2001年11月4日、トピアがこの世界に来てから14日目。
世界中の国連施設に物資転送装置が設置され、サンプル食材の供給が始まっていた。実際にどの程度食料が行き渡るかが試される所であるが、それ以前に設置に赴いた
襲撃の主力はキリスト教恭順派並びに
キリスト教恭順派の教えはBETAは神の使徒なので逆らわず受け入れようという、ただ辛い現実から逃げるためだけにあるようなもので、今回そのBETAを神敵として他ならぬ神が助けに来たことで信仰が瓦解しつつあった。一方の
そういう理由から、その2つのテロ組織とは無関係に国連施設の襲撃を行う地方軍閥まで現れる始末で、襲撃者の内ごく一部は占拠に成功していた。しかし占拠出来たところで目的の達成には至らなかった。何故なら国連以外の勢力に占拠された物資転送装置は大元のシステムから物資の転送を差し止めることが可能だったからだ。彼らの所業は金の卵を産む鶏を絞め殺そうとしただけであった。少し考えれば分かりそうなものなのだが、欲に目がくらむとその程度のことも分からなくなるらしい。
そして連中は食糧供給の独占という第一目標の達成が無理となると、あろうことか短慮を起こして物資転送装置を銃器や爆弾で破壊しようとした。自分の利益にならないのなら代わりに相手の足を引っ張ろうとしたのだ。
この所業に民衆は大激怒した。大義名分に反しているなどという問題すらもはやどうでもいい。何しろ連中は食糧供給を独占する目的で合成食を含む国連経由での食糧供給ルートを壊滅させていたのだ。黙っていれば餓死を待つだけとなれば、もう怖いものはない。その行動原理はかつて
なお施設を襲撃した連中の中でも恭順派だけは相変わらず滅びを求めており、方針は一貫していたが、折角助かったのにそれでも滅びよという一貫性はただ迷惑なだけなので、滅びたければお前らだけで滅べと討ち滅ぼされていった。
日本や英国は国土のうちBETAの侵攻を受けたエリアからの避難者が難民化しており、それに加え近隣の国の難民がいたためそこそこ対応に手を焼いていたが、まだ対応出来る範囲内だった。国土を失った国々は当然それ以上の混乱に見舞われており、中でも発展途上国や中国は酷い有様だった。中国と統一中華戦線を組んで中国難民を受け入れている台湾ではこれまで国連治安維持軍の力を借りずに独自の戦力で治安維持を行ってきたのだが、この混乱でキャパオーバーしそうになっていた。
一方、ターニャの提言により1970年代から働かない難民の受け入れを拒否してアフリカなどに押しつけていた米国は国内に関してはそういった騒動に煩わされずに美食を堪能していたが、何しろ自称世界の警察なので、各地の国連治安維持軍の苦境には手を貸さざるを得なかった。
ターニャが歴史介入しているのに今ひとつ米国以外の難民の状況が改善されていないように見えるが、実際にはテロ対策を見越して幾らかは改善している。ならば何故こんな状況になっているのかと言えば、単純に地球人類の残存数が10億増え、つまり難民自体が増えたために対応が追いつかなくなったのが原因だ。
トピア「いやあ、想定の中でも
トピアは実にマブラヴ地球人らしい反応だと呆れた顔をしていた。なお悪い部類と言っている通り、これでもまだ最悪の想定ではない。マブラヴ地球人のポテンシャルからすると、更に酷いパターンがあり得ると見積もっていたのだ。
モモ王女「想定はしておりましたが、それにしてもと言った所ですわね」
夕呼「まあこうなるんじゃないかとは思ってたけれど、分かっててやったのね」
幹部食堂兼会議室、ステークの斜め後ろの補佐席から夕呼が相づちを返した。他にも夕呼の隣に霞が、マインの補佐としてターニャが、ファムの補佐として純夏と
夕呼とターニャがここにいるのは必然で、そもそも幹部会議への出席権が勧誘を受ける必須条件であったためだ。なお総務として出席するのは顔ぶれから見ても実は条件がかなり緩いことが分かる。
能力目当てでヘッドハンティングされた二人の内、夕呼は研究のみならずその頭脳を活かして政治交渉にも能力を発揮出来るが、ひとまず期待されているのは研究の方だ。
もう一方のターニャはどういう訳か自分では秀才にも及ばない凡才だと思っているが、客観的に見るとお前の様な凡才がいるかレベルの人材で、直接戦闘から戦術・戦略・練兵・政治・経済・魔法まで幅広くカバーしているので
現在マイスト通貨は日本円との固定相場制となっている。これは変動相場制為替の概念は
また、ターニャが手にしているカップにはわざわざジャマイカで買い付けてきたブルーマウンテンNo.1豆を使った天然コーヒーが淹れてあり、彼女はその芳醇な香りを楽しみながらちびちびと飲み進めていた。その表情は長年の付き合いがある相手でもなかなか見ないほどに穏やかであった。ターニャは今、追い求めてやまなかった平和で文化的な時間を満喫しているのだ。眼前で物騒な話が飛び交っていることなど全く意に介してもいない。
天然のコーヒー豆は嗜好品の類いで、しかもジャマイカで最高級のグレードともなると現在の地球ではそれなりに高額になるが、
ところでスリランカの国土であるセイロン島は現在も維持されており、この世界だけでなくオルタネイティヴ原作世界でも1994年にインドが陥落した後7年間人類居住圏として死守されているが、ここは貴重な紅茶産地なので英国の意地がそうさせたのではないかという噂もある。何しろBETAの侵略が進んで世界三大銘茶のうち中国のキーマン、インドのダージリン(+アッサム、ニルギリ)が壊滅し、あとはスリランカのウヴァしか残されていないのだ。しかもスリランカにはウヴァ以外にも多数の茶葉銘柄が存在する。それは必死にもなろう。
コーヒーの場合は東南アジアとアラブ以外の農園は残存しているが、それでも失われたものは大きい。この平和で文化的な時間を死守するためにもBETA共は滅ぼさねばならぬとターニャは決意を新たにした。
平和を謳歌するために自ら戦いに行くのは矛盾している様に見えるが、今までBETAと戦いながらひたすら面倒ごとを処理し続けたターニャとしては、地球に残って人類同士の争いに巻き込まれるよりは勝ち馬である
失礼ながら当初やや頭が緩そうに見えた代表のトピアも、説明会での話しぶりを見る限り
トピア「失望しましたか?」
夕呼に問いかけながらも、実際は全くそのような心配をしていないことがトピアの表情から分かる。
夕呼「いいえ? 頭がお花畑じゃないことが分かってむしろ安心したわ。考え無しの善意ほど怖い物は無いもの」
テクス「この世界の地球人類が厄介なことは分かってたでござるからな」
トピア「これで地球で一番厄介なテロリスト連中が絶滅してくれれば万々歳なんですが、まあ根絶までは無理でしょうね」
ターニャ「ご存じとは思いますが、連中の
トピア「そのようですね」
夕呼がフランクな口調で話している一方でターニャが丁寧な言葉のままなのは、現在の二人の階級に特に差があるわけではなく、堅苦しいのが嫌いな夕呼と上下関係をきっちりしようとするターニャの性格の差である。ターニャとしては取締役会議に取締役の中では下っ端、常務くらいの役職として出席しているような感覚なのだ。そもそもターニャの国連での階級である准将相当官というのも将官の中では下っ端であった。
キリスト教恭順派並びに
本来の歴史ではこの2つのテロ組織の
シュヴァルツェスマーケンではテオドール達第666戦術機中隊
そんな誓いを立てたテオドールが何故テロリストの
まず彼の生き別れの義理の妹であるリィズ・ホーエンシュタインが
加えて、テオドールの意中の人であるアイリスディーナ・ベルンハルトも最終決戦直後に喪っている。666中隊の仲間で生き残ったのはテオドールを含めてもわずか4人だ。
更にシュヴァルツェスマーケンでは統一目前まで行っていた東西ドイツ政府が、オルタネイティヴ本編ではどういうわけか分断された状態になっている。東欧州社会主義同盟の盟主が東ドイツなのだ。何かが原因で統一に失敗したか、或いは再分断されたのかもしれないが、その際に最後に残った希望の灯火であるカティア・ヴァルトハイムこと本名ウルスラ・シュトラハヴィッツが失われた可能性がある。
ついでに言うなら東西ドイツが力を合わせればBETAにもきっと勝てる、と意気込んでいたものの、当時の技術力では地球全体で協力出来たとしても対抗が不可能なくらいなので、当然の結果として2001年現在ではドイツの国土は影も形も無い。
そういったテオドールの事情は幾らか同情の余地はあるのだが、それはそれとしてテロに走るのではやっていることがあまりにも迷惑すぎる。兄妹揃って出自は可哀想だがそれはそれとしてやってることが酷すぎるというのは何なのだろうか。本当は血縁があったりしないだろうか。
ただしここまではマブラヴ原作の話だ。サクロボスコ事件からターニャが関わっているこの世界ではテオドールが辿った経緯も違う。
まずシュヴァルツェスマーケンで666中隊がウルスラ・シュトラハヴィッツを拾ったのは偶然の巡り合わせであり、この世界ではパレオロゴス作戦での軍勢壊滅を免れたことで軍とBETAが動くタイミングが変わってしまったので、偶然の出会いを果たしていない。では666中隊はどうなったのか。そのままなら英雄の欠如によりフランツ・ハイム少将の協力を得られず
ただし666中隊を罠に嵌めた際に
当初はデグさんの東側に対する方針から666中隊が原作の生き残りメンバー4人以外獄中死する流れで書いてましたが、流石に無いなと思って同志グレーテル中尉に頑張って戴きました。