聖騎士の問題が穏当に片付きそうで一息吐いた
トピア「食糧増産で思い出したんですけど、ステークさん、確かこの世界の地球って合成食糧ばかりで食事が不味いんですよね?」
ステーク「そうだな。食堂の京塚のおばちゃんが頑張って十分食べられる味にしてくれてたが、食材が良かったらもっとすごいことになってただろうな。……もしかして輸出するのか?」
トピア「何かの取引に使えればと思ったんですが、あっちで奪い合いになりますかね?」
ステーク「そういうことを企む奴はいるだろうな……哀しいことに」
モモ王女「いっそ格安で余るくらい輸出して経済支配するのはいかがでしょう?」
モモ王女が突然黒いことを言い出した。しかし一般市民にとってはその方が生活が豊かになって幸せだろう。
九十九「食品産業が潰れるからってすっごい関税が掛けられそうだけどネ」
モモ王女「それはそれであちらの政府と業者の信用が失墜するだけでございましょう?」
テクス「こちらは良いものを安く売るだけでござるからな」
マイン「そもそも地球の各国政府に関わる必要があるのか? 面倒ではないか?」
ご存じの通り、マインは面倒な交渉をするぐらいなら武力で叩き潰す主義である。
トピア「ああ、良い着眼点ですマインさん。極力関わりたくないんですけど、救う対象がいる以上関わらざるを得ないんですよねぇ。ステークさん、救出対象がいるのは日本だけでいいですか?」
ステーク「殆どは日本と在日国連軍の人なんだが、時期によっては日本にいない米軍の人もいる。かなりの回数繰り返したから、トリガーになる人は恐らく全部リストアップできるぞ」
カミール「ふむ、積極的に関わる必要があるのが2国だけなら幾らか楽になるな」
トピア「アメリカもとなると、国連を窓口にする手もありますね。私も誰が対象なのか大体は分かりますけど、漏れがあると不味いのではっきり分かるように書面にまとめて下さい。あとループのトリガーになる人と護りたい人は分類して下さい」
ステーク「分かった」
その重要度を認識して、ステークは重々しく頷いた。
トピア「次にこの星でやるべきこととして楔の塔の復旧と世界間経路の開通が挙げられますが……その前に一つはっきりさせておかないといけないことがありますね」
テクス「どんなことでござる?」
テクスの相槌に、トピアは真面目な顔で言い放った。
トピア「万が一ステークさんの目的が達成されず10月22日8時4分に戻った場合、それより後にこの世界に来ていた人がどうなるのかです」
この言葉の意味がすぐに理解出来ず、僅かに沈黙が流れたが、最初に気付いたのは今までもループを繰り返しているステークだった。
ステーク「ん? ……ああ、そうか! 例えば九十九さんが元のクラフトピア世界にはじき出されるのか、それとも元の世界にも戻らずこっちにもいないという状況になるのかってことだな!?」
九十九「これ意外とクリティカルな問題なんだよネ」
自身も含めた存在消滅の危機なのだが、九十九はいつも通り平然としていた。
テクス「つまり世界を繋げて他の人員を呼んだ場合、巻き戻りで消滅する人間が増えるということになるでござるな……」
トピア「タイミングによっては逆に増える場合もありますね。元々存在していた人が外に出た状態で巻き戻るとか」
マイン「おいィ、ちょっと待て。これは10月22日でも来た時刻が僅かに遅ければ同じことになるぞ?」
そもそもステークがこの世界に関与できるようになる時間に合わせて集合したのだから、ほぼ全ての
トピア「師匠、消える時は一緒です!」
九十九「諸君、来世で会おう!」
マイン「早速諦めるなァ!」
サティ「結局そのあたりはどうなるのアヌビス様?」
困った時のアヌビス神。ほぼ全員がアヌビス神の回答に注目した。
アヌビス神「X,XX……XX,XX.XX(ああ、我も今気付いて問い合わせてみたのだが……消滅も弾き出しもせず、この世界の10月22日に全員戻るようだ。ただしステークは地球の自分の部屋に戻る)」
マイン「最悪の事態は免れたか……」
トピア「ステークさんが地球送りになるのはデメリットですが、全員消滅よりは遥かにましですね」
テクス「というか問い合わせ出来たのでござるな?」
アヌビス神「XXX(この星のBETAが一掃されたことで漸く交信が可能になったのだ)」
サティ「ところで記憶はどうなるの? 全員記憶ごと戻されたら2周目以降殆ど同じことを繰り返すと思うけど」
アヌビス神「XXX(ステークと管理神公認
トピア「……うーん、やり直した場合現状より攻略ペースが上がりそうですが、師匠の記憶が失われるのは……」
師匠自身が知らない師匠を自分だけが知っているという状況はそれはそれで美味しいかもしれない、などと思ってトピアは表情を緩めた。
サティ「あれは何か良からぬ事を考えてる顔ね?」
カミール「ワタシもそう思う」
ステーク「いいのか?」
九十九「吾輩は一向に構わんッ!」
九十九は腕を組むようなポーズで言い張ったが、どう見ても腕同士が届いていない。
トリオ「あー……要するに開通させても大きな支障は無いどころか初期人員が増える可能性があるということじゃな?」
スコア「しかし無秩序に増えてもまとまらなくならないか?」
テクス「その可能性はあるでござるなあ……」
サティ「誰か呼びたい助っ人っている?」
九十九「札束魔道士を始めとする上位の
サティ「うちもそうなのよね」
カミール「頭数も聖騎士卿がまかなってくれているからな」
マイン「現状で戦力も頭数も揃っている以上は無理に増やす必要は無いな」
トピア「あとはアイテム複製が出来るのがメリットですが、今でも出来なくは無いんですよね。聖騎士さんに負担が掛かってしまうのが難点ですけど」
サティ「例えば外交交渉が出来そうな人に心当たりは無い?」
この問いに対する推挙は無かった。結局モモ王女に頼ることになりそうだ。
モモ王女「しかし一部を保護するとしてもここに地球人ばかりが増えるとそのうち乗っ取られそうではありませんか? その抑止力として他の世界との繋がりを作っておくのは意味があると思いますわ」
ステーク「……家族も込みでどんどん連れてくるとそれもあり得る話だな」
庇を貸して母屋を乗っ取られるのは真っ平御免である。
トピア「ではなるべく早く世界間の接続を正常化する方針で……アヌビス様、カミールさんに教化の悪影響が無いように調整して復旧出来ますか?」
アヌビス神「X(やってみよう)」
アヌビス神は重々しく頷いた。一度盛大にやらかしているから失敗出来ないと思ったのだろう。安定化と不可分な教化機能自体は外せないと言っていたが、その程度の調整は可能なようだ。
トピア「次はあれですね、衛星軌道上でのBETA迎撃システムって今着手されてます?」
トピアの問いに答えたのはやはり工場長だ。
トリオ「後回しにしとったが、外向きの監視衛星にTech用推進装置と7.5GW核融合炉を乗せてレーザーやミサイルのタレットをくっつけるだけなら研究するまでもなくすぐに出来るの。ただBETA以外の異物を検知した時に人間の判断が必要になりそうじゃが」
サティ「BETAや隕石は自動迎撃、明らかな人工物は通報でいいんじゃない?」
ファム「相手が隕石に偽装している場合はどうするのでしょう?」
マイン「隕石として扱えというのだから撃墜で良かろう」
モモ王女「そうですわね」
トピア「あとは無断で入ろうとした場合撃墜するという警告を無線で常に流しておけば十分でしょう。何か言い分があるなら先に言えと」
トリオ「んじゃそうするかの。そんだけ単純なら明日までには出来るわい」
無断越境行為に一切の容赦をしないストロングスタイルであった。縮退炉の運用が可能かつファンタジーパワーのお陰で生身でも簡単には死なないという圧倒的戦力を背景とした単純明快な方針だ。
なおミサイルタレットMk.2は重水素弾頭ミサイルを発射することが出来るが、どの弾頭を発射するのかが決まるまではランチャーの中は空なので、衛星が墜落しても核ミサイルごと落ちるようなことにはならない。また、衛星でレールガンを使わないのは反動で軌道が変わってしまうからで、電撃を使わないのは射程が足りないからだ。
トリオ「まあ、最終的には宇宙を飛び回って自動的にBETAを駆逐していくシステムにしたいんじゃがの」
トピア「そうですねえ、確か宇宙全体の恒星の数より多いBETAがいるんでしたっけ?」
トピアはステークに問うた。
ステーク「恒星の数はよく知らないが、地球の
九十九「宇宙全体の恒星の数は諸説あるけど1022~1026個と言った所だネ」
ラリー「恒星の数を最大で見積もってもそれより1000億倍多いのかよ……」
つまり恒星系に惑星が10個あるとしてそれぞれに100億ずつBETAが存在してやっと届くかどうかといった所だ。事実なら宇宙はBETAまみれだ。
ただし体長5cmの
スコア「全く呆れた数だな」
テクス「あまりにも迷惑すぎるでござるな……」
トピア「BETAの最大の強みは数、と言われる所以ですね。宇宙怪獣だって多分こんなに多くはないですよ。この数字からもう一つ推測出来るのは、宇宙にある殆どの文明はBETAに負けてるのではないかということですね」
サティ「まあBETAに圧勝する文明が沢山あったらここまで増えないわよね」
聖騎士「我々が最後の希望という可能性すらあるということであるか……」
そう考えると責任重大である。あと勝てそうなのはごく僅かな可能性でBETAに勝利してその後人類統合体の発足に至った四十数年後の地球人類くらいだが、ただでさえモラル水準が低い上にそもそも白銀 武が隣の世界の香月 夕呼から数式を貰ってきた場合以外に勝ち目があるかも怪しい所なのであまり頼りには出来ない。これがスパロボ世界やトップ世界の地球だったらすこぶる頼りになるのだが。αナンバーズやZ-BLUE、銀河中心殴り込み艦隊とかいたら是非とも仲良くしたい。量産艦載機が縮退炉搭載のシズラーとかあまりにも夢がありすぎる。
マイン「どちらにしろ人力でなどやってられん。システムにはシステムで対抗するのだ」
結局の所頼れるのは大量生産と自動化である。
サティ「そうなると多分BETAを倒すことよりも巻き添えで現地住民を殺さないことの方が難しくなるのよね」
スコア「まかり間違ってハイヴ攻略中の所に核弾頭投下なんかすると大惨事になるな」
その状況を想像して
トリオ「当面は知性体がいた場合にはまずその報告をさせて、フレンドリーファイア防止を優先にした自動行動パターンを積み上げるしか無いじゃろうな」
工場長がここで「知性体」と表現したのは、既存の定義では生命ではないが友好的な対話が可能な相手が存在した場合を考慮している。例えば人格を持ったロボット、或いは妖精などだ。
トピア「……しかしあれですね、BETAのフレンドリーファイア防止原則はともかく、
マイン「炭素生命体のいる星を荒らしている時点で全く役に立っていないがな」
九十九「フレンドリーファイア禁止なのに自分と同類と見なしてる人間を攻撃するのも謎だよネ」
テクス「そもそもあんな学習機能を持った炭素ベースの生体重機を作っておきながら炭素生命体は成立し得ないとか言い張ってるのも謎なんでござるよなぁ」
カミール「実際作ってるのだから、ロボットが賢くても人権を認めない、余所の人はともかくロボットへの攻撃は許可する、程度の意味ではないか?」
九十九「いいネ、ありそうな話だ。だけど結局国際問題にはなりそうだよネ。連中本当に何考えてるんだろうネ」
まあ幾ら考えた所で
たとえどんなつもりであったとしても、