【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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190. これ絶対デグさんが頑張った結果ですよね?

 匠衆(マイスターズ)が地球に来てからの情報収集とそれによる方針決定の話をしよう。

 地球の全てのハイヴをわずか7時間ほどで壊滅させた匠衆(マイスターズ)であったが、この地球は事前情報と大分違いがあった。横浜基地を含めてもハイヴが22箇所しかなく、本来より4()()少ないのだ。念のためH23以降が建設されるはずの現地に行ってスキャンもしてみたが、ハイヴがあった痕跡すら無かった。

 考えられる可能性は4つほどあった。

 1つ目、まず単純に今現在がH23オリョクミンスクが建設開始される1999年以前である可能性。しかしこれはアヌビス神の証言と食い違うし、電波ジャックのついでに地球の情報をかき集めてみてもやはり本日は2001年11月3日土曜日で間違いない。

 2つ目、ここがステークが以前いた漫画版マブラヴオルタネイティヴの世界ではなく、最初期のR-18ゲーム版マブラヴオルタネイティヴの世界である可能性。このバージョンのみH23オリョクミンスク以降が存在しないのだ。しかしこれもアヌビス神に問い合わせてみた所同一世界の筈だという。更に言えば、その初期版世界だとしたら残っている人口が今確認できている25億人よりあと1()0()()()少ない筈なので現状に一致しない。

 3つ目、クラエル神がバーナード星系をいじくり回した結果地球に対するBETAの押しが弱くなった可能性。しかし以前確認した通りBETAが月や地球に到達した年も日付も全く同じのようなのでこれも考えづらかった。

 4つ目、白銀 武のように未来の知識を持って行動している者や外部世界からの強い影響をもたらした者がいる可能性。これを念頭に置いて新たに実装された量子演算機のパワーで各国の機密情報を収集してみると、『ルナリアン』『カッサンドラ』というキーワードが頻繁に出てきた。

 更に調べてみると、この世界の地球の経歴は以下のような違いがあった。

 

・1967年に月面で最初にBETAに遭遇したサクロボスコ事件で部隊全滅を免れている

・1973年4月に米国国家安全保障委員会指定第427号機密『ルナリアン案件』が発生している。これは月面戦線帰り(ルナリアン)達が独断で喀什(カシュガル)に核攻撃しようとして失敗したものだ

・米国の難民政策が合理化されており、有能な人間や兵役を希望する者だけ引っこ抜いて後は他国に押しつけ、押しつけた分の経済支援だけする形になっている。これは国家が義務として難民に掛けなければならないコストが難民受入国の生活水準に依存するため、生活水準が低い国で引き受けさせた方がコストが安いという原理によるもの

・パレオロゴス作戦失敗後に国連軍統合代替戦略研究機関(JASRA)の支援で欧州軍が辛うじて立て直せており、その結果欧州の非戦闘員の避難が間に合っている

・バンクーバー協定第63条『避難勧告非受諾者に対する例外規定』が存在する

・間引き作戦の有効性が早めに実証されているためハイヴ建設ペースが遅い

・H08ロヴァニエミの建設をかなり遅延させ、山岳地帯を盾にしたノルウェーの一部が健在

・H09以降の建設も順調に遅らせた結果2001年現在でのハイヴの数が4つ減っており、ソ連の国土が半分近く残っている

・ピレネー防衛線に至ってはいまだに奇跡的に機能し続けており、スペインとポルトガルが健在

・東ドイツ第666戦術機中隊黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)が中隊丸ごと国連軍に引き抜かれており、東ドイツのクーデターの勝者が東ドイツ国家保安省(シュタージ)人狼(ヴェアヴォルフ)大隊のベアトリクス・ブレーメになっている

難民解放戦線(RLF)によるユーコン基地のテロを基地が乗っ取られる前に先手を打って鎮圧に成功

・F-22から対人用のステルス機能を削ったローコスト版が存在する

・戦術機の動きを柔軟に、操縦を簡便にする新型OS、XM3(エクセムスリー)が既に普及している

 

 まあ要するにだ。

 

トピア「これ絶対デグさんが頑張った結果ですよね?」

 

 そう、その殆どが存在Xに送り込まれたターニャ・デグレチャフ女史がマブラヴ・ルナティック・ルナリアンにおいて成したことなのだ。ルナティック・ルナリアンはフィンランド防衛までで話が途切れているのでその後の詳細は分からないが、スペインやノルウェーの滅亡回避、ソ連の後退速度遅延、F-22の対人特化回避もその影響で間違いないだろう。XM3(エクセムスリー)も概念を知っていて集積回路の性能が足りれば2001年10月以降まで開発しない理由は無い。原作オルタネイティヴでもXM3(エクセムスリー)用の高性能集積回路は夕呼が00ユニット開発の過程で既に試作しており、誰も戦術機に使いたいと言わなかったので使っていなかっただけと言っている。

 つまりこの世界はステークがいた世界で間違いないが、彼がいない間に存在Xの手によって送り込まれたターニャが歴史改変していたということになる。まあ概ねいい方向に変わってはいるのだが、このまま白銀 武不在で何の助けも無ければ隣のエクストラ世界の数式が手に入らないため00ユニットが完成せず、大分厳しい戦いになっただろう。可能性があるとすれば、ステークが試みたが成せなかったG弾による喀什(カシュガル)中枢攻撃だが、信頼と実績の破滅の予言者(カッサンドラ)といえど喀什(カシュガル)に貯め込まれたG元素を入手したいという米国のスケベ心を御せたかは疑問だ。他には戦術機の性能をあと2世代ほど進めれば突入攻略も可能かもしれないが、それ以前にオルタネイティヴ5がユーラシアを沈めてしまう可能性が高い。

 

九十九「国連の名簿に普通に名前が出てくるねえ、デグレチャフ君」

 

 ターニャ・デグレチャフ国連軍統合代替戦略研究機関(JASRA)局長にして国連事務次長補相当官。つまり国連で事務総長、副事務総長、事務次長の次の地位に当たる。ルナティック・ルナリアンで彼女が持っていたのと全く同じ肩書きで、大分偉いが実は1978年のパレオロゴス作戦の頃から全く出世していない。地球人類の中で最もBETAを警戒しているため事態を何とかしようと、BETAの撃退が困難な場合に核爆弾で地形を変えて陸地を分断する悪夢のBELKA計画を始めとする色々と()()()()()()プランを提案しまくったので出世出来ず、かといって毎回正確な危機予測をもたらす破滅の予言者(カッサンドラ)であるため左遷も出来ないといった所だろうか。いや、国連の戦略にもの申せる国連軍統合代替戦略研究機関(JASRA)局長という肩書きが一番動きやすいだけかもしれない。

 しかしターニャの合理性の恐ろしさを語るのによく引き合いに出されるBELKA計画だが、トータルイクリプスで登場したレッドシフトは核爆弾でアラスカを切り離してBETAの侵攻を阻止しつつ戦後G元素を大量保有することになりそうなソ連を潰すプランなので、ターニャが提案しなくてもBELKA計画に類するものは結局どこからか提出されたことになる。

 余談だが、国連事務次長は事務次官と呼ばれることもあり、今現在オルタネイティヴの原作通りに珠瀬 玄丞斎(たませ げんじょうさい)がその位置にいる。

 ともあれ、あの有名なシカゴ学派市場原理主義者の存在が確定したことで、匠衆(マイスターズ)のヘッドハンティング要望名簿に名前が一つ増えたのであった。

 

 さて、そのヘッドハンティングだが、国連横浜基地で香月 夕呼副司令に要望リストを送ってはみたものの、仮にも国連に所属する人員の引き抜きに対して即答を期待していたわけではないので、トピア達はご検討下さいの一言でその場を辞し、ひとまず上の方に掛け合うことにした。上の方。つまりは国連本部である。インファクトリは一路ニューヨークへと向かい、インファクトリを国連本部の上空に堂々と停泊させて会合に臨んだ。ハイヴ攻略で艦底部から大量破壊兵器を連射してみせた後で国連本部の上空に陣取るというこのあからさまな砲艦外交はモモ王女の案であり、武力を誇示して結論を急がせる単純明快なプランにはマインも大賛成であった。

 交渉プランはまず自己紹介で適度に神の威光を示し、エジプトが反応したならアヌビス神がその心を掴み、間違いなく聞かれるであろう兵器の性能に関してはどれだけ隔絶しているかをこれでもかと誇示し、考え無しに突っかかってくる共産主義国家をモモ王女が論理合気道でぶち転がしてプレイヤーとしての力量を示した所でターニャが影響力を持っている米国か元々交渉力が高い英国を利益で釣るというものであり、米国の反応が案外鈍かったので主に英国に主導させて交渉をまとめることになった。フランスは国土を失って影響力が無いし、日本は案の定外交音痴なので交渉相手として不足であった。オーストラリアは食品関係では価値を認めさせるのに役に立ってくれた。

 祈るだけで教えの部分が無いし現世利益もあるから宗教じゃないもんねー、という理屈も勿論カール・マルクスの主張を事前分析した結果の理論武装である。お陰で目的の一つである信仰集めの障害を可能な限り排除することが出来た。

 なお中国・ソ連の()()に基づいて地球から脱出不可能にするプランは単なる脅しではなく、当然実現可能な見通しがあった上での提案だ。それも単なる壁ではなく、一定高度以上へ上がってくる飛翔体や高高度建造物を対象とした無条件攻撃衛星を無数に浮かべる無慈悲なアサルト・セル方式である。民衆を殺戮するわけではなく宇宙への脱出だけ制限する形なので、要望に対するカウンターとはまた別に最悪の場合の地球人類封じ込め手段としても期待されている。

 

 こうしてつつがなく国連本部での用事を終えて勧誘への障害をなくし、まずは放っておくのが一番不味いであろう鑑 純夏を救うべくステークを連れて国連軍横浜基地を再訪問したところ、脳髄部屋にてヘッドハンティングの第3カテゴリ、つまりは純粋に能力目的での勧誘筆頭候補であるターニャ・デグレチャフと遭遇したわけである。なお第1カテゴリはループトリガーで、第2カテゴリは正史では死ななかったがステークの意向としては今回も犠牲にしたくない相手だ。

 ちなみに横浜基地地下の頭脳(ブレイン)級を放置したのは、これを潰すことで純夏の生命維持装置に障害が発生する可能性があったからだ。わざわざ日本海側にタレットを敷き詰めたのも、残存BETAが集ってくるのに焦って横浜基地地下の頭脳(ブレイン)級を破壊するという判断を下されないようにするため、それと迎撃戦で日本や横浜基地の第1・第2カテゴリメンバーが死んでしまわないようにするための処置だ。ちなみに残存BETAの九州への上陸はもう始まっているが、タレットと死骸を片付ける建設ロボットだけで問題無く対応できている。司令塔が無いためか地中侵攻も発生していない。

 

 つまり方針決定後の流れはここまでほぼ予定通りだったわけだが、ターニャに妙に警戒されているのはトピアも内心首を傾げる所であった。まあ魔法を使えないターニャに腕力(ATK)でどうこうされる心配も無いので、構わずその手を取ったわけだが。やはり腕力(ATK)は全てを解決する。




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