【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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158. はじまりの島の各地を調べると、どうも1年と少し前に津波に晒されたような痕跡があるんだ

 大量の聖騎士達が出撃した結果、コアベースへと繋がったポータル周辺の奪還はすぐに実現出来た。そして奪われていたポータルはどこだったかというと、今は無人になっているはじまりの島のミルウィン丘陵に住民避難のために設置したものだった。聖弓騎士の一人が高度を上げて周囲を確認すると、はじまりの島は既に西側1/3ほどがBETAに占拠され、それに加えてファストトラベルで移動出来る各地の塔や解放済ワープポータルを中心に勢力が広がっていた。

 

 

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塔の近くの集落も占拠範囲に含まれており、もし避難していなければ住民は今頃全滅していたはずだ。BETA勢力範囲にはポータルが解放されていたボスラッシュダンジョンも含まれており、万が一これを破壊されるとラッシュ銀貨を稼げなくなって今後の戦力拡充に差し支える。これも至急奪回しなければならない。当然ミルウィン丘陵より西側のギーザ大地もBETA占領下となっており、恐らくユグドラシルを侵攻しているBETAはギーザ台地の塔のポータルから流入していると思われた。

 上陸しているBETAは従来の闘士(ウォーリアー)級、戦車(タンク)級、要撃(グラップラー)級、突撃(デストロイヤー)級、要塞(フォート)級に加え、新種の一輪車(アインラッド)級、重輪車(ツインラッド)級。更にその車輪の内側には光線(レーザー)級や重光線(レーザー)級が潜んでおり、今まさに上空の聖弓騎士に複数の光線が集束し、飲み込んで消滅させた。いや、その間際に携帯レーザー防御モジュールMk.3 Type Gから数条の光が走ったので恐らく何体かは相討ちになっただろう。

 

聖剣騎士「聖弓の!?」

 

聖光騎士「コーティング盾持ち以外は上がるな!」

 

 今撃墜された聖弓騎士は盾を持っていなかったが、そもそもBETAのレーザー波長に合わせた誘電体多層膜コーティングもしていなかった。どういうことかというと、BETAの光線波長を測定出来たのは本日のプラン1 青い道作戦(オペレーション・ブルーロード)実行時が初めてで、聖騎士の交配レベリングが実行されたのは昨日だ。今撃墜された聖弓騎士の腕章ナンバーは111。まだまだ初期ロットであり、装備が昨日のままだったのだ。光線(レーザー)級に対しては戦力的に辛いだろう。今はそのあたりを改善したアップデート版の聖騎士を量産中だが、レーザーさえ喰らわなければ十分戦えるのでまずは人数を揃えるべく先行部隊として出撃していたのだ。まあ結果的に喰らってしまったわけだが、一人二人減らされたところでまだまだ増えるペースの方が速い。

 撃墜された聖弓騎士からの観測情報を通信機で共有していた聖騎士達は、はじまりの島に来た者のうち半分ほどがギーザ台地の塔へと向かった。塔を奪還するためと、加えてユグドラシルへ攻め入ったBETAの駆逐のためだ。高所のため周囲の光線(レーザー)属種に集中的に狙われる難点があるが、ここを奪還すればそのままユグドラシルへのショートカットも出来るので優先すべきだ。残りの一部はミルウィン丘陵のポータルの防衛に残り、それ以外ははじまりの島各地に散ってBETAの駆逐を始めた。駆逐後は沿岸部にタレットを敷設して防衛を固めたいところだが、生憎現在Techインベントリサーバーが破壊されたままなので防衛設備の自動設置が出来ない。暫くは人力で守るしかない。ただしそのためのマンパワーは有り余るほど増加中だ。このまま増え続ければ奪還に30分、駆逐に2時間と言ったところだろう。はじまりの島は非常に起伏が激しく洞窟も山ほどあるので、見落としが無いか確認するのに手間が掛かるのだ。

 聖光騎士がBETAをなぎ払い、聖弓騎士が要塞(フォート)級を撃ち抜き、それらの攻撃をすり抜けて接近するBETAを聖剣騎士が片っ端から切り裂いて、時折照射されるレーザーを誘電体多層膜コーティングした聖十字の盾(Ankh Shield)で弾く。一輪車(アインラッド)級にはレーザーが効かない、重輪車(ツインラッド)級にはそれに加えて電撃も効かないという厄介な性質があったが、聖弓騎士のマグナムショットだけでなく聖光騎士の収束魔導ビームもレーザーと違って瞬間の装甲貫徹力が100万を超えているのであっさりそれらを片付けていく。そういう意味では部分的にはトキソピッド・ミラージュよりも手際よくBETA群を殲滅していた。

 

 

 

聖剣騎士「無事かカミール殿!?」

 

カミール「もう来てくれたのか聖騎士卿!?」

 

シュミット≪素晴らしい早さだわよ!?≫

 

 ギーザ大地のポータルに真っ先に突撃した聖剣騎士が大声でカミールを探す声を上げると、屋上のポータルのすぐ近くにいたカミールが振り返って反応した。ポータルから溢れるBETAをボールライトニングで迎撃しつつ湖岸から押し寄せるBETAも魔法や携帯レーザー防御モジュールで牽制するために背後にポータルを背負う位置取りになっていたようだ。そう、こちらの拠点もポータルと地続きの両方からBETAの侵攻を受けていたのだ。

 聖剣騎士に続いて次々に聖騎士達が飛び込んでくるのを見て、黒いバルダーアーマーを纏ったカミールは一瞬驚いたあと安堵の表情を浮かべた。その頭の上ではシュミットも喜んだ様子を見せている。避難待ちの非戦闘員はフルエンチャント装備を纏って盾を構えひとかたまりになっていたが、早くも救援に来た聖騎士の姿を見て歓声を上げた。

 

聖剣騎士「奪取されたポータルがどちらもはじまりの島のものだったのだ。あちら側から制圧してショートカットした」

 

カミール「なるほど、確かにここから湖があの島まで繋がっているからな……うん、繋がって……? そういうことか! 奴らの拠点と目的が分かったぞ!」

 

シュミット≪どういうことだわよ?≫

 

カミール「聖騎士卿、マインに伝えてくれ! コア002と003の南、雪山の北のポイントにコアを設置するんだ! 湖の底にハイヴがあるぞ! 奴らの最大の目的は()()()()()()()だ!」

 

シュミット≪……あっ、()()()()()()()!?≫

 

 カミールが47番目のコア:ニュークリアスとなるコア047の設置を依頼したのは以下のポイントだ。

 

 

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聖剣騎士「勿論伝えるが、湖底にハイヴ? どういうことなのだ?」

 

 基本的にハイヴは地上にしか作られない。BETAは水中でも行動出来るが、打ち上げや採掘に不都合が出るためだ。だがカミールは湖底にハイヴがある筈だという。

 聖騎士は紙を取り出してメモを取り、次に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

カミール「ポータルから出てきたBETAも湖岸から上陸したBETAも、真っ先に我々がいた工房に押し寄せてきたんだ。実際作業員に襲い掛かっていたからてっきり対人探知が原因かと思っていたんだが、湖の底にハイヴがあるとすれば、そこの重頭脳(ブレイン)級は教化によってクラフト知識を得ているはずだ。だが新しい方の設備だけではエンチャントの量産が出来ない。奴らは拠点を壊しにきたんじゃない。()()()()()()()()()()()()んだ。よく見ればエンチャント畑まで持っていっているぞ。……そして我々がやらなければならないことは分かるな、聖騎士卿」

 

聖剣騎士「その設備の打ち上げの阻止、であるな?」

 

カミール「そう、エンチャントを無限に量産するレガシー小麦畑を更に量産するレガシー作業台、それがこの星から月に運ばれてみろ、この星に限らず宇宙のBETAが片っ端から大幅強化されてしまうぞ」

 

 ハイヴは元々収集した資源を母星へと送る打ち上げ拠点なのだ。工房設備の一つや二つ送れない道理は無い。

 BETA全体の強化は教化騒動の際に誰もが想像した悪夢だ。その事態の最悪ぶりはシュミットや聖剣騎士にも瞬時に伝わった。

 

カミール「更に言うならば、先日着陸ユニットが落ちてきて多方面侵攻が始まったタイミングを思い出してくれ。あれで()()0()1()7()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

シュミット≪あのタイミングはそれを阻止するのが目的だったというわけだわね≫

 

 カミールの言う通り、元はコア019が雪山の北に設置されるはずだったが、その直前で予定を変更して後回しになった。あれはBETAの海中侵攻を読んだマインがそれを阻止するために防衛ライン上の設置へと変更したのだ。今思えば、急いで阻止しなければならない上陸作戦を読ませてそういう選択をさせたとも言える。下手をすると短期決戦を決断させ主力を誘い込んだことすらその一環なのではないかと疑わしくなってくるが、そこまで疑うときりが無い。

 

聖剣騎士「なるほどであるな。む、早速返事が来たぞ」

 

カミール「……返事?」

 

 てっきり意図を明確に伝えるためにカミールに問いただしているのだと思っていたが、聖剣騎士はもう返事を受け取ったという。

 聖剣騎士がクラウドストレージからメモを取り出してカミールに見せると、それにはマインの文字でこう書いてあった。

 

――BETAが湧き出す湖底の探査準備なら言われんでもやっている。だが目的看破に関してはよくやった。星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)は探査開始を待たず即刻湖底のBETA拠点の攻略を開始せよ。

 

シュミット≪ああ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のね?≫

 

聖剣騎士「然様、この事態が起きてから我が同志の一人がマイン殿の側に護衛兼連絡役としてついているのである」

 

 クラウドストレージはその内容物がアクセスした個人に紐付けられたものだ。つまり別個体でも聖騎士という同一人物ならば中身を共有することになる。聖騎士が100人いても容量を一人分しか使えないのは普段の仕事では不便であったが、共有出来るのであれば逆に情報伝達に使えるとマインが思いついてそれを今回の作戦に組み込んだのだ。電波妨害(ジャミング)級に対する対策の一つだ。

 

カミール「なるほどな。マインもやられっぱなしではないか」

 

 伊達に総司令官をやっていないな、とカミールは安堵した。

 どのみち打ち上げるのならば水上に地表構造物(モニュメント)が露出するので大まかな位置は分かる。コアの設置とどちらが早いかは分からないが、先に攻略開始しておけばその時点でのスタート地点が有利になるだろう。最悪地表構造物(モニュメント)だけでも破壊すれば打ち上げの阻止は出来る。

 

聖剣騎士「同志達よ、話は聞いていたな!?」

 

星屑の聖十字軍≪応ッ!≫

 

 聖騎士軍団は拠点へ入り込んだBETAの撃退、はじまりの島のBETA掃討、各地のポータルの安全確認と並行してコア設置のための湖周辺のBETAの掃討と湖底ハイヴへの逆侵攻を開始した。逆侵攻はBETAが地続きで攻めてくるルートをコアベース、ユグドラシル、はじまりの島の3箇所から逆走する形だ。既に頭数が1万を超えているので手が足りないということは無い。

 

カミール「……それにしても、トピアが見た目のみすぼらしさを嫌っていたあの作業台が今やBETAに大人気だなどと、皮肉なものだ」

 

 カミールはトピアが改良型作業台のかっこよさに目を輝かせていたのをしみじみと思い出し、何だか可笑しくなって小さく笑い声を漏らした。

 

シュミット≪でもカミールちゃん、湖の底に重頭脳(ブレイン)級がいるという発想は大胆だわね。湖に着陸ユニットが落ちていれば衛星観測で分かるはずだけれど≫

 

カミール「ああ、ワタシは考古学者だからね」

 

シュミット≪考古学者だから?≫

 

 話が繋がっていないように聞こえたシュミットは首を傾げた。

 

カミール「はじまりの島の各地を調べると、どうも1年と少し前に津波に晒されたような痕跡があるんだ。それもかなり大規模なものだ。しかしその頃に何かが起こったという記憶がワタシには無い。記憶に無い津波とは何だろうとずっと疑問に思ってたんだが、まあ当然だね。最近知ったが、ワタシはその頃まだ存在してなかったんだから」

 

シュミット≪カミールちゃん……≫

 

 シュミットのまなざしに悲しみや同情が混じる。彼女もカミールの事情を多少は聞いているのだ。

 

カミール「いやすまない、それはもういいんだ。それで結局、この星に人間が住み始める前に大津波があったとすれば合点がいくんだよ。その正体がBETA着陸ユニットだと気付いたのはついさっきさ」

 

シュミット≪つまり湖底にはここの裏側のBETAより前から居座ってたってことね……≫

 

カミール「他と比べてこれだけ勢力拡大が遅いということは、やはり本来は水底に拠点を構えるようには出来ていないんだろうね。連中も想定していなかった事故かもしれない。今回はそれが盲点になった形さ」

 

 戦闘班が裏の大陸でハイヴ01の攻略に掛かっているのと同時に、ユグドラシル大陸でも推定オリジナルハイヴ、ハイヴ00の攻略作戦が始まろうとしていた。

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