トピア「なるほど、それでデグさんの部下に
九十九「なかなか
量子演算機のパワーで集められた経緯情報にトピアと九十九は唸った。666中隊はほぼ全員生き残っているが、東ドイツは救われていない。ターニャの
ターニャ・デグレチャフはシカゴ学派の市場原理主義者であり、大の
ターニャ「小官が望んだわけではありません。それに却ってテロ組織のトップが誰なのか分からんという事態になってしまいました」
まず大前提として、ターニャが自発的に共産主義国家を助けようとするはずがない。実際、どうせウルスラが不在で東西統一出来ないのなら東ドイツと一緒にテオドールもすり潰されてしまえばテロも抑止出来て一石二鳥ではないかと当初のターニャは思っていた。しかし、ギリシャの失敗を繰り返さないためターニャが東ドイツに国連防衛予算の用途を監査しに行った時に丁度666中隊政治将校のグレーテルが支援を要請しに来て、しかもそのタイミングで666中隊が
これに対し、
国連から東ドイツへの資金援助が続いていたこともあり、ベアトリクス・ブレーメによって恐怖で統率された軍勢は、すり潰されるまではBETAへの肉盾として結構役に立った。愉快なことに東西ドイツの統一によりBETAに対抗出来るというウルスラの主張と逆にベアトリクスは恐怖による統制が完璧なら東ドイツだけでもBETAにも勝てると夢想していたが、ターニャからするとどっちにしろドイツがBETAに勝つ可能性など最初から考えるにも値しないので遅滞が出来ただけで十分だ。返す返すも
なおギリシャがやらかしていなかったらターニャが東ドイツに監査に訪れることもなかったので、666中隊にとってはギリシャのやらかしはむしろナイスアシストだ。
そういういきさつで、
さて、666中隊は精鋭ではあるが嫌われ者の東ドイツ出身である。東ドイツ在籍時代にウルスラが不在だったせいでこの時点で西ドイツ陸軍第51戦術機甲大隊フッケバインや米海軍第103戦術歩行戦闘隊ジョリーロジャースとの友好も育まれてはいない。であるからして、ターニャに限らず方々の国連軍も御しがたいとしてこれを受け入れたがらなかったわけだが、この先行き不安な立ち位置を何とかするべく政治将校グレーテル中尉は根回しに奔走した。666中隊はターニャ局長に恩義を感じている、彼女の命令ならば疑問の余地無く忠実に遂行出来るだろう、と感情と合理の両面に訴えて回り外堀を埋めていったのだ。確かに東ドイツ最強と名高い666中隊が恩義から意欲高く戦えるならば利益となるし、
善後策として、ターニャは彼らに自分が求める水準に達しているかどうかの試験を課し、そして666中隊全員を容赦なくふるい落とした。つまりは自分の要求を満たす人材ではないので採用出来ないのは仕方ない、まことに残念ですなあという理屈だ。前世で第601編成部隊選抜の時にも使おうとした手だ。
しかしあまりに理不尽な難易度に対して、人間が不可能な水準を要求するなという文句は当然出るものだ。幾ら何でも東ドイツ最強部隊が全員ふるい落とされるのはおかしいという話だ。勿論ターニャはこれを想定しており、とどめとしてその試験を自分で突破してみせた。ほら出来るじゃないか、努力が足りないだけではないかと。
ターニャ・デグレチャフは
ただし周囲の評価はその逆だ。何しろ普段は事務方で、軍の階級でも准将相当のターニャがわざわざ鍛えているのだ。ターニャのこの用意は、
深い事情を知らない者は軍人の鑑であると尊敬の念を抱いたが、BELKA計画によりターニャの恐ろしさを刻み込まれた米国国防総省などは、あの
衛士として戦場に出ているわけでもないターニャの技量に衝撃を受け、自尊心をへし折られた中隊各員だが、ターニャの直属になるために散々根回ししてきたため、今更追い出されても他に行く所が無い。進退窮まったと言ってもいい。だが、考え方を変えてみれば、戦略の視点を持ちながら戦術機にここまで理解のある上官というのはむしろ願ってもないことである。かつて無茶な命令で部下を大量に死なせたことがあるという噂もあるが、軍事的合理性より政治的都合が優先される東ドイツでは無茶ではない命令の方が少ないくらいだ。そもそもBETA大戦というのは無理を繰り返しながら辛うじて継続しているものだ。それがこれまでたった一度きりだというのなら間違いなく有能だろう。ターニャ直属というポジションにより一層の価値を見出した666中隊は、ならばその高みに到達してみせようとターニャに教えを乞うた。
ターニャは少しだけ面倒くさがってみせたが、本当に自分で
どういうことかと言えば、
ターニャは資本主義の実例として米国や西ドイツ、日本帝国の繁栄を見せ、共産主義などというまやかしに傾倒するから東ドイツのようなことになると説いた。ならば救われるには共産主義を捨てるしかないだろうと。
これに対し、元々西側への逃亡を図った上で失敗し、自身と妹を
この東ドイツを全否定するかのような言い様で一時期ターニャと666中隊の仲は険悪になりかけたが、アイリスディーナは「本来ならば部下とここまで議論を交わす必要自体が無いはずだ。局長はどうすれば現実のドイツを良く出来るのかを
斯くして再訓練は脱落者を出すことなく修了し、何の因果か前世に続いてドイツ人っぽい無駄に優秀な部下を抱えることになったターニャが、ならば使ってやろうと前世の第203航空魔導大隊同様に666中隊を使い倒したのは言うまでもない。
666中隊各員は過酷な戦場ばかりに放り込まれたが、ターニャが自分達を使い潰そうとしているのではないことにはすぐに気付いた。何しろ訓練修了と同時に最新鋭の第2世代戦術機であるF-14トムキャットが全員分引き渡されたのだ。しかもこれは本来米海軍に優先的に供給されているものだ。東ドイツでは遠目に指を咥えて羨ましがるか、ブルジョワのオモチャだなどと妬みにまみれた負け惜しみを吐くしか無かった、あのF-14が自分達の物になったのだ。予想外の事態に、これを手に入れるために政治将校グレーテルが相当無茶をしたのではないかと中隊員達は却って心配をする羽目になったが、そんなことはなく普通に支給されたものだという。だとすれば、これで自分達が期待されていることを理解出来ないのは相当なアホに違いない。何しろあの理不尽な採用基準を乗り越えて局長のお眼鏡にかなったのだ。666中隊はもはや簡単に代わりが利く様な人材ではないのだろう。勿論補給に関しても東ドイツで戦っていた頃よりも遙かに恵まれていたし、何より戦場よりも過酷な訓練のお陰で実戦では初期メンバーが誰一人損耗せずに済んでいたのだ。機体もF-14だけではなく次から次に高性能な新型機が持ち込まれた。戦い続けるほどに666中隊からターニャへの信頼は高まった。
一方ターニャは繰り返し死地へ送り込んでいるのに何故か喜ぶ666中隊を見て、前世に続いてまたとんでもない
F-14は確かに当時の最新であり、ターニャも自分の肉盾には必要なコストをかける事を厭わない。しかし後の歴史を知っているターニャにとってはいずれ時代の波に呑まれる過渡期の産物に過ぎないので、そこまで喜ぶほど大した物だという認識が無かった。連中の技量を活かすには第1世代機では不足、
更にそれ以降の乗り換えも最新鋭機に出来たのは、666中隊自身が実績を出し続けた結果だ。つまり666中隊に使わせると余程機体性能に問題がない限り確実に戦果を出せる上に改善すべき点までレポートが出てくるので、最終的にはターニャの方から要請しなくても新型機の性能アピールのために是非使ってくれとメーカー側からお願いされるようになったのだ。
これも両者ともに気付いていない深刻な
ちなみにデグさんが666中隊を見捨てた場合、肝心のテオドールが主人公特有の理不尽なサバイバビリティで生き残って怨恨からテロリストになるルートに入ってました。
あとデグさんに戦術機適性があるかどうかは不明です。ルナティック・ルナリアンでは一度も乗っていなかったので。
書いてて気付いたんですけど、デグさんって余人と感性と価値観がかけ離れているせいで、ほぼ原作のキャラ人格をエミュレートするだけで原作とは全く別の状況でも愉快な勘違いが発生するという素晴らしいキャラですね。テンプレ鈍感キャラみたいに知能を低下させる必要が無いのが特に素晴らしい。