それでBETA討伐のために出張していたことにはまだ理解が得られたが、その前についてはその限りではなかった。
ソフィ「あのう、そのBETAとの戦いはともかく、その前の5回の宇宙遭難は結局何の意味があったのですか?」
傍目には神々の余興にしか見えないそれは、
トゥーブ神「ああいや、奥方。それも決して無意味に遊んでいたわけではない。Factorio工業の諸君は昨年画期的な自動化システムを開発したであろう?」
ボルクロ副社長「ああ、『Factorioシステム』のことですかの?」
デモスト常務「確かに作りましたの」
ゼメキア専務「あれなら試作型の安定版を運用試験を兼ねて工場長が持ち出したきりじゃったが」
トゥーブ神「我はそのFactorioシステムに大いなる可能性を感じた。故に、対BETA戦争という本番に投入する前に更に磨き上げてもらおうと思ったのだ」
ボルクロ副社長「……どういうことですじゃ?」
サティ「Factorioシステムって、つまりはうちの技術発展の中核になってる自動研究所のことよね?」
トゥーブ神「然様」
テクス「工場長殿の自動研究所は確かに素晴らしい成果を上げてござったが、最初からあの性能ではなかったのでござるか?」
トリオ「そうじゃのう、最初は使える資源の種類が基本的なものだけで、資源やサイエンスパックの種類を任意に追加することも出来んかったし、基礎技術データベースにも枯れたものしか入っておらんかったが……確かに本番でその全部のバージョンアップをするには1ヶ月では終わらなかったじゃろうな」
ドワーフはその特性上、職人性を否定するような工場制手工業にも工場制機械工業にも向いていない。それは事務仕事すら嫌がるFactorio工業の社員の様子を見れば分かるだろう。しかしこのままではドワーフ文明が地球文明の進歩に追いつくことは難しいため、Factorio工業のドワーフ達は一足飛びに人員要らずの全自動化によりこれを解決することを思いついた。それが結実したのがFactorioシステムだ。
Factorioシステムでは指示した発展ベクトルと基礎技術データーベースを元にして、自動研究所において資源消費と引き換えの最適化試行実験が高速で進められ、その結果として惑星環境に適した自動生産システムが生み出される。これは非常に画期的なシステムで、それだけでもドワーフ文明の大規模産業化を大きく前進させ、未開拓惑星の開拓競争にも参入出来るほどの威力があったのだが、それだけでは対BETA兵器を生み出すにはまだ不足であった。だからトゥーブ神はそれを進化させるためにトリオ工場長を繰り返しバイターとの戦いに放り込んだというのだ。
なお当初の自動研究所にはドワーフの頑強さと法規制の緩さ、そして性能や使い勝手優先という側面から環境汚染対策を一切していなかったため、当初の仕様のまま使われていたら産業の発展と引き換えに重大な環境汚染を引き起こすことは免れず、いかに頑丈なドワーフ達とは言え、子供を中心にそのうち健康を損なっていたであろうと思われる。そういう意味でもそのまま投入させるのはトゥーブ神からすると避けたかった。
ゼメキア専務「あの装置、いつの間にかそんなにパワーアップしとるんか?」
デモスト常務「なんか地球の水準もあっという間に追い越せそうな気になってくるの」
ラリー「多分余裕でそんくらいの性能があるぜ」
スコア「凄まじい活躍ぶりだったからな」
ボルクロ副社長「事務の自動化にはもう対応しとるか?」
トリオ「いや、事務仕事が殆ど無かった上に、汎用性を持たせるにはかなりの開発コストが掛かりそうなんで後回しになっとる」
ボルクロ副社長「ちっ」
そう、この自動化システムはゆくゆくは事務仕事を全自動化させることを目指していたのだが、対バイター・対BETA戦ではそもそも事務仕事が殆ど無かった上に必要な場合にはサティがフォローに入っていたため、後回しにされているのだ。
それに事務仕事と言っても対応すべき書式が1つや2つではなく、あらゆる事務に対応させるにはもう事務処理用AIを開発するようなものになってしまうため、開発のハードルが高いのだ。
というか、自動化したとして申請・承認という手続きには結局最終的に人力の確認が必要なのだが、もし実現したらそれすらさぼりそうな気配が漂っている。
マイン「ふむ……つまりバイターとかいう虫と戦わせていたのも少人数でBETAと戦う予行演習だな?」
トゥーブ神「その通りだ」
確かにトリオ工場長には参加した時点で自動迎撃システムによる少人数運用防衛戦略のおおよその形が見えていた。これはバイターとの戦いで培われたものである。
対BETA戦の予行演習として工場長と戦わされたバイター達は、見た目は気持ち悪いがやっていたことと言えば現地でつつましく暮らしていただけなので、星を荒らされて全くいい迷惑だったろう。だが地球人とドワーフでもドワーフに肩入れすることからも分かる通り、職人の神であるトゥーブ神にとっては文明すら築いていない生物の保護優先度は著しく低いのだ。
トピア「ああ、それで約1年前からなんですね」
考えてみればクラフトピアのシームレスワールド告知もおよそ1年前のことであった。その頃から七柱の神々の間ではBETA討伐イベントの話が進んでおり、トゥーブ神は送り込む工場長に準備をさせていたのだろう。
サティ「工場長とご家族には悪いけれど、そう考えると、トゥーブ神が1年間引きずり回してくれて私達は助かったわね」
テクス「相手の対応が早すぎて、最後のハイヴ08ではかなりギリギリでござったからな」
たった9日間の短期攻略でも
ソフィ「うーん、それなら一回だけ連れ出されて二度と戻ってこないよりはましと考えるべきかしらねえ」
ステーク「それはそれとして目的くらいは伝えておくべきだったんじゃないですか?」
トゥーブ神「いや、途中で死なれてしまっては元の木阿弥なのでな、いざという時に救助出来る余力を残しておくために少しでも節約した方が良いという判断であった」
ステーク「あー……それは重要、ですね」
九十九「優先度の問題だねェ」
トピア「えーまあ、そんなわけでFactorio工業の皆さんには出来れば我々
ボルクロ副社長「ふーむ、あんな大型艦を量産するような連中がこんな田舎惑星のいち中小企業と取引をしようなどと、コネがあるにしても正直胡散臭いと思っとったんじゃが、工場長とあの発明がそこまで役に立っておったとはな」
ゼメキア専務「でも儂ら、交渉や事務仕事は苦手な連中ばっかじゃぞ? 政府や軍ならまだましな連中がおるじゃろうが」
デモスト常務「物作り以外の仕事をせんでええならそっちに全員引っ越してもええくらいじゃ」
ソフィ「そうねえ、リーファもまだ学校に通う前だしね」
テクス「そこまで事務が嫌なんでござるか……」
ラリー「職人しかいねえのか」
マイン「まさか工場長でもましな方だったとはな」
トリオ「儂はほれ、元々嫌々ながら社長業もやっとったからの」
結局の所、Factorioシステムの権利元としてFactorio工業は残すとして、実際の取引は惑星ルイテンb統一政府を通じてすることになった。それは形式上残したFactorio工業の事務手続きすら政府から派遣される代理人に全面的に任せるという徹底ぶりであり、Factorio工業から
ところで先ほどからドワーフ達が話している言語は英語である。
何故わざわざダウングレード版を作ったのかと言えば、まず自分が理解していない言語を話す相手に念話術式を使った場合に相手が言葉にした部分と内心部分の区別が付かないために、逆に心を読めていることが相手にばれてしまう。更に、制御を誤ると自分の発言以外の思考が念話で漏れてしまうこともあるため、そういったリスクの無い会話部分に絞ったものが必要だったのだ。
そしてそもそも何故念話術式を作ったのかと言えば、地球にある言語ならばFICSITの技術でインストール出来るが、今後遭遇するだろう全く未知の文明の言語にはその手法が使えないので、念話能力者、特に言語を問わないESPや神の念話に頼ることになる。しかしESP能力者は個体数が少ないし、毎回神に頼るのも宜しくない。なので術式で再現することでその負担を減らせないかという話になったのだ。
ちなみに念話術式が開発されたことでESP発現体がお役御免になるかと言えばそんなことは無く、元々その能力を備えている者が術式を発動すると効果が重複してより高精度の念話が出来るし、元々のESPだけならば魔力感知に引っかからないという利点もあった。
なおレガシークラフトピアワールドや或いは楔の塔が完成しているはじまりの星ではこの言語を問わない意思疎通が環境特性で可能になっているので、ここに連れてくることが出来れば未知の言語を使う相手とも対話が可能である。しかし意思疎通の出来ていない相手を勝手に連れてくるのは拉致というものであり、禍根を残しかねないのでやはり現地での対話手段が必要だったのだ。
何回も宇宙遭難させられる前のFactorioシステムの初期状態というのは、要するにMOD無しバニラのFactorioゲームシステム仕様のことです。