地球の攻略方針が概ね定まった所で、次の議題を出したのはステークだ。
ステーク「攻略部隊の出番があるとすれば迅雷に構造強化を組み込むのも早めにやっておきたいんだが、どのくらいかかるものなんだ?」
九十九「構造強化と同時に電力系統を組み込む必要がありそうだネ」
ラリー「誘電体多層膜をもたせる修復装置と冷却機構も必要だな」
スコア「あとは冷却が間に合わない場合に修復の時間を捻出するバリアもだ」
聖騎士「雑魚や
トピア「問題はそれだけの改造を受け入れる設計余裕があるかどうかですね……」
カミール「7.5GW核融合炉を追加搭載するだけでも背中に背負い込む形になりそうだな」
胴体部分が長さ50m、幅40m、上下厚み30m、更にそこにアブドメン・ユニットを接続できるトキソピッド・ミラージュと比べると、人型で頭頂高21.5mの迅雷は拡張余裕が無いに等しい。これは単純にサイズの問題なので、原型が不知火でなくても同じ事だ。
シュミット≪その前に手が空いてる設計技師はいるのかしら?≫
シュミットの問いに勢いよく挙手したのは、お馴染み
スチームパンカーのホープ「あたいらに!」
サイボーグのゼータ「オ任セアレ!」
トピア「人材ゲット、ヨシッ!」
トピアは猫のポーズで歓迎した。好奇心で動く腕の立つ二人が加わってくれるならば人材は十分だろう。変な改造をしようとしない限りは。
サイボーグのゼータ「ナノマシン実用データノフィードバックカラ新型ノ多機能ナノマシンガ出来タノデ使イ道ヲ考エテイタ所ダッタノデスヨ」
スチームパンカーのホープ「新型
ラリー「そいつはすげーな」
スコア「なるほど、研究機材の方をアップデートしたのか」
サティ「本来は科学と魔法の技術融合を目指して未だ詳細不明なマナを研究するために精度を上げたんだけど、まだ精度が足りないみたいでね。とりあえず現状出ている成果はナノマシンの強化よ」
トピア「有難いことです。となれば、後不足するのは電力ですが……ステークさん、マナから電力を生み出す場合ってどのくらいの効率が出ますか?」
ステーク「……実測したことは無いな」
テクス「なるほど、両方載せるのが無理ならマナリアクターから電力も生み出す設計にするのでござるな?」
トピア「実用可能な効率であればですね」
迅雷の利点は人型なので精神接続による人機一体でスキルやエンチャントを生かせるという所であり、その意味では戦闘班が乗り回すのに非常に向いているのだが、サイズ的に炉を2つ搭載すると相当の無理が出るのが難点だ。ならばトキソピッド・ミラージュのようにもっとでかいサイズで作ればいいという話になるが、今度は初期段階のハイヴに入れなくなるというデメリットが発生する。ままならないものである。
トピアとしてはいっそガンバスターくらいでかい人型ロボットに核融合炉と言わず縮退炉を搭載したい所だが、今のところその縮退炉がでかすぎて、全高200mサイズでも搭載出来るか怪しい所だ。今後の技術革新に期待したい。
ラリー「逆にマナリアクターを降ろして核融合炉の電力をマナに変換するのは無理なのか?」
九十九「いや、マナリアクターはマナを生み出す機関じゃなくてマナから手足の駆動などの各種魔法効果を生み出す機関だから、外すのは無理だネ。雷速機動も発動しなくなるヨ」
ラリー「アレが使えなくなるのは本末転倒だなぁ」
ステーク「まあともかく後で変換効率を実測してみよう」
トピア「あとはあれですね、手持ち武器が刀と弓だけなので、槍と片手剣と魔導砲が欲しいですね」
ラリー「矢が有限ならサイズに合った
九十九「ああ、装備については大丈夫だヨ。精錬所のアレンジで、同一の装備を大量に投入することでスケールアップ出来る設備を持ってきているからネ。今持ってる弓もブリュンヒルトをスケールアップしたものだヨ」
ステーク「まあ身長170cmの人間用の武器を頭頂高21.5mの迅雷用の武器にスケールアップするには2,023個必要なんだが」
(21.5/1.7)3=2,022.9という計算だ。
スコア「つまり数さえ揃えれば現状の装備をそのまま大きくしたものを使えるということか!」
聖騎士「流石トピア殿の師匠、用意がいい。装備の数は
トピア「ただの勿体ない精神が意外な所で活きましたね」
ラリー「攻撃力はどうなるんだ?」
九十九「重量比でそのまま2,023倍だヨ。ただし精錬分の攻撃力は変わらないヨ。あと
元々基礎攻撃力1,000の武器なら2,023倍で2,023,000になるということだ。現在の迅雷用アダマンタイト長刀の200万という数字に概ね一致する。精錬効果697はこれに比べれば誤差だろう。
一方、
トピア「まあどんな武器でも精錬効果は一緒ですから仕方ないですね……しかしそうなると、最有力候補は原始的な水晶の槍になってしまうんですが……武器の見た目ってどうにか変更出来ませんか?」
性能は随一だが、あの原始人の槍のような見た目はトピアには許容しがたいのだ。それに長さや重量バランスがヒルデブラントと少し違うので現状ではマニュアルスキルを発動しにくい。
ステーク「ものによってはモンスタープリズム合成の応用で出来なくもない。あとで現物を見せてくれ」
トピア「本当ですか!? 宜しくお願いします!」
トピアは勢いよく頭を下げた。あのみすぼらしい槍は性能だけは本当にいいのだ。
スコア「可能ならファントムスパークを増やしたいんだが、そのために聖騎士卿を頼るのは気が引けるな」
連射性能や貫通性能は
聖騎士「何、あとで融合すれば良いのだから気になさらずとも良い」
そう言って笑う聖騎士は本当に全く気にしてなさそうであった。だからと言って一切の遠慮が無くなれば一人に負担を押しつけるだけの腐った組織になってしまう。何より大量の聖騎士に見限られただけで組織が瓦解してしまう。思いやりの精神は大事だ。
トピア「あ、今後緊急事態でない限り聖騎士さんを勝手に増やすのはやめて下さいね。本人とこの会議で許可を取ってからでお願いします」
スコア「分かった」
九十九「あと単にアイテムを増やしたい場合は盗人ケビンに装備させて増やす手も無くはないネ」
ステーク「まあそれはそれで本人の承諾を取らない形になりそうだが」
盗人ケビンとはレガシークラフトピアワールドに出現する人間タイプの敵対MOBで、遭遇するたびに
ラリー「あとはアレだな。荷電粒子砲ってやつは簡単には開発出来ないのか?」
次の議題をぶち上げたのはラリーだ。重水素爆弾同様に
トリオ「あー、アレはの……何しろ同一電荷を纏った高エネルギー粒子の集合じゃろ? 一つ一つならともかく、まとめて飛ばそうとすると、電荷が反発して散るんじゃよな」
サティ「あとは亜光速まで加速して粒子単位で打ち出す方法もあるけれど、粒子加速器がすごくかさばるのよね」
テクス「ゆえにTech用でもビーム兵器は存在しないんでござるよ」
マイン「我が
ステーク「言われてみれば
そのため
トリオ「それにの、それをどうにか実現した所で電荷がある以上単なる電磁力で弾けるんじゃぞ? まあ正面から受け止めるにゃ同等以上の電力が要るけえ、選択肢の一つにはなるがの」
スコア「そうか、その方法があったな……」
ラリー「BETAに防がれねえ武器ってのはなかなかねえもんだな」
既に
カミール「かと言ってG弾は環境問題が深刻だしな」
トピア「そういう意味では今のところラストプリズムのような魔導ビームが一番有力なんですけど、人力でないと発動出来ない上に射程がちょっと足りないんですよね。迅雷用にスケールアップしたら多分射程は伸びると思いますが」
サティ「あの謎ビーム、自在に使えたら素敵よね」
テクス「
電気的エネルギーとマナエネルギーの変換でも、魔法を自在に使えるようにするためにも、やはり
そこで工場長が挙手した。
トリオ「あと1つ報告があるんじゃが」
トピア「何でしょう?」
トリオ「インファクトリ級の2番艦が建造中になっとる。本日完成予定じゃ」
トピア「は?」
スコア「いつの間に?」
その報告を初めて聞いたトピア達は、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。
トリオ「いや、建造ドックをカンパニーの軍事工場のシステムを流用して作ったらの、インファクトリが出港した途端に2番艦を作り始めたようなんじゃよな」
ラリー「言われてみればカンパニーの軍事工場はそうなってたな」
テクス「でござったなあ」
ラリー達は最初にマインと戦った時のことを思い出した。レイン1号機がロールアウトしたらところてんを押し出すようにすぐさま2号機を作り始めていたのだ。しかも建造ドックに原料は尽きること無く供給されているので停まるはずが無い。
サティ「でも1隻こっちに置いておいたら住民全員連れて行かなくていいから便利じゃない?」
ファム「インファクトリ級同士でポータルが繋がったら安全な拠点同士で移動出来ていいですよね」
トリオ「ただし縮退炉が動かん状態でロールアウトするぞい。改造せんと最大1.02TWのままじゃ」
トピア「じゃあとりあえずその2番艦まではロールアウトさせましょう。3番艦以降は設計改修を終えてからで。……艦長はどうします?」
ラリー「能力なら
サティ「信用出来るか分からないのがちょっとね」
テクス「船を与えた途端に独立しそうな感じがするでござるな」
マイン「信用と言うのなら聖騎士で良かろう」
トピア「そうですね、住民達の防衛にも適してますし。異論のある人はいますか?」
トピアは一応意見を募ってみたが、特に反対意見は無かった。
トピア「では聖騎士さん、
聖騎士「光栄である! 同志達も喜ぶであろう」
九十九「それで艦名はどうするんだい? 偉人、国名、動物、自然現象などがあるが……1番艦は類似語を重ねて組み合わせた造語なんだよネ?」
トリオ「船は1隻ごとに名前を付ける慣習が面倒じゃの」
マイン「インファクトリ級2番艦でいいのではないか?」
実際
トピア「まあ艦長になる聖騎士さんに聞いてみましょう。いや実際艦長をやるのは別個体の聖騎士さんですが」
聖騎士「我の案であるか? ふむ……」
聖騎士は一同の顔を見渡し、今まで戦ってきた理由を思い起こした。
聖騎士「
トピア「デイリーライトですか、いいですねそれで行きましょう」
スコア「戦闘艦らしくはないが、人々の生活を大事にする聖騎士卿らしさが現れていていいと思うぞ」
聖騎士の心意気が現れた艦名は概ね好評であった。