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珍しく挙手して積極的に発言したアヌビスの用件は、以下のようなものだった。
アヌビス神「X,XXX. XX(うむ、汝らの働きに対しそれぞれの世界を管理する神々から祝辞が届いているのでな。ここで伝えさせてもらおう)」
神からの祝辞と聞いてトピア、九十九、カミールの3名は微妙に嫌な顔をした。逆にクラエル神の信徒であるファムは単純に喜んだ。
テクス「そう言えば交信出来るようになったのでござったな」
ファム「一体何と?」
ファムの問いに対し、アヌビス神は微妙に光を発し荘厳な雰囲気を出しながら口上を続けた。
アヌビス神「XXXX. XXXX(はじまりの星から侵略者を叩き出した
トピア「公認
アヌビス神「XXX,XXX(
アヌビス神の宣言と共にトピア達の頭の中にクラエル神のイメージが広がった。あの鹿の角が生えた女神的存在のビジュアルイメージだ。
トピア「あー、あの鹿の角が生えた方がクラエル神当神だったんですね」
九十九「自分で偉大なる神(クラエル)って名乗ってたから当神なのか使者なのか分からなかったんだよネ」
ステーク「まあそれは最初オレも思ったが」
クラエル神の名乗りの不備についての雑談をよそにアヌビス神は言葉を続ける。
アヌビス神「XXX,XXX(工業の神フィステイン公認
同じくフィステイン神のイメージが脳内に広がる。今度は理知的な印象のある男神だ。出来る上司っぽい。
サティ「聞いたことなかったけどそういう神様なのね?」
アヌビス神「XXX,XXX(職人の神トゥーブ公認公認
トゥーブ神のイメージは職人風の男神だ。
トリオ「儂らドワーフが信仰するトゥーブ神か。実在したんじゃのう」
アヌビス神「XXX,XXX(冒険の神リロー公認
リロー神。冒険者風の男神だ。その出で立ちにラリーは少し親近感を抱いた。
ラリー「へえ、うちの神様ってそういう名前なのか。あっちの世界じゃ神はクトゥルフしか見たことねえから知らなかったぜ」
アヌビス神「XXX,XXX(探検の神グスト公認
グスト神。探検家風の男神だ。
スコア「私も聞き覚えが無いが、有難く拝命する」
アヌビス神「XXX,XXX(大地母神ペディオ公認
ペディオ神。母性溢れる笑顔をたたえ、大いなる
テクス「おお、
アヌビス神「XXX,XXX(戦神アヴェニュー公認
アヴェニュー神。マインと同じ褐色肌に銀髪で、白基調の鎧を着込んだ男神だ。
マイン「これはまさに我が一族が代々信仰するアヴェニュー神! ……やはり我らの信仰は間違っていなかったということになる」
もしやマインが信仰する神もブロンティストだからこうなってしまったのでは、とトピアや九十九は察した。
カミール「戦神公認の総軍大元帥とはいかにも強そうだな」
シュミット≪マインちゃんも立派になったわねえ、オバチャン嬉しいわ≫
アヌビス神「X,XXXX(以上、神の名に恥じぬように今後も励むことを期待する)」
しかし再度頭を上げると、トピアは平然と質問を再開した。
トピア「それでアヌビス様、今回のこれは『BETAを駆逐して現地住民からの信仰ゲット大作戦』ってことで宜しいですか?」
アヌビス神「……XX(何故そう思う)?」
テクス「あ、これ図星でござるな?」
正解かどうかはアヌビス神のやや挙動不審な反応から概ね分かってしまっていた。
トピア「いえ、クラエル神の目的が元々そんな感じだった上に、他も一部の種族のみに信仰されてる神様や名前すら知られてない神様ばかりだったので。ああ、別にそれが悪いと言ってるわけではないんですよ。
本当に今までの行いと比べるなら吃驚するほどまともである。
スコア「まあそのために戦ってるのは派遣された我々なんだが、犠牲を強いられているわけでもないしな」
ずっと会話する相手も無く地下暮らしをしていたスコアにとっては前より環境が改善しているくらいだ。
ラリー「俺は楽しんでるぜ?」
テクス「うむ、我らが信仰する大地母神様のご威光を広めるのは望む所でござるよ」
マイン「我が力を以てアヴェニュー神の偉大さをこれでもかと知らしめてくれよう」
アヌビス神「……X,XX(まあ、目的についてはその通りだ)」
伝えていなかった元々の目的が露見しても特段悪い反応が無いことを確認したアヌビス神は、素直に認めることにした。
トピア「で、次の質問なんですけど、存在Xを見習ったような外道行為に手を染めてるのはクラエル神だけですか?」
アヌビス神「XXXX(公認
アヌビス神が眉をしかめるが、トピアは全く気にした様子は無く、むしろ煽るようなことを言い始めた。
トピア「いえ、これ結構重要な所なんですよ。これに答えていただかないと、布教する際の紹介が『人材勧誘のために気軽に文明滅亡ボタンを押させまくってるクラエル神とそのお仲間』ということになりますけど、宜しいのですか?」
なお煽る相手はクラエル神達七柱であり、アヌビス神は間に挟まれている形だ。想像するだに嫌な役目だろう。
問題は「邪神ですけど信仰して下さいね」と言われて素直に信仰する人間は殆どいないということだ。これは神々の目的にも大きく関わることなのだ。
マイン「ニンジャ貴様、我が神を愚弄する気か!?」
サティ「落ち着きなさいマイン。むしろ問いただすことによって潔白を証明しようというのでしょう?」
テクス「ああー、巻き添えの風評被害は嫌でござるからなあ」
モモ王女「マイン様、これは布教するに当たっても大切なことですわ」
トピア「ということです。返答はいかに?」
トピアの問いに対しアヌビス神は瞑目して暫く沈黙し、それから口を開いた。
アヌビス神「XXX. X,XXX,XXX(我が神以外は文明を滅ぼさせるような真似はしておらぬ。ただし、一部の気に入った者に克服可能な程度の試練を与えてはいる)」
マイン「そうであろう。我が神がそんな外道行為をするはずがない」
トピア「はて、試練?」
トピアは試練と聞いてラリーを見て、スコアを見て、テクスを見て、最終的に工場長で視線が止まった。サティも同じことに気付いたようだ。
サティ「工場長の過去5回の宇宙遭難って……」
トリオ「確率的に有り得んとは思っとったが、その試練じゃったんじゃろうなあ……」
工場長は今までの苦難を思い返して遠い目をしていた。
テクス「それがしも墜落から活動開始したのは二度目でござるが、はるかにきっつい試練でござるなあ」
スコア「私の方もまあ辛かったが、比べられると流石にな」
ラリー「俺は好きで戦ってるが、アレも試練なのか?」
どうも
トピア「ええ……少々予想外の結果になりましたが、ご返答いただきありがとうございます。では、今回我々が十分な信仰を集めることに成功した場合、人に伝えるだけで悪評になるような行為は今後慎んでいただけますでしょうか? 試練や勧誘でも、ラリーさんのように当人の同意があれば勿論構いませんが」
トピアとしては元の世界には嫌な思い出しか無いため
九十九「なるほど、そうなれば吾輩達は堂々と救いの神として紹介出来るし、今後理不尽な目に遭う者達も減るわけだネ」
九十九はトピアの作戦方針を理解した。可能なら幾らか報いを受けさせたいという気持ちも無くはないが、最終的にあの邪神存在Xと対立する可能性を考えると人間が神に対抗するのは難しいので、改心の余地があるなら味方としてキープしておく方が有用だろう。信仰で力が増すなら尚更だ。いや、気軽に文明を滅ぼすような邪神は存在X一派より邪悪ではないかという気もするのだが、昔はそうではなかったらしいのだ。とりあえず検討してみても良いだろう。クリティカルなやらかしをしていない他の6柱を担ぐという手もある。全員クラエル神よりはよほどまともそうであるし、妙な試練も課していないフィステイン神などは特にポイントが高い。平たく言うと「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」作戦である。
アヌビス神「XX,XX(協議中だ、暫し待て)」
トリオ「まあ儂もこれ以上繰り返されんならそれでええわい」
スコア「私も結果的にはな」
暫し待つとアヌビス神が再び口を開いた。
アヌビス神「XX. XXXX. XX,XX,XXX(協議の結果を伝える。確かに神の名に恥じる行いは神自身も慎むべきである。今後留意する故、心置きなくBETAを駆逐し、神の威光を広めよ)」
モモ王女「交渉成立ですわね」
トピア「お任せあれ!」
アヌビス神「X. XX. XXX. XXX(宜しい。ただし我から一つ補足がある。我が神の
九十九「最初に賜った言葉……?」
トピア「はて?」
トピア達
トピア「あっ、あの世界はいずれ滅びる定めだったとか言われた気がしますね?」
九十九「そういえばそんなことも言われた気がするネ。しかしだからと言って早めに滅ぼしたのはどういう事かな? 人間はいずれ死ぬんだから今死んでしまえみたいな極論じゃないかネ?」
アヌビス神「XXXX. XXXX(汝らが真っ先にその文明の犠牲にされる定めであったからだ。中には外来種に滅ぼされる文明や逆に宇宙に災厄を振りまく前に潰さねばならなかった文明もあるが)」
トピア「え、まさかの善意……?」
サティ「今まで聞いていたのと大分イメージが違うわね?」
今までの
しかし人間不信に陥る程度には酷い目に遭わされていたトピアにとっては、遠からず人間社会に潰されそうな予感は少なからずあった。だからトピアはクラエル神をあまり恨んでいなかったわけだが。
また、アヌビス神の証言が確かならばトピア達
アヌビス神「XXX. XX. XX. XX,XXX. XXX. XXX(我が神は
トピア「すみません、解脱とは?」
解脱と言われてもトピア達も煩悩から解放されているわけではない。仏教のそれとは意味合いが違うとみてトピアは疑問を差し挟んだ。
アヌビス神「XXXX(一定以上の良識と
なるほど、社会の犠牲者からそれなりに能力と良識がある者ばかりをヘッドハンティングしていたとするならば、
それに、考えてみれば上司が邪神である割にはアヌビス神の善良さは不自然ではあった。
九十九「……何故それを今まで説明しなかったのかな?」
アヌビス神「XXX. XXX,XXX(自分一人と引き換えに早々に文明を滅ぼされた責任を感じるのは嫌であろう。故に汝らが無為に自責を感じるであろう文言を全て削った結果大いなる誤解を生んでしまったのだが、我が神が敢えて被った汚名をそのまま広められるのは困るので口出しさせてもらった)」
ファム「流石は我らがクラエル神ですね!」
ラリー「代わりに自分で文明を滅ぼした責任を念押しするほど押しつけちゃ世話ねえと思うんだが」
スコア「いや、強引に押しつけられたならば逆に自分の責任とは考えにくいという発想かもしれないな」
ステーク「配慮があまりにも不器用すぎる……!」
テクス「本末転倒レベルでござるな」
本来得られるはずの感謝を失うような意味の分からない配慮。ステークとしては自らが信奉するクラエル神の善性が失われていなかったことは嬉しいのだが、同時に本来の目的を全く達していないやり方に頭を抱えた。いや、今回のBETA討伐により信仰を得ることを見越して人材を集めていたのならば決して無駄ではなかったのだろうが、あまりにも迂遠だ。
ここの面子は知らないが、クラエル神のやり口が他の神々に
さて、人間同士が対立していてどちらを助けるかを考える場合、基準として正当性の他に人数比というのもある。例えば10人が1人を虐げている場合にその1人に泣き寝入りさせて無かったことにするという事なかれ主義だ。この規模ならただ胸糞悪いだけの判断だが、この正当性が無い側の10人が60億人になった場合に60億人をぶっ飛ばして1人の方を助ける選択を即決できるかとなれば難しい所だ。が、クラエル神は
トピアにも積極的に悪事を働かないくらいの良心はあるが、流石に理不尽を自分に押しつけてくる多数の人間の命を少し延ばすために自分が犠牲になることを許容する程ガバガバに寛容な心は持ち合わせていないのだ。自分に直接関わりが無い人間が邪悪だったかどうかは知らないが、彼らは結局トピアが犠牲にされる時に何もしてくれない人間なのだ。だったら彼らが滅ぼされる番になったとして、わざわざトピアが助けてやる義理は無い。元々人間を信じていないトピアの価値判断はその程度にはドライであった。
トピアと九十九は視線を交わした後で立ち上がり、右拳の親指側を左胸に当てるポーズ、いわゆるヤマト式敬礼Type Bの姿勢を取った。いやモノの腕では拳が作れない上に左胸にも届かないのだが、概念的にはそういうつもりなのだ。
トピア「我ら
アヌビス神「X,XX(うむ、期待している)」
アヌビス神が満足げに深く頷くと、トピア達は再度着席した。そこでカミールが挙手して発言した。
カミール「……ということは、アヌビス様、今までのあれこれはもしかして全部うっかりなのですか……?」
アヌビス神「……XXX(残念ながらその通りだ)」
つまりカミールに諸々の知識を押しつけようとしたのも好奇心旺盛なカミールに善意で教えてあげようとした結果ということになる。ただ教え方の作法が人間とは決定的に違ったのだ。善意ではあっても人間を根本的に理解出来ていないというのがやはり悪い方向に作用していた。
クラエル神が悪意も無く諸々の悪い結果を引き寄せていたのならば、それはそれで困った話であった。クラエル神は天災クラスのとんでもないドジっ子であり、地獄への道が善意で舗装されかかっていたのだ。
トピア「ええ、お後が宜しいようですので会議を終了とします。本日もご安全に!」
皆が反応に困る中、トピアが発したいつもの言葉で会議は終了となり、地球攻略へ向けての準備が始まった。
創造神だけどリソースが有限なのである程度再利用しないと新しいものを作れないという事情があり、更にリセットの際には一部とは言え不幸な目に遭うはずだった良識ある者を救ってもいるので、その所業を絶対悪と断ずるのも難しいみたいなお話でした。まあどっちかと言えばやっぱり邪神だと思いますが。