教化現象を観測しながら暫く時間が経過し、夕呼が試しに一通りのポーションを作ってみたあたりで、教化の光がはじまりの星全体を覆うに至った。
アヌビス神「X, XX(うむ、十分安定したようだな)」
アヌビス神が完了を告げたことでトピアはカミールを振り返り、カミールが頷いたことでその無事を認識した。
マイン「デイリーライト、戦闘態勢を解除せよ」
デイリーライト艦長聖騎士≪了解、戦闘態勢を解除する≫
漸くデイリーライトの戦闘態勢が解除され、アヌビス神が緊張から解き放たれた。
トピア「それでどうやって繋げるんですか?」
アヌビス神「XXXXX, XX(通常はあちらの山肌にある洞窟の中の魔法陣から繋がるのだが、今回は直接来ていただけるそうだ)」
ターニャ「来ていただける?」
ターニャが首を傾げたあたりで、一同の前に光の柱が立ち上り、光の中から鹿のような角を生やした青い髪の女神、クラエル神が姿を現した。
トピアと九十九、ステークが右拳を左胸に当てるヤマト式敬礼Type Bの姿勢を取ったのに倣って、全員が同じ敬礼の姿勢を取った。無駄に自尊心が高いマインや超常存在が嫌いなターニャ、基本的に唯我独尊な夕呼としてもこのポーズは頭を下げないので気が楽だ。
アヌビス神はクラエル神の横で跪いていた。
クラエル神「我等七柱の神の忠実なる使徒達よ、ごきげんよう。楽にして良いですよ」
トピア「はい」
いつになくにこやかなクラエル神の言葉に従い、全員が休めの姿勢、或いはもっとだらけた姿勢になった。
クラエル神「汝らの働きぶりには我等七柱の神々も大変満足しております。フフ、やはり救いを以て信仰されるのは良いものですね。この調子で今後も励むことを願います」
トピア達
なお地球だけでなくテラリア王国にも当然この世界に手を差し伸べた七柱の神々の紹介と布教をしており、ある程度の信仰が稼げていた。ただしテラリア王国は地球のように直接BETAの脅威に晒されていなかったので効果は薄かった。
クラエル神「我が第一の信徒ステークよ、因果の鎖をほどく約束ですが、今ということで宜しいですか?」
ステーク「はい、偉大なるクラエル神のお導きで、ようやくみんなを救う宿願を果たすことが出来ました。今こそ因果からの解放をお願いします」
ステークが因果導体のままだと誰かが寿命で死んだ際にも世界が巻き戻ってしまいかねないので、一通りの安全確保が出来た段階でクラエル神の力で解除してもらうという約束だった。解除すると逆に言えば誰かが死んでもやり直せなくなるのでタイミングの判断が難しいのだが、それに加えて因果導体は紐付けられている世界以外に移動した時点で因果をその世界に流出させてしまうという問題がある。因果導体からの解放をやってもらうのなら、一通りの問題が片付いていてなおかつこちらに来てもらっている今が好機だろう。
クラエル神「いいでしょう、では我が前へ」
ステーク「はい」
純夏「タケルちゃん?」
ステーク「大丈夫だ、すぐ終わる」
心配そうな視線を向ける純夏の頭を撫でてから、ステークはクラエル神の前に跪いた。
クラエル神はステークの頭に右手をかざし、その力を発動した。
クラエル神の背後で力が巨大な魔法陣を描いて後光のように輝くとクラエル神の掌から伸びた何かがステークの内部に介入し、何か絡まったものを一つ一つ解きほぐしていく。
その強大かつ繊細な力の流れがターニャ達の目には見えていた。規模だけ見てもオーバーリザレクションを遙かに超えている。時の流れを巻き戻すのではなく因果のスパゲッティを解決するにはこのくらいの力が必要なのだろう。
見れば元々クラエル神の信徒であるファムが跪き、クラエル神の偉大な力に畏敬の念を捧げていた。しかしターニャからするとその力に少しは理解が及んだことである程度の敬意を抱くと共に逆に親近感を抱いた。伝説級の魔導師のような、
最近マニュアルスキルを扱えるようになったトピアも、なんかすごいパワーで複雑なことをしているぞ程度の理解は出来ているようだった。
そして因果の鎖を解きほぐし終わった後にステークの体に何かを巻き付けると、クラエル神が施術の終了を告げた。どうも傷口を縫合するようなイメージだったが。
クラエル神「終わりましたよ」
ステーク「クラエル様、ありがとうございました」
ステークはもう一度深く頭を下げ、立ち上がると純夏の所に戻って抱きつかれていた。
純夏「無事で良かったよぉ」
ステーク「全く心配性だな、純夏は」
純夏「だって、タケルちゃんの因果をほどくとタケルちゃん自体もほどけちゃうんじゃないかって」
ステーク「ハハハ、そんなことは……え、無いですよね?」
原作オルタネイティヴの武は元々様々な並行世界の武の集合体であり、その武が因果導体の使命を果たしてエクストラ世界へ帰る際、後悔の塊が剥がれ落ちて出来たのがステークだ。そのためやろうと思えばステーク自体も更に分解が可能であり、実際にステークは自らそれをやったことがある。それを考えると、因果のしがらみがなくなった時点でまた断片化してしまう危険が無いとは断言出来ない。
それに思い至ったステークがクラエル神を振り返ると、クラエル神が僅かに微笑んだ。
クラエル神「その危険はありましたが、そなたの働きにぶりに免じて簡単にほどけないように結んでおきました」
どうも最後の縫合で存在を安定させてくれていたようだ。
ステーク「えっ、ありがとうございます!?」
純夏「ほらぁー! やっぱり危なかったんじゃない!」
ステーク「ス、スマン」
切実な問題の解決のために長年頑張ってきたステークだが、やはり未だにどこか抜けている所があった。
そんなステークは純夏に任せておくことにして、用件を伝えるべくトピアが前に出た。
トピア「クラエル様、ステークさんの処置ありがとうございます」
クラエル神「良いのです。働きに応じた見返りは大事、でしょう? そなたも何か望みがありますか?」
ステーク自身はあまり直接的な活躍の機会が無かったようにも思えるが、そもそもトピア達
トピア「いえ、今のところは特に。クラエル神の
要するに存在X一派のような邪悪な超常存在が人の力で抗えないような干渉をしてきたらその時はお願いしますということだ。
クラエル神「フフ、欲の無いこと」
トピア「それで、質問が2つあるのですが」
クラエル神「何でしょう?」
トピア「まずここから私以外の
クラエル神「問題ありません。管理神公認
トピア「それは助かります」
公認
トピア「ではもう一つ。楔の塔を起動した状態でこの星に他の文化圏の住民を連れてくると自動的にクラフト知識がインストールされてしまうようなのですが、中には不用意に技術を与えると同じ人間を攻撃し始める連中がいますし、万が一BETAや
前にアヌビス神に確認してみた際には教化機能と接続機能が不可分と言われたのだが、実際不都合ではあるのでその上司にならどうにか出来ないかと問うてみたわけだ。質問と言うよりお願いに近いものではあるが、その内容は神々の目的を叶えるために不都合な部分の修正だ。
クラエル神「このくらい明確な恩恵があれば少しは信仰が高まるかと思ったのですが、事はそう単純でもないようですね」
BETAどころか同じ人間である筈の
クラエル神「……いいでしょう、今後は楔の塔による自動付与はレベルやステータスなどの基礎能力だけにして、
トピア「ご配慮いただき感謝します」
クラフトピアの加護は概ね3段階に分けられる。
まずは基礎能力。これにはレベルとステータス、魔力が含まれる。クラフトピア住民全てが基本的に持っているものだ。クラフトピア住民以外にはアヌビス神が直接付与するか、完全起動した楔の塔が自動付与するようになっている。今現在もそうだ。つまり
次に創造力。魔法の作業台などを手作り出来て製造レシピも把握出来るようになる技能で、これは完全起動した楔の塔によって今はこの星の全ての知的生命体に無差別に付与されているが、今後は対象を絞る事が出来るようになるようだ。なお前回の教化範囲内に存在していたハイヴ00の重
最後に
細かく言うとそれぞれレガシー版とシームレス版で多少仕様が異なり、概ねレガシー版の方が性能が高い。
2段階目の創造力以降が自動付与されると技術漏洩に関わるが、1段階目だけならば魔力があっても専門訓練を受けないと使い方が分からない。そもそも地球の空気中にはマナが無いため魔力の補給が出来ない。むしろ洗脳状態や上位食材の見分けが付く人材として便利かもしれない。
また、創造力付与に神器やアヌビス神の加護が必要ならばその分だけ信仰対象として認知されやすくなる効果もある。
懸念が両方片付く見通しが立ったことで、トピアはヤマト式敬礼Type Bを捧げて下がった。
クラエル神「では次に、ターニャ・デグレチャフ、前へ」
ターニャ「は、何でありましょうか」
ターニャは超常存在に隔意があるので大人しく見守っているだけのつもりであったが、呼ばれたからには仕方ないと礼儀正しくトピア達と同じ敬礼をしながら一歩前へ出た。
クラエル神「これまでの汝の働きは実に見事なものです。この機会に我が使徒、
ターニャ「……は?」
また予想外の勧誘の言葉を掛けられたターニャは、思わず言葉を失った。
一方トピアや九十九は、本当に勧誘方法が改善されているぞと驚いていた。