リィズ≪私と口論するのは時間稼ぎかしら? でも頼もしいお仲間は来ないわよ?≫
ターニャ≪何?≫
遙≪ヴァルキリーマムより各機へ、米国の攻撃衛星からG弾の投下を確認! 総数32! 落着まで3分です!≫
リィズがニタリと微笑むと同時に、コマンドポストの遙からまた事態が悪化したことが告げられた。しかしそれに対しターニャは即座に命令を発した。
ターニャ≪カッサンドラ01より
遙≪ヴァルキリーマムより各機へ、プランG発動! 繰り返す、プランG発動!≫
ターニャが言うプランGとは、G弾の迎撃を行うための作戦行動だ。
G11を潤沢に貯め込んだ
迅雷にファントムスパーク2000を装備してマグナムショットを使った場合、1ヒットあたり12億DMGで3億6千万DPS程度になる。BETA相手には過剰なくらいだが、G弾相手には少しばかり桁が足りない。
一方、2kg重水素弾頭弾を使った場合は1発あたり114兆DMG程度の威力があるため、近接信管で爆発をまともに当てれば1発で迎撃が可能だ。ただし人里の近くで使うと放射線が問題になる。これは残留放射能ではなく、起爆時に若干生じる方の放射線だ。それに威力が過大なので爆風による被害も避けられない。それでもG弾が落着するよりははるかにましなので最悪の場合はこれで対応せざるを得ないが、使わずに済むならばそれに越したことは無い。
またインファクトリ級の主砲は放射線も出さずに容易にG弾を消滅させられるが、問題はそれがこの場に1隻しか存在していないことだ。流石に地球全域に投下された32発のG弾の迎撃を3分で終わらせるのは無理がある。
ならばどうするか。丁度いいものが無ければ作る、それが
プランG発令を受けて迅雷各機が兵装担架から取り出したのが、迅雷よりも巨大な
ミサイルランチャーの形状は筒に2つのグリップが据え付けられたハンドロケットランチャーのようなもので、手前のグリップを利き手で、奥側のグリップをその反対の手で掴んで両手で抱えて使うようになっている。でかすぎて抱えきれてはいないが、小脇に抱えるような姿勢だ。
この巨大兵器の名前は、対五次元効果爆弾迎撃ミサイルランチャー『Gイレイザー』。トピアや九十九がハイパーツール・イレイザーヘッドから取ってつけた名前なのは言うまでもない。
全長が30mに及ぶGイレイザーミサイルの弾頭にはその巨大さ相応の50tの爆薬が詰まっている。ただし普通のTNT爆薬やそれに類する爆薬ではこの重量でも200億~500億DMG程度の威力しか出ない。一方、2kgでも既に過剰な重水素弾頭をこの重量詰め込む意味は無い。ならば何を詰め込んだかと言えば、
ただし
そして
参考までに純粋重水素爆弾のRE係数は1億7300万である。電子励起爆薬に比べても重量比の威力が27万倍くらいあるということだ。
ユウヤ≪標的G13ロック≫
安全装置を外していち早くセットアップを終えたユウヤ・ブリッジス少尉が担当エリアの標的番号13が振られたG弾をロックした。
Gイレイザーのミサイルの先端にも追尾用のカメラが付いているが、ロックオンシステムは迅雷と同期しており、Gイレイザーの先端を正確にG弾に向けなくても迅雷の衛士が迅雷の頭部カメラを通して注視したG弾にロックオンマーカーがつくようになっている。
なおGイレイザーはG弾迎撃用兵器なので基本的にはG弾以外をロック出来ないし、ノーロックで発射も出来ないように設定されている。
ユウヤ≪Gイレイザー発射する!≫
ユウヤが迅雷の指でGイレイザーのトリガーを引き、
発射されたGイレイザーミサイルはロケット推進で加速して超音速で飛翔し、ラザフォード
Gイレイザーの弾頭は当然重水素弾頭同様に指向性弾頭となっており、ほぼ全てのエネルギーがG弾周囲のラザフォード
放送でこれを見ていた現地民から喝采が上がったのは言うまでもないが、
Gイレイザーは
一方、米国国防総省の関係者は迎撃不能と言われたG弾が核弾頭も使わずにあっさり迎撃されたことに表情を引きつらせていた。インファクトリの主砲で迎撃が可能というのは未知の技術に常識外れの大出力なのだからまだ分かるが、迅雷が携行出来る程度の手持ち武器で迎撃出来てしまうのでは流石に話が違う。あのGイレイザーがもし一般の戦術機でも扱えるような形で普及したならば、或いは各地の基地に配備されたならば、核兵器と違って数が限られるG弾はもはや有効な兵器ではなくなるということだからだ。
その国防総省関係者に大統領が質問を投げかけた。
米国大統領「君、G弾は迎撃不能じゃなかったのかね?」
米国国防長官「いえ、Mr.プレジデント。G弾は核弾頭でも使わなければ迎撃が出来ないので、その場合の自爆被害を考えると
国防長官の顔色は悪いが、言っていること自体はそう間違っていない。現在の地球では純粋水爆も実現出来ていないので核弾頭による迎撃はその副作用が無視出来ないという話だ。しかもG弾やラザフォード
ともかく、ラザフォード
米国大統領「非核兵器で迎撃出来ているようだが?」
Gイレイザーが核兵器ではないというのは、月面攻略作戦から続いている放送で解説された内容だ。
米国国防長官「ええ、恐らく
地球の各国で運用されているミサイルは、大型の
とはいえ、現行の地球の技術でも30m級のミサイルを作れないことはないし、
つまりBETAはともかく人類が相手の場合は、対抗手段がとられていないから迎撃されなかっただけではないのか。
こいつらG弾を盲信しすぎて対抗策の想定が甘すぎるのではないかと大統領は訝しんだ。
米国大統領「……まあいい、それ以前に最重要の攻撃衛星を乗っ取られた挙げ句各国を攻撃してしまった失態の方が問題だ。これでは東欧連邦を笑えんよ。それに、実は先ほど
米国国防長官「データ、でありますか?」
米国大統領「第5計画が推進するバビロン作戦やトライデント作戦でG弾を大量に投下した場合、
G弾はその理論と実用で実はそれなりに差違が出ている。影響半径の大きさや、ほぼ永続的に残る重力異常などだ。オルタネイティヴ5計画はそれでも強力な兵器であることには違いないという論調でこれを半ば無視してきたわけだが、真面目にこの副次的効果を計算すると大量使用時には何が起きるのかということだ。
米国国防長官「こ、これは……!?」
そこには使用先の地域だけでなく米国にとっても絶望的な結果が示されていた。どちらかといえばG弾に肯定的だった国防長官も息を呑むほどだ。
米国大統領「このデータがどの程度正しいのか、複数の研究機関に検証させる。これは決定事項だ」
米国国防長官「ええ、これを見ては検証せずにはいられますまい」
今後G弾の扱いがどうなるかよりも米国の未来の方が大事という点において、二人は意見の一致を見ていた。
シミュレーター通りのGイレイザーの効果に、それを使ったユウヤ自身も少しの間呆然としていた。
ユウヤ≪マジで1発か……! アルゴス1より司令部へ、G13の撃破に成功、指示を請う≫
遙≪ヴァルキリーマムよりアルゴス1へ、次はG15へ向かって下さい!≫
ユウヤ≪アルゴス1了解!≫
ユウヤは司令部から提供されているマップ情報でG15を確認すると、Gイレイザーを抱えたまま雷速起動で次のターゲットへと向かった。
Gイレイザーも
なお、ぶっつけ本番は流石に不味いので始まりの星の大気圏外で実物のGイレイザーを使って実物のG弾を消し飛ばす実験を事前に行っており、