ご期待に応えられているかは分かりませんが、引き続き毎日投稿を頑張っていきたいと思います。
[2025/11/13]タイトルを変更しました。一部の台詞を変更しました。全体的に加筆修正しました。時間経過部分に仕切りを追加しました。
翌朝。日照基準ではなく各自が十分な睡眠を取ったあとという意味であるが、三人は食堂に集まっていた。
トピア「ほあようごぁいまーしゅ」
トピアは全く遠慮の無い大あくびをしていた。髪の毛は寝癖が付いたままで腕には師匠ぬいぐるみを抱えており、どう見ても寝ぼけている。
サティ「あらトピアおはよう、貴女朝に弱いのね」
トピア「らいりょうぶ、らいりょうぶ。かいみんのあとはこのくらいれちょうろいいのれす」
トピアが寝ぼけているのは見た目だけではなく、呂律も大分怪しかった。
サティ「そう? でもこんな所に師匠さんを連れてきたら汚れちゃうんじゃない?」
サティは子供をあやすようにトピアの頭を撫でながら言い含めた。
トピア「んん? ししょう……師匠……ハッ、おはようございます!?」
サティ「はいおはよう」
自分が抱えたままの師匠ぬいぐるみに漸く気づいたトピアは今目が覚めたかのような反応をした。
トピア「出直してきまーす!」
そしてまるで童女のような振る舞いをしていた自分に気づいて赤面し、ドップラー効果を残して走り去ったかと思えば、その数分後には魔法使いの完全武装で戻ってきて、背筋を伸ばして敬礼した。
トピア「トピア二等兵、戻りました!」
サティ「宜しい」
トリオ「おう、さっさと飯を済ませるぞ」
朝食を済ませるように促すトリオだが、彼自身は先ほどから黙って何かを飲み続けていた。匂いからしてアルコールの類いであることは間違いない。
サティ「気になってたんだけど、それ迎え酒?」
トリオ「ドワーフは二日酔いなどせんわい。
どちらにしろ、トリオは朝から平然と酒を飲んでいた。ドワーフなので仕方ない。
朝食としてサティとトリオの二人は既にバゲット状のパンを食べ始めていたが、トピアはその場でホットドッグを作って品目を追加した。ホットドッグの材料のうちパンとキャベツには 伝説の エンチャントがついているが、ワニの肉はそうもいかないので、ホットドッグに 伝説の エンチャントがつく確率は
材料割合67%+レジェンダリ補正5%=72%
になる。このレジェンダリ補正の部分が低レアエンチャントならもっと高くなって成功率が高まるわけだが、つまりこの材料で適当に3つホットドッグを作ると、当たりくじ付き料理になるということだ。
サティ「当たりね」
トリオ「儂もじゃの」
トピア「私はハズレですね」
明らかに味のレベルが違うので、サティとトリオは当たりを認識出来ていた。とはいえハズレでも別に不味いわけではなく、エンチャントがついていないだけの普通のホットドッグである。トピアも別段顔をしかめるでもなく普通に食べていた。
サティ「折角だから食べ比べてみましょう? ほら半分こ」
トピア「ありがとうございます」
サティとトピアはそれぞれホットドッグを半分に割って交換した。サティは比較検証を理由にしているが、ホットドッグを作ってくれた当人だけに微妙な品質のものを食べさせるのに気が引けたというのも勿論あった。
サティ「うーん、確かにこっちは普通のホットドッグだわ。不思議ね。パンとキャベツだけ美味しくて肉が普通ってわけじゃなくて、全体的に美味しくなるか普通にとどまるかはっきり分かれるなんて」
トピア「普通の調理をしたら多分そうなりますよ。この調理用なべがエンチャント加工を前提とした不思議調理をしているから料理全体のエンチャントが統一されるだけで」
そもそもホットドッグにはマスタードがかかった状態で出てくるのだが、鍋にそんな材料は入れていない。それ以前の問題としてパンをホットドッグに加工するのに普通鍋は必要ない。調理用なべと名前が付いているが、実際は食材をエンチャントを含めて加工するための魔道具であった。ブドウを調理用なべに投入してワインを作る際に瓶が勝手に生成されるのも同じ理由である。クラフトピア世界観は大分大雑把なのだ。
◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
食後、食堂は会議室に様変わりしていた。テーブルの中央に映写機が設置され、白い壁に向かって自動ピント調整が行われているところだ。今日からやることにした朝の方針会議である。
トピア「プロジェクターなんてあったんですね」
トリオ「さっき作った。会議をするならあった方が便利じゃろ?」
トピア「アッハイ」
サティ「トピアが来る前に片手間で作ってたわよね」
必要ならばその場で作る。これがつるはし一本から2時間半でロケットを打ち上げる匠の技である。酒を飲みながらでもこれをやってのけるので、サティもトリオが朝から酒を飲んでいるのを訝しみながらも咎めるには至らなかったのだ。
トリオ「まずは良い報告じゃ。24基の打ち上げが終わって衛星監視網が整った」
トリオが端末を操作すると、スクリーンにこの星の全景が映し出された。
トピア「おお、こんな感じなんですね」
見たところ地球よりは陸地の割合が大きい星のようで、砂漠化している地域は少ないようだった。また、北極と南極にそれぞれ陸地があるというのも特徴だった。
トリオ「うむ、軌道エレベーターを建設しておるからには既に分かっとると思うがこの惑星の直径は約一万一千km。地球より気持ち小さいくらいの大きさじゃ。そいで今映しておる中心がほぼ赤道直下にあるこの拠点周辺でな。ほれ、ここに軌道エレベーターがあるじゃろ」
真ん中の部分を拡大してみせると、そこには確かにFICSIT製の軌道エレベーターが映っていた。
サティ「流石の手腕ね。……で、悪い報告は?」
トリオ「まあ待て、
トリオが手にしたデバイスを操作すると、視点がぐるっと回り込んで惑星の裏側を映し出した。トピアは猛烈に嫌な予感がした。
トリオ「これがこの拠点の丁度裏側じゃ」
サティ「これは……」
夜の部分が多いのでやや明度を上げて映し出されたそこにはこちら側よりもやや大きな大陸があり、それはいいのだが、問題はその大陸の8割がたがうっすら赤く染まっていることだった。
トリオはその中央を拡大してみせる。手裏剣を積み重ねて煙突を作ったような、奇妙な構造体がそこには聳え立っていた。
トリオ「儂はよう知らんが、これが多分宇宙イナゴ共の拠点じゃろ? 数えてみたんじゃが、小さいのも含めるとこれが既に23基もあるぞい」
トピア「そうですね、これがBETAの拠点、ハイヴで間違いありません。そして分布や規模からして恐らくこの中央のものが着陸ユニットから出来たオリジナルハイヴです」
トリオ「やはりか」
恐らくというのは、この星に落着してハイヴを築いたBETAの着陸ユニットが1つだけとは限らないためだ。
サティ「思ったより落ち着いているじゃないのトピア」
トピア「はい、謎が一つ解けましたので」
サティ「と言うと?」
サティが促すと、トピアはテーブルの上の水を一口飲んでから説明を始めた。この水もトピアが用意した物で、実は飲み水はエンチャントを除けばワインよりも作るのが面倒だったりする。
トピア「私がサティ姐さんと初めて会ったとき、ドラゴンがいましたよね? それもLv.90以上の憤怒のドラゴン」
サティ「あれドラゴンの中でも強い方だったのね。道理で銃弾が全く通じないはずだわ」
トリオ「そりゃあ災難じゃったの」
トリオとしてはたとえドラゴンが相手でもBETA未満の脅威度ならスパイダートロンで対抗出来ただろうと気軽に見積もっていた。伊達に何度も遭難していない。
トピア「それで、ある程度安全が保証されているはずのスタート地点付近にあんなのが出現するのは本来おかしいので、何の影響だろうかと思っていたわけです」
サティ「ああ、最初に拠点を確保する地点はある程度周囲の脅威度が低いところを選定するものよね。やっぱりあれは普通じゃなかったのね?」
トピア「ええ、そういうことです」
なおトリオは毎回遭難しているので開始地点を選べず、その安全性はランダムであった。運が良ければ周囲に全く敵性生物がいなくて2時間半で打ち上げ完了ということもあったが、運が悪ければ墜落直後から大量のバイターが押し寄せてきて生存闘争開始だ。
サティ「つまりドラゴンを含めたとしてもBETAの本拠地から一番遠いここが総合的には一番安全と判定された、っていうこと?」
現状としてクラフトピア世界の原住生物はBETAほどの脅威ではなく、BETAこそが最も脅威度が高い存在ということになる。そしてBETAは時間経過で支配域を広げるので、BETA支配域から最も遠いエリアが最も安全という結論になるのだ。
トピア「でしょうね。ただドラゴン以外は普通に弱いので、もしかするとあのドラゴンはこの付近で発生したものではなく、BETA勢力圏からはるばる逃げてきたという可能性もありますが」
トリオ「どちらにしろBETAが原因じゃったというわけじゃな」
トピア「はい。それで、ここが暫く安全なのは良いのですが、BETAによる侵食を止めるには距離が遠いとも言えるのが問題ですね」
サティ「それは……厄介ね」
トリオ「じゃのう」
BETAの勢力圏拡大を阻止出来ないことには複数の問題がある。
まず単純に採掘出来る資源が減り、生産力が伸びなくなる。これについてはサティとトリオもすぐに思い至った。
トピア「それでですね、時代進化に必要な素材がある筈のエリアの所在を確認したいので視点をこちら側に戻していただいて宜しいですか?」
ここからはクラフトピア世界特有の事情なのでトピアだけが把握していることだが、特定のバイオームが飲み込まれるのも不味い。地獄バイオームで採取出来る資源が無いと時代がLv6に進まなくなるし、毒沼が飲み込まれるとLv7に進めない。
ダンジョンや希少MOBの生息域が飲み込まれた場合も宜しくない。ボスラッシュダンジョンが無いとエンチャントスクロールが補給出来なくなるし、まかり間違ってダークアヌビス神がBETAに敗北を喫した場合、ボス周回を円滑にする貴重なドロップアイテムが二度と手に入らなくなる。どちらにしろ狩られることになるダークアヌビス神におかれましてはご愁傷様である。
そして侵食された領域にもし住民がいた場合には、その
トリオ「うむ、探すなら操作は自分でやってええぞ」
トピア「ありがとうございます」
操作デバイスを受け取ったトピアは衛星写真から目的のものを探し出す作業に集中し、BETAに侵食されていない部分を隅々まで探し回った。
◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
一通りの捜索を終えたトピアは一つの結論を得た。
――何ということでしょう。地獄バイオームとボスラッシュダンジョンがありません。
溶岩まみれで赤く光っており、確実に目立つはずのあの2つのバイオームがどこにも見当たらない。エンチャントスクロールはある程度持ってきているが、こんなことならばすぐに手に入るからとLv6時代進化に必要な資材を置いてくるのではなかったと後悔してももう遅い。
それにあと2つ気になる点がある。世界レベルで見ると至近距離、しかも赤道の直線上に全く見覚えの無い赤い森と紫の森があるのだ。後者は毒沼かと思ったが、毒沼は別に存在するし、陸地まで全体的に紫色ではない。
以上の状況を正距円筒図法に変換して全体を表示すると以下のようになる。
トピア「地獄バイオームとボスラッシュダンジョンが見つからないのはまことに遺憾ですが、この正体不明のバイオーム2つはなるべく早めに調査すべきだと思います。また、BETAの侵食を遅延させる何らかの方策も必要です。あともし住民を見つけたら可能な限り保護していきましょう」
そのように提案したトピアは、テーブルの上に大量の銀色に光る八面体を置いた。それを手に取ったトリオがストレートな疑問を呈する。
トリオ「何じゃこれ?」
トピア「これはモンスタープリズム、通称ポケモ――」
サティ「それで、これを何にどうやって使うの?」
トピアの発言内容に直感で不穏な物を感じ取ったサティは、反射的にその言葉を遮って用途や使い方を問うた。住民を保護すると聞いた筈だが、どうもその目的と道具の名前や見た目が結びつかないのだ。
トピア「勿論住民や希少MOBの保護に使います。使い方は最低5割以上相手の耐久を削ってから投げつけるだけです。耐久をギリギリまで削るほど捕獲成功率が高まりますが、誤って殺害してしまわないようにご注意ください」
大真面目な顔でそう説明するトピアに、サティとトリオは困惑した。
サティ「ああ、保護ってそういう……?」
トリオ「保護とは……?」
正距円筒図法、平面描画自体が楽な上に球体にテクスチャマップを貼り付けるだけでそのまま3D地球儀に出来てめちゃ便利の巻
※ただし極に寄るほど幅が圧縮されて文字やマーカーも縦長になる