【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 12日ぶりにプラス評価を戴きました。ありがとうございます!


231. ええ、良い取引でしたわ

トピア「では今後とも宜しくお願いします」

 

カテリーナ「ええ、良い取引でしたわ」

 

 匠衆(マイスターズ)とFICSITの取引は、無事両者に利益のある形でまとまった。FICSITには分子分析機(M.A.M.)があるため、持ってきたサンプルが未発見の有益な鉱物であることの確認も簡単だった。サティを勝手に借りていった詫びを兼ねてそれぞれの鉱物のサンプルがFICSIT規格のインゴット束で1,000セット以上持ち込まれているので、今後の特性研究も捗ることだろう。

 ここはFICSIT本社の応接室で、この部屋にはトピアとカテリーナの他にサティとモモ王女、フィステイン神、スティーヴ、更に惑星プロキシマ・ケンタウリb防衛軍関係者と惑星プロキシマ・ケンタウリb自治政府関係者もいた。この交渉のために、インファクトリ級のうちトピア達が乗っていた1隻だけがFICSIT本社の大型艦船用1番ポートに入港して係留されている。

 

 匠衆(マイスターズ)はFICSITを取引窓口にするつもりと宣言しているが、ここに軍や政府の関係者がいるのは、FICSITがこの星を売るような真似をしないかを監視するためだ。普段のFICSITならばそのような疑いを掛ける必要は全く無いのだが、相手の武力が過大であるため砲艦外交の理不尽な要求に屈する可能性を考慮した結果だ。まあ交渉の結果からするとそのような要求自体が無かったのだが。

 折角政府関係者が来てくれたので貿易関税についても一般的なレートで定められることになり、取引に関しての通関監査も入ることになった。形式上は天の川銀河連邦所属惑星プロキシマ・ケンタウリb自治政府所属企業である株式会社FICSITと国外との貿易なので、これをやらないと密輸扱いになってしまうのだ。

 幸いFICSIT本社は交易用の宇宙港を内包しており、通関設備も有しているので好都合であった。軌道エレベーター建設を業務とする企業の強みである。

 天の川銀河連邦という国の内部なのに何故通関設備があるのかと言えば、組織上は国内同士である惑星自治政府同士でも物理的には別惑星に分かれており、その間に出没する宙賊の出入りを阻止する必要もあるので、惑星単位での防犯のために必要ということだ。

 

 政府としてはFICSITの輸入と販売利益の両面で税金を徴収出来てホクホクで、軍としても今後使えそうな強力な新素材が安定供給されるというのなら言うことは無い。輸入するにしても国営で仕入れと販売を全部賄うのでもなければ結局どこかの企業に商売を任せることになり、元々地球勢力圏全域に流通網を持っているFICSITならばそれを任せるのに不足は無い。

 ただ、武力を前面に押し出しておきながら要求が普通すぎるので、何か裏の意図があるのではないかと警戒してはいた。

 そもそも軍からしてみれば余所の軍艦が勝手に入ってきている時点で大問題なのだが、だからと言って縮退炉を搭載した大戦艦10隻を相手に交戦すればどうなるかは想像に難くない。なので正当防衛を除き武力を行使しない条件で()()()()()()()という形を後付けで取らざるを得なかった。幸いこれが二つ返事で通って、あの大戦力に対し条件を呑ませたという実績が出来たため、防衛軍や自治政府の面目も丸つぶれにならずに済んだわけだ。

 詳細な交渉過程を非公開としながら相手の出自と戦力と交渉結果が一般公開されたため、むしろあのヤバそうな艦隊相手に交易を含めてよくこんな条件を通せたものだと市民からの評価が高まる始末だった。

 

 なお、赤色矮星プロキシマ・ケンタウリが全く同時刻にどの距離から見ても青く輝くようになったことは何をどうやっても物理的に辻褄を合わせることが出来ず、このことからプロキシマ・ケンタウリは『神の輝き』と称される観光名所になった。

 同時にこれを為したというフィステイン神の認知が一気に高まり、あくまで個人レベルではあるが信仰が集まるようになった。特に効いたのが映像として残っている「ほぼ人の力だけでこれだけの繁栄を築いた汝らは自慢の我が子である」という一言だ。つまりフィステイン神を信仰すること自体が神に認められた民という強大な自己肯定に繋がるのだ。信じておいて損は無いというものだ。

 ただ、この言葉はちょっと効果がありすぎた。どういうことかと言えば、まず「我らは神に認められた宇宙で最も優秀な生物である」と声高に主張する者がそこそこの数現れた。まあそういう者は大体他に自慢出来る物が無いから恥ずかしげも無くそんなことを言ってしまうのだが。

 こちらは他の文明と比較して見下さない限りは恥ずかしいだけだからまだ良いとして、自らの犯罪行為すら神に認められた行為なのだと言い張って暴れる犯罪者まで現れ、社会問題化した。

 なので、頭を抱えたフィステイン神が「褒めているのは世界の繁栄と平和であって、それを貶める犯罪行為は言語道断であるし、そのようなことをやる者がいる時点で全ての個体が優秀であるとは限らないのは自明であろう」と付け足すことになった。

 社会の完成度が高いフィステイン神の世界でもやはり多様性というものがあり、個々人の能力やモラルにも差があるということだった。

 やはり人の世に干渉するなどという慣れないことはするものではないな、とフィステイン神はまた自重するようになった。

 

 サティの扱いについては、匠衆(マイスターズ)だけでなくFICSITの社員IDも維持することになった。

 ただ維持するだけでなく、FICSITでのサティの肩書きは外世界担当専務取締役となった。つまりFICSIT本社が存在する世界以外での行動決定において大きな裁量を持つ立場であり、追認ではあるがこれまでの全ての活動がFICSIT構成員としても正当なものであったということになる。

 これは派遣や出向ではなく、FICSITと匠衆(マイスターズ)の両方に正式に所属している形だ。異例の人事ではあるが、つまり積極的に身内にすることで身内扱いの便宜を図ってもらい、かつ敵対を避けようというカテリーナの判断によるものだ。元々の友好的な繋がりを活用しようというこの提案には惑星プロキシマ・ケンタウリbの政府と防衛軍も賛成した。

 

 

 

 実際の所、無尽蔵の生産力を誇る匠衆(マイスターズ)からすると別にがめつく取り立てなくても資金運転に困ることはない。その前提からすると、一方的に搾り取る取引など長続きするわけがないのだから、面倒なだけで全く意味が無いのだ。互いに利益がある形で納得してくれるのならばそれが一番である。

 なお圧倒的な軍事力を見せながら対等な条件で決着することで交渉相手の評価を高めるのも関係を長続きさせるための策であり、これはモモ王女の案だ。

 

 さて、概ね理解されていると思うが、この世界で惑星開拓者(パイオニア)05192.83.3845.710.8.192bことサティ・カフェイン・トリファクスの反応が断続的に観測されていたのはフィステイン神公認(マイスター)の特性を利用した往復転移現象の観測実験のためであり、FICSITから観測されていた20m級人型機械は、サティの安全と転移に消費するマナを確保するために使われていた迅雷だ。転移の際に衣服や装備品は一緒に持って行けるので、人機一体接続した迅雷も当然持ち込めたのだ。実は同時期にサティ以外の六人の(マイスター)達に対しても同じ観測実験を実施している。

 この観測実験によりそれぞれの(マイスター)達の故郷世界への往復転移現象の差を取って移動先指定部分を特定し、これを数学的に解析して世界座標に変換して夕呼特製の万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)に入力するという手順だ。元が魔法や奇跡の転移現象であろうが、結果的に時空間に穴を空けて転移しているのであれば、それと同じ現象を物理的に引き起こせば同じ結果が起きるだろうということだ。

 この万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)匠衆(マイスターズ)の複合ワープエンジンに元々オルタネイティヴ原作で夕呼が作っていた並行世界転移装置と同様の機能を追加したものである。しかし国連軍横浜基地で作ったそれと比べると基礎的技術レベルが上がっている上に使用出来る電力も文字通り桁違いに豊富になり、さらにワープという形で通常空間から出る手段が完全に確立されていたため、移動先を直近の並行世界に限らず、移動対象を因果導体に限らず、またESP発現体に負担を掛けることなく性能を発揮出来るようになったのだ。

 万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)は現在インファクトリ級航宙工作艦のうち10隻に組み込まれているが、実験失敗で失われることも想定していたため、この中には各自の居住スペースがあるインファクトリやデイリーライトは含まれていない。実験に使われているのは11番艦から20番艦であり、全部新造艦である。最初の10回の転移実験では無人状態で往復して正常に転移出来ていたか記録を確認、次に動物を乗せてまた10回往復して生物の健康状態に問題が無いことを確認、更に全艦に星屑の聖十字軍(スターダスト・クルセイダース)を乗せて10回往復後健康状態を確認、全員に問題が無いことを確認した上で(マイスター)達を乗せた31回目の転移を実行した形になる。

 10隻揃えたのは7つの世界への定期便として1隻ずつ+予備艦3隻という計算で、折角10隻揃えたので一斉に使うことで実験速度を10倍にして、ついでに別々に作った10個の装置が全部正常動作するかの歩留まりに関する実験でもあった。なお実機で実験する前にも当然Factorio工業製の自動研究所でかなりの回数シミュレート実験が繰り返されている。

 実機を使った実験では予想外の挙動は1回も起こらなかった。何しろ原作オルタネイティヴでは夕呼が作った装置が1発で武の並行世界への転移をほぼ成功させているのだから、それに現在の好条件が組み合わさればこうもなる。夕呼自身はこの結果を当然と捉えていた。

 神の力に頼らずに、しかも移動出来る人員を制限されずに世界間の移動が可能になったことは、匠衆(マイスターズ)にとっては勿論だが、実は神々にとってすら画期的なことである。何しろ今回のBETA征伐企画も自身に残された信仰力の範囲で送り込める人数と設備規模に限界があったから少数精鋭という形を取ったのだ。もはや他の神々に自慢したいくらいのものである。夕呼を見込んで使徒としてスカウトしたフィステイン神も大変上機嫌であり、自身の能力と因果律量子論を実証した夕呼も流石は天才と自画自賛しながら高笑いしていた。

 まあフィステイン神はテンションが上がった結果自分の世界の住民まで褒めすぎて、要らぬ騒動を招いたわけだが。

 

 しかし万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)を組み込んでいるのは今のところこの10隻だけで、あとは旗艦であるインファクトリにも装備して11隻で当分は打ち止めとなる予定だ。別に生産が難しいわけではないのだが、あまり数を増やして管理が行き届かず勝手に使われるような事が起きると、まず確実に面倒なことになるからだ。

 更にその11隻も予備艦は世界間転移機能を封印しておき、その解放に最低でも(マイスター)二人以上の許可、もしくは幹部会での可決が必要なように制限を掛ける予定だ。そこまで制限するなら全艦につけても大丈夫なのではと思えなくもないが、実機を解析して同じ装置を作られる可能性も考慮した結果だ。

 

 この成果により香月 夕呼は満場一致で匠衆(マイスターズ)幹部会議の投票権を堂々と手にした。ついでに軍事階級も技術少将から技術大将へと1段飛ばしでランクアップした。

 階級上では工場長以外の生産班に並んだ形になるが、人材としての夕呼は元々この異世界転移技術を期待して勧誘したもので、その期待に完全に応えてくれたのだから文句は無いというものだ。

 

 FICSITとの契約は、トピアとしてもFICSITを介して今後色々な技術情報や娯楽を輸入出来るようになって満足な結果であった。サティやフィステイン神に聞いていた通りカテリーナCEOも有能で利に聡く、リスク管理がしっかり出来ている人だったので、関係が長続きするようにちょっとずつ若返らせていくことを企んでいる。

 サティは元々女手一つでここまでの大企業を作ったカテリーナを大変尊敬しており、FICSIT社員という立場にも誇りを持っていたので、FICSITと匠衆(マイスターズ)との関係強化を喜んで受け入れた。後続の惑星開拓者(パイオニア)の為に教育内容をアップデートしたいのでサティのノウハウを資料にまとめてほしいという仕事も、これまでの惑星開拓者(パイオニア)としての仕事を高く評価された上での要請ということで、納期を確認した上で応えていた。

 軍事技術の有償供与については慎重にする必要があるが、神がほぼ関与してないのに自力でここまで発展した上に100年以上も平和が続いているとフィステイン神が大いに自慢していたので、対応を間違えなければ戦乱が起きたりはしないだろう。

 

 FICSITからはベッキー、モニカ、ブライという三人の女性社員が匠衆(マイスターズ)に来ることになった。惑星開拓者(パイオニア)としてサティとチームを組んだことがあり、ある程度信用出来ることが分かっている面子だ。ベッキーは現役のベテラン惑星開拓者(パイオニア)だが、モニカは営業職、ブライは研究職に転向しており、色々と頼りになりそうだ。

 トピア達は一旦マブラヴオルタネイティヴ世界に帰って、ベッキー達三人組をファム達総務に預けてから工場長の故郷世界に行くことにした。

 

 現在の日付は、マブラヴオルタネイティヴ世界では2001年12月1日。トピアが使命を受けてから41日目のことであった。




 ベッキー、モニカ、ブライはSatisfactoryプレイヤーキャラの本名ではないかと推測されている名前の候補です。そのため全員プレイヤーキャラ準拠の女性となっております。
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