【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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219. 内惑星掃除作戦(オペレーション・ハウスクリーニング)開始せよ!

 更に1週間後の2001年11月24日、土曜日。トピアがこの世界に来てから34日目。航宙工作艦インファクトリは金星軌道上にあった。

 

 地球、月、火星のハイヴ攻略が終わり、火星の衛星であるフォボスは半径11km、ダイモスも半径6kmと非常に小さいためにハイヴの存在は確認されなかった。

 これで火星までの掃除は終了かと思いきや、実は()()の掃除がまだ終わっていない。つまりは水星と金星だ。地球にBETAが落着して28年、地球だけでも打ち上げ機能を持つフェイズ5以上のハイヴを13箇所抱え、月や火星はずっと放置状態だったのだから、内惑星への侵攻が始まっていないわけがなかったのだ。なお水星と金星に衛星は無いのでそれについては考慮する必要が無い。

 地球のユーラシアに20(オルタネイティヴ原作では24)、月に17、火星に63のハイヴが存在したが、金星には23、水星には12のハイヴが存在する。陸地面積比で計算すると金星に201、水星に33のハイヴが建設出来る広さがあるはずだが、太陽系に来ているBETAは資源探索能力が低いのでまだ金星や水星の征服が終わっていないようだ。

 問題は水星と金星を調査してみた所、光線(レーザー)級と重光線(レーザー)級の存在が確認されたことだ。つまりこれは空爆への対応学習を終えた地球のBETAから派生したものだ。調査時点で確認された数は少ないが、それはその時点で水星や金星に対抗戦力がいないからで、実際に攻め込めば大増産が始まってもおかしくない。

 それでこの地球にいたBETA程度には戦力が充実したBETAどもを誰が始末するかという話になったわけだが、やはり地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団が立候補した。月や火星ではわざわざ相手を強化することもないと妥協したが、元々戦闘用の光線(レーザー)属種が存在するならば実戦証明(バトルプルーフ)の相手としてむしろ好都合だということだ。

 

 作戦としてはまず凄乃皇(すさのお)四型による金星オリジナルハイヴ攻略を試み、もしそれだけで無理な場合には迅雷とTOM(トム)を使って攻略する流れとなっている。そして火星に比べるとハイヴの数が比較的少ないので金星の制圧が終わり次第次は水星へ、という段取りだ。

 対レーザー弾頭弾(ALM)は重金属による環境汚染が酷いので基本的に使用しない。まあ金星や水星は元々人が住める環境ではないので気にする必要も無いかもしれないが、地球戦線を想定した実戦証明(バトルプルーフ)なので環境にも配慮したのだ。

 

ターニャ≪内惑星掃除作戦(オペレーション・ハウスクリーニング)開始せよ!≫

 

 ターニャの号令で金星と水星のハイヴを攻略する内惑星掃除作戦(オペレーション・ハウスクリーニング)が開始された。

 そろそろ毎週土曜日に攻略作戦を生放送するのが恒例行事になっているが、作戦は順調に推移した。

 作戦前から最も懸念されていたのは凄乃皇(すさのお)四型のG11の消費だが、これは対策済だ。

 凄乃皇(すさのお)のムアコック・レヒテ機関が生み出すラザフォード(フィールド)は強力な防御システムだが、逸らすべき攻撃のエネルギー量が多いほどに燃料であるG11を大量に消費するという難点がある。要するに集中砲火に弱いのだが、これについては匠衆(マイスターズ)が殆ど無尽蔵のG元素を提供出来るので、単純に燃料タンクを拡張して大量のG11を搭載することで対応している。それが4機いるのだから、地表と主縦坑(メインシャフト)光線(レーザー)属種を殲滅するくらいまではもつだろうという見通しだ。そこで燃料が尽きたとしても一旦補給に戻れば攻略可能だ。

 実際の作戦でもこれは想定の範囲内に収まった。4機で防御を分担すれば金星のオリジナルハイヴ攻略完了まで補給要らずで済んだほどだ。

 迅雷の運用についても全く問題無かった。TOM(トム)に比べると防御性能が低いので、何度かレーザーに被弾して一部損傷する機体も出たが、いずれも軽傷であり、自動修復機能任せですぐに戦線復帰可能な範囲であった。

 TOM(トム)に至っては防御力と迎撃性能が圧倒的すぎて全く避ける必要もなくただ前進制圧するだけであった。機動力は迅雷に譲るが、この安定性と簡便さは凄乃皇(すさのお)四型にも勝る。操作習熟に1日も掛からないという触れ込みも頷けるというものだ。

 当初はTOM(トム)のパイロット達は本当にレーザーをくらって大丈夫なのかと内心では不安があった。凄乃皇(すさのお)は万が一レーザーが貫通してもそもそもパイロットが乗っていないので大丈夫だが、TOM(トム)は直接乗り込む形で運用されていたからだ。しかし実際に自分の機体が重光線(レーザー)級のレーザーを受けても小揺るぎもしないことが判明すると、彼らは逆に全能感を漲らせてBETAを殲滅していった。

 

 金星のオリジナルハイヴでは凄乃皇(すさのお)四型に出番を譲ったが、水星のオリジナルハイヴは迅雷とTOM(トム)で攻略を完遂した。これで地球人の技量と地球産技術の実戦証明(バトルプルーフ)は完全に為された形である。

 ついでとばかりに水星最後のハイヴは一文字艦長代理がインファクトリによる直接攻撃を実施した。従来のセオリー通りならば反射レーザー砲で光線(レーザー)属種を壊滅させ、反撃が無くなった所で無数の重水素弾頭で耕していくところなのだが、今回はそれらを使用せず、大電力を活かした荷電粒子砲で中枢を焼き払う形となった。これは凄乃皇(すさのお)用の荷電粒子砲を小型化・Techブロック化したものだ。

 

■名称:Meisters 荷電粒子砲Mk.2 Type G/M

・サイズ:長さ8m×幅8m×高さ8m+砲身長8m

・射程距離:20km

・消費電力:1PW (※2.5倍モードでは4.33PW)

・変換効率:99.0%

・威力:990TW=99,000,000,000,000DPS (※2.5倍モードでは247,500,000,000,000DPS)

・備考:G元素カフェ1、6/9を少量使用

 

 サイズを小さくしたために、一発で地表構造物(モニュメント)を破壊可能な凄乃皇(すさのお)搭載型荷電粒子砲と比べると攻撃力がやや低下している()()()()()()。しかし凄乃皇(すさのお)のものは発射前に必要なエネルギーを暫くチャージする必要がある上に投射も一瞬で終わってしまうが、こちらは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()モードが搭載されているので、継続火力はむしろ高い。搭載するインファクトリ級の機関発電量と冷却能力に余裕があるからこそ可能な仕様だ。

 重水素弾頭に比べると威力あたりの電力効率は悪いが、これは重水素弾頭の電力効率が良すぎるだけだ。また、放電以外と比べると大分射程が短いが、こちらはBETAのレーザーで迎撃されず、不導体によっても防御されず、誘電体多層膜による反射もされないため初手から自爆を気にせず撃てるというのが最大のメリットだ。電磁バリアによって弾かれる可能性はあるが、それで反射されるのは相手のエネルギー量がこちらを大幅に上回ったときだけなので反射自爆の危険性はほぼ無い。

 そういった事情で荷電粒子砲はインファクトリに搭載される5種類目の兵装となった。

 小型化と運用上の最適化に伴って、荷電粒子砲Mk.2の形状は凄乃皇(すさのお)のものとは全く違ったものになり、六角柱状の砲身を備えた二連装旋回砲塔形式になっている。いや一見連装砲に見えるが、これは凄乃皇(すさのお)の荷電粒子砲が左右一対になっているのと同じで、実際には左右同時発射しか出来ない。そのため砲身の仰角も左右で完全に同期するようになっている。ウェポンベイに埋まる土台部分が長さ8m×幅8m×高さ4m、旋回砲部分も長さ8m×幅8m×高さ4mとなっており、背負い砲塔にする場合には単純に土台の下にバーベットとして必要な高さ分のTechブロックを積み上げて装甲で覆えば良い。

 砲身仰角は-10度から+90度まで対応しており、死角は少ない。また砲塔の旋回が遅いと高機動戦に対応出来ないため、こちらも迅雷やTOM(トム)に使っているものと同じ強化ターボモーターを採用している。チャージのために砲身仰角を一定角度に戻す必要は無く、当然投射中の旋回や仰角変更も可能だ。

 

 現在のインファクトリはこれを左舷上面、右舷上面、左舷底面、右舷底面に2つずつの合計8つ搭載しており、それぞれ外側に向かって背負い砲塔になっている。インファクトリは艦隊戦を想定した場合に正面投影面積を小さくしながら正面に対して反射レーザー砲その他の火力を投射するのが基本なので、荷電粒子砲も正面に全部撃てるようにした結果、前後に砲塔を並べて側面に全力投射する一般的水上艦とは設置方向が90度変わっているのだ。なお今回使っているのは底面設置の4基である。

 この荷電粒子砲はTOM(トム)にも一応搭載は可能だが、40並列核融合炉で300GW程度の出力では荷電粒子砲Mk.2の規定出力1秒投射分の電力を確保するにはチャージに1時間ほどかかってしまうので殆どの場合は不十分な威力で使わざるを得ず、インファクトリに搭載した場合とは使い勝手が大分違う。まあそこまでチャージしなくても100GW=100億DPSクラスの威力は発揮出来るので使えないことはないのだが、出撃前にインファクトリで充電して使うのが最も火力を発揮出来る運用方法だろう。つまりはビームライフルにおけるエネルギーCAPのようなものだ。現状そこまでする必要があるのかと言えば別に無いので結局今回TOM(トム)には搭載されていない。

 

 ともあれ、実際に使用された荷電粒子砲Mk.2は目論見通りの威力を発揮し、その膨大な熱量でハイヴの最深部まであっという間に溶かしきった。

 

 途中で金星から水星に移動する手順の都合上、匠衆(マイスターズ)製自動迎撃衛星の投入は金星・水星それぞれの攻略開始と同時に始まり、作戦中は作戦を邪魔しないように待機状態にされ、艦載機回収完了と同時に迎撃機能を有効化された。

 

 これで水星・金星・地球・月・火星までハイヴの攻略が完了し、地球で活動していたBETAも日本上陸を試みてレーザーで迎撃されたか途中で活動を停止したかのどちらかで、動いている個体はもはや存在しない。いやH22横浜の頭脳(ブレイン)級は研究目的で生かしてあるが、もはや出来ることは何も無い。つまり地球の安全が当面保証された形になる。日本沿岸部に設置していたレーザータレット群の撤去も建設ロボットによって既に完了している。なお建設ロボットが地味にアップデートされており、以前のものより大分コンパクトになっていた。

 戦力的には今回の作戦が始まる前からもう勝ち確だったので、地球ではBETA撃退祝勝会の準備が滞りなく終わっているくらいだ。

 厄介なテロリストも存在Xの力で洗脳されていた連中がリィズの呼びかけで次々に自首していたので、その活動も大分大人しくなっていた。

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