【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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162. 二輪艦(モトラッド)級?

トピア「すみません、皆さんの裏切りは別に疑っていないのですが、あまりにも対処が早いので、何らかの手段で情報を抜かれている前提で幾つか作戦プランを秘匿することになりまして」

 

 作戦内容を説明し終わったトピアは、ハイヴ01の外へと向かいながら頭を下げた。反応炉のある部屋を出て横坑(ドリフト)を通過し、北側の大広間(メインホール)へと出ると、ここも上から流れてきた海水で水浸しになっていた。何しろ主縦坑(メインシャフト)にあった分だけでも20m×20m×4,000m=1,600,000m3分の海水なのだ。

 

ラリー≪まあ結果的に上手くいったからいいんじゃねえの?≫

 

スコア≪気にしなくていいさ≫

 

聖騎士≪現に敵の首魁を仕留めるのに有効な作戦だったのである≫

 

トピア「ありがとうございます。あとは追撃ですが……おや?」

 

 トピア達が更に横坑(ドリフト)を通って主縦坑(メインシャフト)の底まで出ると、BETAが逃げるどころか群れを成して攻め寄せてくるところだった。上層の横坑(ドリフト)から次々にBETAが降ってくる様は、まるで滝のようであった。

 トピア達はこの降ってくるBETAをミラージュの上面武装で片っ端から迎撃した。

 

スコア≪何だ? BETAが逃げない?≫

 

ラリー≪逃げられるより効率はいいんだが、何でだ?≫

 

 ハイヴの中枢を落とした場合、BETAは他のハイヴへと逃散するはずだ。それは頭脳(ブレイン)級等の反応炉が無ければ補給が出来ず、活動するためのエネルギーが数日程度しかもたないからだ。とはいえ基本的にはそうするというだけで、敢えて捨て駒にすることに戦略的な意味があるのであれば逃散しないという選択肢もあり得る。

 

トピア「つまり今私達をここに足止めする必要がある……?」

 

ラリー≪なら早い所出た方がいいってわけだな≫

 

 言うが早いか、ラリー機はBETAの密度が比較的薄い主縦坑(メインシャフト)の中央から鉛直上昇を開始した。ミラージュは今まで一貫して地面を走行していたが、別に全く飛べないわけではない。飛行速度が地上を走るより遅いのと、下手に飛ぶと集中砲火を受けるので飛ぶ機会が無かっただけだ。しかし現状ならば壁面を無理して登るよりは安全だろう。

 最新型のレーザー砲を駆使して四方のBETAを駆逐しながら上昇するラリー機に続いて、トピア機、スコア機、聖騎士機も続いていく。レーザーが通じない一輪車(アインラッド)級や重輪車(ツインラッド)級を指向性爆薬弾頭ミサイルで迎撃し、横合いから飛び出してきた母艦(キャリアー)級を新型放電タレットで丸焼きにし、戦闘班は順調に主縦坑(メインシャフト)を昇っていった。そして重水素弾頭ミサイルの爆発ですり鉢状にえぐれた地上への出口からラリー機が飛び出すと、その瞬間に全方向の()()からラリー機へと光線が集中した。中には極大照射とおぼしきレーザーまであり、ラリー機はレーザーの殆どを跳ね返しながらも修復が間に合わず見る間に融解していった。

 

ラリー≪んなっ!?≫

 

スコア≪待ち伏せか!?≫

 

トピア「ラリーさん戻って!」

 

ラリー≪ん舐めんなコラァッ!!≫

 

 ラリー機はミラージュシールドを取り出して構え、極大レーザーを反射し始めた。しかし敵の攻撃は全方位から来ている。折角出したミラージュシールドも横合いや後ろからの攻撃で早々に破壊されたので、トピアは慌ててラリー機を主縦坑(メインシャフト)の中に引き戻した。

 ラリー機は見るも無惨な大破状態であった。しかし発電機関と修復機能が破壊されていないため、徐々に回復しつつある。クアッドと同等の修復力なので、破壊されて脱落した武装以外は7秒もあれば完全回復だ。

 そしてトピアの目の前には例の通知が出現していた。

 

外敵駆除

二輪艦(モトラッド)級を1体倒す

Clear

Get!

EXP +20,000

レベル上限解放 +10

 

トピア「二輪艦(モトラッド)級?」

 

 覚えのありすぎる名前にトピアの思考が一瞬止まった。

 

聖騎士≪無事かラリー殿!?≫

 

ラリー≪何とかな。派手にやられちまったが、1体は墜としたぜ≫

 

 ラリーは集中砲火を受けながら反撃してみせたことに親指を立てた。

 

スコア≪反射角度を手動で調節して倒したのか。無茶をする。……今の、角度からして上空から攻撃が来たよな?≫

 

トピア「遂にBETAも空を飛ぶ時代ですか……」

 

ラリー≪ああ、明らかに飛んでたぜ。今観測した敵戦力情報、送るぞ≫

 

 ラリー機のカメラが捉えた映像、そのままでは眩しすぎてよく分からないため、補正したものが各機に送られた。それによると敵BETAははるか上空に滞空していた。そのシルエットを更に補正して拡大すると、大体の姿が分かった。細長い胴体から斜め前、斜め後ろの4方向に伸ばされた脚、その先端の4つの寝かされた車輪。全長は200mほど。

 

トピア「討伐通知に名前が出ましたが、これは確かにモトラッド艦隊ですねえ……」

 

ラリー≪出てきたらいよいよやべーって言ってた奴か≫

 

 そう、トピアが冗談めかして言っていたモトラッド艦隊の飛行形態によく似ている。しかしシルエットはともかくクリーチャー然とした見た目は明らかにBETAであり、超重光線(レーザー)級の前後長を伸ばして一輪車(アインラッド)級を4つくっつけたようなそれが、悠々と空を飛んでいたのだ。飛行原理は恐らく回転翼(プロペラ)と思われる。しかも一輪車(アインラッド)級よろしくBETA搭載能力もあり、銃座には多数の光線(レーザー)級が収まっているようだ。その姿はまさに空飛ぶ戦艦であった。二輪艦(モトラッド)級という名前の割に一見四輪に見えるが、モトラッドは飛行モードで左右に分割していた車輪を地上走行モードでは下で合体させて二輪車のシルエットになるのだ。バイク乗りの夢の結晶なので。

 さて、性能も問題だが、ラリーがやって見せたように一対一ならばどうにか墜とすことも出来る。更に問題なのは運用方法、具体的にはその数と距離だ。トピアが艦隊と言った通り、現在11体、元は12体もいて、全方位に仰角30度から60度程の範囲、距離200kmほどで囲まれている。意地でもアウトレンジ攻撃をしてやろうという気概が窺える上に、簡単には包囲を脱出出来ない。ミラージュ搭載武装のうち、射程800mの放電、射程140kmのレーザー、射程160kmのレールガンは単純に届かない。射程200kmのミサイルはぎりぎり届くかもしれないが、その前に全部撃墜されるだろう。しかも撃った直後に撃墜されて自爆する危険が非常に高い。当然あの数で攻撃されるとゆっくり浮上して接近することなど出来ない。つまり現状反射以外に攻撃手段が無かったが、毎回シールドを破壊されては12体も墜とすことが出来ない。

 

トピア「最後の最後に開発が完了したのか、それともあれ以外にも重頭脳(ブレイン)級がいるのかは分かりませんが、とりあえずどう対処したもんですかね」

 

聖騎士≪トピア殿、プラン12はどうだろうか?≫

 

ラリー≪そういえば12も知らなかったな≫

 

スコア≪どんな作戦なんだ?≫

 

トピア「プラン12が使えればぎりぎりどうにかなりそうな気もしますが……それをさせないためのこのBETAの群れでしょうね。恐らく本土の方ではもう発動したんでしょう。ああ、作戦内容は聖騎士さんを大量に増やすだけです。実は交配所で装備ごと増やせるんですよ」

 

ラリー≪は?≫

 

スコア≪なるほど、それは切り札だな。だがこの状況では交配所を設置出来ないか≫

 

 トピア達が主縦坑(メインシャフト)に戻ってからも他のBETAの襲撃は絶え間なく続いており、時折母艦(キャリアー)級の奇襲まであるので悠長に交配所Sを設置して聖騎士を増やすことが出来ない。どうにか設置したとしても地面ごと食われるのが目に見える。地下の空中に設置したとしても光線(レーザー)級の的だろう。

 

トピア「まあ帰るだけなら魔法の鏡(Magic Mirror)があるから簡単なので、一旦帰ってから聖騎士軍団を引き連れてくることも可能ですけど、これほったらかして帰っていいものですかね?」

 

ラリー≪こいつら、時間を与えると益々凶悪になるからなあ≫

 

聖騎士≪ここに足止めしようとしていたということは、放っておくと更に数が増えるのではないか?≫

 

スコア≪……ありそうだな≫

 

 帰るのは簡単だが、問題は時間をかけていいのかどうかということだ。本土と連絡が取れれば状況判断も出来るのだが、未だに長距離の通信状況は改善されない。

 

トピア「反射戦術を使うとして、真上に来てくれれば全部シールドに当たるのでもっと簡単なんですが、多分それを危惧して真上に来ないんでしょうね」

 

スコア≪……そのあたりもよく考えられているということか≫

 

 ラリー機はそろそろ本体部分が完全復旧しているが、トピア達は頭上の悪魔への対応に頭を悩ませた。そこで武装の交換を試みたラリーが状況の変化に気がついた。

 

ラリー≪……お? 見て見ろよ、インベントリが使用可能になってるぜ? 通信はまだだが≫

 

スコア≪何? それならやりようがあるな≫

 

トピア「サーバーが復旧したんですかね? ともかく反撃体制を整えましょう。私が上で盾を構えておきますから、スコアさんと聖騎士さんが下側を迎撃、武装が歯抜けになってるラリーさんから交換を開始して下さい。あとはローテーションで」

 

 トピアの号令により戦闘班はミラージュの装備換装を開始した。幸い交換用装備の在庫は潤沢で、特に有難いのが新型核融合炉とミラージュシールドが山ほどあったことだ。戦闘班は5分もかからず万全の装備を整えた。当然無人随伴機の分までだ。

 無人随伴機4機には十分な武装を持たせて下から来るBETA群を迎撃させ、有人機4機は一斉に地上へと躍り出た。当然全周囲から極大照射を含むレーザーが照射されるが、トキソピッド・ミラージュ4機がそれぞれ頭上にミラージュシールドを構えてこれを受け止めきった。何故なら先ほどまでは新型核融合炉各4基搭載で発電量が30GWだったが、現在は40基ずつ搭載して300GWになっているのだ。これはヤシマ作戦で使用された日本中の電力1億8千万kW=180GWを優に超えている。それでも冷却能力の方がボトルネックになってシールドが徐々に溶け、場合によっては側面から破壊されたりもしたが、バリアを展開して回復させるなり壊れたら交換するなり、やりようはいくらでもある。

 200km先の標的に反射で当てるのはなかなか難しかったが、スコアが持ち前の狙撃センスを発揮したのもあって、トピア達は残り11体のうち5体までは墜とした。しかし残り6体は反射を警戒して極大照射をやめ、射程200km~300kmの光線(レーザー)級程度のレーザーだけを高速連射してくるようになったので、反射しても往復400km届かなくなってしまい、いよいよ攻撃手段がなくなってしまった。膠着状態に陥ったのだ。

 

トピア「……どうしたものでしょうね」

 

 極大照射をしないのならばとこちらから届く距離まで詰めようにも、あの二輪艦(モトラッド)級は恐らく近隣のハイヴからここに援軍に来る程度の機動力があるのだから、今更ミラージュを浮遊させてのろのろ追いかけたところで追いつける気がしない。ガンマGなら追いつけそうではあるが、それこそレーザーのいい的だ。かといって手をこまねいているうちにまた援軍を呼ばれるのも厄介だ。

 

 トピア達は一旦主縦坑(メインシャフト)に引っ込んで、ミラージュの8本の脚に生きたままの突撃(デストロイヤー)級を1体ずつ掴んできた。こいつらは背中に手が届かないので、実は背中から掴めるのだ。そしてトピア達はそれを全方向に向けながら浮上を開始した。プラン9、ユウジョウ作戦(オペレーション・フレンドシップ)だ。見ての通り、BETAのフレンドリーファイア禁止習性を利用する作戦だ。随伴機は残しても仕方ないので収納済だ。

 

トピア「さあさあ、オトモダチごと撃てますかァー?」

 

ラリー≪でもこれどう見ても悪役の行動なんだよな≫

 

聖騎士≪困ったことに≫

 

 この行動によって少しの間トピア達への攻撃が停止した。そう、少しの間停まっただけで、普通に突撃(デストロイヤー)級を巻き込む形で攻撃は再開された。状況の変化によりBETAのフレンドリーファイアが解禁されたのだ。

 

トピア「……ここで状況判断が出来るということは、まだどこかに司令塔がありそうですね」

 

スコア≪それを探して潰さないといけないわけか≫

 

 これは単にBETAの攻撃を抑止するのが目的ではなく、判断力を確認する意味を兼ねていた。結果として、まだ潰すべき敵がいるということだ。

 オトモダチの盾が効かなくなったので、トピア達は突撃(デストロイヤー)級を放り投げて再びミラージュシールドを構えた。今度は脚2本ずつで盾を4つ構える形だ。トピア機はまず東方向に移動してみた。案の定東方向の二輪艦(モトラッド)級は接近した分だけ後退した。このままではらちがあかない。ここでトピア達は次の秘密兵器を取り出した。ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)だ。

 ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)ロッド・オブ・ディスコード(Rod of Discord)の副作用を無くしてノーコストで短距離テレポートを実現するアイテムで、特に優れているのが()()()()()()()()()()という特性だ。つまりミラージュの浮遊速度以上で接近し、レーザーの射線を切って回避することも可能だ。これによりトピア機は東側の二輪艦(モトラッド)級2体を自分の射程160km以内、実際には100kmへと捉えた。トピア機のレールガンMk.2 Type Gは満を持して攻撃を開始した。単純な飛行速度では離される上にレールガンの反動による速度減衰まであるので、時折転移を続けながらだ。飛行姿勢も全く安定しないため、標的付近に散布している感がある。

 

トピア「ヒャッハー! 楽しくなってきましたよ!」

 

ラリー≪スリル満点だな!≫

 

スコア≪慣れているがな!≫

 

聖騎士≪何のこれしき!≫

 

 ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)に副作用は無いが欠点はある。レーザーの射線を避けることも可能だが、既にレーザーが照射されている空間にうっかり転移すると、そこに存在した光が内部に入ってしまい、ほんの一瞬とは言え内部機構やパイロットが焼かれてしまうということだ。じゃあそもそも周囲の気体や液体は中に入ってこないのかと問いたい所だが、出撃前に計測機器を取り付けて実際に試した結果がそうなのだ。原理的には不可解だが、魔法の結果に文句を言っても仕方ない。

 更に、何故射撃が安定するレーザーを使わないのかと言えば、この移動方式の場合はミラー端末を転移で置き去りにしてしまうという欠点があるからだ。ラリーの元々の使用法でも乗り物はついてきてもペットやミニオンは置き去りにしてしまうのだからこれも仕様だ。

 そうして回避と接近と攻撃を繰り返しているうちに西側の二輪艦(モトラッド)級の1体にレールガンの弾丸が命中し、大穴を空けた。

 

スコア≪命中!≫

 

トピア「流石!」

 

スコア≪いや、どうも西の方の後退速度が鈍いぞ?≫

 

 スコアの腕が良いというのも原因の一つだが、どうも西の方は後退速度が遅いので距離を詰めやすいのだ。

 

ラリー≪もしかしてそっちの方に残りの本拠地があるのか?≫

 

聖騎士≪それが欺瞞という可能性もあるのが面倒な所であるな≫

 

トピア「今のところ他に手がかりは無いので、掃討が終わったら西側に集結しま……」

 

スコア≪極大照射、東に行くぞ!≫

 

 スコアに続いてトピアも1体に命中させ、行けそうな感触を掴んだ瞬間の視界外からの射撃警告に、トピアは反射的にロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)を使って避けた。だが照射はその避けた方向に来た。これは別に見切られていたわけではなく、単純に運が悪かった。極大照射を行った二輪艦(モトラッド)級はダメージで照準がわずかに狂っていたのだ。スコア達はトピア機のコックピットが光で満たされる瞬間を見た。

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