【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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237. あの絶望的なスパゲッティコードを直したってのか? 俺様だってそんな嘘吐かねえぞ?

 トピア達が次に訪れたのはペディオ神が管理するテクスの故郷世界だ。天の川銀河にあるGSO惑星開拓基地B57981-J管理下の資源惑星。Techの楽園こと惑星テラテックだ。

 重力は地球と同等だが、単位面積あたりで地球の倍近い光の照射を受けているため赤道近くでは水源が悉く干上がっており、海の面積がかなり小さい。しかし見た目に反して強靱な環境抵抗力を持つ小人族(ランティノイド)達にとってはちょっと暑い程度のことでしかないらしく、探鉱者(プロスペクター)達は今日も元気に採掘に励んでいた。Techの楽園と呼ばれるのは、地球人類が住むには少々厳しく、小人族(ランティノイド)が駆るTechばかりがそこらに溢れているからなのだ。

 そして今回テクスが会いに行く相手は、テクスがこの星に墜落したあと最初に出会った銀河調査機関(GSO)関係者であるマイク・クラフティ、本名マイケル・クロフトだ。彼は名の通った()()()である。

 トピア達は森林地帯の一角にマイクの姿を発見し、元々知り合いのテクスが声を掛けた。

 

テクス≪マイク殿ーっ。久しぶりでござるなー?≫

 

マイク≪おっ、召喚士の小僧か? また会った……またえれぇモンに乗ってきたじゃねえか。そう言や他の現場(ほし)に移動したって聞いてたが、まさか今更()()()()に来たわけじゃねえだろうな?≫

 

 振り向いたマイク、というよりマイクが乗っているTechの見た目は、操縦席を頭に、回転アンカーを脚に、ローダーブレードを両手に見立ててGSOのブロックを人型に組んだだけの、いわばカカシのようなものである。一応飛行用のブースターはついているが、手足の関節すら無いので、通常の意味での機動性も戦闘能力もほぼ皆無だ。地上に出ている部分はサイズにして全高5m程度になる。

 ちなみに召喚士というのは、敵対Techを発見次第AIミサイルタワーを召喚してアウトレンジ攻撃で片付けるというテクスの常套戦術からついた二つ名だ。歯に衣着せぬ者には鬼畜召喚士とも呼ばれていた。

 

テクス≪壮健そうで何よりでござるよ。お礼参り……と言えなくもないでござるな? 今からGSO本社に商談をしに行くゆえ、()()()()()()()()()マイク殿に一緒に来て欲しいのでござるよ≫

 

 対するテクスが乗っているのは膝関節の高さが65mに達するTOM(トム)だ。更にその後ろには全長1.2kmのインファクトリ11が控えている。マイクの腰が引けているのも無理は無いだろう。

 

マイク≪本社に? まあ俺様ともなりゃあ、GSO本社にも多少の伝手はあるがな。それで一体どういう商談をしようってんだ? 装備の良さを見る限り悪い話じゃなさそうだが≫

 

テクス≪デバッグして安定化に成功したTech OSと、新しい鉱石資源の交易の話でござるな≫

 

マイク≪…………は? おめぇあの絶望的なスパゲッティコードを直したってのか? 俺様だってそんな嘘吐かねえぞ? 新しい鉱石資源よりよっぽど無理があんだろ?≫

 

テクス≪まあ実際使ってもらえればわかるでござるよ≫

 

 完全に安定させるにはコードの問題以外に演算処理系の電力不足問題もある。匠衆(マイスターズ)ではFactorio工業製の携帯核融合炉をコントロールユニットに組み込むことで解決したが、これを使わないとしてもコントロールユニットの仕様を変更してユニット外のバッテリーや太陽光発電機を使えるようにするだけでも概ね安定化は可能である。つまりビルドの最初に電力ブロックを整えることで問題を最小化出来るということだ。元々この世界にもギガ・プラズマに使っているような核融合炉は存在するので、コストの問題に目を瞑ることが出来る高級コントロールユニットには直接小型核融合炉を組み込んでもいい。

 マイクはテクスの言い分を最初全く信じていなかったが、テクスの自信ありげな言葉と受け取ったサンプルデータ、そして明らかにTechの規格を外れた目の前の非常識なメカを見て、考えを改めた。

 

マイク≪ふむ……つまりこいつは、でけえ商談になるってことだな?≫

 

テクス≪でござるな。上手くいけばGSOの再建も夢ではないでござるよ≫

 

 以前一度触れたが、GSO、銀河調査機関(Galactic Survey Organization)は元々地球由来の政府機関である。しかし利益追求の仕組みが甘かったために民間の同業他社が乱立した際に一度破産しており、今あるのはその残骸のようなものである。

 だが、安定したTech OSによる業界の標準化と新しい資源の独占供給が叶うのならば、再び業界のリーダーシップを取り戻すことも決して夢ではないのだ。

 マイクの中でもその算段が立ったようだ。

 

マイク≪よーし俺様に任しとけ! たとえ嘘っぱちでも通してみせらあ!≫

 

テクス≪いや別に嘘ではないのでござるが……そういう所は相変わらずでござるな≫

 

マイク≪馬ッ鹿野郎おめぇ、同業他社を出し抜いて業界をひっくり返すチャンスだぜ? やらねえ手はねえだろうがよ≫

 

 繰り返すが、マイク・クラフティは()()()()()()()()である。名前が知られているのに詐欺師を続けている時点でもうおかしい。

 そもそも彼が実際やっていることと言えば、新人の探鉱者(プロスペクター)に壊れた拠点の修復を依頼して、わざわざ自費でブロックを提供して基本的な拠点設計のやり方を教えてくれて、挙げ句の果てに修復が終わった拠点をそのままプレゼントしてくれるという、びっくりするほどの親切行為である。

 テクスも最初はGSOのミッションで接触したものの、詐欺師という噂から警戒していたのに実害が全く無いことに逆に驚いたものだ。マイクがやっているのはむしろ詐欺師という肩書きを掲げる看板詐欺だと言えるだろう。

 そのため詐欺師だと知れ渡っているのに探鉱者(プロスペクター)達からは全く嫌われておらず、世話になった者達には慕われているくらいなのだ。同じGSO職員でもその態度から不満や蔑視が漏れているエージェント・パウの方が探鉱者(プロスペクター)達から距離を置かれているくらいだ。まああちらも仕事自体は真面目にやっているのだが。

 つまりテクスの言う()()()()とは仕返しのことではなく、接触・墜落事故でほぼ一文無しから活動開始した頃に親切にしてもらった恩を普通に返しに来ただけであった。

 

 

 

 このあとインファクトリ11でワープを繰り返して訪れたGSO本社では、マイクの口添えもあり思った以上にスムーズに交渉がまとまった。

 匠衆(マイスターズ)でもメインのインフラと化したTechストレージロジスティクスにおけるテクスのGSOライセンスの使い方についても、本来は駄目なのだがGSOにとっての利益があまりに大きいためあっさり不問になった。むしろその用途でライセンスが必要なら個人用とは別のインフラ用として有料で幾らでもインベントリアカウントを発行するという話になったくらいだ。匠衆(マイスターズ)としてもこれで取引先ごとにインベントリを別アカウントにして物資を送るということが可能になるので、実に好都合であった。

 以前にも述べていたように、テクスとしては取引窓口がどうしてもGSOでなければならない理由は別に無いのだが、元々が政府機関であってカバー範囲が広い割に困窮していて恩を売りやすいというのがトピア達にとって都合が良かったため、今回の第一候補となったのだ。そしてGSOはマイクの口車に乗って無事そのチャンスを掴んだ形になる。

 GSOがこのままではいかに先が無いか、そして今回の取引がいかに千載一遇の好機であるかを生き生きと語るマイクの様はまさに詐欺師であった。いや契約自体には何も嘘はないのだが、ぽっと出てきた匠衆(マイスターズ)を信じさせる口八丁がすごいのだ。その手腕を見たトピアが思わず勧誘の声を掛けたくらいだ。

 

トピア「マイクさん、もしうちの交渉担当として来ていただけるのならそれなりの待遇で歓迎しますよ?」

 

マイク「ハハッ、馬鹿言っちゃいけねえよお嬢ちゃん。俺様はひよっこ共に()()()()()()仕事で忙しいんだ。これからはお嬢ちゃん達の所に紹介する必要もあるからな」

 

 やっぱり悪ぶっているだけの面倒見のいい人ではないかとますます評価が上がってしまったのは言うまでもない。

 なおこんな渋いことを言っているマイクもTech乗りである以上は当然小人族(ランティノイド)なので見た目は可愛らしい。思わず抱きしめようとするペディオ神がサティにステイされていた。

 

 この契約成立によりGSO再建の目処まで立ったことで、これをもたらしたマイクの昇進が決まり、テクスのGSOライセンスのグレードが限界の5を超えて6に上がった。

 ついでと言っては何だが、Tech自体は強くないがTech由来テクノロジーの有用性が非常に高いので、他の世界と交流することになっても安売りしないようにテクスは忠告しておいた。具体的には仮想実体化、遠隔共有インベントリ、瞬間設計組み替え、超高効率バリア、超高効率太陽電池、重力制御あたりだ。GSOの担当者はこれに感謝を述べたが、それぞれの世界同士での技術交流が進むと匠衆(マイスターズ)の技術的優位が薄まるという事情も当然理解した。

 

 なお探鉱者(プロスペクター)はFICSIT社員と違って企業に所属しているわけではなく、企業から発行されたライセンスを使って採掘した資源を売ることで金を稼ぐ職業であるため、テクスがここ40日ほど行方不明になっていたことはGSOでも他の同業他社でも誰も把握していなかった。

 そのようにほぼ自営業と言える就労形態であるため、GSOライセンスレベルが5に達した探鉱者(プロスペクター)、つまり腕前と人格の信用度が比較的高い者の中から希望者はGSOの仲介で匠衆(マイスターズ)に就職出来ることになった。近頃は採掘対象に対し探鉱者(プロスペクター)の数がだぶついており、探鉱者(プロスペクター)同士の縄張り争いが絶えなかったので、渡りに船であった。

 これまでもGSOライセンスは他の企業のライセンスを獲得するための基礎ライセンスとして公然と扱われていたが、そこに匠衆(マイスターズ)への紹介というルートが加わったことで、基礎ライセンスとしての価値が更に上がった。

 

 とはいえ別の世界への移動というのは当初眉唾扱いされており、単に新しく見つかった資源惑星での仕事だと思われていたのだが、元々小人族(ランティノイド)達が信仰しているペディオ神が姿を見せてその威光と溢れる母性を示したことで、小人族(ランティノイド)達は割と素直に信じた。信じたというか、どっちでも良くなったのでわざわざ疑うようなことを言わなくなっただけなのだが。まあ別に信じていなくても移動後に普通に仕事をしてくれれば全く問題は無い。

 小人族(ランティノイド)は操縦適性が高いので、インファクトリ級の操艦やTOM(トム)の操縦に非常に向いている。特にインファクトリ級を小人族(ランティノイド)だけで動かす絵面を見たペディオ神は、恍惚のあまり女神がしてはいけないような表情になっていた。

 ただし惑星テラテックの様子を見れば分かる通り探鉱者(プロスペクター)はTechという武装重機で喧嘩をする習慣が付いてしまっている。Techの殺傷力が低くパイロット防護性能が高いため大事に至っていないが、殺傷力が非常に高い匠衆(マイスターズ)製兵器で喧嘩を始められると大惨事は免れないため、当面はその常識を改めるために座学から始めてもらうことになっていた。

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