【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 [2025/11/03]タイトルを変更しました。回転のこぎりの説明を詳細化しました。一部の台詞を変更しました。全体的に細かく加筆修正しました。時間経過部分に仕切りを追加しました。


021. Xリオン……『エクセリオン』でどうですか?

 拠点に戻ったトピアはトリオに意見を聞いた上でトリオ用の部屋と家具を自分の部屋と同じ仕様で作ると、各種作物畑や畜産場の整備を始めた。 伝説の パンの効能は高いが、流石に食事がパンだけというのは問題だと思ったからだ。既に触れたように、他の二人は食料生産分野において頼りにならないのでこれはトピアがやるしかないのだ。まあクラフトピア由来の食材は好評なので、嫌々やっているわけでもないが。

 

 小麦以外の畑……正式名称は農園なのだが、見た目は小麦畑と変わらないのでこの際畑でいいだろう。これには小麦畑と違って種まきが必要だ。

 具体的にはマルチスリングに種を装填して収穫までの時間+自動刈り取り機の作動周期をやや超える一定間隔で発射させ、種まき1回あたり4面×7スタック×9=252の作物を4つの自動刈り取り機がそれぞれ刈り取る。刈り取られた作物は壁力でコンベアに移動し、大容量コンテナに収納する。このセットを種を持ち込んだ15種類の作物それぞれに作る。

 精々7人用としては明らかに過剰な規模だが、最初に使うのがわざわざ持ち込んだ伝説の種各種400袋であり、その種から育つ作物はともかく作物から抽出する種には 伝説の エンチャントはつかないので無駄遣いは出来ないのだ。

 なおマルチスリングの固定が不十分だと反動で位置が段々ずれていって畑4面に種が当たらなくなるので、最初にしっかり固定するのが肝要である。

 

 ところでクラフトピアには地面に固定する『自動刈り取り機』とは別に『回転のこぎり』や『あたまのいい回転のこぎり』といった自動化装置も存在する。一般的に思い浮かべられる回転のこぎりは丸鋸、或いはチェーンソーになるだろうが、クラフトピアの回転のこぎりは全く別の物だ。まず円筒形の胴体から6本のチェーンソーが放射状に生えており、そのチェーンソーが胴体の周りを回転している。そしてその胴体の下にタイヤが付いて自走するようになっている、言わば自走式刈り取り機なのだ。一見すごそうな機械なのだが、これらは実際に使ってみると2つの大きな問題に直面する。

 まず1つ目に、回転のこぎり類は近くの刈り取り対象を検知して自走徘徊し刈り取っていくように出来ているのだが、複数の畑を徘徊するために作物が実ってから刈り取るまでの時間が一定にならない。つまり場合によってはマルチスリングの種まき周期を越えても刈り取られないままの作物が残り、空いていない畑に種が蒔かれることになる。そうなると貴重な伝説の種が無駄になってしまうのだ。

 ならばと下に作物を通す隙間の空いた壁で囲ってそれぞれの畑に固定してしまえば回転のこぎりも徘徊しなくなるのだが、そうするくらいなら元々設置型でかさばらない自動刈り取り機を使うべきである。それに回転のこぎりは固定したと思っても固定出来ていないこともあり、これが2つ目の問題点だ。どういうわけか回転のこぎりは密室からですら脱走するのだ。あたまのいいとは脱走に関する知恵が回るという意味なのだろうか? いや下位バージョンですら脱走するのでそれは関係ないだろう。

 

 畑の整備が終わったら次に畜産だ。畜産は肉だけが目的なら豚が最も適しているが、現状では肉と一緒に鉄鉱石を産出するワニを優先するべきと見てトピアはワニの畜産に手をつけた。

 まず最下段に大鍋を設置する。次に大鍋の上の段に交配所Sを鍋を囲むように内側向きに設置する。交配で増えたワニが鍋の中に落ちるようにする形である。他の家畜なら水没させて割合ダメージで水死させた方が楽なのだが、ワニは水死しないので大鍋で煮ることで耐久を削り取るのだ。大鍋は割合ダメージではないため、ワニのレベルは低いほど良い。

 最終的に交配所の上にワニを8体乗せて種ワニにするが、そのままだと交配により耐久が減って死んでしまうので、ワニを回復させるための設備をこの上の階層に作る。まずフロアの中央に先ほど設置したのと同じ大鍋を設置する。そしてその縁に交配所Sを1つ乗せ、交配所の正面に向かって右側に任意のLv.1 MOB、左側にLv.90緑モノを乗せる。もしくは両方Lv.45でも良い。こうすると一定間隔で生まれる緑モノが鍋で煮られて死ぬことで範囲回復を発動し、上下の交配所に乗せたMOBが全て回復する仕組みである。一方で下のワニ鍋の中までは効果が届かないようにするため、下の交配所と鍋にはそれなりの高低差をつけるのがコツだ。

 そして大鍋の中身を排出するためにドロッパーを鍋の側面に大量に設置し、排出されたものをコンベアで運んで仕分けマシンで分別し、最終的に大容量コンテナに収納する。ワニのドロップ量は多いため、ドロッパーが少ないと処理速度が足りずに肉が大鍋の中で全部黒焦げの何かになってしまうので注意が必要である。

 

 一方トリオ工場長はというと、案の定ノルマをあっという間に片付けてしまい、こちらも自分の仕事に取りかかっていた。つまりは打ち上げ施設の整備である。

 

 

◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■

 

 

 やがて全ての工場ラインが稼働し始め、納品が進んでいくことで目的の原油抽出機が解放された。意図して合わせたわけではないが、分子分析機(M. A. M.)の結果が出るのとほぼ同時の3時間後のことであった。

 

サティ「お疲れ様! じゃあここに3台原油抽出機を設置するわね。動作速度は2.5倍で」

 

 サティが決定ボタンを押したことで、3台の原油抽出機が橙色の輝きを伴い天に向かって伸びていく。

 それを相変わらず目を輝かせて眺めていたトピアが併せて自分の進捗を報告した。

 

トピア「こっちは小麦以外の自動農場を15種類追加と、食肉工場兼ワニ鉱山が完成しました」

 

サティ「よくやったわ! 食卓が華やかになるわね」

 

トリオ「悪くない手際じゃったの。ワニ鉱山はちと意味が分からんかったが」

 

 ワニが無尽蔵に増えては大鍋で煮られて鉄鉱石を吐き出す光景はトリオにとっても衝撃的だったようだ。

 

トリオ「んで自動農場が出来たっちゅうこたァもしかして、酒も出来るんかの?」

 

 トリオがトピアの方をちらちらと伺いながら尋ねる。

 ドワーフなのでバイオエタノールにメチルアルコールが混ざっているのは平気だが、味が無いのは気になっていたようだ。

 

トピア「伝説の ブドウ畑もあるので、ワインだけなら上等なやつができますよ」

 

トリオ「でかしたッッ!! 出来たら 伝説の エタノール割りにして飲むかのう」

 

 トリオは今まで見たことの無い満面の笑顔でトピアを賞賛した。現金なものである。

 

トピア「まだアレを飲むんですか」

 

サティ「今までで一番の反応なんだけど? しかもエンチャント効果に完全に馴染んでる」

 

トリオ「じゃかァしい、酒は美味いのが一番じゃい」

 

トピア「あ、伝説の ブドウは量が限られるので無尽蔵に飲まないでくださいね」

 

 そうトピアが付け加えると、上機嫌だったトリオは一転して露骨に肩を落とした。

 

トリオ「……うむ、エタノールの方をメインにすれば問題ないじゃろ」

 

トピア「そう……ですかね? あと、次に手が空いたらポーション工場も作りますね。在庫が幾らか減ってきましたし、お二人が怪我をしたときにも使えますので」

 

サティ「お願いするわ。キャプ食いは人類には早すぎるもの」

 

トピア「私も一応人類なんですが?」

 

トリオ「がはは、冗談が上手いのう、お嬢ちゃん」

 

トピア「ドワーフにまで笑われた!?」

 

 よく使う小さなスタミナポーション、ハイマナポーションに加えて、ハイライフポーションの工場も建設することが決まっていた。トピア自身で使うのならばライフポーションの価値はほぼ無かったのだが、サティやトリオはキャプ食いが出来ないようなので、エンチャント料理による即時回復に難があったのだ。いやトリオは 伝説の ワインや 伝説の バイオエタノールでの回復は出来そうな気がするが。

 なおキャプ食いとは何ぞやという当然の質問が出たため、トピアが二人の目の前で 伝説の パンのキャプ食いを実演してみせたところ、食べた瞬間が見えないのでただインベントリに仕舞っただけではないかという疑いをかけられた。仕方なく今度は見える程度の速度で食べてみせたところ、信じてもらえた代わりに理解不能なものを見る視線を向けられた。残念ながら当然の結果である。

 

トピア「もー、二人とも冗談が過ぎますよ? あ、そういえば分子分析機(M. A. M.)の結果はどうだったんですか?」

 

サティ「マナの分析ね? 詳細分析の結果、酸素原子に未知の素粒子が結合したものだという判定が出たわ。だから呼吸でも少しずつ回復できるという原理のようね」

 

トピア「おお、科学的に辻褄が合ってるとは」

 

サティ「流石に全く辻褄が合わない結果が出てきたらこれ以上何をすればいいのか分からなくなるから勘弁してほしいわね。魔道具やエンチャントにもこの未知の粒子が関わっているという仮定で今後の分析を進めることになると思うわ」

 

トリオ「ずっと未知の素粒子では呼びにくいの。何か名前はないのか?」

 

サティ「まだ何も無いけど……未知で、仮定の……X粒子?」

 

 素粒子の名前を尋ねられたサティはとりあえず仮の名前を付けようとしたが、どうもしっくりこないようで首を傾げていた。

 

トピア「それなら素粒子って大体最後にオンとかリオンってつきますよね? Xリオン……『エクセリオン』でどうですか?」

 

サティ「語呂がいいわね、採用」

 

トリオ「決まりじゃの」

 

トピア「やった!」

 

 トピアはここぞとばかりに趣味全開で一等軍艦の名前をねじ込んだ。それは奇しくも全く別の世界で別の人物がこの素粒子に付けたものと全く同じ名前であった。

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