トピア達が次に訪れたのは、リロー神が管理するラリーの故郷世界だ。
こちらもレガシーのセパレートクラフトピア世界同様に複数の同フォーマット・ランダム構成世界が乱立しており、それらの世界では多数の冒険野郎共が冒険を繰り返している。
そうなるとセパレート形式になっていない世界を多数有しているリロー神がかなりの力を持っているように思えるが、実は大地大気圏の少し外側までしか世界がなく、空の天体は概念的に言うならば大地を覆う巨大な天球に投影されたものでしかなく、大地以外の天体に実体が無いので、世界はそれほど広くない。なおこの天球も物理的に存在するわけではないので触れることは出来ないし、赤道上とそれ以外で空の見え方が違う。
考えてみれば、そうでなければ月や太陽の動きと無関係に突然日食が発生したりするはずがないし、星型の星が降ってきたりもしないのだ。同様に火星にも実体が無く、火星人というのも実際に火星から来ているわけではない。だから近くに火星が無いはじまりの星にも平然と火星人が出現するわけで、はじまりの星で赤道付近でしか日食やブラッドムーンが起きないのも、それが実際の天体現象ではなく赤道付近からそう見えるようになっているだけだからだ。
ついでに言うとこの世界では太陽は西から昇って東に沈むが、流石にはじまりの星の赤道天球でそれは再現されていない。はじまりの星の空に実際にあるバーナード星の動きと矛盾してしまうからだ。日食もこのバーナード星に影を重ねる形で再現している。
この世界の大地では冒険の舞台となる陸地も大陸1つというか、大きめの島でしかない。地上よりも地下の構成に凝ることで広さを確保した形だ。
結果的にセパレートクラフトピア世界にも似た形で限定された世界の空から大地へと巨大な軍艦がまっすぐ降下してきた。艦橋一体型旋回主砲を備えた全長1.2kmの航宙工作艦、インファクトリ11だ。
ラリー「つーわけで、ここが俺のホーム世界だ」
トピア「なるほど、赤道上が帯状に特殊環境になっていて分かりやすいですね」
サティ「それで、あのお洒落なガラスのビルが本拠地?」
インファクトリ11の戦闘指揮所正面ディスプレイに全体が透明または半透明なビルが映っており、いかにも重要拠点であると誇示していた。
ビルの屋上には文字型の石像が並べてあり、『BUILDING OF CENTRAL STATION』と読めた。中央駅ビルらしい。
ラリー「いや、中盤くらいまではあの中央駅ビルを本拠地にしてたんだが、モスロンが鬱陶しくて途中で地下に引っ越したんだ。最終的には森のパイロンを介した地上出入り口になったな。あと半分くらいはガラスじゃなくて、ダイヤモンドジェムスパークウォールで出来てるぞ。白く光ってる部分だ」
ビルの壁に関しては光る半透明磨りガラス状の部分がメインで床近くだけが完全な透明になっており、つまりガラス壁よりもダイヤモンドジェムスパークウォールの面積の方が大きいことになる。なかなか手間が掛かっていそうだ。
テクス「ダイヤ製のビルとは豪勢でござるなあ」
ラリー「灯りを完全に代替出来るわけじゃないが、それでも部屋が大分明るくなるからな。地下宝石樹園を作るのは結構苦労したんだぜ?」
なお、この透明ビルは地下と地上を繋ぐ施設というだけではない。この世界に特に条件をつけずに入ってきた場合にもこのビルの中がスタートになる。
つまりスタート地点を囲うようにビルを建てているわけだが、それゆえにインファクトリ11の万能転移機関で何も考えずにワープアウトするとビルの中にめり込んで大惨事になるので、その座標をずらすための観測実験が何度も繰り返された。そしてなるべくなら真空の方が都合が良いので、大気圏外に確保したポイントにワープアウトしてから地上へと降下してきた所であった。
また、このビルは大陸の東西真ん中にあり、ビルの地下の海抜0ft地点は大陸横断トロッコ鉄道の駅にもなっている。故に中央駅ビルなのだ。
ただしこの世界の海面は潮の満ち引きに関わらず海抜0ftよりも大分上にあるので、海抜0ftで水平に大陸東西の端までトンネルを掘り進むと。海底に出てしまう。海面を基準にしていないのならば海抜とは一体何なのか。テラリア世界の大いなる謎である。
インファクトリ11が中央駅ビルの前に停泊し、ラリー達が下船すると、ビルから出てきた多くの人々がラリー達を出迎えた。その先頭に立っているのはピンクのドレスを着て小さな王冠を頭に乗せたモモ王女そっくりの少女だ。ラリーが言う所の並行世界の同一人物なのだろう。
王女「お帰りなさいませラリー様!」
ラリー「ロゼッタ王女! 今帰ったぜ!」
王女の出迎えに、ラリーが跪き手を取って応えた。
この世界の王女の名前はロゼッタというらしい。ラリーの口調はぶっきらぼうなままだが、ロゼッタに対する敬意や親愛は口調以外で十分に示している。その証拠に既に護身用と称してモモ王女が装備しているのと同じフルエンチャントの光晶王女の装Mk.1を献上済であり、匠衆関係者を除けばこの世界でぶっちぎりナンバーワンの強さになっている。また、ラリーは現状でこの世界にいる時間よりマブラヴ世界にいる時間の方が長いので、一緒に来ないかと誘ってすらいる。
いつの間にそのようなことをしていたのかと言えば、今回以前の転移実験の際である。
なお以前のガイドのようにもしこのロゼッタ王女が死んでしまった場合には同じ顔で別の名前の王女が出てくるはずだが、絶対にそのようなことがないようにラリーは細心の注意を払っている。帰って来るなり光晶王女の装Mk.1を献上したのもそのためだ。
先に手を回しておいたのは王女の装備だけではない。王女の後ろに集まった面々もその際の告知に応じて集まったのだ。
冒険者「おうおうラリーよ、見せつけてくれてんなァ。しかし話には聞いてたが、また随分なもんに乗ってきたじゃねえか、このお大尽」
ラリー「おう、リテリア。そっちこそ随分集まったな」
ロゼッタ王女の後ろに控えていた冒険者、リテリア・ダイナブラストがラリー達を冷やかしつつ、話を進め始めた。その恰好、ドライアド衣装セットは緑色のビキニのようなかなりの薄着で、ラリーよりも荒っぽい口調に反して女性であることを大いに主張している。つまりわざわざ見せびらかすだけあって均整の取れた自慢のボディであるということだ。
ラリーはテラリアンの中でも人望があって面倒見が良いリテリアに人員募集告知を任せたのだ。
冒険者→リテリア「ご覧の通りだ。現状254人ってとこだな。勿論全員大地の冒険者だぜ」
ラリー「そいつは頼もしい」
大地の冒険者とはクトゥルフ征伐で功績を挙げてテラリア王国により授与される名誉称号である。つまりここに集まった254人全員が月の支配者を討伐済の実力者ということになる。男女比は概ね半々だ。
スコア「余裕で2個連隊編成出来る人数だな」
九十九「全く違う世界を冒険してもっと強い敵と戦えるという触れ込みだけでこれだけ集まるとは、テラリアンは勇猛で冒険好きっていうのは本当なんだねェ」
トピア「戦闘民族か何かなんですかね? まあ理想郷の建設者にも冒険好きは割と多いですけど」
リロー神「うむ、流石は我が大地の冒険者達だな」
大地の冒険者は名誉称号であるが、テラリア王家からこの称号を授かった時点で実はリロー神の加護を受けており、このテラリアフォーマット世界をまたぐ移動が可能になる。そして他の世界を冒険してクトゥルフを討伐する権利を得る。義務ではない。単純にやりたくてやっているのだ。底抜けの冒険野郎共である。
そんな大地の冒険者達の中でも上位に位置するリテリアは、幻のボスモンスターと言われるメカデューサの討伐経験がある。実力でも当時のラリーと同格かやや上と言える。
では何故ラリーが匠になったのかと言えば、これはそもそもリロー神が選んだのではなく、新たな冒険世界が提示された際にラリーが真っ先に探し出して先着一名の枠に飛び込んだのだ。リロー神が重視する冒険心・探究心で勝ったということであり、実際ラリーは溢れんばかりの戦闘意欲ではじまりの星戦線を見事に戦い抜いたわけだ。
リロー神はBETA討伐イベントの準備にわざわざ特別な試練を課していない。そんなことをしなくても大地の冒険者達は日々冒険を求めていたからだ。リロー神はこういった彼らの自主的冒険心を大いに誇っている。
マイン「その自慢のテラリアン共が誰だお前という顔で見ているようだが?」
リロー神「もう少し顔を見せておくべきだったな、はっはっは!」
個別に加護を与えるのを面倒くさがってテラリア王家に丸投げした結果、自分が殆ど認知されなくなったのはリロー神にとっても誤算であった。
また、装備スロット数に関わる基礎の加護は住民全員に与えているが、これもこの世界で生まれた時点で自動的に備わるように設計しているため、やはりリロー神が関わっていることが認知されていない。
ちなみにテラリアン達がリロー神を認知していないのに新たな世界での冒険を当たり前のように希望しているのは、元々クトゥルフの邪神を認知していることと、あまたの世界を冒険すること自体はこれまでも当たり前にやっていたからだ。
テクス「しかしこれ、却って部隊編成が捗らないということはないでござるか?」
サティ「……まあ大急ぎでもないから今のところは大丈夫でしょう」
トリオ「そうじゃの」
実のところ、既に自由に行き来している理想郷の建設者も人数は多いのだがはじまりの星に到着するなり集団レベリングもせずに各々で冒険を始めてしまう者が多く、部隊編成はあまり捗っていない。軍隊に入ってしまったら冒険どころではないからだ。
そして不満を抱えたまま入隊されても統率に問題が生じるため、今のところテラリア王国に迷惑を掛けない範囲で飽きるまで好きに冒険させているという実態がある。今は地下の探索も進んで、ダークアヌビス神殿の攻略も始まっているようだ。その過程で、死んだ場合にリスポーンする加護が正常に働いていることが確認出来たのは幸いである。流石のトピア達もこれを自分で試す気は無かったのだ。
勿論先に加入した方が昇進しやすいので、タバサあたりは先んじて匠衆入りして、その上であれこれ組み合わせ実験を繰り返している。戦闘能力があるからと言って、必ずしも戦闘職に就く必要は無いということだ。
恐らく理想郷の建設者と同じような状況になるだろうが、ともかくテラリアンのはじまりの星への勧誘自体は順調と言って差し支えなかった。