【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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225. 抜け駆けが許されないくらいにはデグさんの勧誘合戦になってるわけですね?

 わざわざこちら側の世界に出向いたクラエル神がターニャの勧誘を始めたわけだが、それにターニャが返答する前に素早く物言いが入った。

 

アヴェニュー神≪おいィ、早速抜け駆けとは、流石クラエル汚いな! マジでかなぐり捨てンぞ!?≫

 

マイン「我が神アヴェニュー!?」

 

 以前の管理神公認(マイスター)の認定に伴って担当神のイメージを余人に見えるように自分の背後に出すことが可能になっていたのだが、そのイメージが勝手に起動して喋り出したのだ。マインは背後を振り向いて驚いた。どうも公認(マイスター)のこの技能は、それぞれの神の通信経路にもなっているようだ。

 トピア達は、マインが信奉する神もブロンティストなのかと別の驚き方をしていた。マインと同じで黙っていればカッコイイのに。

 

フィステイン神≪お騒がせしてすまないね、でも移動コストが低いから代表として訪問すると言っておいてこれは無いんじゃないかな?≫

 

サティ「あら神様」

 

ペディオ神≪クラエルちゃん、そういう所あるわよねー。あ、テクスちゃん元気ぃ?≫

 

テクス「おお、大地母神様ではござらんか!」

 

トゥーブ神≪こういうのは公正にやらねばならんぞ≫

 

トリオ「おお、トゥーブ神」

 

リロー神≪何しろ今からは宇宙冒険時代だぞ?≫

 

ラリー「おう」

 

グスト神≪地下遺跡の探検もいいが、宇宙古代文明もいいぞ?≫

 

スコア「ふむ……」

 

クラエル神「……失礼、少々気持ちが先走っていたようですね。正しくは我々の中のいずれかの使徒になりませんかというお話です」

 

ターニャ「はあ」

 

 クラエル神を含め、イメージ通信だけなら七柱の神々が一同に揃ってしまい、ターニャを巡って火花を散らしていた。

 ターニャは困惑した。

 

トピア「察するに、抜け駆けが許されないくらいにはデグさんの勧誘合戦になってるわけですね?」

 

ペディオ神≪そうなのよ≫

 

フィステイン神≪何の加護も無い状態でも素晴らしい働きぶりだったからね。人間の輝きを見たよ≫

 

リロー神≪で、いざ魔力を得たらあの戦いぶりだろ?≫

 

アヴェニュー神≪ならば我が戦神の加護こそ相応しいことは確定的に明らかだろう≫

 

トゥーブ神≪真っ先に匠衆(マイスターズ)に引き抜いたのも良い判断であったぞ≫

 

 何の加護も無い状態で10億人の地球人を救い、中間管理神アヌビスによる一般レベルの加護を与えただけで存在Xの加護を得たリィズを一方的にボコボコにして更なる信仰を稼いだのだ。こんな人材そうはいないだろう。

 事態は唐突にドラフト会議めいていた。

 

グスト神≪して、返答は如何に?≫

 

ターニャ「……あの、評価していただけるのは大変有難いのですが、小官は正直な所信仰にはあまり縁が無いのですが?」

 

 あとで信仰の無さを責められてはたまらんぞとターニャは予防線を張った。そもそもターニャは神の使徒などといったガラではないのだ。しかしこれに対し神々は一斉に笑い声を上げた。

 

フィステイン神≪ハハハ、そのようなことは我々も承知している。しかし君自身に信仰が無くとも、君が他者の信仰を集める仕事ぶりが抜群なのだ。別に人民全てを強制的に我らの信者にしようとしているわけではないのだから、些細なことは気にせずとも良い≫

 

トゥーブ神≪そのような得がたい人材がどの神の使徒であるかということで得られる信仰の配分が変わりかねないので、こうして取り合いになっているわけだ≫

 

ターニャ「……そうでありますか」

 

 つまり前世の統一歴世界で信仰の欠片も無い何故か本名そのままのスターリン(ジュガシヴィリ)がその圧政により却って信仰を喚起していたことで存在Xの加護を得たのと同じようなことだとターニャは理解した。

 ルーシー連邦(ソヴィエトっぽいところ)共産主義者(コミュニスト)共の頂点に立つジュガシヴィリと同じ扱いと考えると気分は良くないが、仕事が出来るならば当人の信仰の無さを問わないと考えるならば、まあ悪い話ではない。それに存在Xと違って、信仰を喚起するために人々を不幸にせよと言われているわけでもない。救い手の名をアピールしながら人助けをすればいいだけだ。

 ターニャは超常存在を嫌っている。しかしそれ以上に重要なのがルールと約束の遵守だ。きちんと契約が果たされるのであれば、ある程度の好き嫌いは後回しに出来る。幸い先ほどのステークとクラエル神のやりとりを見る限り、働きに報いるという概念はあるようだ。これがもし存在Xとの約束事であれば、因果導体からの解放は果たしたので解放と同時にバラバラになったとしても知らんと言い出しかねない所だ。

 

ターニャ「では、失礼ながらまずは検討するために必要な情報を教えていただけないでしょうか?」

 

リロー神≪それもそうだな!≫

 

フィステイン神≪……ふむ、我らも結論を急ぎすぎていたようだな≫

 

 この後の神々による特典アピールと、トピア達からもたらされた神々の行状を併せると、以下のような情報が出揃った。

 

 

 

■冥界とミイラの神アヌビスの加護 = クラフトピア住民枠(現状)

◎輪廻の際に存在X管轄下に置かれない

・魔力その他のステータスとレベル

・余程の特殊環境でない限りは死んでもリスポーン可能(※アヌビス神の権能であり、楔の塔による自動付与ではこれは与えられない)

○特に危険な行状無し

※従属神であるアヌビス神の加護と上位の世界管理神の加護は併存可能

 

■世界管理神共通

◎輪廻の際に存在X管轄下に置かれない

◎存在X一派の神域に拉致されない(※訪問は拒めない)

 

■創造の神クラエルの加護 = フルスペック(レガシー)理想郷の建設者(クラフトピアン)

・装備スロット数+1

・インベントリスロット追加

・スキルツリー追加

・ミッションボーナス追加

・図鑑ボーナス追加

・不老

・空中建築の権能

×新しい世界を作るために滅びが近い世界から犠牲になる予定の理想郷の建設者(クラフトピアン)候補を救済して世界を滅ぼしてきた前科あり(改善予定)

※クラフトピアンは本来文明の導きと理想郷の建設が主な使命であるが、ターニャに関しては別の重大な使命があるためやらなくても構わない

 

■工業の神フィステインの加護

・工業・産業理解と計画性に補正

○特に危険な行状無し

 

■職人の神トゥーブの加護

・加工技術と自動化に補正大

△試練として宇宙遭難を繰り返しさせてきた前科あり(希望者参加方式に変更予定)

 

■冒険の神リローの加護

・装備スロット数+2

・インベントリスロットが9,999単位に拡張

・空中建築の権能

△試練として邪神と戦わせてきた前科あり(※最初から希望者参加方式に変更予定)

 

■探検の神グストの加護

・装備スロット数+3

・インベントリスロットが999単位に拡張

・マスタリスキルツリー追加

△試練として探検家を地下遺跡で孤立させた前科あり(※希望者参加方式に変更予定)

 

■大地母神ペディオの加護

・設計・操縦技能に補正

△技術の発展のためにTechマシンで争わせてきた前科あり(※殺傷力を意図的に制限しているため死人はほぼ出ていない)

 

■戦神アヴェニューの加護

・戦闘・戦術・戦略技能に補正

△試練として惑星争奪戦を開催していた前科あり(※争うのが無人機同士なので死人はほぼ出ていない)

 

 

 

 まずターニャが匠衆(マイスターズ)に身を置いているのは存在Xの脅威に対抗することが第一目的なので、管理神共通で存在Xの魔の手をほぼシャットアウト出来るのはターニャにとっては非常に有難い。拉致ではなくおしかけ訪問ならば無理に一人で戦う必要も無いので大分安心感がある。

 アヌビス神の加護の時点で存在Xの管理する輪廻の輪から外れているのはトピア達も気づいていなかったが、クラフトピア住民扱いなら確かにそうなってもおかしくはない。冥界の神であるアヌビス神の加護ならば尚更だ。

 明確な恩恵があるのはファンタジー世界の管理神であるクラエル神、リロー神、グスト神だ。超科学世界の神による補正は、効果はあるものの元々の才能としてもあり得る程度の差らしい。

 そう考えるとファンタジー神を選んでしまいたくなるのだが、問題はその行状だ。アヌビス神とフィステイン神以外どいつもこいつも前科持ちであり、一番恩恵が充実しているクラエル神の行状が特に酷い。元々滅びが近かったとは言え、世界を丸ごと消すなど、存在Xでもそうはやらないレベルの行いではなかろうか? 改善予定ならば今現在邪神ではないのだろうが、なるほど完全なる善神とは言いがたいが交渉は可能、というトピアの説明は間違っていなかったわけだ。

 

 なお最も不利になるクラエル神が行状の公開を許容しているのは、どうせあとで理想郷の建設者(クラフトピアン)と交流すると確実にばれる上に実際よりも悪い印象を与えかねないからで、他の神々も公開しているのは、クラエル神に比べると相対的に大した悪事をしておらず、一緒に並べると確実に行状が軽く見えるからだ。

 

 ターニャからするとこれまでの行状が悪い神が改心したとしても無茶振りされそうな予感があるので、それを重視するとフィステイン神一択である。見た目で判断するのは良くないが、前世でターニャの意図を汲んで(かんちがいして)よく便宜を図ってくれた上司(レルゲン)にも似た有能そうな雰囲気があるのも良い。

 ただ、もう一つ考慮すべき項目がある。クラエル神だけが現地で働く従属神を抱えていて、多数の世界を間接統治しているということだ。つまり神格が高いのではないか。そう考えると、創造神に創造の権能と各々の世界の文明を導く仕事を与えられている理想郷の建設者(クラフトピアン)の待遇がやたら良いこととも符合する。社会人としては出世コースに乗る選択肢を検討もせずに除外することは出来ない。

 実際の職場環境としても、間に善良なアヌビス神を挟むという命令系統は悪くないだろう。実際トピア、九十九、ステークは大した束縛も受けずに悠々自適にやっているように見える。

 不老は不老で生まれ変わって性別ガチャを引き直し男に戻るということが出来ないのでまた困るのだが、と考えた所でターニャはふと九十九の顔を見た。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということだ。

 

九十九「何かネ?」

 

ターニャ「……いえ」

 

 あなたはモノとして生まれ変わった人間なのですか、それとも元々規格外に賢いモノなのですか、などというのは流石に面と向かって尋ねづらい。

 

 実際の所、ファンタジー系三柱の神々は外見・性別の変更に関する権能を付与することが可能なのだが、問題はターニャには既にその外見イメージを含めて多数の信奉者(ファン)が存在することだ。つまりターニャに性別や外見を変更されると悲しむ信奉者(ファン)が多すぎ、そのような暴挙を許した空気の読めない神という評価で信仰が大幅に低下しかねないし、今後の信仰獲得も効率が下がりそうなので、協議(だんごう)の末に全員その権能は提供しないこととなっていた。

 端から見てもターニャが男に戻るなど誰特なので、見事な判断だとトピアと九十九は心の中で神々を称賛した。

 だがこの特典が無かったために、ターニャは僅差で他の神を選ぼうとしていた。

 

 やはりリスク回避優先でフィステイン神か、とターニャが考えてそのフィステイン神がどこにいるのかと探してみた所、超科学系のフィステイン神、トゥーブ神、ペディオ神の三柱は因果律量子論について夕呼と熱く語り合っており、その三柱の神々に使徒にならないかと勧誘されて夕呼も満更でもなさそうに見えた。

 なるほど、折角神々が勢揃いしているのだからターニャ以外も勧誘するつもりがあったらしい。

 

夕呼「流石、科学世界の神というのは伊達ではないようですわね。ではフィステイン様、お願いして宜しいかしら?」

 

フィステイン神≪うむ、歓迎するぞ≫

 

ペディオ神≪あらあら、取られちゃったわ。でもこれでフィステインちゃんはターニャちゃんの指名から脱落ね≫

 

トゥーブ≪そうだな、才ある者の独り占めは良くない≫

 

 見ている間に夕呼がフィステイン神を選んでしまい、ターニャからの選択権が無くなってしまった。早く選ばないと選択肢が消えることを考慮しておらず、熟考してしまったターニャのミスだ。()()()()()()()()()()()であるならばその可能性も考慮すべきだった。ここのところ仕事と生活が安定していて油断があったのだろう。

 となればまた後悔する前に次善を選択すべきだ。そもそも、リスク回避を最優先に考えるのも思考が護りに入りすぎかもしれない。リロー神も言っていたが、これから宇宙を舞台に戦っていくのだから功績を稼ぐ機会は山ほどあるのだ。また、そもそも次に生まれ変わったとして今度は記憶を引き継ぐかどうかも分からない。であれば。

 

ターニャ「ではクラエル神、お願い出来ますでしょうか?」

 

クラエル神「ええ、勿論です」

 

 クラエル神は目的の人材を確保出来たことに満面の笑みを浮かべた。

 トピア達理想郷の建設者(クラフトピアン)とアヌビス神も、クラエル神が()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに安堵の息を漏らした。ターニャ達の選択の意志は当然尊重すべきだが、ターニャにも夕呼にも選ばれないことによって、やはりこの勧誘方法では駄目だなどと考えたクラエル神がまたおかしな方向に突っ走る可能性を危惧していたのだ。

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