【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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207. 会いたかったぞ! 縊り殺したいほどになァッ!!

 魔術機甲連隊長であるアイリスディーナ・ベルンハルト大佐の号令で連隊各員が配置につき、1個魔術機甲連隊がサクロボスコハイヴへの侵攻のために内側の円を、更に1個多脚戦車機甲連隊が援軍を阻止する形で外側の円を形成していった。

 多脚戦車機甲連隊は門兵両伍長を含む地球各国の衛士適性の無い者達によって構成されている。元々戦術機を導入していた国以外の出身者も主にこちらに入っている形だ。TOM(トム)の操縦自体は極めて簡単なので、あとは部隊としての戦術行動が出来れば問題は無い。つまり主に人格面で選出されている。

 今回は実戦訓練を兼ねているので、戦術行動も何も無い無慈悲な殲滅力を誇るラストプリズム(Last Prism)や重水素弾頭は使わないことになっているが、それでも地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団は圧倒的な攻撃力でサクロボスコハイヴ周辺のBETAを殲滅していった。TOM(トム)の主武装である自動迎撃レーザータレットや迅雷の脚部に設置されたレーザー防御システムで近寄るBETAを片っ端から自動殲滅しているのが大きいだろう。迅雷の方のレーザーは電力と設置面積の都合から火力が低いので小型種の迎撃を主としているが、TOM(トム)の方は大型種にも問題無く穴を空けていっている。

 

 迅雷各機は自動迎撃のレーザー以外に魔導銃や近接武器を行使してBETAを殲滅している。

 魔導銃主体の場合はターニャと同じで、魔法系エンチャントで固めており、近接攻撃は魔導刃を使うことになる。エンチャント構成的には魔導銃をそのままラストプリズム(Last Prism)に持ち替えることが可能だ。

 物理近接武器主体の場合はエンチャントが物理特化になり、物理銃にほぼエンチャントが乗らないので、射撃武装は基礎攻撃力で要塞(フォート)級まで対応出来る様に仮想実体化方式の120mmマシンガンを装備している。戦術機の射撃武装が36mm突撃砲主体なのはケースレス弾で1カートリッジの装弾数が2,000発もあるからで、残弾が無限ならそんな豆鉄砲にこだわる理由は無い。迅雷なら数が多い小型種を相手にするにも携帯レーザー迎撃モジュール48基や頭部魔導機関砲で十分だ。

 なお120mmマシンガンの中でも特に有名なザクマシンガンは装弾数100~145発程度らしく、反動を抑えるために初速が100m/s程度しかない。戦術機の突撃砲から6発だけ発射出来る120mm弾も同じ理由で初速を抑えてロケットモーターで加速するようになっているのだが、アダマンタイトフレームを更に構造強化している迅雷はザクや戦術機よりも遙かに頑強なので、そんな遠慮はかなぐり捨てている。しかも弾丸はルミナイト(Luminite)製だ。突撃(デストロイヤー)級や要塞(フォート)級にも構わず突き刺さっていた。

 ごく一部に攻撃力特化の弓使いもいるが、殲滅力が低く扱いが難しいのでその数は少ない。

 

 魔術機甲連隊各員の動きは淀みない。特に雷速機動とスキル攻撃の間に切れ目がないのが特徴だ。

 再訓練を施したターニャからするとまだまだ練度に不満があり、今後も1ヶ月を目処に訓練を続ける予定となっているが、実戦経験に乏しいオーストラリア衛士や途中参加の中華民国衛士、果ては訓練兵に至るまで全員がアクティブスキルを2並列までは苦労せず起動出来るようになったのは大きい。つまりは雷速機動と攻撃を同時に出来るということなのだ。これだけでも動きが格段にスムーズになる。

 なおターニャ本人も更に習熟が進んで軽く80並列に達し、10並列分のリソースで即席のマニュアルスキル1つを並列起動出来るようになり、攻性デコイという新しい術式を開発までしていた。あまりに隔絶したその実力に、ターニャは黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)を始めとした戦闘団員からの尊敬を欲しいままにしていた。

 なおターニャが並列起動の使い方を教える一方でマニュアルスキルの運用についてはステークが指導していた。そういうわけで互いに教え合う形になり、ステークも定型60並列、マニュアル15並列まで行けるようになっていた。どっちも大概だ。

 その次に元々魔法を使っていた匠衆(マイスターズ)戦闘班が定型15並列前後、魔法初心者でもターニャの指導に慣れていて吸収が早い黒の宣告(シュヴァルツェスマーケン)抽出中隊が定型10並列前後と続いている。

 ターニャの前世基準では定型20並列が出来て精鋭部隊としては一人前なので、その水準に達している者はまだ2人しかいないことになる。まあ第203航空魔導大隊でも再訓練に1ヶ月掛けたので、まだ1週間しか訓練していない現状では仕方のない所だ。

 再訓練をしている精鋭達と一緒の訓練メニューを訓練兵にも課した結果、根性で食らいついてきて訓練が()()()()()()()()()ので、冥夜達207B分隊も少尉任官して今回の実戦に参加していた。彼女達も当然最低2並列の基準をクリアしており、神宮司大尉にそれとなく見守られながら問題無くBETAを殲滅している。

 なお、トリガー人員に万が一死なれては全てがご破算なので、戦闘団各員には漏れなく魔法の鏡(Magic Mirror)を支給してある。たとえ何かの間違いで撃破されても即死さえしなければどうにでもなるというわけだ。

 

 魔術機は2機1個分隊もしくは4機1個小隊を組んでそれぞれ別の(ゲート)への突入を開始し、横坑(ドリフト)縦坑(シャフト)に存在するBETAを殲滅しながら各個に中枢を目指し始めた。

 今回ただでさえBETAが弱いのに構造まで分かっていては実弾演習としても簡単すぎるという()()からハイヴ構造のスキャンデータは戦闘団各員に提供されず、制圧した部分のデータを共有してマップが徐々に埋められていく形になっていた。それでも攻略は順調に進み、地下茎構造のおよそ半分が埋まった所で最初の迅雷が中枢突入に成功した。

 

ターニャ≪会いたかったぞ! 縊り殺したいほどになァッ!!≫

 

 突入を果たしたのは分隊を組んでもいないターニャ機であった。ターニャ機は一番槍で突撃を敢行した上に1機で中隊以上の戦力を発揮するワンマンアーミー状態なのだからこれは必然とも言えた。

 更に言うならば、相手はサクロボスコ事件の際に戦端を開いたBETAどもの司令塔だ。ターニャにとっては34年の歳月を掛けてようやく対面を果たした長年の仇敵と言えよう。

 重頭脳(ブレイン)級が巨大触手による迎撃を試みるが、ターニャの迅雷はそれに構わず魔導銃を構え、重頭脳(ブレイン)級本体への攻撃を開始。半円状に展開した指揮下の攻性デコイ達も一斉に射撃を開始したことで触手はたまらず守勢に回った。魔弾が触手ごと重頭脳(ブレイン)級本体を蜂の巣にしていく。とどめとばかりにターニャ機はチャージを開始し、雷速機動で真上に陣取ると、眼下の重頭脳(ブレイン)級を消し飛ばすほどの極大射撃を見舞った。そのあとには巨大な穴だけが残った。

 

ターニャ≪カッサンドラ01、目標撃破。各員残敵を掃討しつつサクロボスコハイヴを脱出、その後中隊ごとに分かれて月面各地のハイヴ攻略を開始せよ≫

 

 月面にハイヴは17箇所。総がかりで敵を分散させて司令塔のサクロボスコハイヴを潰したので、あと16箇所を18個中隊+ターニャ単独で1つずつ潰していくと中隊が3つ余ってしまうが、実際にはTOM(トム)は比較的足が遅いので、サクロボスコから遠いハイヴ10箇所を迅雷9個中隊+ターニャが攻略して、サクロボスコ近辺のハイヴ6箇所をTOM(トム)9個中隊のうち6個中隊が同時に制圧していく形になる。足が速い迅雷で遠くの比較的小規模なハイヴを、鉄壁の防御力を誇るTOM(トム)で近くの比較的大規模なハイヴを制圧する分担だ。

 光線(レーザー)級すら存在しないハイヴに迅雷やTOM(トム)を12機ずつ投入するのだから、これでも過剰戦力と言えるくらいだろう。

 なお比較的足が遅いTOM(トム)でも大気圏内をマッハ2で飛び宇宙や水中にすら対応しているので、匠衆(マイスターズ)に陸・海・空・宇宙軍の区別は無い。

 

アイリスディーナ≪シュヴァルツ1了解。各員気を抜かず務めを果たせ!≫

 

 この号令により各機がサクロボスコハイヴから脱出し、それぞれ予め割り振られた担当のハイヴへと向かっていく。サクロボスコ攻略でほぼ損失機が出ない前提の戦力配分であり、想定通り1機も撃墜されてはいなかった。

 そしてTOM(トム)1個連隊の内6個中隊が包囲の外側向きに前進して周辺ハイヴへ攻略に赴き、余った3個中隊が先ほどまでの配置から反転して内側向きに構え、サクロボスコハイヴから他のハイヴへと退避しようとする残存BETAを撃滅していく。こちらも射程と火力が足りているので全く問題無く処理が進んでいった。

 

 その後も月面攻略作戦はつつがなく進行していった。しかし異常事態はターニャがサクロボスコから最も遠いハイヴ17を単独攻略中に起きた。

 

ターニャ≪カッサンドラ01、ハイヴ17の中枢を確認≫

 

遙≪ヴァルキリーマムよりカッサンドラ01へ、緊急事態です! 随伴艦からハイヴ17に向けてG弾が投下されました! インファクトリが迎撃を試みますが、そちらも脱出を開始して下さい!≫

 

タリサ≪ンだとォッ!?≫

 

まりも≪G弾を持ち込んでいただと!?≫

 

 コマンドポストの遙からターニャへ緊急連絡。インファクトリの隣には観戦武官が乗り込んだ随伴艦が同行していたのだが、その随伴艦がターニャが突入攻略中のハイヴに向けてG弾を発射したというのだ。使う予定が無ければわざわざG弾を持ち込んでいるはずがなく、タイミングから見て脱出が困難な状態を狙っていたのだろう。

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