが出来ていない地球人からすると噴飯物だろう。いや逆にそれだけの犠牲を出しているのに危機感と協調性が全く無いマブラヴ地球人に匠衆(マイスターズ)の面々は呆れているのでお互い様だ。

 

トリオ「んで大電力用の武装も幾つか用意出来たんじゃが、次の作戦には持っていくかの? まだ全員分は揃っとらんが」

 

 同じく昼食を摂っていたトリオ工場長が飲酒しながら気軽に新作武装の完成を告げた。相変わらず仕事が早くて頼りになる。

 

トピア「うーん、現状でも手札が半分以上残ってるので、持っていくか伏せておくか迷う所ですね」

 

スコア「次の作戦はプラン5だろう? 全部揃わないなら使うまで外から見えないバリア以外はまだ伏せておく方が良くないか?」

 

ラリー「だな、あとは最終決戦用って奴だ」

 

トリオ「ほうか、ならバリアだけ持っていけ」

 

 ハイヴ10攻略が完勝だったせいか戦闘班各員はどうも油断しているように見えたが、どうせ最終戦でまた換装することになるのでトリオ工場長は素直に引き下がった。

 

マイン「おう貴様ら、お待ちかねの想定外が発生したぞ」

 

 食堂に入ってきたマインが開口一番物騒なことを言い出したので、トピア達は振り返って注目した。

 

トピア「何事ですか?」

 

マイン「ハイヴ10からコア045設置予定エリア周辺へタレットを敷き詰めてコア045を降下させたところ、重光線(レーザー)級の群れに迎撃された。まあ誘電体多層膜でコーティングしていたからどうにか撃墜されずに設置自体は出来たのだが」

 

スコア「重光線(レーザー)級を出してきたか。想定より遅かったくらいじゃないのか?」

 

 戦闘班はスコアに同意していた。この程度ならば想定外と言うほどではない。

 重光線(レーザー)級、俗称マグヌスルクスは光線(レーザー)級の上位種で、泡の塊のような胴体からまばらな体毛と人間のような脚が生えている所までは同じだが、足の先が蹄になっていて、尻尾が長い。またほぼ胴体に埋まった首の先端に大きな目が1つだけついていて、目の周りにはまつげが生えている。飛ばない鳥のようなシルエットで、見方によってはキモカワイイと言えなくもないのだが、最大の違いは全高21m、全幅11mという戦術機並のサイズと、1,000kmという長大な射程だ。おまけに36mm砲弾が効きにくい程度には防御力もあり、その性能は凶悪の一言に尽きる。なお体色は光線(レーザー)級と同じ灰色系統だがやや赤い。しかし匠衆(マイスターズ)はこの重光線(レーザー)級が出てくることを想定して武装を開発しているため、出てきたからと言って慌てることはない。勿論出てこなければそれはそれで楽が出来るので良かったのだが。

 

マイン「問題はその後だ。完成したタレット群をあっさり突破され、コア045を破壊されたのだ」

 

スコア「は?」

 

ラリー「嘘だろオイ」

 

 一度設置したコア:ニュークリアスを破壊されたのは、マインがこの星に来てから初めてのことである。それだけの異常事態ということだ。(マイスター)達の表情が一気に引き締まった。

 

マイン「こいつを見ろ。新種だ」

 

 マインがディスプレイに表示した新種のBETAは、一言で言えば直径30mほどの輪っかであった。見た目はシンプルだが、その性能は驚くべきものだ。突撃(デストロイヤー)級を軽く上回る最大250km/h程で移動し、()()()()()()()()()()()。どうやって前に進むのかと思ったら、静止画を見ると輪っかの側面に百足のように大量の脚が生えており、どうも単純に脚を使って加速するようだ。相変わらずのデザインセンスの酷さにトピア達の口はへの字に曲がった。

 

ラリー「レーザーが効かない? こいつも誘電体多層膜を使ってるってことか?」

 

トピア「……いえ、見たところ跳ね返してはいないので、これはもっとシンプルですね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

 レーザーを直径1cmに収束してその一点を溶かそうとした場合、面積は0.25×πcm2。これに対し、直径30mのリングを幅1cmで一周した場合、その面積は3,000×πcm2。面積が12,000倍になっている。周囲に拡散する熱を考慮していないのであまり厳密ではないが、つまりレーザーによる熱量の集中効率が1/12,000程度しかないということになる。仮にレーザー収束が直径10cmでも1/1,200だ。

 

サティ「そうね、ミサイルで撃破した個体を解析にかけてみたけれど、甲殻の組成は突撃(デストロイヤー)級と同じよ」

 

スコア「レーザーにそんな対処方法があったのか……」

 

テクス「まさにコロンブスの卵でござるなあ」

 

 テクスはBETAの発想に腕組みをして唸った。

 勿論人間の皮膚程度の防御性能であればレーザーの軌跡に沿って真っ二つになってしまうわけだが、そもそもレーザー1発あたりの威力は突撃(デストロイヤー)級の甲殻の防御力を大幅に下回る。それでもレーザーが突撃(デストロイヤー)級を撃ち抜けるのは、貫通すべき点に一点集中して熱量を積み上げることで溶かしているからだ。その集中すべき点が常に高速で移動していては甲殻を抜けなくなるという弱点を的確に突いてきたわけだ。ちなみに脚の部分も大部分が甲殻に覆われているので簡単に切り落とすことが出来ない。

 

トリオ「しかしまあ嫌になるくらい的確に対応してきたの。やはり学習能力も高いんじゃないかの?」

 

トピア「対処すべき事態を認識してから新種の全体への普及は2週間と言われていますが、一部での対処実験が始まるのは割とすぐらしいので、そこまで不自然とは言えません。ですがまあ……大分対処能力が高いでしょうね」

 

マイン「しかもコレを見ろ。内側は回転しておらん。そこに光線(レーザー)級や重光線(レーザー)級を乗せてきている」

 

 次の映像を見ると、新種の輪っかの内側に乗った光線(レーザー)級や重光線(レーザー)級が小癪なことにチャージインターバル中に適切に遮蔽を取りながらレーザーを撃ってくるところであった。強烈な突進力と防御力があるのみならず射撃要員まで乗せてくるとはBETAの戦術も随分進んだものだ。

 

トピア「タンクデサント……いえ、これはまさにアインラッドですね。一輪車(アインラッド)級と呼びましょう」

 

ラリー「一輪車か、なるほどな」

 

マイン「何故こいつだけドイツ語なのだ? 一輪車(ユニサイクル)級ではいかんのか?」

 

トピア「いえ、由来が違いますのでアインラッドで」

 

カミール「やけに譲らないな?」

 

 トピアが名前に使ったアインラッドとは、ラリーやマインが理解したドイツ語の一輪車とは少々違う。トピアの言うアインラッドとは宇宙世紀終盤でザンスカール帝国が開発したMS用タイヤ型SFS(サブフライトシステム)である。今回トピアが命名した一輪車(アインラッド)級同様にタイヤの内側にMSを搭載する移動補助装置で、移動力のみならず攻防力まで大幅に強化する上にタイヤの左右をビームシールドで固めることで死角が無くなり、普通のビームライフル程度では碌にダメージも受けなくなるという強烈な性能から、宇宙世紀最強のSFS(サブフライトシステム)と名高い。最大の問題は汎用性が高すぎて奪取された時にそのまま脅威になることなのだが、面倒なことに一輪車(アインラッド)級の場合はそれ自体もBETAなのでこの弱点は無い。

 

トピア「しかしアインラッドが来たからには次はツインラッドでも出そうですね」

 

マイン「ツインラッド? 一輪車の次の二輪車ならモトラッドではないのか?」

 

 マインに問いただされたトピアは意表を突かれた顔をした。モトラッドという言葉だけ知っていてその意味は知らなかったのだ。

 

トピア「いやあ、ツインラッドはタイヤの幅が2倍になった奴で、ドイツ語由来じゃないんですけど、ドイツ語でモトラッドって二輪車って意味なんですね。なるほどー。……モトラッドが出てきたらいよいよヤバイですね」

 

 トピアが先ほどから並べているのは全てザンスカール製兵器の名前なのだが、モトラッドはヤバイ。ツインラッドはアインラッドを横に繋げただけのような試作SFS(サブフライトシステム)であり、字を当てるなら重輪車(ツインラッド)級になるだろうが、モトラッドは艦隊名或いは艦船のカテゴリ名なのだ。バイクのような二輪(※左右分割すれば四輪)を装備した宇宙戦艦アドラステア級と揚陸巡洋艦リシテア級で構成された艦隊、それがモトラッド艦隊だ。勿論車輪は異様に頑丈であり、それを以て地上の全てを踏み均そうというトンデモ兵器だ。BETAにとっても整地が捗りそうで、そういった実用性がありそうなのが実に嫌だ。こちらは字を当てるなら二輪艦(モトラッド)級になるだろう。

 

カミール「先ほどからトピアが何を言っているのか理解出来ないのだが?」

 

サティ「どうせ何かのSF知識でしょ」

 

 正解である。流石付き合いが長い。

 

マイン「まあ名前などどうでもよいわ。問題はこれへの対処だ。こいつらは今現在タレット群を踏み潰しながらハイヴ10跡へ遡ってきているのだぞ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 マインが食堂兼会議室のディスプレイに表示した情報によると、一輪車(アインラッド)級はハイヴ03から出撃してコア045を潰し、タレット群を潰しながら逆流しているようであった。これは厄介だ。

 何が厄介かというと、侵攻用のタレット群の側面から潰しに来ているため、一輪車(アインラッド)級に対しても有効なダメージが入るミサイルを撃てないのだ。スピードと耐久性と戦力集中で以て一部を食い破られると他の戦線でも同じことが起こりうる。BETAが地球クリーン作戦の真似事とは恐れ入る。まさか本当に二輪艦(モトラッド)級まで作るつもりではなかろうか?

 なお名前などどうでもいいと言いながらも一輪車級という名前を掲載してくれたマインの好感度がトピアの中で少し上がった。

 

トピア「と言いつつマインさん、対処法自体はもう分かってますよね?」

 

聖騎士「そうなのであるか?」

 

マイン「フン、あくまで()()()()()()()()()()だ。ミサイルだけでなく放電やレールガンならば簡単に撃破出来ることは分かっている。特に効果的なのは放電だが、放電は側面に撃つと味方のタレットも一緒に破壊するのが問題だ。結局戦線を整理してハイヴ10のラインで正面から迎え撃てるようにするしかないだろう。大陸を囲んでいる防衛線にも一輪車が来ないとも限らんから、そちらも対処しなければならんのが頭の痛いところだ」

 

サティ「レールガンも消費電力が重いのが問題なのよね。とりあえず突破されてない部分はレーザーで迎撃もされない放電タレットの配備かしら」

 

トピア「ではそちらの対処はお任せします。それで重要な点として、ハイヴ03の構造はスキャン出来たんですか?」

 

マイン「無論だ。それだけの時間はあった」

 

トピア「じゃあ問題無いですね。昼食後にシミュレーターでハイヴ03の構造を覚えたら、ハイヴ10跡からミラージュで前進して一輪車(アインラッド)級を片付けつつハイヴ03をさくっと落としてきましょう。今のミラージュにとって、レーザーが効かない程度の相手など大したことはありません」

 

ラリー「だろうな」

 

スコア「我々でもびっくりするくらいミラージュはパワーアップし続けているからな」

 

聖騎士「ここの技術進歩の速度は本当に驚くばかりである」

 

サティ「あらありがとう」

 

カミール「とはいえ油断はするんじゃないぞ?」

 

トピア「勿論です。勝って兜のおじいちゃんですね」

 

シュミット≪なんか違う気がするだわよ?≫

 

 兜のおじいちゃんは元祖スーパーロボットの生みの親だ。作品によっては顔が大分怖いけれど、とってもすごい人なのだ。拝んでおいて損は無い。

 

 トピア達は宣言通りシミュレーター訓練後すぐに出撃した。今回はそのシミュレーター訓練自体も大分短かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。