【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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236. こちらがその神様です

 翌日、トピアが使命を受けてから42日目、マブラヴ世界では2001年12月2日の日曜日。次に訪れたのはスコアの故郷世界……の並行世界だ。

 というのも、まずスコアが生活基盤を築いていた地下遺跡は遺跡周辺ごとはじまりの星に転移移植されているので何も残っていない。

 ではその並行世界に何があるのかと言えば、地下遺跡に転移する際にはぐれた残り11名の探検家が1人ずつ配置されているとのことだった。つまりアマゾンの奥地で地下へ送り込む遺物に呼びかけられる人物が並行世界でそれぞれ違っていたということだ。明らかにグスト神の仕業である。

 何故そのような形で分けたのかと言えば、個別に12の世界を作るには多くの力を必要とするが、IF分岐させるだけなら大した力を必要としないためであるらしい。

 

スコア「いや、まさか私以外も同じ目に遭っているとは思ってなかったですよ、パーキンソン教授」

 

パーキンソン教授「それは私もだよパグキーパー君。いや、まずは再会を喜ぼうか」

 

スコア「そうですね」

 

 トーマス・パーキンソン教授は、スコアが所属していた探検隊のリーダーだ。白髭の紳士であるパーキンソン教授は、久しぶりに再会したスコアと肩を抱き合った。とはいえ、厳密にはこのパーキンソン教授はスコアが所属していた探検隊のリーダー本人ではなく、その並行世界の同一人物になるのだが。

 

 ここを訪問する際の問題は、まずエアブラストドリルの設置も困難なほどの狭い地下空間に閉じ込められているため、インファクトリ級で直接訪問することが不可能であるということだった。更に地上は西暦2001年のいわゆる一般的な現代地球なので、そんな所にインファクトリ級が出現したら騒ぎになることは間違いない。文化交流するにしても並行世界全てとそれをやるのは文化の重複が多すぎて得るものが少なく、面倒なだけだ。

 解決法として、まずラリーのケース同様に座標をずらし、地球の軌道上にステルス状態のインファクトリ11でワープアウトして、それからポータルで地下遺跡を訪問することでどうにかなった。幸いみんな優れた探検家でサバイバビリティも高かったので、拠点にポータルを設置する所までは問題無く進んでいたのだ。

 

スコア「とりあえずこれから、並行世界に散らばったみんなを集めようと思っています。そして詳しい状況を説明して今後の方針を話し合おうと思っているのですが、ご協力いただけますか?」

 

パーキンソン教授「勿論だとも。またみんなで集まることが出来るなど、とても幸いなことだよ。主の導きに感謝せねばな」

 

スコア「あー、いえ、その」

 

パーキンソン教授「……どうしたのかね?」

 

グスト神「すまないな、遭難する所から私の()()だったのだよ」

 

 スコアの背後に現れたグスト神が軽く頭を下げて謝罪した。

 

スコア「こちらがその神様です」

 

パーキンソン教授「何と!?」

 

トピア「グスト様、これも試練というか、対BETA戦(ほんばん)に挑む前の訓練なんですよね?」

 

グスト神「まあな……もう少し力に余裕があれば、並行世界の遺跡同士で互いに往来する機能も追加出来たのだがなあ」

 

トリオ「なるほどの、こちらでは候補を複数用意して鍛えてから選んだか」

 

 どうやらグスト神の場合は、工場長のように一人を選んでから鍛えるのではなく、地下遺跡のコアに干渉して遺物が呼び込む人物を変動させることでそれぞれの並行世界で別の人物にサバイバル訓練をさせ、その中から成績優秀なスコアを選んだようだった。

 成績優秀者を対BETA戦争という更に過酷な戦場に放り込むという段取りなので、最初から目的を告げていたら順位を譲り合って成長が阻害されてしまう。つまり何も伝えずサバイバルさせた所からして予定通りなのだ。

 しかし成績最優秀でなくてもフルスペック理想郷の建設者(クラフトピアン)より装備スロットが2つ多く、マスタリパッシブスキルも自前で身につけられるのであれば、それは戦力として十分有用な人材である。回収しない理由が無い。

 

パーキンソン教授「まあ詳しいことはあとで聞くとして、早く他の面々も迎えに行ってやらねばな。リベラ君も寂しがっておるだろう」

 

スコア「うん? そうですかね?」

 

トピア「あっ」

 

 スコアの反応でトピア、九十九、サティが気付いた。これはあとで修羅場になるかもしれないと。

 

 

 

アキ「せ、せんぱーい! 助けに来てくれるなんて感動ですー!」

 

スコア「あー、うん、無事で何よりだよリベラ君」

 

 ポータルから出てきたスコアの姿を見て即抱きついてきたアキの頭を、スコアが困った顔をして撫でていた。

 スコアより頭一つ背が低い彼女の名前は、アキ・リベラ。同じ探検隊のメンバーで、日系三世のブラジル人。年齢的にはスコアの2つ下だ。黒髪でショートカットの可愛らしい感じの女性である。

 

トピア「やっぱり皆さん十分な生活環境を築いてますね。優秀優秀」

 

パーキンソン教授「フフッ、何しろ私の探検隊メンバーだからね。リベラ君も元気そうで何よりだ」

 

アキ「あっ、教授、お久しぶりです。……そちらの方々は?」

 

 アキが品定めするような目でトピアやサティを睨む。トピア達はやっぱりこういう反応かとむしろ納得した。ファムの時も自分で当て馬にしようとしたくせに周りに言われるまでファムの好意に気付いていなかったように、スコアは自身に対する好意にかなり鈍いのだ。いや、スコアが目当てにしているトピアの好感度は高くないことが何となく分かっているので、視野外の好意に鈍いと言うべきだろうか。

 

トピア「初めまして、私は匠衆(マイスターズ)代表のトピア・ポケクラフです。私達はスコアさんが今やってるお仕事の同僚です。よろしく」

 

アキ「これは失礼しました。私はアキ・リベラです。パーキンソン探検隊のメンバーで、スコア先輩の後輩です。救援に感謝します」

 

 同僚と言いつつもそれなりに高い立場の人物であると察して、アキは警戒を続けつつも失礼に値しない程度に態度を改めた。スコアとそれなりに親しいポジションであるアピールは忘れていない。

 最低限の分別はあるようだと見たトピアは、アキと握手する体で距離を詰め、囁いた。

 

トピア「()()()()()()()()()()()()()()()は私達ではありませんよ? 無いとは思いますが、仕事に差し支えるような騒ぎは起こさないでくださいね?」

 

アキ「!? ……宜しくお願いします」

 

トピア「あとこのスコアさんは貴女とは別の並行世界のスコアさんなので、ここの世界の地上に出れば貴女以外の誰とも出会ってないスコアさんがいるかもしれませんよ」

 

アキ「その話、詳しく!」

 

 この提案にアキは覿面に食いついた。

 この世界のスコアは遺跡に飛ばされていないので普通に地上にいるはずだ。そしてトピアやファムとも出会っていないので、アキにとっては競争相手がおらず落としやすいターゲットだろう。

 

トピア「はい、後ほど。とりあえず残りの探検隊メンバーを回収していきますので、ここから持ち出す物や家畜を見繕ってください。貨物スペースには余裕がありますので、それほど厳選する必要はありません。また万が一忘れ物があってもあとで取りに戻ることは可能ですので速度優先でお願いします」

 

アキ「分かりました!」

 

 アキは大急ぎで撤収準備を開始した。

 トピアが今言ったように、ここやパーキンソン教授の拠点には家畜の類いがいる。これはスコアがやっていたようなポップしたモンスターをトラップで殺害してドロップを回収するというものではない。牛、羊、ダンゴムシ、亀のような見た目であり、普通に放牧して餌を与え続けることで特定のアイテムを生産し続けるというものだ。

 これらの家畜ははじまりの星の地下に転移してきたあとの遺跡周辺にも実はちらほらいたのだが、対BETA戦争の準備が忙しかったので放牧などやっている暇が無く、今まで全く構っていなかった。しかし既に愛着のある家畜であれば連れてきてもらっても一向に構わないということだ。各々一人きりで地下サバイバルを強いられていたのだから、牛や羊だって得難い癒やしになっていたとしてもおかしくない。実際に教授に家畜同伴可と告げたときも大いに喜ばれたものだ。

 

 

 

 その後、パーキンソン探検隊が全員集まって話し合った結果、一旦帰って無事を告げたあとに匠衆(マイスターズ)で異世界文明の研究を始めようという結論になった。彼らは元々グスト神が素質を見出すほどの探検家や考古学者の集まりなので、目の前に未知があって放ってはおけるはずもないのだった。

 つまりアキとファムがスコアを巡って火花を散らすことになったということだ。

 

 また、探検隊各々の帰郷の際に毎回それぞれの並行世界を巡るのが少々面倒なのだが、1個中隊12人ならまだ対応出来ないこともない。これがもし1個連隊108人分であったなら、説得によってスコアの世界の残りの探検隊メンバーを他の並行世界の行方不明者の代わりに移住させて、それと引き換えに実際の行方不明者残り107人をスコアの世界に移住させてひとまとめにするといった処置が必要になっていた所だ。

 いずれにせよなかなか後処理が面倒になることをしてくれたものだとトピア達は心中で毒づいていた。

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