インファクトリは瞬く間にL1宙域の
現場に到着した後は核弾頭とインファクトリの相対速度を合わせ、ターニャの号令で
そして先頭の核弾頭を撃ち落とすと討ち漏らしが無いかを確認。
遙≪ヴァルキリーマムより各機へ、核弾頭の全弾撃墜を確認しました≫
その報告にほっと一息つこうとしたところでターニャが次の命令を下した。
ターニャ≪カッサンドラ01より各機へ、速やかに帰投せよ。地球へ向かうぞ。こちらを囮にして
実はこちらも万が一の場合の備えはある。しかし地球人の手で何とかするに越したことは無い。
グレーテル≪司令部、攻撃衛星の破壊は許可されますか?≫
トピア≪乗っ取られた無人衛星は最悪撃墜してもいいですよ。
ユウヤ≪そいつは助かる!≫
核弾頭そのものよりも攻撃衛星を破壊した方が手間が少なくて済む。問題は勝手にそんなことをすれば政治的問題が発生することだが、今は緊急事態であり、そもそも攻撃衛星を乗っ取られた国の方が過失が大きいのだから交渉はそれほど苦労しないだろう。なお実際に政治交渉を何とかするのはトピアではなくモモ王女だ。
インファクトリは艦載機を回収すると再び加速し、地球軌道へ到達。その時点で悪い予測が当たったことが判明した。
サティ≪
各機に乗っ取られた衛星と発射された核弾頭の情報が送られ、マップに表示された。有人ステーションと無人衛星の区別も付くようになっている。
地球の上空100kmをマッハ440の雷速機動で移動するとして、地球の裏側までの半円が約2万km。マッハ440は約9千km/分なので切れ目無しの全速力でも2分と少し掛かる。
ターニャ≪各機出撃! 最も遠方のものはカッサンドラ01が対処する!≫
言うや否や、ターニャは飛び出していった。ターニャ機ならば雷速機動を切れ目無く使うことで地球の裏側まで全速力で移動することが出来る。
出撃間際、ターニャはマインとアイコンタクトを交わし、それにマインが頷いた。
アイリスディーナ≪シュヴァルツ1より各機へ、指示通りのエリアへ向かえ! 1発も取りこぼすなよ!≫
インファクトリから出撃した各機が稲光を引いて地球各地の対処に向かっていく。
一応地上からの迎撃や他の衛星からの迎撃も可能なはずだが、このミサイル迎撃システムは迎撃成功率が100%ではないので、1発でも落着すれば大惨事だし、落着しなくても地表から近い所で起爆すればそれだけでも甚大な被害が出る。その前に撃ち落としておくに越したことは無い。
同じ考えで国連や各国の宇宙軍も緊急出動を始めている。しかし宇宙軍の
沙霧≪あれか!≫
日本帝国上空に到達した沙霧大尉は撃墜すべき目標を捉えた。全部で12の核ミサイル。ターゲットは人口密集地だ。あれが着弾すれば日本はまたBETA上陸時並かそれ以上の壊滅的な被害を受けてしまうだろう。
沙霧の脳裏に横浜ハイヴに5次元効果爆弾が投下されたときの光景がフラッシュバックし、思わず胸を締め付けられた。だが、あのときとは決定的に違う。今の沙霧にはそれに対処出来るだけの力と装備があるのだ。
今回沙霧が日本方面担当になったのは偶然だ。緊急事態なので希望の担当エリアを聞いている暇も無かったのだが、単純に
沙霧≪やらせはせん! もう何も奪わせはせんぞ! これ以上何も! 一つたりとも!≫
沙霧は近接戦闘長刀改+99を示現流の蜻蛉に構え、全神経を集中。長刀を全力で振り下ろしながら雷速機動を発動して、
これが出来る者は精鋭たる
普通は雷速機動中の攻撃は正確な狙いが定まらないものだ。特に今回の様に狙うべきポイントが限られる上に迅雷の通常飛行速度マッハ2を超えている標的の場合は、まず雷速機動で追い越してからそれぞれの目標に攻撃することが推奨されているのだが、沙霧が執念で鍛え上げた剣技はその精度問題の克服を可能としていた。
こんな人間離れしたタツジンが原作では人間同士の戦いで戦死しているという事実はにわかには信じがたい。どういうことかと言えば、原作オルタネイティヴで沙霧機は最終的に月詠 真那に撃墜されているが、その際には自分の役目は終わったとみなしてほぼ無抵抗で介錯を受けていたので実質誰にも負けていないのだ。動機が自罰的であっても、妄執であっても、一念を以て鍛え続けたその腕だけは本物であった。
その見事なワザマエに、放送を見ていた日本帝国民からは喝采が上がったが、沙霧は原因を絶つべくすぐさま衛星高度への上昇を開始した。
日本だけでなく世界各地で核ミサイルの迎撃は成功し、民衆は喝采を上げた。
その頃、インファクトリから見て地球の裏側、赤道上の西経75度、南米コロンビアにターニャは到達していた。ターニャが片付けなければならない標的の範囲は米国からブラジルまでとかなり広い。そこでターニャは6つの攻性デコイを使い、デコイ全てに雷速機動を使わせることで6並列処理を開始した。自身は制御に集中するためにその場にとどまる形になる。
ターニャのかつての部下であるスパイク大隊やスピア大隊のナンバーを付けた旧世代の戦術機が稲光を曳いて各地へ散っていき、対処を開始した。これならば十分間に合う計算だ。
ブラジル上空に接近した核ミサイルに英霊の戦術機がナイフを突き立てて信管を仕留め、ペルー上空の核ミサイルを36mm砲弾で撃破し、ボリビア上空の核ミサイルを狙撃で仕留め、メキシコ上空の核ミサイルをすれ違いざまに切り飛ばし、米国西海岸上空の核ミサイルを蹴り飛ばし、米国東海岸上空の核ミサイルを捕まえて上空に投げ飛ばす。その活躍はやはり喝采を以て迎えられた。
ただ他と違うのは。
ターニャ≪ッ! ……やはりここで仕掛けて来たか≫
ターニャは背後からの攻撃を迅雷を側転させて緊急回避した。見た目上は何もいないのだが、足に何かが掠った感触があった。
回避出来たのは偶然ではない。魔導反応を感知するのは航空魔導師としては基礎の基礎であるし、そもそもターニャやマインは、
ターニャ≪信じたくはなかったがやはり貴様か、テオドール!≫
空中で腕を組んで仁王立ちしたターニャの迅雷が全方位に広がる魔力の衝撃波をぶつけると相手の光学欺瞞が解除され、そこに