トピア「まずは皆様お集まりいただきありがとうございます。これより
壇上から
トピアの視線の先には地球の各国から集められた57名のメンバーが着席していた。その内訳は国連軍から37名、国連事務方から2名、日本帝国斯衛軍から8名、それ以外の日本帝国軍から3名、日本政府から2名、米国から5名だ。
この部屋には他に
国連軍もその大半が横浜基地の人員であるため出席者が日本出身者に偏っているのが分かるが、日本帝国政府内閣総理大臣の
米国の5人と国連のプロミネンス計画関係者は日本にはいなかったが、
また、国連軍横浜基地の中でもA-01部隊や教官は実力的に分かるが、正規兵にもなっていない第207衛士訓練小隊B分隊まで指名されていた。
なおどういうわけか国連軍横浜基地の食堂のおばちゃんこと
さて、この説明会会場がどこかというと、バーナード星第1惑星に駐留しているインファクトリ級航宙工作艦2番艦デイリーライトの中だ。そう、この説明会参加者全員が既にバーナード星系に招かれていた。6光年の移動は艦内のポータルという空間接続ゲートを潜るだけであった。カルチャーギャップにも程がある。ここがバーナード星系である証拠として説明会の開始前に全員が一度甲板からの景色を見せてもらっていたが、大分工業化が進んでいながらも自然が失われていない良い所だった。ただし得体の知れない生物が徘徊してはいたが。遠目には赤い鱗のドラゴンすら飛んでいるのが見えた。景観としては軌道エレベーターと自動農場タワーが異彩を放っていた。あの大規模自動農場が絶大な食料生産力の源らしく、しかもまだ追加で建設中となっている。
更に、説明会を開始する前に懇親会と称して食事が振る舞われた。国連総会と同じようにまずは普通の天然食材による料理が饗されたが、合成食に慣れ親しんだ一同からするとこれだけでも十分満足に値するものだった。更にその後に提供された上位グレード食材を使った料理に至っては、もはやこの世のものとは思えないものであった。冥夜達は国連大使達の反応が決してオーバーリアクションではなかったことを身を以て知った。流石に上位のこれを民衆の全てに提供するのは生産量の問題から難しいらしいが、普通の天然食材であれば幾らでも輸出が可能だという。それだけでも民衆の生活は格段に向上するだろう。国連の交渉は露骨な砲艦外交だったので冥夜も何を要求されるかヒヤヒヤしたものだが、その割には不平等条約を結ばされたわけではない。ただ交渉が手早く片付いただけだ。むしろ一日でも早くこれが行き渡るのならばありがたいくらいだ。
トピア「最初に……と、その前に、呼んでないのに何でそこに座ってるんですか
鎧衣「おやおや、気付かれてしまいましたか。この人数なら大丈夫だと思ったのですが」
美琴「えっお父さん!?」
説明を始めようとしたトピアが、まず招かれざる者が紛れ込んでいることを指摘した。室内でソフト帽を被ったままの微妙に怪しい男だ。その指摘に、不審者の娘の
鎧衣「折角ここまで来たのです。一緒に聞いていては駄目ですかな?」
トピア「こう言わなくては駄目ですか、日本帝国情報省外務二課、鎧衣 左近課長?」
鎧衣「はっはっは、この私も有名になったものですな」
美琴「えっ、貿易会社の課長じゃ……?」
自分の父親が情報省所属と聞いて美琴が混乱している。美琴も父親は普通の会社に勤めていると思っていたらしい。
しかしなるほど、帝国情報省の者ならば帝国のために情報を使うのが当然なのだから、安易に情報を掴ませるわけにはいかないだろう。
トピア「とはいえ、貴方も無関係ではないのですが……ステークさん、どう思います?」
ステーク「黙っててもどこからから情報を掴みそうだし、変に暗躍されるよりは聞いてもらった方がいいんじゃないか?」
トピア「……そうですね、ではここまで忍び込んだ手腕に敬意を表して
鎧衣「おや、これはありがとうございます」
トピア代表が特別に、と言う所を強調して許可を出すと、鎧衣課長が起立して帽子を取り、頭を下げて礼を述べた。
トピア「とはいえ、榊総理、部下の管理はしっかりして下さいねー。……と言うのも酷ですか。あの人を御するのって将軍殿下にも無理でしょうし」
榊「いえ、うちの者が申し訳ない」
トピアは榊総理に苦言を呈そうとして途中でやめたようだが、どうも鎧衣課長は政府の意向ではなく勝手に動いたようだ。政府の統制が出来てないというよりあの人が特殊なのだろうか。ここに単独で忍び込むという技量も只者ではない。アシスタントの純夏が忍者かななどと呟いていた。
トピア「では説明会に戻りますが、最初に一番重要なことを皆さんに伝えます。皆さんを指名して集めたのは、
シンプルな内容が頭に染み渡るのを待つためか、トピア代表が一旦言葉を句切った。わざわざ指名して集めるからには何らかの意図があるだろうというのは皆分かっていたことではあったが、その言葉を信じる限り、利用するためと言うより保護するためであったらしい。
トピア「理解しがたいかもしれませんが、我々がトリガーと呼んでいるその人物に死なれると時間が遡ってこのはじまりの星のBETAの駆除からやり直しになってしまいます。ただしその対象はここの全員ではありません。単に人格と能力で選んだ人もいます。やり直しのために自害されても全くの無駄になる可能性がありますし、正解でもあなた方の記憶は引き継がれませんのでそのような真似はご遠慮下さい。また、皆さんの身の安全のためにもこのことについて口外するのはやめた方が宜しいと申し上げます。ああ、付け加えて申し上げると人質などの政治的意図は全くありません」
醍三郎「その話、偽りは無いでしょうな? 将軍殿下も対象者なのですかな?」
トピア「本当ですが、それを公表すると対象者が集中して狙われる恐れがあるので公表の予定はありません」
醍三郎「ぐむう、それはそうか」
嘘でなければ予想以上に重要な用件で呼ばれたことを理解した
なお紅蓮 醍三郎は冥夜の剣術の師でもある。
雷電「では寿命の場合はどうなりますかな?」
トピア「その場合どうなるかは我々にもまだ分かっていません。しかしそれが問題になる前にこちらでループの原因に対処します。ですが今すぐには無理ですので、その対処前に死なれると元の木阿弥ということです」
雷電「ふむ、承知しましたぞ」
次に手を挙げたのも同じく帝国斯衛軍大将の
トピア「既に何度も巻き戻っている証拠としては、そうですね……今年11月11日に佐渡島から新潟に上陸侵攻がある件はもう片付けましたので、今年12月初め、4日までに日本の天元山が噴火します。楽しみにお待ち下さい」
トピアが今度は天変地異を予言し出した。これを聞き流せないのが日本の将軍や首相だ。もしかして二人はこのために呼ばれたのだろうかと出席者は推察した。
トピア「あと米軍からいらしたイルマ・テスレフさん、洗脳の症状が出てますので解毒剤を飲んで下さい」
イルマ「えっ」
ウォーケン「何だと!?」
寝耳に水だったのか、同じ米軍から来たウォーケン少佐が立ち上がってイルマ少尉の方に振り返った。テスレフ少尉の方にも全く自覚が無さそうなので、指向性蛋白質か催眠の類いだろう。
テスレフ少尉にはアシスタントの純夏が透明な液体が入ったフラスコを手渡していた。とはいえ招待された側からはそれが何なのかは分からないので、2つ手渡して片方選んでもらい、残った1つを先に純夏が飲むことで危険な薬ではないことを証明していた。
トピア「お、治ったようです。聖水で治療可能ということはやっぱり洗脳も混乱バッドステータスに分類されるんですね。あとウォーケンさんの別の部下がイルマさんを手駒に使おうとしてるので気をつけた方が良いですよ」
ウォーケン「何と……部下を救っていただき感謝します」
イルマ「ありがとうございます」
米軍から来た二人が頭を下げて感謝を示した。正直傍目に見ていても本当に洗脳されていたのか、それが治ったのかは分からないのだが、ここにわざわざ呼ばれただけあって素直な人達のようだ。
トピア「いえ、どういたしまして。それから国連軍からいらしたクリスカ・ビャーチェノワさん、マーティカ・ビャーチェノワさん、イーニァ・シェスチナさん、洗脳の症状が出ています。更にイーニァさん以外のお二人は特定の蛋白質を摂らないと死んでしまう妙な改造を受けた形跡もありますので治療を受けて下さい」
タリサ「ハァッ!? 何だそれ!?」
ユウヤ「本当か!?」
ソ連から国連軍に出向している銀髪の三人はもっと酷い症状らしかった。しかし当人達は全く動じておらず、近くに固まって座っていた連中の方が驚きの声を上げていた。あのあたりはプロミネンス計画関係者だ。
クリスカ「それは命令か?」
トピア「命令が無ければ体調不良を治療したくないというのは重症ですね……プロミネンス計画の皆さんで説得出来ませんか?」
唯依「分かりました。何とかしましょう」
トピア「お願いします。次に
遙「えっ、治るんですか!?」
トピア「はい、この場で割と簡単に」
涼宮 遙中尉は国連軍横浜基地A-01部隊のコマンドポストオフィサーだ。ストッキングに包まれたそれは一見普通の脚に見えるが、演習中の事故で切断せざるを得なかった両脚を疑似生体移植で補っているという。
遙は妹の
遙「ではお願いしても宜しいですか?」
トピア「ではステークさんお願いします」
ステーク「分かった。こちらへどうぞ」
遙「はい」
ステークに連れられ、参加者が座っている席から少し離れた所に設置された椅子に遙が座る。
ステーク「よし、オーバーリザレクション」
遙「……!」
ステークの両手から滲み出した緑色の光が遙の両脚を包み、まばゆく光ったかと思えばそれはすぐに収まった。
ステーク「調子はどうですか?」
遙「これは……」
遙は足踏みをしたり色々な方向に曲げたりして感触を確かめた。その確認が進むほどに段々その表情が明るくなっていった。
遙「確かに治ってます! ありがとうございました!」
ステーク「どういたしまして」
遙が頭を下げて礼を言うと、ステークも軽く頭を下げ、彼が手で指し示すと遙は自分の席に戻った。席に戻った遙は妹の茜と喜び合っており、脚は問題無さそうだ。
あんな感じで体の不調を治せるのなら、ソ連の三人の治療も案外簡単なのかもしれない。ここはとんでもない所だと出席者一同は改めて実感した。
トピア「では次に……
日本帝国本土防衛軍の二人だ。指名された瞬間にこの二人は緊張する様子を見せた。何か言われる心当たりがありそうだ。
トピア「戦略研究会のクーデター計画を即刻白紙撤回して下さい。米国主導のクーデター計画を沙霧さんが乗っ取って実行した方がマシになるなどという鎧衣さんのアホな甘言に惑わされないで下さい。ただの迷惑行為です」
美琴「えっ」
鎧衣と聞いて美琴が驚いて父親の方を見た。妙なことを吹き込む鎧衣と言えば帝国情報部の鎧衣課長のことに違いないが、本人は全く動じていない。しかし将軍は驚いた顔をしている。大分意向を無視して動いていたようだ。榊総理はどちらなのか読みかねる。
沙霧「……未来を知っているということは我々のことも知っていて当然、か」
駒木「大尉……」
沙霧達が自嘲気味にクーデター計画を認めたことで俄然
ウォーケン「待っていただきたい、米国主導のクーデターですと? 一体どこの勢力が?」
トピア「発案は米国政府そのもので、国連のオルタネイティヴ5推進派とも結託し、煽動工作は
ウォーケン「……政治屋どもめ!」
これに憤慨するウォーケンはやはりまともな人間なのだろう。憤るウォーケンを横目に、トピア代表がちらりと夕呼に視線をやった。しかし夕呼自身は素知らぬ顔だ。何か関係があるのだろうか。
トピア「それでこの際言っておきますけどね、沙霧さんも
沙霧「何ですと?」
トピア「東ドイツみたいに言論の自由が無いわけでもないんですから、BETA大戦の最中に軍事クーデターなんて人類を滅ぼしかねないはた迷惑なことするよりも、まず言葉と証拠で正当性を主張して糾弾したらどうなんですか。統帥権干犯する汚い政治家どもを暴力で一掃すれば万事解決なんて短絡的にも程があるでしょう」
沙霧「国民と将軍殿下を蔑ろにする国賊共が話など聞くわけがないでしょう」
トピア「口で勝てないから殴るというのが短慮だと言ってるんですよ。そもそも、貴方が睨んでるそこの榊首相が彩峰 萩閣さんに国のために犠牲になってくれと土下座したの知らないんですか? 滅茶苦茶納得して処刑されてましたよ彩峰 萩閣さん」
沙霧「……なんだそれは」
沙霧大尉も面食らっていたが、言われた榊首相も目を見開いて驚いていた。あれは根も葉もないことを言われたというよりは何故知っていると驚いた顔だ。彩峰 萩閣の娘にあたる彩峰 慧だけでなく、榊総理の娘である
彩峰 萩閣。
バンクーバー協定第63条『避難勧告非受諾者に対する例外規定』からするとこれらの住民は助けるべき対象ではないので、国連は日本政府に猛抗議、彩峰中将の国際軍事法廷への引き渡しを要求した。最終的には日本国内での処刑で決着したが、抗議の際には確か、国連のお偉方に『このようなことが起きないように手を講じていたつもりだったが、私は無能の無能ぶりをまだまだ甘く見ていたようだ』などとコメントされていた気がする。その偉い人によく似た国連事務職員もここに列席しているのだが、同一人物にしては若すぎる。親類縁者だろうかと冥夜は訝しんだ。
トピア「私としてはむしろきっちり処刑したことの方を評価したいんですけどね。土下座して頼むのは雰囲気に流されすぎでしょう。あととばっちりで迫害されてた彩峰さん一家に対するフォローがなってなかったのはマイナスですね」
迫害という言葉に慧がぴくりと肩を震わせた。
沙霧「彩峰中将を愚弄なさるのは流石に聞き流せませんな?」
トピア「はて、愚弄? やはりあの人の歴史に残るレベルの愚行を理解出来てないと見えますね。じゃあもっとはっきり言いましょうか。まず『人は国のために成すべきことを成すべきである。そして国は人のために成すべきことを成すべきである』というのはその彩峰 萩閣さんの言葉ですよね?」
沙霧「そうですが、それが何か?」
まあ言葉自体は立派だ。
トピア「じゃあ何で避難拒否してる連中を助けに行くために国を守るための軍を崩壊させてるんですか。住民がそこで死にたいのなら意思を尊重して死なせるべきで、軍を潰してでも助けろという害悪連中なら尚更死なせるべきではないですか? バンクーバー協定第63条『避難勧告非受諾者に対する例外規定』をご存じない?」
沙霧「そんな心無き邪悪な決まり事など! 民を何だと思っているのですか!? 軍は民を守るためにあるのですよ!?」
沙霧の言い分に、国連事務職の制服を着た女が救えない馬鹿を見る表情を見せた。なるほど、彼女は必要に応じてその決まりを作る側なのだろう。
トピア「余所の国の迷惑な連中を無駄に助けに行って却って日本の国民を危機に晒してるから
沙霧「それは結果論です! 常に死を覚悟している軍人を守るべき市民と一緒にしないでいただきたい!」
実のところ冥夜も軍人と市民の命の優先度は違うと思っているので、沙霧大尉の主張には頷ける所がある。しかしトピアは沙霧大尉や冥夜の考えとは全く逆のことを言い始めた。
トピア「
沙霧「違う、そういう話ではない! 数や効率の話ではないのです!」
沙霧大尉は反論を試みているが、冥夜にとっては衝撃的な話であった。軍人が命を粗末にすることは怠慢であり、それによって却って守るべき国民の命が脅かされるなどと、考えたことも無かった。
トピア「じゃあどういう話なんですか? 数や効率の話がお嫌いのようですが、それらを無視するというのは言い換えれば
沙霧「いや、それは軍人の矜持として……」
トピア「へえ、実際に多くの国民を救えるかどうかよりも軍人の矜持を優先なさるとはご大層な身分でいらっしゃる。あとその彩峰中将、榊総理だけにこっそり真意を暴露してるんですけどそれはご存じで?」
沙霧「真意……ですと?」
沙霧大尉に視線を向けられた榊総理が苦い顔をしている。本当にそのようなものがあったらしい。
トピア「敢えて戦線を崩壊させることで後方で息巻く国連や米国に痛みを思い出させたかったんですって」
沙霧「痛み? ……いや、確かに半島の防衛が現実的に不可能である以上、死守を命ずる国連に半島からの撤退を決意させるための契機を窺ってはいましたが……」
どうも沙霧もその真意の一端を知り得ていたようだ。
タリサ「ハァ!? おまえふっざけんなァ!? 大東亜連合にも責任があると思って今まで同情してたけどなァ! その痛みとやらのために誰が犠牲になったと思ってんだ!?」
ヴァレリオ「おおいチョビ、ステイ、ステーイ!」
プロミネンス計画チームの小柄な少女、ネパール出身のタリサ・マナンダル少尉が立ち上がって猛抗議していた。怒髪天をつく勢いで沙霧大尉に飛びかかろうとするのをプロミネンス計画の同僚が押さえ込んでいる。
戦線を放棄するために意図的に崩壊させるなど、軍事的に見て最悪の決断だ。それをやるために敢えて大東亜連合が検討していた
トピア「ああ、タリサさん、仰ることは分かりますが一旦待って下さい。この話ちょっとおかしいんですよ」
タリサ「おかしい?」
トピア「ほら、
沙霧「となれば、戒めでしょうか」
トピア「戒めと言われても、軍勢の一角が勝手に戦線離脱したら酷いことになるのは当たり前なので何の教訓にもならないと思いますが……榊総理、何か分かりますか?」
トピアは実際に本人に話を聞いていた榊総理に話を振った。榊総理は自ら意見を出す気は無かったらしく、話に加わらずに静観していたが、重々しくその口を開いた。
榊「……ええ、私も話を聞いただけですが、国連や米国に痛みを思い出させなければ半島での死傷者は何十倍にもなっていたので覚悟の上でやった、とは語っていました」
トピア「うーん、軍が崩壊して建て直しに奔走した場合に比べても何十倍の死傷者? 一体どういう想定をしてたんでしょうね? まさかとは思いますが、避難を拒否する連中を無理を押して救助したから民間犠牲者を大幅に減らせたぞという話でしょうか? それはそれで国連や米国の痛みが全く無関係だと思いますが。 まあ百歩譲って半島の犠牲者数を減らせていたとしても、その後日本上陸されて国土の半分を蹂躙されてるから台無しどころの話じゃないですよね」
冷静に考えれば考えるほど彩峰中将が何をやりたかったのかが全く分からない。真相は闇の中だ。
トピア「それで、さっきのタリサさんの話に戻りますけど、目的が何であるにしろ、日本が参戦するより遥かに前から身を粉にして前線で戦ってる将兵を犠牲にしてどうするんですか? その時死んでるのって大半が後方の米軍じゃなくて、元々必死に戦ってる前線国や亡国の兵士、そして日本帝国軍なんですよ? それでも軍人なら我慢しろって仰るわけですよね? そもそも米国や国連に痛みを思い出させたとして、その結果どうなりました? 余所の国を助けるためにわざわざ米国が戦力を出しているのにそれを無駄に犠牲にされるなど到底許容出来ないという反発を招いてるんじゃないですか? 実際日本の本土防衛戦の途中で米国に安保条約を放り投げられましたよね? もう一度訊きますけど、
一旦保留になっていた自分の意見を拾ってもらったタリサが、そうだもっと言ってやれと頷いていた。
沙霧「表面上は合理性が無いように見えるかもしれません。しかしこれは根本的には長引く大戦で曲がってしまった人の道理をただす行為と言えます。軍を優先して民を蔑ろにするなど許されることではありません。潔癖や徳義を忘れてはならないのです。理屈や決まり事の上での正しさなど……」
冥夜も軍を優先しすぎて国民への配慮が後回しにされる状況はどうかと思っている。しかし、必要以上に軍を犠牲にするとどういう結果になるかは先ほど議論がなされたばかりだ。
トピア「だとしたら結局彩峰さんも潔癖や徳義、つまり軍人の矜持とやらを神聖視して訓練された軍人の命を軽んじただけってオチになりますね。なるほど、国民を守るべき軍人を無為に犠牲にしたわけですから、国民に多大な犠牲に出たのはむしろ
彩峰 萩閣はただのアホ。驚きの結論に慧が唖然としている。
沙霧「待っていただきたい、その評価はあんまりにも! 閣下は自分を犠牲にしてでも事を成し遂げようとしたのですよ!?」
トピア「自分の命を差し出せば何をやってもいいってもんじゃないんですよ。バンクーバー協定第63条だって、民間人を気軽に見捨てる理由を与えるためにあるんじゃなくて、
沙霧「それは、いや、しかし」
トピア「そもそもですね、理屈の正しさだけでは通用しないことは確かにありますよ? でもそれは正しさが要らないわけじゃなくて、正しさは常に
勢いよく罵倒を投げつけられた沙霧大尉が唖然としている。閣僚皆殺しと聞いて慧や千鶴も面食らっている。一方、殺される側の榊総理はある程度予想出来ていたようで泰然自若としていた。
トピアは感情的になりすぎたと思ったのか、前傾姿勢から一旦背筋を伸ばすと深呼吸して仕切り直した。
新春特番、烈士さんいらっしゃいの巻。あけましておめでとうございます!
紅蓮 醍三郎や御剣 雷電はオルタネイティヴ世界にいるかどうか分からんキャラなのですが、いたならものすごく強そうなので勝手に大将職に就けました。
補足説明すると、原作では大東亜連合が先に避難拒否住民の救助作戦を展開していて彩峰中将が便乗した形ですが、この世界では第63条が存在するため大東亜連合が助けるべきか迷っていたところで彩峰中将が後押しした形になります。
第63条は彩峰事件を阻止するためにデグさんが追加させたもので、ギリシャでも自ら有効活用していますが、そもそも彩峰中将は義務や規則ではなく人情浪花節で動いているため第63条があろうがなかろうが関係ないというのがデグさんの誤算でした。