174. この活躍ぶりはどうですか? MVP間違い無しでしょう?
ここはどことも言えないどこか。意識だけが行き交う空間とも言えない空間。要するに無駄に高度な技術で構築されたインターネットのようなものだが、そこに7つの意識が集まっていた。
クラフトピアの神クラエル「流石は我が
自慢げにそう切り出したのは
サティスファクトリーの神フィステイン「いや決め技がバグだったが、あれでいいのか? 文明教化もそうだったが、管理が杜撰すぎるのではないか?」
こちらはサティの世界の管理神フィステイン。男性型で、やや戦争は苦手だが工業化や自動化を好む。世界の完成度に定評があるフィステインから見るとクラエル神のやり方はザルもいいところだった。
クラフトピアの神クラエル「……勝てば良かろうなのです」
フィステイン相手にこの方向の議論では勝ち目が無いことを知っているクラエル神は、どこかの究極生物のような誇りもへったくれもない台詞で誤魔化した。いやこれは究極生物に至る前の台詞だったか。
マインダストリーの神アヴェニュー「いや勝利というのなら作戦指揮はうちのマインだったろうが。月ではそっちのニンジャの出番なんぞ無かっただろう」
こちらはマインの世界の神アヴェニュー。男性型だ。あのマインを堂々と推しただけあって高圧的な性格も似ており、彼自身もブロンティストであった。
テラテックの神ペディオ「そのマインちゃんもBETAに散々裏をかかれてたじゃない? 指揮官としてどうなの?」
テクスを送り出したペディオ。ずっと子供の姿のままの
マインダストリーの神アヴェニュー「そんなもの全員気付いてなかっただろうが! それを乗り越えて勝ったからいいのだ!」
アヴェニューも結局言うことはクラエルと変わらなかった。まかり間違って負けていたら戦犯の一柱に数えられていたことだろうが、勝ったからセーフなのだ。
サティスファクトリーの神フィステイン「まあそうなんだが」
ファクトリオの神トゥーブ「ペディオの奴、最初にマインがテクスを殺しにかかったのをまだ根に持ってるんじゃないか?」
こちらはトリオ工場長を送り出したトゥーブ。男性型だ。工業化、自動化、そして匠の技を好む。
テラテックの神ペディオ「当然でしょう、うちの可愛いテクスちゃんに害なす奴は絶対に許さないわよ?」
ペディオ神の送りつけているイメージは表情こそ笑顔だが、左手で右の二の腕を掴み、右の親指を立てて体が許されざる角度に傾いていた。おまけとばかりに背景エフェクトは赤と黄色の放射状マケドニア・ストライプだ。これは許されない。
サティスファクトリーの神フィステイン「その割には危険な世界にあっさり送り出したようだが?」
テラテックの神ペディオ「可愛い子には旅をさせるものよ。やり遂げる能力がある前提で選んだもの」
コアキーパーの神グスト「分かる」
テラリアの神リロー「分かる」
スコアの世界の管理神グストとラリーの世界の管理神リロー。ともに男性型で、グストとリローは冒険や探検を好むのでペディオの意見には即座に同意した。
意識とイメージだけだが、ここに集ったのは以上の七柱である。
サティスファクトリーの神フィステイン「しかしここのBETAは話に聞くよりも随分と手強かったな。うちのサティは戦闘は苦手だからヒヤヒヤしたぞ」
この
ファクトリオの神トゥーブ「その点では工場長の貢献が大きいな。まさか10日も掛からず縮退炉の開発と起動にこぎ着けるとは、流石は我が自慢の
サティスファクトリーの神フィステイン「あれはすごかったな」
縮退炉起動成功の場面では彼らもさながら外人4コマのようなリアクションで歓声を上げたものだ。
テラテックの神ペディオ「工場長の働きぶりは認めるけれど、それは工場長単独では出来なかった話でしょう? 異文明のシナジー効果よ」
サティスファクトリーの神フィステイン「確かにそうなんだが、君の所のシステム安定性はもう少しどうにかならなかったのか?」
Techシステムの斬新さと有用性は他の神も認める所であるが、その安定性の評価はクラフトピア世界をぶっちぎって単独最低最悪を記録していた。
テラテックの神ペディオ「……安定よりも発展を優先したのよ」
実際の所ペディオとしては可愛い子供にブロック遊びをさせて眺めている感覚だったので楽しければ良かろうだったのだが。元々のTechの殺傷力が低いのもペディオの意図する所だ。
ファクトリオの神トゥーブ「まあまあ、その発展した技術自体は大いに役に立ったからその辺でいいだろ」
サティスファクトリーの神フィステイン「我が盟友が言うのであれば」
フィステインは趣味が合うトゥーブとは仲が良かった。なおトゥーブの方が先輩だ。
クラフトピアの神クラエル「なるほど、
話に乗っかるポイントを見つけたクラエル神が再び胸を張って功績アピールを始めた。他の神達はめんどくさそうな視線を送った。
ファクトリオの神トゥーブ「技量的にはうちの工場長が適任なんだが、職人気質すぎてそういう仕事はやりたがらんからなあ」
コアキーパーの神グスト「実はあの子、結構な人たらしだろ?」
実際グストが派遣したスコアは初対面で惚れてしまったくらいだ。まあグストが探検させるためにスコアをずっと孤立させていたせいもあるのだが。
テラリアの神リロー「あれで元々は人間不信だったんだろ? 師匠の指導って奴は侮れないな」
テラテックの神ペディオ「実は第一候補がそのまま派遣されるよりもまとまりは良かったんじゃないの?」
マインダストリーの神アヴェニュー「イベントを始める段階になって派遣予定の
割と致命的な不手際に伴う場当たり的な対処が偶然良い結果をもたらしただけと指摘されたクラエルはそっと目をそらした。
サティスファクトリーの神フィステイン「……しかしこの世界の神は一体何をやっているのだろうな。私達が手出しを始めても全く出てこないが」
マインダストリーの神アヴェニュー「まさか存在Xメソッドでも実践しているのではあるまいな?」
テラテックの神ペディオ「それはそれでもう少し干渉するものじゃないの?」
存在Xメソッド。人々を苦境に追い込んで祈りを捧げさせるという、悪辣なことで有名なメソッドだ。別に禁止されてはいないが、これに手を出さざるを得なくなった時点で管理能力を疑われることは避けられない。
クラフトピアの神クラエル「どちらにしろこんな中途半端なやり方では成功しているとは言いがたいでしょう」
存在Xメソッドを流用してなおかつ失敗している奴が何か言ってるぞという視線がクラエルに突き刺さった。しかしこの中には趣味で試練を与えるような行為をしている者も多いので、下手なツッコミは藪蛇になりかねない。
サティスファクトリーの神フィステイン「それでそろそろ本題なのだが、イベント本来の目的は達成出来そうなのか? どうもそのような流れが見えないが」
コアキーパーの神グスト「現地のアヌビス神の信仰ばかりが高まっているように見えるな」
テラテックの神ペディオ「私達も現地に行って愛で……見守った方が良かったかしら?」
テラリアの神リロー「欲望が漏れてるぞ」
ここに集った七柱には共通の悩みがある。人々にあまり信仰されていないことだ。信仰が薄いと能力が低下するので神としては問題だ。最悪消えてしまうことすらある。
一般的にファンタジー要素が薄い世界ほど信仰が薄くなる傾向があるが、ファンタジー世界でも邪神クトゥルフが前面に出ていてそれを自助努力で討伐しているテラリア世界や神秘が全く認知されていないコアキーパー世界も同様の状況に陥っていた。ドワーフの信仰があるファクトリオ世界の方がまだましなくらいの認知度だ。一方、その辺りのバランスは適切なはずなのに勧誘の強引さで恨みを買って台無しにしているのがクラフトピア世界だ。
そこでクラエルは自身と同様の信仰不足という悩みを抱えた神、その中でもBETAと戦える人材を派遣出来る者達を集めてイベント開催を提案したのだ。信仰を集めるイベント、それは
まとめると、これは神自らが少数精鋭の人材を送り込んでBETAを討伐することで効率よく信仰心を集めようというイベントなのだ。そう聞いていたのに縮退炉搭載艦でも苦戦したので集まった神々は困惑したわけだが。
クラフトピアの神クラエル「神に選ばれし
コアキーパーの神グスト「それはもっと前の段階で伝えておくべきことだろう?」
サティスファクトリーの神フィステイン「それに一人や二人の信仰で状況が改善されるものではない」
マインダストリーの神アヴェニュー「第一、我々の名前を伝えておらんからこのままでは人々に伝わらんだろうが。貴様まさか信仰の独り占めを目論んではおらんだろうな?」
クラフトピアの神クラエル「……そんなわけないでしょう」
露骨に反応が遅れた。恐らく意図してはいなかったがその手があったかと思ったのだろう。
さて、自分の名前程度は送り込む際に自分で伝えれば良いだろうと思われるだろうが、クラフトピア世界以外は管理神が極力直接干渉しないことを基本ポリシーとする世界なのが良くなかった。中には神自身がそう望んだわけでもないのに神の名前を呼ぶのが不敬に当たるとされている面倒な世界まである。その所為で通信コストがべらぼうに高いのだ。だから説明をクラエル神の使徒であるステークにぶん投げてしまったわけだが、ステークの派遣が遅れた上にそのステークも他の世界の神の名前までは教えられていなかったという手落ちがあった。いや、仮に教えられていてもそれを尋ねられる機会が今のところ無いのだが。
後で手落ちに気付いても他の世界のしかもBETA支配惑星に送り込んだ後の通信は更にコストが上がるわけだが、クラエル神の話では楔の塔が世界を繋ぐことで格段にローコストになるはずだった。だが結果はBETA教化事件での破壊措置だ。あらゆる面で段取りが悪すぎた。
テラテックの神ペディオ「ねえ、そろそろアヌビスちゃんにメッセージくらいは送れるでしょう? 戦勝の祝辞として
テラリアの神リロー「それだ!」
コアキーパーの神グスト「タイミング的には良い頃合いだな」
ファクトリオの神トゥーブ「表に出るのは面倒だが、このくらいはやらんと本末転倒だしな」
神々は名案とばかりにその場で祝辞の文面を練り始めた。確かに普通の世界であればその目論見はまず成功するだろう。しかし
次回12:16投稿の登場人物紹介を挟んで同日12:46に第9章を開始します。