【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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171. あれは最終兵器……

 インファクトリの主砲が自身のバリアを貫通する衝撃シーンであったが、そうなるのも無理は無い。ただでさえ発電量の3割ほどを使ったレーザーである上に、元々防御に必要なエネルギーは攻撃側ほど効率が良くない。ピンポイントバリア方式で節約しているとはいえ、攻撃を通さないように受け止めなくてはならない以上はある程度の面積が必要であり、一点収束レーザーほど集中しているわけではないのだ。

 

ステーク≪レーザーを反射した!?≫

 

スコア≪誘電体多層膜を学習したのか!?≫

 

ラリー≪オイオイ、相手の主砲を反射して攻撃って、俺らの戦法パクられてんぞ≫

 

聖騎士≪それだけ有効だったということではあるが……≫

 

トピア「しかしアドラステアからのドッゴーラっぽいと思いましたが、ちょっとコンセプトが違いますね?」

 

九十九≪何だろうネ、アレは≫

 

 反撃を受けた割に一部の反応が暢気だが、インファクトリの装甲も当然可変誘電体多層膜と構造強化で守られているので、Factorio工業由来の橙色のレーザーにも即時対応可能であり、リペアフィールドも正常稼働しているため、損害は重くない。ただ、BETAのレーザーと自らのレーザーを同じ箇所に同時に撃ち込まれた場合には反射率の最適化が出来ないため危険だ。そういった事情で、インファクトリは主砲の射撃を停止した。

 インファクトリが他に使える武器はまず舷側レーザー砲。これはレーザーを反射されるので駄目だ。次にレールガン。使えるが垂直発射出来ないため他と比べ同時発射可能数が少ない。次に電撃。射程が短すぎる。最後に垂直発射ミサイル。当然迎撃されるが、飽和するほど撃ち込めば何とかなりそうだ。しかし相手の銃座は4,000を軽く超えるので、インファクトリはレールガンと垂直発射ミサイルを斉射して対応することになった。更にここで艦載機の発進命令が下された。

 

マイン≪艦載機は出撃して周囲の二輪艦(モトラッド)級を片付けろ! 同時に攻略班を編成してハイヴの攻略を開始せよ! 9枚で良い!≫

 

 周囲の二輪艦(モトラッド)級の数を減らさないと相手の迎撃能力を飽和させるのは難しい。また、ハイヴを放置しておくと延々あのレーザー反射BETA、暫定的に連結輪翼(ドッゴーラ)級と名付けられたものが出てくるので敵の防御が厚くなる。その両方を艦載機に対処させる形だ。既に乗機に搭乗待機していたトピア達は早速順番に出撃ハッチへと移動し始めた。

 

 

 

トピア「トピア、トキソピッド・オーバー・ミラージュ1番機、出撃しまーす! いやあ、ありましたね出番」

 

スコア≪まあ無ければ無いで順調なわけだが≫

 

ラリー≪単純な撃ち合いならインファクトリの方が有利だと思ってたんだがな。もう一働きしてくるかぁ≫

 

 余程退屈していたのか、ラリーは両腕を上げて伸びをしている。

 

九十九≪ともかく敵の迎撃力を削らないとネ≫

 

ステーク≪手早くやろう≫

 

聖騎士≪同志達よ、ハイヴ攻略は任せたのである!≫

 

聖十字軍攻略班≪任されよ!≫

 

 正面は艦砲で殴り合いの最中なので、トピア達は艦載機格納庫の後部ハッチから出撃した。その構成はまず空戦要員として迅雷が1機にトキソピッド・オーバー・ミラージュが19機。元々の戦闘班以外に星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)の搭乗機が15機あるということだ。実際に乗艦していた星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)は15人よりも多く、空中戦に必要なアブドメン・ユニットの数が足りなかったのでジャンケンで勝った者が出撃の権利を得たという。

 更にハイヴ攻略要員として星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)から9機。こちらは重頭脳(ブレイン)級の撃破と、もし別であれば連結輪翼(ドッゴーラ)級の生産元を破壊するのが任務で、3機1組の3チーム編成となっている。こちらも人数が余ったのでジャンケン制だ。インファクトリはコア機能を内包しているため、ハイヴ08の内部構造は既にスキャン済だ。接地探査していないので精度はやや低いが、反応炉室の位置くらいは既に判明している。

 

 各艦載機がレーザーをシールドで受けながら、または回避しながらマッハ2近い突進力で二輪艦(モトラッド)級へと迫る。そして必中距離に至ると、レーザータレットMk.4 Type Gを全門展開して斉射。これだけであっさり1体を撃破した。これにより艦載機を脅威と認定した二輪艦(モトラッド)級の優先ターゲットがインファクトリから最寄りの艦載機へと移った。しかし迎撃をものともせず艦載機各機は奮戦し、二輪艦(モトラッド)級の数を見る間に減らしていった。

 

ステーク≪味方が頼もしすぎるな! 仕事が楽すぎて眠くなってくるぜ≫

 

九十九≪味方が強いのはいいことだヨ。ルート確認、8体目行ってみようか!≫

 

ステーク≪了解!≫

 

 しかし中でも一番撃墜ペースが速いのは迅雷だ。何しろ雷速機動でマッハ440出せるのだから、ぶった斬って即移動ルートを選定、瞬間移動じみた機動ですぐさま次の目標に斬りかかるというサイクルを繰り返していたのだ。しかも雷速機動は稲妻のように折れ線状に指定出来るため、最短経路を撃てば当たるというものでもない。迅雷が攻撃に使っている技は威力10倍の『一閃』の方だ。こちらでも装甲貫徹力が3億あるので、一撃で二輪艦(モトラッド)級が真っ二つになる。威力65倍の『迅雷』はサイクルが遅くてオーバーキルすぎるのだ。

 

 そうして順調に二輪艦(モトラッド)級の撃滅が進んだものの、連結輪翼(ドッゴーラ)級はまだまだ増え続け、巨大戦艦BETAを囲むリングが既に二重、三重になっていた。トピアはその様子に嫌な予感を覚えた。

 

トピア「師匠、これはまさか……」

 

九十九≪そうだネ、注意を促した方が……ここからでは届かないか≫

 

 トピア達の現在位置はインファクトリより大分西側。インファクトリを挟んでその向こう側に金色の多重リングが居座っているという位置関係だ。

 しかしインファクトリに注意を促そうとしても通信を妨害されているので現在位置からでは届かない。一旦インファクトリに戻る必要があるだろう。トピア達は帰還を急いだ。急ぐなら迅雷の雷速機動を使えば圧倒的に早いし、ともすれば一足飛びに中核の二輪戦艦(アドラステア)級にとどめを刺すことすら可能かもしれないのだが、その肝心の迅雷は加速せずにふらふらと高度を落とし始めた。

 

トピア「師匠?」

 

九十九≪しっかりしたまえステーク君! ……ええい駄目か、先に行くんだトピア!≫

 

 迅雷に何か、というよりもステークに何が異常が起きたらしく、九十九がペしぺしと叩いているが、すぐに復旧しそうにない。予想の通りなら()()と言うほどのことでもないのだが。ともあれトピアは九十九の言葉に従って先を急いだ。

 

 

 

マイン「何、中枢がもぬけの殻だと?」

 

聖剣騎士≪然り、柱状の台座しか残っていないのである。連結輪翼(ドッゴーラ)級の生産設備は各所にあるため順次制圧中だ≫

 

 連絡のために戻ってきた攻略班の一人がそう報告した。

 

サティ「つまりあの巨大戦艦が重頭脳(ブレイン)級を内包しているということかしら?」

 

テクス「不動目標だと再創造のボタンのカモなので自ら打って出たというわけでござるかな?」

 

マイン「つまり結局はあれが最終目標か」

 

 マインは眼前に映る標的、幾重もの巨大な金色のリングに包まれたそれを睨んだ。

 インファクトリはレールガンとミサイルの斉射で防御を破ろうと試みている。それもあのリングが無くなってしまえば簡単なことだが、リングの一部が破損してもすぐに交換部品となる連結輪翼(ドッゴーラ)級が穴埋めに入るのでなかなか終わりが見えない。だがそれもハイヴ内の生産設備を制圧するまでの話だ。敵の攻撃力は別に上がっていないのだからこのまま押し切れば良い。

 

マイン「チッ、アドラステアだかドッゴーラだか知らんが、時間の問題とはいえ面倒な粘り方をする……くぁぁ」

 

 インファクトリの艦長席で指揮をしながらマインは大あくびをしていた。

 

サティ「ちょっとマイン、退屈だからって総司令官が気を抜きすぎじゃ……ないの?」

 

テクス「とはいえ、いつもならそろそろ寝る時間でござるからな。緊張が薄くなるとどうしても眠く……なるでござるよ……」

 

 マインの緊張感の無さを咎めるサティも、フォローするテクスも同様に眠そうであった。

 マインは違和感を感じた。そもそも一体何のために時間を稼いでいるのか。連中が時間稼ぎに出た時は決まって何か目的があった。よく考えるべきだが、この眠気で考えがまとまらない。

 

 その時、緊張の糸が切れていた戦闘指揮所(CIC)を大きな震動が襲った。その震動で戦闘指揮所(CIC)要員は少し目が覚めた。見ればトキソピッド・オーバー・ミラージュの1機が艦橋構造基部の後ろ側に追突するように着艦していた。

 

トピア≪……ますか、聞こえますかインファクトリ≫

 

サティ「トピア? ……何か機体トラブルでも?」

 

トピア≪良かった、()()()()()()()()……これは精神攻撃です。あれは戦艦アドラステアではありません……あれは最終兵器……エンジェル……ハイロゥ≫

 

マイン「エンジェルハイロゥ……天使の輪だと?」

 

 マインは再び標的を睨んだ。最大直径20kmに及ぶ金色に輝く巨大なリング。それが5重に重なり、巨大戦艦BETAを覆い隠している。そればかりが目立っていたが、おかしいのはそれ自体ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 エンジェル・ハイロゥとはザンスカール帝国が建造した巨大サイコミュ兵器だ。その目的は建前上は強力なサイコ・ウェーブで人類の闘争心を奪うこと。そしてその実態は、()()()()()()()()()()()()()()()()()こと。地球人類に勝手に絶望して全てを葬ろうとしたフォンセ・カガチの狂気の産物である。

 マインはそういったエンジェル・ハイロゥの設定は全く知らないが、状況から全てを理解した。連中は、ここにいる人間全てを永遠に眠らせるための時間を稼いでいたのだと。つまり単純な戦闘能力ではもはや対抗することが難しいと判断し、兵器を操る人間の方を停止させようと考えたのだ。それは奇しくもESP能力者のプロジェクションで平和のイメージを投げかけることによってBETAに戦闘をやめさせようと試みたオルタネイティヴ3計画とよく似た発想であった。戦闘をやめさせるついでに永遠に眠らせようというのがエンジェル・ハイロゥのより凶悪な所だが、これも元を辿れば人間の発想なのが恐ろしい所だ。

 この星のBETAはどこで学んだのか人間にも通じる念話という能力を身につけている。いやもしかするとアヌビス神あたりから学んだのかもしれない。マブラヴ・オルタネイティヴ原作終盤でも社 霞と鑑 純夏の念話に重頭脳(ブレイン)級が割り込んで乗っ取っていたことから、やろうと思えば出来るのだろう。そもそもBETA同士の通信もこれに近いものかもしれない。それを相手の戦意を喪失させ眠らせるためだけに全面的に発揮するのがあの二輪戦艦(アドラステア)級と連結輪翼(ドッゴーラ)級が組み合わさった天使の光輪(エンジェル・ハイロゥ)級なのだ。

 更に悪いことに、殆どのデバフを無効化するはずの聖十字の盾(Ankh Shield)聖十字のお守り(Ankh Charm)に睡眠デバフの防止効果は無い。

 

マイン「……やってくれたなBETAァ!!」

 

 マインは力任せにコンソールを叩いた。その様子を見ている者は既にいなかった。

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