アメリカ合衆国、ニューヨーク州のマンハッタン島。イースト川に面し西にエンパイア・ステート・ビルを臨む絶好のスポットに国際連合の本部施設が存在する。その国連本部はいつもとは違う緊張感に包まれていた。その理由は空を見上げてみれば分かるだろう。全長1.2kmの巨大な軍艦が本部施設の直上1kmに陣取っているからだ。長軸だけ見ても国連本部の敷地の倍以上でかい。軍艦の名前は航宙工作艦インファクトリ。青い球体バリアと空色のレーザー反射装甲、橙色の光を発する反射レーザー砲で絶対の防御を誇り、攻撃となれば艦底部から数千発の大量破壊兵器を連射するという恐るべき兵器だ。それがよりによって頭上に停泊しているのだ。砲艦外交にも限度というものがあるのではないか。
インファクトリは国連軍横浜基地で何やらヘッドハンティングのような真似をしていたが、即答を要求するわけではなく、名簿だけ渡してすぐに東へと向かっていた。その行き先はニューヨークの国連本部だ。国連関係者はこの行動にざわめいたが、幸いというか、インファクトリの国連本部への来訪目的は国連との交渉であり、余程のことが無い限り攻撃の意志はなさそうだった。しかしインファクトリの国連本部訪問は日本時間の14時、ニューヨーク現地時間では0時であり、終業時間を過ぎているのなら夜が明けるまで待とうかと提案されたが、頭上にインファクトリが停泊している状況に一晩耐えるなど誰にとっても真っ平御免であり、各国の国連大使と報道陣を集めて即時の会合開催が決定された。
国連と
会合は国連の会議室で最も広い総会ホールで実施される運びになった。ここに各国の国連大使を集めて
総会ホールは1,800人以上の収容人数を誇り、まず大学の講義室のように正面のステージに向かって傾斜のついた会場に大量の長机と6つずつの椅子が並ぶ。基本的にはここに各国の国連大使が座るようになっており、机には国名を表示する小さな電光掲示板が設置されている。
国連大使席からの視線が集中するステージは階段4段を上がる程度の高さがあり、その中央に立ったまま使用するタイプの演説台が設置されている。更にその演説台の奥には薄い階段を8段上がった所に3人ほど着席可能な議長席がある。ここには通常国連事務総長、総会議長、総会事務局次長などが座るが、それは国家間の調整をする際に国連が議事進行をするためであり、今回は国連自体が交渉する側だ。よって国連の総責任者に当たる国連事務総長は各国国連大使が座る席の最前列に座る形になった。その最前列の並びには安全保障理事会の15箇国も着席している。
議長席の後ろには金色の縦長の壁があり、その中央に国連紋章が刻まれ、紋章の左右やや上に会議場全体から見える大型ディスプレイが配置されている。
左右側面にある席には既に報道関係者が詰めかけており、早い所では既に生放送が始まっている。全世界中継の一大イベントだ。
各国大使席から見てステージの左手から
更にステージ端に紫色のアーチ状の設備を出し、その設備に液体が入ったボトルを装着するとアーチ表面に配置された7つの宝玉に光が灯ってアーチ中央の空間が渦を巻いて輝き、そこから次々に人が出てきた。まさかの空間接続ゲートだ。ゲートからは総軍大元帥のマイン、南瓜頭のステーク、謎の半透明生物九十九、ジンライ衛士のラリーとスコアと聖騎士、インファクトリ操舵士のテクス、オペレーターのサティ、機関士のトリオ、ピンクのドレスを纏い頭に小さな王冠を乗せた気品のある少女、そして最後に古代エジプト風の衣装を纏った黒い犬頭の何者かが出てきたことでエジプト大使が目を見開いて席を立った。犬頭の耳や眼球が自然に動いており、作り物には見えない。
ゲートから出てきた全員が着席すると、
トピア「開始しても宜しいでしょうか議長?」
国連総会議長「Anytime is okay(いつでもどうぞ)」
サティ「いいですって」
日本語で問いかけた
なお
トピア「改めまして、我々は世界間協力BETA撲滅機関
その辺りの空気は全く意に介さず彼女は紹介を進めた。
トピア「続いてこちらが工業の神フィステイン公認
金髪碧眼で安全服を纏った美女が手を挙げて応えた。その背後には理知的な男神のイメージ。
トピア「職人の神トゥーブ公認
黄色いヘルメットを被った背の低い髭面の男が頷いた。今度は職人風の男神。
トピア「冒険の神リロー公認
茶色の髪の男が親指を立てた。背後には冒険者風の男神のイメージ。
トピア「探検の神グスト公認
同じく茶色の髪の男がやや上品に掌を見せた。グスト神のイメージは探検家風の男神だ。
トピア「大地母神ペディオ公認
安全服を着たどう見ても幼児にしか見えない
トピア「戦神アヴェニュー公認
銀髪と長い耳、褐色肌が特徴的な軍装の美女が腕を組んだまま頷いた。その背後には彼女と同じく銀髪、長い耳、褐色肌に白い鎧を纏った男神が現れた。
トピア「そしてこちらがクラエル神の従属神にして我ら
アヌビス神「XXX,XX(クラエル神の
黒い犬顔の男が立ち上がり錫杖を打ち鳴らすと、その衣装が黒く染まり、身の丈が3m程に巨大化した。ここに七柱の神とその従属神が立ち並ぶことになった。
また、アヌビス神の言語自体を理解出来る者はいなかったが、意味が直接頭の中に入ってきた。何ということだ、これは神託だ。
アヌビス神がもう一度錫杖を打ち鳴らすと、神々のイメージが消え、アヌビス神自身も人間大に戻った。
大使席を見れば、エジプトの国連大使達が五体投地で許しを請うていた。
というのも、アヌビス神は古代エジプトで信仰されていた神の一柱だが、その後エジプトはキリスト教勢力に征服され、更にイスラム教勢力に征服されたことで、現在信仰されているのはイスラム教9割、キリスト教コプト派1割といったところなのだ。エジプトはスエズラインで
アヌビス神「X,XXX. XXX. XXX,XX(人の子よ、そう恐縮することはない。汝らを助けられたことを我も嬉しく思う。
アヌビス神が優しく微笑むとエジプト大使は滂沱の涙を流して感謝した。
これを機にエジプト本国でも古代エジプト神話の宗教的復興活動が始まったことは言うまでもない。ついでに聖戦であったことを余所の神とはいえ神自身から認められたことでイスラム勢力も勢いづいたが、それを保証するのが実在するエジプトの神なのでいかに一神教とはいえエジプト神話を否定するのは難しかった。
しかし神に感謝するエジプト大使達の様子を苦虫を噛み潰した表情で見ている者がいた。
JASRA局長「ここに来て神だと? 存在Xめ、何の茶番だ……?」
そのまなざしには隠しようがないほどの憎悪が滲んでいた。