【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

211 / 387
[2025/8/14]米国の反応に少し追記しました。


211. Gイレイザー発射する!

リィズ≪私と口論するのは時間稼ぎかしら? でも頼もしいお仲間は来ないわよ?≫

 

ターニャ≪何?≫

 

遙≪ヴァルキリーマムより各機へ、米国の攻撃衛星からG弾の投下を確認! 総数32! 落着まで3分です!≫

 

 リィズがニタリと微笑むと同時に、コマンドポストの遙からまた事態が悪化したことが告げられた。しかしそれに対しターニャは即座に命令を発した。

 

ターニャ≪カッサンドラ01より地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団各員へ、プランGを実行せよ!≫

 

遙≪ヴァルキリーマムより各機へ、プランG発動! 繰り返す、プランG発動!≫

 

 

 

 ターニャが言うプランGとは、G弾の迎撃を行うための作戦行動だ。

 G11を潤沢に貯め込んだ二輪戦艦(アドラステア)級のラザフォード(フィールド)の耐久力が数千億DPS×3,600秒=千兆DMG程度あるとして、一般的なG弾に使用されているG11の量はその1/1000程度、多くて1/100程度であろう。つまり高く見積もっても十兆DMG前後与えればかき消すことが可能ということになる。

 迅雷にファントムスパーク2000を装備してマグナムショットを使った場合、1ヒットあたり12億DMGで3億6千万DPS程度になる。BETA相手には過剰なくらいだが、G弾相手には少しばかり桁が足りない。ラストプリズム(Last Prism)2000ならば1ヒット8400万DMGで50億DPS出せるが、それでも10兆の耐久力を削るには2,000秒もかかってしまい、落着までに間に合わない。

 一方、2kg重水素弾頭弾を使った場合は1発あたり114兆DMG程度の威力があるため、近接信管で爆発をまともに当てれば1発で迎撃が可能だ。ただし人里の近くで使うと放射線が問題になる。これは残留放射能ではなく、起爆時に若干生じる方の放射線だ。それに威力が過大なので爆風による被害も避けられない。それでもG弾が落着するよりははるかにましなので最悪の場合はこれで対応せざるを得ないが、使わずに済むならばそれに越したことは無い。

 またインファクトリ級の主砲は放射線も出さずに容易にG弾を消滅させられるが、問題はそれがこの場に1隻しか存在していないことだ。流石に地球全域に投下された32発のG弾の迎撃を3分で終わらせるのは無理がある。

 ならばどうするか。丁度いいものが無ければ作る、それが匠衆(マイスターズ)である。

 

 プランG発令を受けて迅雷各機が兵装担架から取り出したのが、迅雷よりも巨大な()()3()0()m()()()()()()()()()()()()()()だ。明らかに縮尺がおかしいが、迅雷の兵装担架は見た目上戦術機のそれとよく似ているものの、実はインベントリ機能を持っているのだ。

 ミサイルランチャーの形状は筒に2つのグリップが据え付けられたハンドロケットランチャーのようなもので、手前のグリップを利き手で、奥側のグリップをその反対の手で掴んで両手で抱えて使うようになっている。でかすぎて抱えきれてはいないが、小脇に抱えるような姿勢だ。

 この巨大兵器の名前は、対五次元効果爆弾迎撃ミサイルランチャー『Gイレイザー』。トピアや九十九がハイパーツール・イレイザーヘッドから取ってつけた名前なのは言うまでもない。

 全長が30mに及ぶGイレイザーミサイルの弾頭にはその巨大さ相応の50tの爆薬が詰まっている。ただし普通のTNT爆薬やそれに類する爆薬ではこの重量でも200億~500億DMG程度の威力しか出ない。一方、2kgでも既に過剰な重水素弾頭をこの重量詰め込む意味は無い。ならば何を詰め込んだかと言えば、S-11(エスイレヴン)電子励起爆薬である。

 S-11(エスイレヴン)はマブラヴ原作に登場する爆薬で、戦術核に匹敵する威力がありながら放射性も無いというかなり便利なものなのだが、マブラヴ原作では自決と反応炉破壊以外にはほぼ使われていない。地雷に使うにも核兵器より使い勝手が良さそうなのだが、匹敵すると言っても電子励起爆薬のRE係数を見るにそれは大量にまとめて使った場合のことで、なおかつ比較対象は核分裂爆弾だ。電子励起爆薬の要求技術レベルが核爆弾より高いので、威力あたりのコストは核融合爆弾よりも劣悪だ。むしろ少量とは言え自決用途に使っていたのが不思議なくらいだ。

 ただし匠衆(マイスターズ)はこの実弾のコストを無視出来る。

 S-11(エスイレヴン)電子励起爆薬の情報は匠衆(マイスターズ)が量子演算機のパワーで米国のデータベースを勝手に参照したもので、更に夕呼やHI-MAERF(ハイマーフ)計画関係者の協力を得て形にしたのがGイレイザーなのだが、テロリストからGイレイザーを隠す意味もあったので権利的な問題については緊急事態につき後回しにさせていただきたい。

 そしてS-11(エスイレヴン)そのものではないが電子励起爆薬という概念は、現実世界にも存在する。RE係数500、つまり重量あたりTNT爆薬の500倍の威力が出ると目されているものだ。50tで200億DMGの500倍、10兆DMGの威力を出せるのだ。

 参考までに純粋重水素爆弾のRE係数は1億7300万である。電子励起爆薬に比べても重量比の威力が27万倍くらいあるということだ。

 

ユウヤ≪標的G13ロック≫

 

 安全装置を外していち早くセットアップを終えたユウヤ・ブリッジス少尉が担当エリアの標的番号13が振られたG弾をロックした。

 Gイレイザーのミサイルの先端にも追尾用のカメラが付いているが、ロックオンシステムは迅雷と同期しており、Gイレイザーの先端を正確にG弾に向けなくても迅雷の衛士が迅雷の頭部カメラを通して注視したG弾にロックオンマーカーがつくようになっている。

 なおGイレイザーはG弾迎撃用兵器なので基本的にはG弾以外をロック出来ないし、ノーロックで発射も出来ないように設定されている。

 

ユウヤ≪Gイレイザー発射する!≫

 

 ユウヤが迅雷の指でGイレイザーのトリガーを引き、S-11(エスイレヴン)電子励起爆薬50tを搭載したミサイルを発射した。

 発射されたGイレイザーミサイルはロケット推進で加速して超音速で飛翔し、ラザフォード(フィールド)の直前で近接信管が働いて爆発した。自発的に爆発しないとラザフォード(フィールド)に運動エネルギーを逸らされるか、G弾の効果範囲で消し飛ばされるだけで終わってしまうからだ。

 Gイレイザーの弾頭は当然重水素弾頭同様に指向性弾頭となっており、ほぼ全てのエネルギーがG弾周囲のラザフォード(フィールド)に注ぎ込まれる設計となっている。今回の弾頭も上手く作動して大半の威力をラザフォード(フィールド)に叩き付け、標的ナンバー13のG弾を消滅させることに成功した。

 

 

 

 放送でこれを見ていた現地民から喝采が上がったのは言うまでもないが、HI-MAERF(ハイマーフ)計画関係者もお祭り騒ぎであった。何故なら彼らは自分達のプロジェクトが日陰者になる原因となったG弾に恨み骨髄と言っても過言ではないのだから。

 

HI-MAERF(ハイマーフ)計画主任「やったぞ諸君! 実戦でも迅雷1機とGイレイザー1つで何ら犠牲を出すことなくG弾の迎撃に成功したのだ!!」

 

HI-MAERF(ハイマーフ)計画研究者1「G弾信者どもめ、我等のGイレイザーの威力を見たか!!」

 

HI-MAERF(ハイマーフ)計画研究者2「ざまあみろ、もうG弾の時代は終わりだ!!」

 

HI-MAERF(ハイマーフ)計画研究者3「HI-MAERF(ハイマーフ)計画に栄光あれェェ!!」

 

 GイレイザーはHI-MAERF(ハイマーフ)計画関係者が開発に携わっているが、計画そのものとはほぼ全く関係ない。ただこの短期間でG弾を確実にロックして追尾するロックオンシステムとラザフォード(フィールド)半径に確実に反応する近接信管を作り上げたのは、G弾実用化以前からG11に携わり続け、研究の副産物としてG弾を生み出した彼らの意地と執念であった。

 

 

 

 一方、米国国防総省の関係者は迎撃不能と言われたG弾が核弾頭も使わずにあっさり迎撃されたことに表情を引きつらせていた。インファクトリの主砲で迎撃が可能というのは未知の技術に常識外れの大出力なのだからまだ分かるが、迅雷が携行出来る程度の手持ち武器で迎撃出来てしまうのでは流石に話が違う。あのGイレイザーがもし一般の戦術機でも扱えるような形で普及したならば、或いは各地の基地に配備されたならば、核兵器と違って数が限られるG弾はもはや有効な兵器ではなくなるということだからだ。

 その国防総省関係者に大統領が質問を投げかけた。

 

米国大統領「君、G弾は迎撃不能じゃなかったのかね?」

 

米国国防長官「いえ、Mr.プレジデント。G弾は核弾頭でも使わなければ迎撃が出来ないので、その場合の自爆被害を考えると()()迎撃不可能という話で……」

 

 国防長官の顔色は悪いが、言っていること自体はそう間違っていない。現在の地球では純粋水爆も実現出来ていないので核弾頭による迎撃はその副作用が無視出来ないという話だ。しかもG弾やラザフォード(フィールド)に確実に反応する近接信管を作れないと、軌道を曲げられてどこに飛んでいくか分からない。

 ともかく、ラザフォード(フィールド)は逸らすべきエネルギー量に応じて多くのG11を消費するというのは原作準拠の性能なので、核兵器などの高威力な爆発をぶつければ迎撃可能、最悪でも目標到達前に空中でG弾を炸裂させることは可能だというのは原作通りの筈だ。

 

米国大統領「非核兵器で迎撃出来ているようだが?」

 

 Gイレイザーが核兵器ではないというのは、月面攻略作戦から続いている放送で解説された内容だ。

 

米国国防長官「ええ、恐らくS-11(エスイレヴン)かと思われますが、コストの問題もあって、S-11(エスイレヴン)をあの規模で運用する例も今までありませんでしたから」

 

 地球の各国で運用されているミサイルは、大型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)でもせいぜい20mと言った所だ。確かに30mのミサイルは存在しなかったのだろう。単純計算でも20mならば弾頭重量は1/3以下になるし、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は途中で多段ロケットを切り離す構造なのでその躯体の大半を燃料とエンジンが占めており、実際の弾頭重量は更に減る。1/10あるかないかだ。しかも大陸間弾道ミサイル(ICBM)にはほぼ確実に核弾頭が搭載されており、S-11(エスイレヴン)が搭載されることはまず無い。

 とはいえ、現行の地球の技術でも30m級のミサイルを作れないことはないし、S-11(エスイレヴン)を搭載出来ないわけでもない。これまでBETA大戦でそこまでの余裕がなかったが、今後本格的にG弾への対抗策を考えるならばそういったものが開発されるのも時間の問題だったろう。或いはHI-MAERF(ハイマーフ)計画に予算を与えて対G弾兵器を開発させれば、連射が出来ないだけのほぼ同等のものを作ったかもしれない。

 つまりBETAはともかく人類が相手の場合は、対抗手段がとられていないから迎撃されなかっただけではないのか。

 こいつらG弾を盲信しすぎて対抗策の想定が甘すぎるのではないかと大統領は訝しんだ。

 

米国大統領「……まあいい、それ以前に最重要の攻撃衛星を乗っ取られた挙げ句各国を攻撃してしまった失態の方が問題だ。これでは東欧連邦を笑えんよ。それに、実は先ほど匠衆(マイスターズ)から興味深い資料が送られてきてな」

 

米国国防長官「データ、でありますか?」

 

米国大統領「第5計画が推進するバビロン作戦やトライデント作戦でG弾を大量に投下した場合、()()()()()()()()()()()()()()というシミュレーション結果だよ」

 

 G弾はその理論と実用で実はそれなりに差違が出ている。影響半径の大きさや、ほぼ永続的に残る重力異常などだ。オルタネイティヴ5計画はそれでも強力な兵器であることには違いないという論調でこれを半ば無視してきたわけだが、真面目にこの副次的効果を計算すると大量使用時には何が起きるのかということだ。

 

米国国防長官「こ、これは……!?」

 

 そこには使用先の地域だけでなく米国にとっても絶望的な結果が示されていた。どちらかといえばG弾に肯定的だった国防長官も息を呑むほどだ。

 

米国大統領「このデータがどの程度正しいのか、複数の研究機関に検証させる。これは決定事項だ」

 

米国国防長官「ええ、これを見ては検証せずにはいられますまい」

 

 今後G弾の扱いがどうなるかよりも米国の未来の方が大事という点において、二人は意見の一致を見ていた。

 

 

 

 シミュレーター通りのGイレイザーの効果に、それを使ったユウヤ自身も少しの間呆然としていた。

 

ユウヤ≪マジで1発か……! アルゴス1より司令部へ、G13の撃破に成功、指示を請う≫

 

遙≪ヴァルキリーマムよりアルゴス1へ、次はG15へ向かって下さい!≫

 

ユウヤ≪アルゴス1了解!≫

 

 ユウヤは司令部から提供されているマップ情報でG15を確認すると、Gイレイザーを抱えたまま雷速起動で次のターゲットへと向かった。

 Gイレイザーも匠衆(マイスターズ)製実弾兵器の例に漏れず仮想実体化に対応しているので、この1つのミサイルランチャーで何発でも撃てるのだ。その巨大さから通常の戦闘には向いていないが、G弾の迎撃に目的を絞るのならば十分有効な兵器であった。

 

 なお、ぶっつけ本番は流石に不味いので始まりの星の大気圏外で実物のGイレイザーを使って実物のG弾を消し飛ばす実験を事前に行っており、地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団の衛士もプランGのシミュレーター訓練を受けていた。そもそもプランGが存在することからも分かる通り、世界中にG弾が降り注ぐような状況も匠衆(マイスターズ)の想定範囲内だったということだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。