【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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163. 吾輩参上! ブルアァァァァァッ!

トピア「……っぶな!」

 

聖騎士≪無事かトピア殿!?≫

 

スコア≪すまない、私が余計なことを言わなければ!≫

 

 一瞬とは言えよりによって極大照射を受けてしまったトピアだが、それでもライフが1残っていたので外傷は大したことが無かった。何故1残ったのかと言えば、ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)を持っている間はどうせ武器を持てないので攻撃力を気にする必要が無く、代わりに85%以上ライフが残っていれば即死威力の攻撃に一度だけ耐えてライフを1残す『ガッツLv5』をつけていたからだ。ロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)の特性が判明してから、万が一のための保険としてつけておいたのだ。トピアはハイリザレクション Lv5を発動して即座にライフを回復した。だが機体の方はどうかというと、内部機構をやられて甚大なダメージを受けていた。特に致命的なのが修復機能と操縦インターフェイスの故障だ。これではもう戦闘は不可能だ。修復装置をインベントリの在庫と入れ替えれば何とかなりそうだが、勿論そんな余裕はないし操縦系が死んでいるのでビルドモードへの切り替えも出来ない。

 当然脱出装置も機能しないのでトピアはロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)を自分だけを対象にして発動してミラージュから脱出すると同時にミラージュを収納し、ロケットパックで飛び立った。こうなれば生身で戦うのだ。極めれば竹槍で爆撃機を落とせると言うではないか。いやあれはただの精神論だったが、理想郷の建設者(クラフトピアン)にとっては()()()()()()()()だ。そして理論上可能ならばやる、というのがトピアの判断だ。

 

トピア「これがピンチ! これが逆境! 今こそE&E(エンジョイ&エキサイティング)の真髄を見せる時!」

 

スコア≪続行するのか!?≫

 

 トピアはロケットパックとロッド・オブ・ハーモニー(Rod of Harmony)でレーザーの射線をかわしながら歯を剥いて笑った。今こそ師匠の教えを実践する時だ。脳内のイマジナリー師匠が囁いている。

 

――あァまいぞトピアァ! 小手先の動きでは駄目だ、腰を起点に膝も使って全体を捻るように! 捻って捻って反省を促すのだ!

 

 ……いや、こっちじゃない。ダンスレッスンでくいくいと腰を捻ってみせる師匠が可愛らしいのは当然だが、涎を拭ってもう一度。

 

――ピンチを楽しめ! 苦しい時こそ笑ってみせろ! シチューにカツあり、今夜はご馳走だ!

 

 シチューはともかくカツは調理用なべのレシピに無いので師匠の手作りであった。トピアはあの味を思い出してまた垂れてきた涎を拭った。ともあれ、一撃喰らえば死ぬ程度のこと、今更大したことではない。逃げようと思えばテレポーションで逃げられるが、ここは逃げるべき場面ではない。圧倒的な武力で蹂躙するのも楽しいが、強敵に立ち向かうのもまた楽しい。何事にも楽しみを見つけるのがE&E(エンジョイ&エキサイティング)なのだ。覚悟を決めたトピアのテンションは上がりに上がり、瞳はぐるぐると渦を巻きながら緑色に輝いていた。

 トピアは驚異的な集中力をもって最小限の回避機動で東側2体の二輪艦(モトラッド)級に接近し、そのうちレールガンでダメージを与えた方へと肉薄、迎撃の死角に入ると、右掌を頭上に掲げた。

 

トピア「蒸着!」

 

 その先は言葉にしない。トピアは突撃する勢いのままに左手に持ったガーストリィグレイブ(Ghastly Glaive)を突き刺した。いつもの中華斬舞(ちゅうかざんまい)とは違うモーションだったが、極限の集中のせいか不思議といつも以上の威力を発揮し、そのまま二輪艦(モトラッド)級の腹を貫通した。トピアは逆境において()()を掴んだ気がした。やはり師匠の言葉は正しい。トピアは自身を成長させてくれた師匠に感謝の念を捧げた。

 

――いいぞォトピア! 流石は吾輩の弟子だ!

 

 師匠のお褒めの言葉がトピアの脳裏に響く。いや、いつもよりはっきり聞こえる気がするのは達成感の所為だろうか?

 

ラリー≪いやこれ誰の声だ!?≫

 

スコア≪どこからだ!?≫

 

 その声はトピア以外にもはっきりと聞こえていた。

 

聖騎士≪見よ、空が……割れる!!≫

 

 ハイヴ01跡の上空。何も無い空間に大きな罅が入り……そしてガラスのように割れた。その割れた部分からは人型機械の上半身のようなものが覗いていた。

 

九十九≪吾輩参上! ブルアァァァァァッ!≫

 

 その人型機械は奇怪な叫び声とともに両手で空間の裂け目をひっつかみ、顎を開いた頭を左右にカクカクと振りながら力任せに押し広げてこちら側に押し入ってきた。それは全高20m前後の人型機械であった。ボディカラーは白で、センサー部分が緑色だ。

 

トピア「師匠がロボットに……いや、あれは戦術機?」

 

 トピアはその人型ロボットをデザインラインと腰に着けた跳躍ユニットから戦術機と推定した。同一のものは知識に無いが、日本帝国軍の不知火あたりに似ている。何と敬愛する大蔵九十九師匠が戦術歩行戦闘機(Tactical Surface Fighter)、略して戦術機(TSF)に乗って援軍に現れたのだ。トピアの頭は少しばかり混乱した。

 戦術機の類いと見られる新たな乱入者に対して残り1体の東側の二輪艦(モトラッド)級の銃座が照準を向け予備照射を開始するが、推定戦術機は背中の兵装担架に収まった刀を肩越しに掴むと急加速、稲妻のような軌道と速さをもって射線の隙間を縫い、二輪艦(モトラッド)級へ肉薄。気付いた時には通り過ぎていた。トピア達に実際に見えたのは稲妻のような軌道だけだ。

 減速した推定戦術機がいつの間にか抜いていた刀を兵装担架に納刀すると、その背後で二輪艦(モトラッド)級が真っ二つになった。

 この一撃により脅威度判定でトップになったのか、推定戦術機に残り3体の二輪艦(モトラッド)級のターゲットが集中する。しかしその時にはもうその場にいない。気付けば二輪艦(モトラッド)級は残り2体、振り向けば残り1体。そして最後の1体もその攻撃の正体が分からぬまま真っ二つになっていた。

 トピアがその攻撃結果を見るに、刀の長さと加害範囲が合っていない。あれはスキルだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。よく見れば2体目以降はオーバーキル範囲が控えめになっているため、こちらは恐らく別のスキルだろう。匠衆(マイスターズ)でもまだ実現出来ていない謎の技術に、トピアは師匠のすごさを改めて実感した。

 

 戦闘班各機は銃座の残存光線(レーザー)級の処理に入った。相手が空を飛べなくなったのなら距離を離されることも無いので悠々と反射レーザーで始末出来るというものだ。トピアは生身で危ないという理由でこの仕事から外された。さっさと師匠に挨拶してきなさいという心遣いだ。

 

トピア「師匠、来てくれたんですか! ありがとうございます!」

 

九十九≪おお、我が弟子よ。こちらこそ()()()()()()助かったぞ。ここに来るために後一手足りなかったからネ≫

 

 トピアは無線通信を送って師匠に礼を述べた。通信規格のすり合わせは終わっており、師匠の声が通信機から直接聞こえるようになった。その愛らしい姿も画面に映っている。これはエンチャントシミュレーターと同じ自動通信調整機能だ。今まではどうしていたかと言えば、口の部分の外部スピーカーからとんでもない大音量で叫んでいたのだ。その通信画面に謎の南瓜頭が割り込んできた。どうも複座になっているようで、前に座っているのが南瓜頭だ。

 

南瓜頭≪私からも感謝するよ。君達の絆は本物だな……む、敵の増援か≫

 

 推定戦術機が振り返った方、北東側を見ると、更に24体の二輪艦(モトラッド)級が迫ってきていた。やはり反射を警戒しているのかまだ撃ってこないが、24体の相手は骨が折れる。一体あのデカブツをどれだけ量産したのだろうか?

 

南瓜頭≪ここは私達が……≫

 

九十九≪いや、その必要は無さそうだネ≫

 

 北から迫る二輪艦(モトラッド)級の1体を見慣れた橙色の光条が貫いた。

 

スコア≪橙色……味方だな?≫

 

 橙色の光条に貫かれた二輪艦(モトラッド)級がバランスを崩して墜落していく。残る23体の二輪艦(モトラッド)級が急旋回して攻撃の元へとターゲットが移った。脅威度判定であちらが最優先となったのだろう。

 トピア達は光線の元、東側に現れたものを注視した。可変誘電体多層膜でコーティングされて水色に輝くルミナイト(Luminite)の装甲板、見るからに名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)由来のシャープなデザインラインの全長1.2kmに及ぶ雄大な艦体。それが空を飛び、艦橋部分と一体化した巨大な旋回砲塔から強烈なレーザーを発射して二輪艦(モトラッド)級を次々にぶち抜いていた。反撃のレーザーを浴びても全て可変誘電体多層膜で弾き、全く意に介していない。しまいには極大照射レーザーも浴びていたが、それでもダメージを負った様子は無かった。

 先ほどの12体を駆逐した時点で周囲のBETAが逃散したのか通信妨害も弱まったようで、その飛行戦闘艦から通信が入った。艦長然とした軍帽を被ったマインだ。

 

マイン≪こちら航宙工作艦インファクトリ……戦闘班、全員死んでいないな? 既に12体は墜としていたようだが、余計な手出しだったか?≫

 

サティ≪トピア、そっちは大丈夫?≫

 

トピア「いえ、助かりました。ハイヴ01の攻略は終わったんですが、その後がこんな状況で、あと24体も付き合うのは少々辛かった所です」

 

ラリー≪交換用装備の在庫が大量にあるのは助かったぜ≫

 

マイン≪そうか、まあ褒めておいてやろう≫

 

ラリー≪マインが人を褒めた、だと……!?≫

 

スコア≪すぐに寝た方がいいのではないか?≫

 

 マインが珍しく素直に人を褒めたのでラリー達は面食らった。特にスコアは全くからかう様子も無く普通に心配していた。

 

マイン≪貴様らバラバラにされたいのか? ……まあいい、そこの小さな人型ユニットは何だ?≫

 

 トピアの通信機を介して九十九達の方にもマインの言葉は伝わっている。九十九と南瓜頭が視線を交差させ、どうも南瓜頭の方が先に返答することになった様だ。

 

南瓜頭≪失礼した。私の名はステーク。この人型ロボットは、魔導戦術歩行戦闘機、略して魔術機の『迅雷』。理想郷の建設者(クラフトピアン)の総力を結集して作られたものだ≫

 

 やはり戦術機に近い代物のようだ。魔導戦術歩行戦闘機というのは初めて聞いたが、戦術機に乗りながらマナによって発動するスキルを使用出来るし、あの稲妻のような機動を繰り返して加速Gの影響も無さそうなので、そういった新カテゴライズにするのも頷ける。

 

九十九≪ここの皆には、トピアがお世話になっているようだネ。感謝する。吾輩はトピアの師匠で大蔵 九十九(おおくら つくも)というモノだ。援軍に来たつもりだったが、そちらもすごいものを持っているネ?≫

 

 九十九師匠はマインが座乗する巨艦を素直に褒めた。

 言葉を交わしている間にも二輪艦(モトラッド)級は数を減らしていき、既に半分になっていた。

 会話を聞いていたトピアも、そうそうステークだった、と言わんばかりに頷いていた。あまり覚えていなかったらしい。

 

ラリー≪トピアの師匠、礼儀正しいな?≫

 

聖騎士≪紳士であるな≫

 

スコア≪そりゃあトピアさんの師匠だからな≫

 

マイン≪つまりはニンジャの同類か。我は匠衆(マイスターズ)の軍総司令官をやっているマイン・ストリアニューダだ。BETA共と戦うつもりがあるのならこちらの指示に従ってもらうぞ≫

 

サティ≪まあ匠衆(マイスターズ)そのものの代表はトピアだからそう警戒しなくていいわよ≫

 

テクス≪でござるな≫

 

九十九≪ほう、トピアが代表! 聞いたかネ、ステーク君! 吾輩も師匠として鼻が高いぞ! まあ鼻は無いんだが!≫

 

 九十九は定番のモノジョークを繰り出しながら興奮して短い腕を振り回し、南瓜頭をぺちぺちと叩いた。

 

南瓜頭→ステーク≪そうだね、流石は九十九さんの弟子だ。ああ、勿論BETAの殲滅やハイヴの攻略には協力するよ≫

 

トピア「えっへへ」

 

 トピアはいつになくだらしない笑顔を晒していた。やはり師匠に褒められるのはトピアにとって至福であった。

 通信しながらも航宙工作艦インファクトリと3機のミラージュはBETAの追撃掃討を続けている。地上に残っている無人随伴機4機も加えればその殲滅速度は十分だが、九十九達もそれを手伝うことにした。一方乗機を撃墜されたトピアはその修理のためにも一旦インファクトリへ合流することにした。余裕が出てきた所で、通信画面のステークが突然頭を下げた。

 

ステーク≪トピア、今回は私の代わりを任せてしまってすまない≫

 

トピア「貴方の代わり? いえ、私は師匠に任されてここに来たんですけど?」

 

 トピアは何を言われているのか全く分からないという様子で首を傾げた。今回のことは師匠に代理を任された重要な仕事、トピアにとってはそれ以外の何物でも無い。

 

九十九≪ほら言っただろうステーク君。君の事情なんてトピアは気にも留めてないって≫

 

ステーク≪……そのようだね。しかし蜘蛛型の方もいい機体だ。科学技術で出来ているようだが、大した攻撃力と殲滅力、それに射撃安定性だ≫

 

トピア「はい、うちの生産班が頑張って作ってくれました」

 

ラリー≪本当にいつも頼りになるんだよな生産班の連中は≫

 

スコア≪まあ新種の二輪艦(モトラッド)級とは相性が悪かったが……いや、むしろこのトキソピッド・ミラージュに対抗するためにあの形になったんだな≫

 

九十九≪モトラッド……確かにシルエットはモトラッドそのものだったね。一体ここのBETAはどんな進化をしているんだ≫

 

ステーク≪超重光線(レーザー)級並の火力とそれ以上の迎撃力を兼ね備えたBETAが群れを成して空を飛んでいるとか世も末すぎるぞ≫

 

 2001年時点の地球の軍事力ではどう背伸びしても対抗出来るイメージが湧かない。この世の終わりだろう。

 

スコア≪ああ、一部機能が故障しているという地球のBETAに比べて侵攻ペースが速いのはまだしも、学習対応まで早いのには参ったぞ≫

 

九十九≪故障? ……ウンウン、そんな設定もあったねェ≫

 

ステーク≪そんな設定あったのか……? だからこんな違いが出ているのか≫

 

 九十九師匠は何やら思い出したようだが、ステークの方は困惑していた。最悪一人でもBETAを殲滅するつもりで軍備を整えてはいたが、まさか最初に降り立つ星が地球より遥かに厳しい難易度になっているとは思っていなかったのだ。

 

トピア「本当に色々と予想外の進化をしてるんですよね。光線(レーザー)通信級に始まって、電波妨害(ジャミング)級、一輪車(アインラッド)級、重輪車(ツインラッド)級、そして極めつけの二輪艦(モトラッド)級と来ましたからね」

 

サティ≪本土の方だと従来種が水中に適応した海月(ジェリーフィッシュ)級、咬魚(ピラニア)級、海老(ロブスター)級、(オルカ)級、大王烏賊(クラーケン)級、水車(スクリュー)級、(ホエール)級なんていうのもいたわよ≫

 

ラリー≪そんなのがいたのかよ……というか、やっぱりそっちも大変だったんだな≫

 

サティ≪それも併せて情報をすりあわせる必要があるから、そろそろ着艦しなさいよ?≫

 

トピア「じゃあ師匠、インファクトリへ着艦どうぞ。ああいえ、こう言うべきですね。……ようこそ匠衆(マイスターズ)へ!」

 

 トピアは通信機のフロートカメラに向き直ると、左右の手を広げて歓迎の意を示した。

 

九十九≪ふふふ、歓迎感謝するヨ≫

 

ステーク≪ありがとう。着艦誘導を頼む≫

 

サティ≪そっちは任せて≫

 

 こうして九十九とステークの二人を加え、航宙工作艦インファクトリにおいて再び匠衆(マイスターズ)の全員が合流することになった。

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