この星最大の大陸として知られる裏大陸の中央部に、ある問題を抱えたお宅がありました。この家が抱える問題、それは……
物件01
星を蝕むBETAの本家
このお宅の名前はハイヴ01。地下に広がった最大深度4,200m、最大門半径115kmの地下茎構造物は、推定数千万から数億のBETAと多数の偽装縦坑や偽装横坑トラップをもってして侵入者を阻みます。更に地上高度1,200mの地表構造物は3体の超重光線級と多数の光線属種を乗せて東を睨み、地上のあらゆる侵入者をまばゆい光で焼き尽くします。ハイヴ01それ自体の規模がフェイズ6である上に、5つのフェイズ5ハイヴに囲まれているため、戦力はまさに無尽蔵。大変セキュリティがしっかりしていると言えるでしょう。守りが堅いだけならばそれほどの問題は無いのですが、ここを本拠地としているBETA達は片っ端から資源を掘り尽くし、生命という生命を駆逐し続けた結果、大陸の大部分を生命の存在しない荒野へと変えてしまったのです。それはまさしくこの星の全生命体にとっての脅威と言えます。
そんな問題住宅をどうにかするのはお馴染みの匠衆戦闘班。BETAとの戦いはお手の物で、今回は更に強力な装備を手にしてこの難題に挑みます。
トピア「これよりプラン6 匠の技作戦を開始します!」
人が、動物が、生命が、安心して暮らせる星を取り戻すために、匠達による攻略が、いよいよ始まるのです。
航宙工作艦インファクトリが出港した頃、匠衆戦闘班はハイヴ01の地表構造物手前120kmの位置まで侵攻し、超重光線級との交戦を開始していました。
超重光線級。重光線級と要塞級と頭脳級を組み合わせて作られた全高90m近い巨体の化け物です。重光線級と同等のレーザー照射膜を3つの放射節に3つずつ、合計9つ持ち、通常出力ならインターバル約0.2秒で交互照射が可能。極大出力照射なら10分弱のインターバルと引き換えに1射で重光線級の10倍の射程と10倍以上の威力、具体的には数百の極超音速再突入体と装甲駆逐艦20隻を蒸発させるほどの出鱈目な威力を発揮するのです。極大照射はそのあまりの熱量により上昇気流で超巨大光線属種積乱雲を発生させるため、重金属雲戦術も効かない始末。近接防御能力も高く、射程1,200mの小型衝角触腕を100本以上、加えて射程1,000mの中型衝角触腕、射程800mの大型衝角触腕を備えています。また、頭脳級の能力なのか周囲の光線属種にエネルギーを供給してインターバルを短くすることが可能なので他の光線属種を引き連れていると迎撃能力がもう鉄壁です。全体的にどこをどう取っても地球の戦力で相手をするには大分厳しい相手と言えるでしょう。
そのようなBETAの中でも化け物中の化け物である超重光線級。それも3体がハイヴ01の地表構造物の頂上に陣取っています。加えてその足元にも多数の光線属種が待ち構えており、地上1,200mの高所から地平線120kmの距離を狙撃してきたのです。これまでの匠達の装備であれば完全に射程外の距離からアウトレンジ攻撃されたわけです。射程が有利でも地平線が問題で射程を活かせないのならば高所に陣取れば良いという単純な解決法でした。BETAも本拠地を守るに当たって知恵を働かせたということでしょう。
しかし匠達を乗せたトキソピッド・ミラージュの有人機4機は極大照射を正面から受けて無事生き残りました。それは何故か。匠達の熟練の技に迫ります。
まず現在のトキソピッド・ミラージュ各機は7.5GW核融合炉を4基ずつ搭載しています。装備換装前では有人機も無人機も1基ずつしか搭載していなかったのですが、匠スコアがアップデートした際にスコア機だけ9基搭載状態になっていたのです。これと他の7機のミラージュに搭載していた分を合わせれば16基。これを有人機4機で分配して4基ずつ30GWにしたのです。バリアや冷却に使う電力はなるべく集中した方が生残性が高くなるため、無人機は部品取りに使いました。現状で限られた装備を有効に使う匠達の判断です。
次に、有人機各機は降誕祭作戦で使ったミラージュシールドをTechインベントリとは別のインベントリに収納していました。機体に組み込まれたテラリアン宝箱です。そこから取り出したミラージュシールドを極大照射の防御に使ったのです。これだけでもトキソピッド・ミラージュ本体で受けるよりも遥かに防御力が高まるわけですが、更にバリアを断続的に使うことで、シールドが溶けそうになったらバリアで耐えている間に修復してまた使うというサイクルが成立します。ミラージュシールドは反射角の調整機能が無いので遠距離の反撃に使うには向いていませんが、兎に角生き残ってしまえば次の照射まで10分弱のインターバルが残ります。これは現場の機転というわけでもなく、ミラージュシールドは超重光線級対策の方が本来の用途なのです。それを見越した性能なのですから、主縦坑で多数の光線属種から一斉照射を受けても無事なのは当たり前なのです。匠衆生産班の心尽くしの贈り物と言えるでしょう。
斯くして匠衆戦闘班のトキソピッド・ミラージュは最初の単独極大照射をシールドだけで耐え、次の2体による同時極大照射をシールドとバリアのサイクルで耐えたのです。
最大の危機を乗り越えた匠達は、その場から反撃を開始しました。
トピア「反撃を開始して下さい!」
ラリー≪了解! まずはレーザー行くぜ!≫
超重光線級はインターバルに入りましたが、超重光線級によってインターバルを短縮されている随伴光線属種の迎撃力は脅威です。これに対処するため、匠ラリーの機体に載せ替えた新型レーザータレットによる攻撃が始まりました。その性能は以下のように変わっています。
■名称:Meisters レーザータレットMk.3 Type G
・サイズ:2m×2m×2m
・射程距離:60km
・消費電力:800kJ×4.8射/秒=3.84MW (※2.5倍モードでは16.6MW)
・変換効率:99.0%
・威力:3.80MW=380,000DPS (※2.5倍モードでは950,000DPS)
・ミラー動作半径:200m
・備考:G元素カフェ6/9、13を少量使用
■名称:Meisters レーザータレットMk.4 Type G/L
・サイズ:4m×4m×4m
・射程距離:140km
・消費電力:6.40MJ×4.8射/秒=30.7MW (※2.5倍モードでは133MW)
・変換効率:99.0%
・威力:30.4MW=3,040,000DPS (※2.5倍モードでは7,600,000DPS)
・ミラー動作半径:400m
・備考:G元素カフェ1、6/9、13を少量使用
体積8倍、面積4倍、消費電力8倍、射程2倍強の大型レーザー砲。ラリー機はこれを従来の1/4の数、32基搭載しています。DPSは2倍になって2億4330万です。迎撃不可能なこの長距離レーザー砲でまずは随伴の光線級と重光線級を片っ端から撃破していく算段です。
急に都合の良い道具が出てきたように見えますが、ここは匠衆の軍事総司令官である匠マインの先見の明が光る所です。彼女は自分が相手の指揮官なら迎撃の為の光線属種を平地には置かない、高所に陣取ってその射程を活かすだろうと言い放ちました。匠達は仮に相手がハイヴ01の地表構造物頂上に陣取った場合の地平線までの距離を算出しました。その数字は120km。この条件では従来の武器では全く射程が足りず、一方的に撃たれることになるでしょう。この予測を真剣に受け止めた匠衆生産班は、この作戦までに間に合うように更なる長射程武器の開発を推し進めました。しかしそうは言ってもすぐに従来と同じ規格で2倍以上の長射程レーザー砲を作るのは無理です。そこで、匠達はサイズを大型化することで対処しました。また、急造のため演算能力が足りず、射程限界付近に命中させるためには静止状態か静粛歩行モードでの使用が推奨されます。それでもこれがあるのと無いのとでは対応力が段違いです。現に目の前の随伴光線属種はみるみる数を減らしていっているのですから。
スコア≪次、レールガン行くぞ!≫
随伴光線属種の対処は出来ましたが、超重光線級は相応の防御力に加えて自らの熱量に耐えるかなりの冷却性能を備えます。つまりレーザー攻撃が効きづらい可能性が示唆されていました。本当に効かないかはやってみないと分かりませんが、万が一のために用意されたのが、高威力長射程を突き詰めた単砲身レールガンです。こちらの性能は以下のように変わっています。
■名称:Meisters クアッドレールガンMk.1 Type G
・サイズ:5m×5m×4m
・弾頭:ルミナイト製装弾筒付翼安定徹甲弾
・消費電力:20MJ×2射/秒=40MW (※2.5倍モードでは173.2MW)
・運動エネルギー変換効率:99.0%
・運動エネルギーから破壊力への変換効率:95.0%
・威力:1,881,000DMG=18.81MJ
・射程:18km
・実用射程5km~10km(地平線)
・連射速度:2射/秒 (※2.5倍モードでは最大5射/秒)
・弾数:無限
・備考:G元素カフェ6/9を少量使用
■名称:Meisters レールガンMk.2 Type G
・サイズ:5m×5m×4m
・弾頭:ルミナイト製装弾筒付翼安定徹甲弾
・消費電力:640MJ×0.5射/秒=320MW (※2.5倍モードでは1.39GW)、ただし消費電力と威力をもっと下げることも可能
・運動エネルギー変換効率:99.0%
・運動エネルギーから破壊力への変換効率:95.0%
・威力:60,192,000DMG=601.92MJ
・射程:160km
・実用射程5km~10km(地平線)
・連射速度:秒間消費電力が規定内に収まる範囲で0.5射/秒~2射/秒の間で調節可能 (※2.5倍モードでは最大5射/秒)
・弾数:無限
・備考:G元素カフェ1、6/9を少量使用
4砲身で連射に電力を使っていたレールガンを1砲身にまとめて連射速度と引き換えに1発の威力を4倍に、更に電力を8倍まで使えるようにして最終的な威力を32倍の6019万にしたという、まさに一発屋……もとい、一撃を極めたような武装です。1発のエネルギー量が45口径46cm一式徹甲弾の545MJを遂に超えたのです。砲身の軸を1つにし、駐退復座機構を改善したことで従来より安定性が増し、砲身が大型化して砲弾重量が増したことで空気抵抗による減速も軽減され、見える範囲なら160kmまで有効打を与えられるようになっています。しかしレールガンは運動エネルギー兵器であるため、威力が32倍ともなると駐退復座機構を改善してもなお反動が強烈で、行進間射撃は勿論静止射撃ですら160km先の目標への命中が保証されません。現段階の性能では使い手を選ぶと言えるでしょう。
射撃に優れる匠スコアは望遠モードで超重光線級を照準に捉え、マニュアルでレールガンを発射しました。スコア機はこれを32基も搭載していますが、標的が遠いので慎重に1秒に1発ずつ発射していきます。実質2基分しか使っていない計算になりますが、他の射手では1秒に1発の射撃すら難しい所です。匠ラリーの攻撃で正面の随伴光線属種の殆どを壊滅させたのと、あまりに飛翔速度が速いため砲弾を側面から迎撃するのが難しいこと、加えて囮として多数のミサイルを発射したことから、砲弾の全てが迎撃されずに飛んで行きましたが、そもそもの命中精度が低く、4発目で漸く超重光線級に命中しました。しかしその1発で超重光線級の胴体に大きな風穴が空きました。その瞬間にいつもの通知が匠トピアの目の前に現れたのです。
外敵駆除
超重光線級を1体倒す
Clear
Get!
EXP +14,000
レベル上限解放 +7
トピア「ナイスショット! 流石の威力ですね」
スコア≪射程が大幅に伸びたのはいいが、反動がでかすぎてこの距離では当てづらいな≫
聖騎士≪元々射手のスコア殿以外ではもっと持て余すであろうな≫
ラリー≪DPSで比べるとレーザーでも行けそうだが、どうなんだろうな≫
通信を送り合いながらも匠スコアは射撃を続けてていますが、その側面の地中から母艦級が躍り出てきました。相変わらずのイルカのような馬鹿げた動きで上からのしかかろうとします。
これに対応したのが、匠ではありませんが立派に戦闘班の一員と認められている助手の聖騎士卿です。
聖騎士「ミラージュ……コレダァァァ!!」
聖騎士卿が母艦級に飛びつき、匠トピアに教わった由緒ある技名を叫びがら新型の放電タレットから電撃を叩き込みます。放電タレットの性能は以下のように変化していました。
■名称:Meisters 放電タレットMk.1
・サイズ:2m×2m×2m
・射程距離:400m
・消費電力:10MW (※2.5倍モードでは43.3MW)
・ダメージ変換効率:75.0%
・威力:7.5MW=750,000DPS (※2.5倍モードでは1,875,000DPS)
・備考:G元素カフェ6/9を少量使用
■名称:Meisters 放電タレットMk.2/L
・サイズ:4m×4m×4m
・射程距離:800m
・消費電力:80MW (※2.5倍モードでは346MW)
・ダメージ変換効率:75.0%
・威力:60MW=6,000,000DPS (※2.5倍モードでは15,000,000DPS)
・備考:G元素カフェ1、6/9を少量使用
一応射程が倍に伸びてはいるのですが、それでも母艦級の長さほどもありません。そのため聖騎士卿は確実にダメージを与えるために母艦級にしがみついて直接電撃を叩き込んだのです。8基で1億2千万DPSの電撃です。母艦級は不規則に痙攣しながら体勢を崩して目的とは違ったポイントへと落下し、数秒で中身のBETAごと黒焦げになりました。……いえ、生き残った重輪車級は中から出てくるようで、これに対する迎撃が開始されました。それと併せて周囲に群がってくるBETAも他の人員が順次片付けています。
その間に匠スコアは残る2体の超重光線級に穴を空けていました。流石は匠衆随一の射手、早くも新型レールガンの癖に慣れてきたようです。
トピア「よし、超重光線級も母艦級も問題無く倒せますね。じゃあ迎撃率が1割を切ったら行くので覚悟の準備をしておいてください」
第5章
地表構造物の撤去
地表構造物の頂上に陣取った迎撃戦力の排除、それに地中から襲撃する母艦級の撃退も完了しました。次はいよいよハイヴの地表構造物の撤去です。しかし地上高度1,200mにも達するそれの撤去は一筋縄ではいかないように見えます。匠達は果たしてこれにどのように対処するのでしょうか。腕の見せ所です。
ラリー≪いよいよ本命か。とりあえず一緒にミサイルを撃って、見える位置から迎撃が来たらレーザーで落とせばいいんだな?≫
トピア「お願いします」
匠トピアはミサイルタレットMk.2から巡航ミサイルを順次発射していきました。発射モードは光線属種を最優先目標とした見敵必殺。それに合わせて他の3機もミサイルタレットMk.1から巡航ミサイルを発射して、数を水増しする手伝いをしました。
見敵必殺。これは新型のミサイルタレットに新たに搭載されたもので、ミサイルをノーロックで発射したあと、発射されたミサイル自体がBETAを発見次第それを追尾するというモードです。このモードの搭載理由は一輪車級がミサイルタレットのセンサーで捉えられない側面から攻撃してくるようになったことへの対策なのですが、今回のような地平線の向こうへの射撃でも大いに効果を発揮します。
大半のミサイルはレーザーに撃ち落とされますが、ミサイル迎撃の為に顔を出した光線属種を他の見敵必殺モードのミサイルがロックしてインターバル中に襲いかかり、段々迎撃率が低下していきます。そして6射目で遂に1割を切りました。案外これを連射するだけでも行けそうな程の迎撃飽和能力です。
問題の7射目。
トピア「匠の技をご覧あれ!」
匠トピアはターボボタンを押し込みながらトリガーを引いてMk.1には無かった弾頭の巡航ミサイルを発射しました。他の3機から発射された通常弾頭ミサイルを伴った48発のそれらはやはり警戒されたのか集中迎撃されて多くが水素爆発を起こしましたが、その爆発は従来のミサイルに比べ大した規模でもありません。しかしその内の1発が地表構造物に着弾し、直視したなら目がくらむような閃光と爆発を引き起こしました。更に周囲のミサイルも次々に着弾しては閃光を重ね、この世の終わりのような大爆発となり、上昇気流から空には巨大なキノコ雲が立ち上りました。
膨大な熱量による空気の膨張で、120km離れた匠達にも爆風と放射線が襲い掛かりますが、当然匠達が作り上げた対BETA兵器であるトキソピッド・ミラージュは放射線くらい遮断出来るように設計されています。その操縦席で匠トピアは拳を振り上げて笑っていました。
トピア「見たか匠の必殺の技!」
ラリー「ミニ核ミサイルIIとは桁がちげーな!」
聖騎士「これが核爆弾、であるか……!?」
スコア「……流石は水爆、とんでもない威力だな」
匠の中にも元々核爆弾の取り扱い経験がある者もいました。サティ、トリオ、ラリーの三名です。しかしそれはどれも小型で小規模のものばかりでした。今回のものは新規に作られた、従来より遥かに大威力の核兵器です。今匠トピアが使っているミサイルタレットの性能は、従来に比べ以下のように変化しています。
■名称:Meisters 巡航ミサイルタレットMk.1
・サイズ:5m×1m×1m
・弾頭:8kg指向性爆薬弾頭(D型)、10kg通常爆薬弾頭(E型)から任意選択
・威力:5,360,000DMG=53.6MJ(D)、最大6,690,000DMG=66.9MJ(E)
・消費電力:0MJ/発 (※2.5倍モードでは5MJ/発)
・間接射撃射程:10km
・直接射撃射程:5km~10km(地平線)
・連射速度:0.2射/秒 (※2.5倍モードでは0.5射/秒)
・弾数:無限
■名称:Meisters 巡航ミサイルタレットMk.2
・サイズ:5m×1m×1m
・弾頭:8kg指向性爆薬弾頭(D型)、10kg通常爆薬弾頭(E型)、2kg指向性重水素弾頭(N型)から任意選択
・威力:5,360,000DMG=53.6MJ(D)、最大6,690,000DMG=66.9MJ(E)、最大114,000,000,000,000DMG=1.14PJ(N)
・消費電力:0MJ/発 (※2.5倍モードでは5MJ/発)、N型弾頭のみ保持冷却と起爆加熱に電力が必要なため100MJ/発が別途消費
・間接射撃射程:200km
・直接射撃射程:5km~10km(地平線)
・連射速度:0.2射/秒 (※2.5倍モードでは0.5射/秒)
・弾数:無限
・備考:見敵必殺モード搭載、垂直発射設置可能、G元素カフェ1を少量使用
変化は先に説明した見敵必殺モードの搭載の他、射程が大幅に伸びたことと、新しい弾頭が追加されたこと。この新型弾頭が威力の秘密で、多少電力消費が重いものの、威力114兆の2kg指向性重水素弾頭ミサイル、いわゆる核融合弾頭ミサイルを電力の許す限り連射可能という、常識をかなぐり捨てたような兵器です。とはいえ、これは水素爆弾の中ではまだ大人しい方なのです。
・原子爆弾リトルボーイ(広島型):62.8TJ
・原子爆弾ファットマン(長崎型):92.0TJ
・2kg重水素爆弾:1.14PJ←これ
・水素爆弾B83:5.02PJ
・水素爆弾キャッスルブラボー(ビキニ環礁実験型):62.8PJ
・水素爆弾B41:105PJ
・水素爆弾ツァーリボンバ:209PJ
地球製史上最強のツァーリボンバは今使ったミサイルの183倍も威力があるのです。……とはいえ連射は不可能なので、それも考慮に入れるとやはり頭のおかしい……もとい、匠の技が光る驚きの兵器と言えるでしょう。
今回使ったミサイルの弾頭は爆発に指向性を持たせるために爆弾部分を囲む分厚いルミナイトケースを採用しており、爆発力と指向性保持のバランスを最適化した結果弾頭の重水素重量が2kgまで減っているのですが、それでも威力がここまで大きいと完全に後方への影響を無くせるものでもありません。
この弾頭は内蔵された起爆用レーザー発信器が生み出す集中熱量で起爆するタイプの純粋水爆、つまりはあの有名なアトミックバズーカと同じタイプです。安全装置が搭載されていて発射点からある程度進むまで普通のレーザーで撃墜された程度では勝手に起爆しないようにはなっていますが、超重光線級クラスのレーザーなら起爆してしまう可能性を否定出来ません。水素爆弾の中では大人しい方だとは言え、運用には慎重さが求められる所でしょう。
純粋水爆は起爆の際に核分裂反応を経由しないために放射性降下物が大幅に減り、そのため環境問題にはなりにくいのですが、爆発の瞬間に放射線自体は出るので油断は禁物です。実際ミラージュについているガイガーカウンターもかなり危険な値を示しています。
しかしもう少し待つと、地表構造物周辺の熱が一気に冷えて放射線も消え、大分観測しやすくなりました。これは仮想実体化の時間切れによるものです。
ここで仮想実体化重水素は電力用途では1%程度しか利得を生み出せないのに攻撃用途ではその殆どのエネルギーを使えているのは何故か、という疑問が当然湧いてくるでしょう。これについては、Techの専門家である匠テクスが原理を説明しました。それによると、実体化を解除すると仮想実体化物質由来の電力や熱エネルギー、運動エネルギーは殆どが消えてしまう一方、形状や原子・分子の構成を変化させられた相手はそのままになるようなのです。通常弾頭のミサイルも弾丸もそうなっているのですから、実際に起きている現象はその通りなのでしょう。これは仮想実体化の基本的な法則、スラーヴァ=アーカンシーの法則と言い、順を追って説明するには量子力学レベルの数学が必要になるので、匠テクスにもそこまでの解説は困難でした。しかしその法則に基づいたTechという現物が量産されているのですから、匠衆の技術を以てすればそれを応用したものを作ること自体は可能だったということです。
そろそろ環境が落ち着いてきたので匠達は前進を開始しました。しかし行けども行けども地表構造物は見当たりません。彼女達が最終的に発見したのは……なんということでしょう、地表構造物が根元から消し飛んで出来た、大きな穴でした。
屯していた無数のBETAが蒸発したことでゆったりとくつろげるようになった、高熱でガラス化した地表。多すぎるBETAが減ったことでプライベートな空間もこれまでより遥かに確保しやすくなるでしょう。邪魔な地表構造物が取り払われたことで暖かな日差しが入り込むようになったむき出しの主縦坑。冬にも寒い思いをしなくて済みます。主縦坑の底に密集して天を睨み、あらゆる侵入者を拒んでいた多数の光線属種も核融合爆弾の膨大な熱量によってすっかりぐったりしており、昇り降りが格段に楽になりました。
トピア「いい仕事してますねぇ……!」
番組が違う気がしますが、匠トピアは両手を組んで喜びの声を上げました。後にこの結果を見ることになる住民の方々もさぞお喜びになることでしょう。特に素晴らしいのが、生物ではないと自分で主張しているBETAは居住者と見なす必要が無く、どんな施工であれクレームを受け付ける必要も無いということです。
上空からは黒い雪が降り注いでいました。熱エネルギーが失われた影響で、砕かれた地表構造物の残骸が灰になって降ってきたのでしょう。それはこの星の戦いの終わりを告げるような光景でした。
トピア「いやー、一度吹っ飛ばしてみたかったんですよ地表構造物」
スコア「正面からのごり押しという意味ではプラン4の勝手知ったる他人のハイヴ作戦も同じなんだが、プラン6の匠の技作戦は豪快さが違うな」
プラン6、匠の技作戦。正面突破という意味では勝手知ったる他人のハイヴ作戦と似たようなプランなのですが、その正面に立ち塞がる障害物をも過剰火力や掘削穿孔で片っ端から叩き壊してより攻略しやすくしてしまうというのが肝です。当然命名は匠トピアによるものです。全ての生命の不倶戴天の敵であるBETAにさえ素敵な住まいをプレゼントしようという皮肉が垣間見えます。
トピア「荷電粒子砲も極めるとあのくらい出来るらしいですよ。どっちかというとムアコック・レヒテ機関によるエネルギーの桁がすごいのかもしれませんが」
ラリー「すげーなムアコック・レヒテ機関」
スコア「でもちょっとした演算ミスで人間をミンチにするのだったか」
聖騎士「必要ならば被検体くらいはやれるが?」
トピア「いえ、仮にやるにしても無人試験で全ての問題をクリアしてからにしましょう」
聖騎士卿の覚悟は匠達も認める尊いものですが、無駄に苦痛を味わわせる必要もありません。そんな得体の知れないものに比べれば技術的に確立している核融合の方がまだまだ安全なのではないかというのが匠達の結論なのでした。
斯くしてハイヴ01の地上部分の攻略は完了し、地下中枢の攻略が始まるのでした。