017. イナゴの方が喰おうと思えば喰える分上等じゃの
BETAが突然行動を停止したことで手が空いたサティとトリオは、一人で突撃したトピアを迎えに行く為にその足跡を追いかけた。真っ二つになった突撃級を辿っていけばいいので非常に分かりやすい。
なおどう見ても接近するのも危険な
そうしてトピアは結構簡単に見つかったわけだが、そのトピアはというと、動かないBETAをボールライトニングで丁寧に焼いて回っていた。自動迎撃魔法なので標的が死んだかどうかが分かりやすいのだ。
サティはスパイダートロンのハッチを開けて直接問いかけた。
サティ「それ何してるのトピア?」
トピア「お、そちらも終わりましたか。ご無事で何よりです。これはですね、今は活動停止してるんですが、万が一にも復活して他のハイヴに合流されると今回の戦闘内容を学習されてしまうので、一つ残らず潰して回っているのです。BETAの脅威は数と学習能力ですので……って何ですかそれかっこいですね!?」
BETAの後処理を真面目にこなしつつ、スパイダートロンを見た途端に目を輝かせ始めるのがやはりいつものトピアであった。サティはその様子に苦笑しつつも安堵を覚えた。
トリオ「ほぉ、これの良さが分かるか嬢ちゃん」
トピア「分かりますとも! あ、出来れば処理を手伝って貰えませんか?」
トリオ「ええぞ」
面倒な作業をしているところに折角援軍が来てくれたのだから頼らない理由が無い。結局戦闘の助太刀には間に合わなかった工場長もこれには協力的であった。
トピア「それはともかく、さっきのミッション達成通知ってそちらにも伝わりました?」
サティ「通知? どんなの?」
トピア「重
トリオ「レベル? 何の話じゃ?」
トピア「あーそうか、まずお二人とも超科学文明圏の人なのでレベルとかステータスとか無いですもんね。んで通知も無しと。さてこれは……」
トピアは頭を悩ませながらもBETAは処理していく。何はともあれBETAは滅ぼすべきなので。
あれからミッションの詳細を確認してみたが、新しく「外敵駆除」というミッションカテゴリが出来ており、その中の一つに重
討伐対象には重
また、「外敵駆除」の他に「環境浄化」というカテゴリもあり、こちらも幾つか目標があるようだった。
トピア「多分クラフトピアのシステムを使える人にしか、そのメニューの一部にあるミッションシステムも使えないっていう話なんでしょうね。協力してハイヴを攻略しても自分だけしかクリア報酬を受け取れないのは全体の戦力強化として問題があるので、あとでアヌビス神にでも相談して――」
トリオ「なあ、まず超科学文明圏って何じゃ?」
考察に没頭している今のトピアに尋ねても有効な答えが返ってきそうにないので、トリオはサティに訊くことにした。
サティ「あの子、魔法文明圏のマイスターだから。ほらあの電撃とか」
トリオ「ありゃあ携帯放電防御モジュールじゃないんか? 儂も似たようなの持っとるぞ?」
サティ「だとしても剣であの怪物をぶった切ったのには説明が付かないでしょ? あと落差162m以上からの落下ダメージが0になるっていうのも目の前で実践してたし、無限に小麦が生え続ける小麦畑なんてのもあったわよ」
トリオ「……なるほど科学的には全く意味が分からんの」
10.3倍17連装集中レーザーでも貫通するのに20斉射必要な甲殻を人力で一刀両断した(ように見えた)のだ。物理科学の範疇に無いものであると言われた方がまだ納得しやすい。
緊急事態故にこれまで状況把握を後回しにしていたトリオもひとまずトピアが
トピア「ああ、そうだ、サティ姐さん。ここの処理が終わったら回収して分析にかけてもらいたい物があるんですが」
サティ「また分析予定リストが増えるわね。何、こいつらの死骸?」
トピア「それも必要だと思いますが、恐らくG元素という我々にとって未知の物質がここにある筈です。まあ、どれがそうなのかは私にも分からないんですが」
マブラヴ原作ではカナダに落着した着陸ユニットを集中核攻撃で撃滅してからでも回収できた物質なので、今回のように着陸してから潜り始めるまでに重
ちなみにトピアはインベントリに入れたら名前が分からないかと試してみたが、どれもこれも「謎のサンプル」としか出なかった。
サティ「こうなると死骸以外は片っ端から持ち出すしか無さそうね」
トリオ「名前がついとるっちゅうことは未知の割には何か分かっとることもあるのか?」
トピア「大雑把には。使いようによってはレールガンやら重力制御機構やら製造できるそうですよ」
サティ「それは興味深いわね」
トピア「他の応用例としては、G弾と呼ばれる爆弾があるんですが、これは迎撃の困難さと大威力と引き換えに重力異常で星そのものを滅ぼしかねない自滅兵器なのでやめておいた方がいいです」
トリオ「物騒じゃのう」
トピア「ともあれ、BETAって数が多いのに案の定ドロップが何も無いので、G元素くらいは活用できないとですね。そういう意味では死骸を有効活用できたら非常にありがたいですが」
サティ「そうね、私もあの量を見ると流石にちょっと勿体なく思えてきたわ」
サティが視線を巡らせると、周囲は見渡す限りBETAの死骸である。うんざりとする光景だ。
トピア「着陸直後はまだしも、活動が続くとこの星の資源を使ってあんなのが生み出されるわけですからね」
トリオ「イナゴの方が喰おうと思えば喰える分上等じゃの」
サティ「全くだわ」
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それから更に2時間ほどで後処理と資源持ち出しを終えて、三人は拠点への帰路についた。
編成はスパイダートロンの運転をトリオが担当して、その上に残り二人が乗る形である。オートジャイロは戦場に放置していた為に
8本の脚を巧みに動かすスパイダートロンの動きは非常に滑らかであり、胴体の上に乗った二人は不自然なほど揺れを感じていなかった。
トピア「スパイダートロン側にもモジュールスロットとインベントリスロットがついてるのは便利ですねえ」
トリオ「……まあの」
スパイダートロンはインベントリに荷物を満載していた。主な荷物はBETA関連のサンプルである。とりあえず着陸ユニットの中身はどれがどれだか分からないのでほぼ全部回収し、あとは各級BETAの死骸を1体ずつ確保していた。規格外品でスタックが出来ないので大分かさばるが、1種類に1枠使う前提なら何とかインベントリに入れることが出来た。抱えて運ぶよりは大分ましである。
勿論トピアはクラウドストレージを二人に提供している。クラウドストレージとは一言で言うと外付けインベントリアイテムであり、どこに置いたクラウドストレージもアクセスした当人にしか内容が見られないように個人に紐付けられているという代物だ。見た目が雲に乗っかった宝箱というのが微妙にシュールだが、兎に角有用なアイテムであることは間違いない。そのクラウドストレージの初期スロット数は16で、二人分で32枠増設してもなおスパイダートロンのインベントリまでが必要になる物量であった。
なお石炭発電所が稼働開始した直後に落着物の調査に出発したため、実はまだ最初の分析タスクすら始まっていない。
BETAの死骸については、異常な頑丈さを誇る
素材と言えば今回
トリオ「で、そろそろ全部話してくれんかの。色々知りすぎとるお嬢ちゃんを疑いたくはないが、判断材料が足らん」
トピア「うん? ええ、分かりました」
トリオの声色には、一人だけ状況を理解しすぎているトピアに対する疑念が浮かんでいた。
とはいえトピアは余裕が無かったから説明が半端になっただけで元々洗いざらいぶちまけるつもりでおり、
拠点のランドマークになっている軌道エレベーターが陽光を反射して眩しく見えた。