大量の聖騎士達が出撃した結果、コアベースへと繋がったポータル周辺の奪還はすぐに実現出来た。そして奪われていたポータルはどこだったかというと、今は無人になっているはじまりの島のミルウィン丘陵に住民避難のために設置したものだった。聖弓騎士の一人が高度を上げて周囲を確認すると、はじまりの島は既に西側1/3ほどがBETAに占拠され、それに加えてファストトラベルで移動出来る各地の塔や解放済ワープポータルを中心に勢力が広がっていた。
塔の近くの集落も占拠範囲に含まれており、もし避難していなければ住民は今頃全滅していたはずだ。BETA勢力範囲にはポータルが解放されていたボスラッシュダンジョンも含まれており、万が一これを破壊されるとラッシュ銀貨を稼げなくなって今後の戦力拡充に差し支える。これも至急奪回しなければならない。当然ミルウィン丘陵より西側のギーザ大地もBETA占領下となっており、恐らくユグドラシルを侵攻しているBETAはギーザ台地の塔のポータルから流入していると思われた。
上陸しているBETAは従来の
聖剣騎士「聖弓の!?」
聖光騎士「コーティング盾持ち以外は上がるな!」
今撃墜された聖弓騎士は盾を持っていなかったが、そもそもBETAのレーザー波長に合わせた誘電体多層膜コーティングもしていなかった。どういうことかというと、BETAの光線波長を測定出来たのは本日のプラン1
撃墜された聖弓騎士からの観測情報を通信機で共有していた聖騎士達は、はじまりの島に来た者のうち半分ほどがギーザ台地の塔へと向かった。塔を奪還するためと、加えてユグドラシルへ攻め入ったBETAの駆逐のためだ。高所のため周囲の
聖光騎士がBETAをなぎ払い、聖弓騎士が
聖剣騎士「無事かカミール殿!?」
カミール「もう来てくれたのか聖騎士卿!?」
シュミット≪素晴らしい早さだわよ!?≫
ギーザ大地のポータルに真っ先に突撃した聖剣騎士が大声でカミールを探す声を上げると、屋上のポータルのすぐ近くにいたカミールが振り返って反応した。ポータルから溢れるBETAをボールライトニングで迎撃しつつ湖岸から押し寄せるBETAも魔法や携帯レーザー防御モジュールで牽制するために背後にポータルを背負う位置取りになっていたようだ。そう、こちらの拠点もポータルと地続きの両方からBETAの侵攻を受けていたのだ。
聖剣騎士に続いて次々に聖騎士達が飛び込んでくるのを見て、黒いバルダーアーマーを纏ったカミールは一瞬驚いたあと安堵の表情を浮かべた。その頭の上ではシュミットも喜んだ様子を見せている。避難待ちの非戦闘員はフルエンチャント装備を纏って盾を構えひとかたまりになっていたが、早くも救援に来た聖騎士の姿を見て歓声を上げた。
聖剣騎士「奪取されたポータルがどちらもはじまりの島のものだったのだ。あちら側から制圧してショートカットした」
カミール「なるほど、確かにここから湖があの島まで繋がっているからな……うん、繋がって……? そういうことか! 奴らの拠点と目的が分かったぞ!」
シュミット≪どういうことだわよ?≫
カミール「聖騎士卿、マインに伝えてくれ! コア002と003の南、雪山の北のポイントにコアを設置するんだ! 湖の底にハイヴがあるぞ! 奴らの最大の目的は
シュミット≪……あっ、
カミールが47番目のコア:ニュークリアスとなるコア047の設置を依頼したのは以下のポイントだ。
聖剣騎士「勿論伝えるが、湖底にハイヴ? どういうことなのだ?」
基本的にハイヴは地上にしか作られない。BETAは水中でも行動出来るが、打ち上げや採掘に不都合が出るためだ。だがカミールは湖底にハイヴがある筈だという。
聖騎士は紙を取り出してメモを取り、次に
カミール「ポータルから出てきたBETAも湖岸から上陸したBETAも、真っ先に我々がいた工房に押し寄せてきたんだ。実際作業員に襲い掛かっていたからてっきり対人探知が原因かと思っていたんだが、湖の底にハイヴがあるとすれば、そこの重
聖剣騎士「その設備の打ち上げの阻止、であるな?」
カミール「そう、エンチャントを無限に量産するレガシー小麦畑を更に量産するレガシー作業台、それがこの星から月に運ばれてみろ、この星に限らず宇宙のBETAが片っ端から大幅強化されてしまうぞ」
ハイヴは元々収集した資源を母星へと送る打ち上げ拠点なのだ。工房設備の一つや二つ送れない道理は無い。
BETA全体の強化は教化騒動の際に誰もが想像した悪夢だ。その事態の最悪ぶりはシュミットや聖剣騎士にも瞬時に伝わった。
カミール「更に言うならば、先日着陸ユニットが落ちてきて多方面侵攻が始まったタイミングを思い出してくれ。あれで
シュミット≪あのタイミングはそれを阻止するのが目的だったというわけだわね≫
カミールの言う通り、元はコア019が雪山の北に設置されるはずだったが、その直前で予定を変更して後回しになった。あれはBETAの海中侵攻を読んだマインがそれを阻止するために防衛ライン上の設置へと変更したのだ。今思えば、急いで阻止しなければならない上陸作戦を読ませてそういう選択をさせたとも言える。下手をすると短期決戦を決断させ主力を誘い込んだことすらその一環なのではないかと疑わしくなってくるが、そこまで疑うときりが無い。
聖剣騎士「なるほどであるな。む、早速返事が来たぞ」
カミール「……返事?」
てっきり意図を明確に伝えるためにカミールに問いただしているのだと思っていたが、聖剣騎士はもう返事を受け取ったという。
聖剣騎士がクラウドストレージからメモを取り出してカミールに見せると、それにはマインの文字でこう書いてあった。
――BETAが湧き出す湖底の探査準備なら言われんでもやっている。だが目的看破に関してはよくやった。
シュミット≪ああ、
聖剣騎士「然様、この事態が起きてから我が同志の一人がマイン殿の側に護衛兼連絡役としてついているのである」
クラウドストレージはその内容物がアクセスした個人に紐付けられたものだ。つまり別個体でも聖騎士という同一人物ならば中身を共有することになる。聖騎士が100人いても容量を一人分しか使えないのは普段の仕事では不便であったが、共有出来るのであれば逆に情報伝達に使えるとマインが思いついてそれを今回の作戦に組み込んだのだ。
カミール「なるほどな。マインもやられっぱなしではないか」
伊達に総司令官をやっていないな、とカミールは安堵した。
どのみち打ち上げるのならば水上に
聖剣騎士「同志達よ、話は聞いていたな!?」
星屑の聖十字軍≪応ッ!≫
聖騎士軍団は拠点へ入り込んだBETAの撃退、はじまりの島のBETA掃討、各地のポータルの安全確認と並行してコア設置のための湖周辺のBETAの掃討と湖底ハイヴへの逆侵攻を開始した。逆侵攻はBETAが地続きで攻めてくるルートをコアベース、ユグドラシル、はじまりの島の3箇所から逆走する形だ。既に頭数が1万を超えているので手が足りないということは無い。
カミール「……それにしても、トピアが見た目のみすぼらしさを嫌っていたあの作業台が今やBETAに大人気だなどと、皮肉なものだ」
カミールはトピアが改良型作業台のかっこよさに目を輝かせていたのをしみじみと思い出し、何だか可笑しくなって小さく笑い声を漏らした。
シュミット≪でもカミールちゃん、湖の底に重
カミール「ああ、ワタシは考古学者だからね」
シュミット≪考古学者だから?≫
話が繋がっていないように聞こえたシュミットは首を傾げた。
カミール「はじまりの島の各地を調べると、どうも1年と少し前に津波に晒されたような痕跡があるんだ。それもかなり大規模なものだ。しかしその頃に何かが起こったという記憶がワタシには無い。記憶に無い津波とは何だろうとずっと疑問に思ってたんだが、まあ当然だね。最近知ったが、ワタシはその頃まだ存在してなかったんだから」
シュミット≪カミールちゃん……≫
シュミットのまなざしに悲しみや同情が混じる。彼女もカミールの事情を多少は聞いているのだ。
カミール「いやすまない、それはもういいんだ。それで結局、この星に人間が住み始める前に大津波があったとすれば合点がいくんだよ。その正体がBETA着陸ユニットだと気付いたのはついさっきさ」
シュミット≪つまり湖底にはここの裏側のBETAより前から居座ってたってことね……≫
カミール「他と比べてこれだけ勢力拡大が遅いということは、やはり本来は水底に拠点を構えるようには出来ていないんだろうね。連中も想定していなかった事故かもしれない。今回はそれが盲点になった形さ」
戦闘班が裏の大陸でハイヴ01の攻略に掛かっているのと同時に、ユグドラシル大陸でも推定オリジナルハイヴ、ハイヴ00の攻略作戦が始まろうとしていた。