【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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161. 今週のビックリドッキリアイテム!

 地表構造物(モニュメント)を木っ端微塵にしたトピア達は、降誕祭作戦(オペレーション・ジングルベル)同様にミラージュシールドを構えて主縦坑(メインシャフト)からまっすぐに降下した。とはいえ先ほどの攻撃で大半の光線(レーザー)属種が死滅して現在補充中のため、お出迎えのイルミネーションは全く大したことが無かった。トピア達は主縦坑(メインシャフト)の底から4つの大広間(メインホール)へと分かれ、ご丁寧に全ての(ゲート)級を焼き払って反応炉室へと至った。そこには星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)が遭遇したのと同スケール、全高500mを超える重頭脳(ブレイン)級が鎮座していた。そしてその重頭脳(ブレイン)級は既にフィールドを纏っており、レーザーやミサイル、レールガン、電撃までも受け流して防いだ。

 

トピア「ラザフォード(フィールド)……?」

 

ラリー≪攻略法はアウトレンジで攻撃し続けろだったな?≫

 

スコア≪なら簡単な……いや、段々広がってないか?≫

 

 ルミナイト(Luminite)のフレームと装甲で構成される堅牢なトキソピッド・ミラージュといえど、ラザフォード(フィールド)に巻き込まれればどうなるかは分からない。フレンドリーファイア回避のため五角形の四つの頂点に陣取っていたトピア達はじりじりと後退し始めた。

 

ラリー≪こいつは一体……?≫

 

聖騎士≪ふむ、もしかしてなのだが≫

 

 何か気付いたらしい聖騎士の言葉にトピア達は耳を傾けた。

 

聖騎士≪自爆しようとしているのではないか?≫

 

トピア「あっ」

 

ラリー≪いや総司令官が自爆してどうするんだ?≫

 

スコア≪自身の存在維持以上の他の目的が何かあるのか?≫

 

 戦闘班が困惑していると、何らかの思念波が飛んできた。何故思念波と分かったのかと言えば、アヌビス神で慣れていたからだ。内容は「20」であった。そして次に「19」。

 

ラリー≪カウントダウンだと!?≫

 

スコア≪ということは!≫

 

 スコア達は理解した。こいつは()()()()()()()()()()()退()()()()()()()()()のだ。そして退去したあとにカウントダウンをストップするのだろう。何とも小賢しい知恵を回したものだ。

 

ラリー≪ここまで来てか!? なんか手はねえのか!?≫

 

トピア「プラン13なら! 脱出準備だけしておいてください!」

 

スコア≪13? 13だって!?≫

 

 生憎スコア達が知っているプランは11までだ。だが問いただして説明を聞いている暇は無い。

 

ラリー≪何でもいい! やっちまえトピア!≫

 

トピア「アラホラサッサー!」

 

 トピアは景気よく返事を返しながらミラージュの緊急脱出装置を作動させると、そのままロケットパックで重頭脳(ブレイン)級の上に飛び上がり、建設の魔導書を構えて高さ150cm、幅75cm、奥行き20cmほどの黒い板を投下した。黒い板自体は普通に自由落下を開始したが、その周囲は20m×20m範囲の橙色の光の四角柱が重頭脳(ブレイン)級の表面から天井まで続いていた。

 

聖騎士≪光の……柱?≫

 

スコア≪あれはモノリスか?≫

 

 スコアはそのアイテムに見覚えがあった。トピアが作った自動農場に多数設置されていたモノリスだ。使用者が遠く離れても施設の自動稼働を維持するためのアイテムだ。1チャンク20m×20mの範囲をターゲット指定し、その際橙色の四角柱がターゲット範囲を視覚化する。だがこれ自体に攻撃能力は全く無い。

 今のところ何のダメージも受けてはいないが、何らかの影響が自らまで届いていることを警戒した重頭脳(ブレイン)級はすぐさま触手を伸ばし、それを破壊しようとした。しかしそれは遅きに失していた。黒い板を投下して光の四角柱の範囲外に出たトピアは、インベントリから白い筐体に赤いボタンがついたものを取り出した。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

トピア「今週のビックリドッキリアイテム! 再創造のボタンー!」

 

 トピアはボタンを高く掲げ、それをカウント0と同時に躊躇無く押した。

 

トピア「あポチッとな」

 

 気の抜けるフレーズでトピアがボタンを押した瞬間、光の筒の内側は白く光ったかと思うと、次の瞬間には全てが水の柱に変わっていた。内側に入っていた目玉付き触手も含めてであり、反応炉部分には綺麗に正方形の穴が空いていた。これに伴い、ラザフォード(フィールド)も消失した。

 

トピア「セェーフ。念のため粉々にしておきましょう」

 

スコア≪え、これはやった……のか?≫

 

トピア「()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので中枢部分は消し飛んだはずですよ」

 

スコア≪海……? ああ、それで水が降ってきてるのか≫

 

ラリー≪じゃああとは後片付けだな≫

 

聖騎士≪とどめは刺しておかねばな≫

 

 戦闘班は全火力を以て重頭脳(ブレイン)級を台座まで含めて可能な限り叩き壊した。重頭脳(ブレイン)級は既に思考力を失っているのか、反撃は全く無かった。

 

 さて、今回トピアが使ったのは『モノリス』と『再創造のボタン』というアイテムだ。再創造のボタンはレガシーワールドにおいて()()()()()()()()()()()()という核兵器もびっくりの効果を持っていた。セパレート方式のレガシーワールドで区切られた1つの島の全てをリセットしてただの海にしてしまうのだ。しかしこちらの世界は島ごとに世界が分断されていたレガシーワールドと違って全てが繋がっている。ならば影響範囲はどこからどこまでになるのか。まさか宇宙全体をリセットしてしまうことはあるまいが。

 従来は転移の祭壇から島の一覧を表示して選択・消去するという手続きになっていたが、こちらの世界ではその転移の祭壇が全く機能しない。ではターゲット指定出来ない以上再創造のボタンも使用不能ではないか、と考えるのが普通だ。実際レガシーワールドでターゲットを指定せずにただボタンを押した場合には全く機能しなかったので、トピアも以前はそう思っていた。とはいえレガシーと違う挙動によって星ごと更地にされるリスクを抱えて実験するほどトピアもハジケていない。

 ではどうやって使い方が分かったのかと言えば、トピアの倉庫の整理及びTechインベントリへの移転がカミールに任されたことに起因する。

 

 

 

 倉庫整理が実施されたのは昨日、8日目のことである。その時点でもトピアの倉庫は、大雑把な分類しかしていなかった。整理整頓が行き届いた超時空倉庫と比べると信じられないほど杜撰だが、単純に忙しかったのだ。中でもレガシーワールドから持ってきて以来全く使っていないものはひとまとめにごちゃっと入れてあった。要するに最初に降り立った桟橋で分類した時のままだ。しかしトピアが持ち込んだレガシーにしか存在しないアイテムはカミールの知識の範囲外であるため、これらはカミールにとって宝の山だった。使わないということは碌に機能しないのだろうという前提の元にレガシー熟練工の精錬所、高純度精錬石、転移の祭壇、始まりの踏み石などを次々に試していったカミールは、再創造のボタンに目を付けた。ただ流石に説明も読まずに謎のボタンを押すということは無い。再創造のボタンの説明文はこうだ。

 

――()()()()()。「転移の祭壇」から島を選択し、「再創造のボタン」を使用することで島の再構築が可能になる。あなたが発見した()()()()()()()は修正されたため、安心して連打してほしい。修正の結果、まれに五億年ほど無為に過ごすことがあるが、記憶抹消機能も搭載されているため実害はない。

 

 目を輝かせてアーティファクトを物色していたカミールの表情は一瞬で真顔になった。転移の祭壇が全く機能しないことは既に確認済であったため、これも機能しないアイテムの一つなのだろうという推定は出来たが、バグは修正されたとか実害はないとか書かれていても、現状のスキルや設備が不具合や抜け穴まみれなので全く信用ならない。さっさと手放すべきだが、かと言ってこの物騒なアイテムをTechインベントリに入れて誰でも使用可能な状態にするのも論外だ。今まで倉庫の片隅に普通に置いてあったのが信じられないくらいだ。要するにトピアも忙しくてすっかり忘れていた訳なのだが。

 兎に角トピアに相談するべきと判断したカミールは、通信機のボタンを押そうとしてうっかり赤いボタンを押した。カミールも自分が何故そんなことをしたのかさっぱり分からないが、押してしまったのだ。そして押した結果はといえば、自動農場の一角が消し飛んだのだ。幸いユグドラシルの拠点は湖の上に建造してあり、地下にも上空にも何も無かったので被害は軽微であった。

 

 

 

 自動農場設備消失事故のあと、トピアとカミール、そしてシュミットは情報を突き合わせて相談と再現性実験を行った。

 

 まずカミールが危険性を知りながら無意識に赤いボタンを押してしまったのは、カミールも準理想郷の建設者(クラフトピアン)だから初めてこのボタンを見たら他の理想郷の建設者(クラフトピアン)同様に押す運命から逃れられなかったのではないかという結論になった。根拠は説明にある「例のボタン」という記述だ。単にうっかり押したのではなくて、実際はトピア達と同じようにボタンを押さないと出られない空間に閉じ込めておいて、押した瞬間に説明通り記憶を消して解放した可能性すらある。どこまでも推定でしかないが、あの女神的存在(クラエル・ザ・グレート)ならそのくらい仕込んでいても不思議ではない。

 というかあのボタンをアップデートしたのがこれだとすると、トピアが女神的存在に拉致される際に押したボタンで世界が滅びたのはバグだったことになるのだが、同じ状況で拉致された理想郷の建設者(クラフトピアン)ばかりなので、本当にバグだったのかは疑わしい所だ。或いはそんなバグがあると分かっていて使わせたのだろう。そもそもシームレスワールドに来てからのトピアが警戒して使わなかったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。なおレガシーワールドでターゲット無し使用を試したのは作ったばかりの世界の何も無い島なので安全性には可能な限り配慮していた。

 

 次に発動条件と効果だが、これは消し飛んだ区画がモノリスを設置してチャンクを可視化していた部分だったことからあっさり判明した。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。これはそこに何が存在していても例外ではなく、現状最強の強度を誇るルミナイト(Luminite)のインゴットを半分だけチャンクに突っ込んだ状態で発動すると範囲内に入った部分だけ消し飛ぶという結果になった。

 どうも再創造のボタンでリセットした際の海底は地球の海の深さの平均よりやや深い5,000m前後になるようで、湖の底にも深い穴が空いていた。ハイヴ01の場合は反応炉室の床が海抜マイナス4,500mくらいなのでそこから更に500m程掘り下げて海水に変換されたようだ。

 

 最後にトピア達はどうしてこんな効果になっているのかを考えた。再創造のボタンはそもそも新型レシピでは製造不能になっており、これを使うために必要な転移の祭壇に至ってはレガシーレシピ含めて製造不能。つまりあの女神的存在は再創造のボタンを廃止アイテムにする予定だったに違いない。しかしこのボタンが対象とする「世界」の範囲が女神的存在の認識とは少々ずれていたのだ。

 コンベアの性能比較の話を思い出していただきたい。レガシーワールドでのフィールドアイテム存在数上限管理は島ごとになっていたが、この世界ではチャンク区切りになっている。つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()なのだ。そのため、本来島を一つ消す筈の再創造のボタンがチャンクに対して使用可能になってしまったのだろう。そしてそのチャンクを指定するのは他でもないモノリスで、選択ON状態まで存在する。

 

 トピアはこの特性をラザフォード(フィールド)に引き籠もるBETAに対する初見殺しとしたわけだ。これがトピアとマイン以外には秘匿されていたプラン13、神の指作戦(オペレーション・ゴッドフィンガー)の全貌である。

 斯くしてハイヴ01の攻略は完遂されたのだ。




 なお実際のゲームのシームレスワールドでは再創造のボタンは全く機能しません。
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