【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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238. マイン・ストリアニューダ! お前は懲戒免職(クビ)だッ!!

 さて、問題はアヴェニュー神が管理するマインの故郷世界である。

 何が問題かと言えば、唯一の顔見知りであるマインのコミュ力が壊滅的であることだ。業務成績では首位であったとはいえ、マインの古巣である名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)におけるマインの人格評価が高かったとは到底思えない。そしてこの世界を管理するアヴェニュー神自体がブロンティストなので、こちらも説得には全く向いていない。

 まあ名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の技術を流用している以上は、正常な取引を目指すならここと交渉せざるを得ない訳で、マインが交渉は任せろと言うので試しに任せてみたのだが。

 

無精髭の男「そうか話は分かった。マイン・ストリアニューダ! お前は懲戒免職(クビ)だッ!! 二度とそのツラ見せんな!」

 

マイン「なん……だと……!?」

 

 まあ結果は散々なものだった。容赦ない解雇通告である。

 名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の代表であるマジェリス・コランダム中隊長(カンパニーコマンダー)の予想外の反応に、マインは覿面に狼狽えた。何しろ彼はマインの中では非常に面倒見の良い上司だった筈なのだ。折しも他の(マイスター)達が元の職場や家族に温かく迎えられていたことから、その想定とのギャップはマインをフリーズさせた。

 ただし端から見ると、経緯説明が主観まみれで到底リアリティが無かったのも話がこじれた一因であろうと思われた。

 

 ここは名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の本拠地、機動本社ネームレスの応接室だ。機動本社ネームレスは前後長5kmの宇宙船で、規模的にはFICSIT本社より小さいが、インファクトリ級より大きいのにワープ機能を備えており、戦線の移動と共に本拠地そのものが移動するようになっている。居住区の重力は遠心力タイプだが、従業員の短期休息は基本的にこの本社で行うことになるため、居住性はなかなか高い。

 その機動本社に、トピア達は迅雷で乗り付けていた。流石に大型艦船用ドックは無く、接舷して乗り込むくらいなら連絡艇用のハッチから入った方が早かったからだ。

 

無精髭の男→マジェリス「あん? 何を不思議そうな面してんだ? お前仕事をすっぽかして1ヶ月以上行方をくらましてたんだぞ? その穴埋めでどれだけ損失が生じたと思ってるんだ? こちとら信用商売なんだよ、成績がトップだったからって赴任予定の戦場を無断欠勤していいってもんじゃねえんだぞ? 大体お前は成績と態度でプラマイゼロくらいだったんだから、仕事まで不真面目になったらいい加減面倒みきれねえぞ。全く()()戻ってきやがって……」

 

 言葉は辛辣だが、その内容は割と正論である。組織の信用を台無しにするような奴はたとえ能力があっても必要無い。それだけのことだ。名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)は民間軍事組織なので敵前逃亡に対しても処刑を行うような法的権限が無いが、解雇するだけで損害賠償を求めないのは十分温情措置の範疇に入るだろう。

 マインがショックのあまり硬直しているので代わりにアヴェニュー神が出てきて場をおさめようとした。そもそもマインはサボろうとしてサボっていたわけではないのだ。

 

アヴェニュー神「まあ落ち着け、マインは我が使命に従って働いていたのだ。その件についてはこのアヴェニューの顔に免じて許してやるが良い」

 

マジェリス「なんだアンタ? まさかそいつの親かい?」

 

 どこからともなく出てきたアヴェニュー神に中隊長(カンパニーコマンダー)は少しだけ面食らったが、マインと容姿と喋り方がよく似ているので親族ではないかと当たりを付けた。マインの一族の見た目と年齢が一致しないことは元から知っている。

 

アヴェニュー神「ふむ、マインが我が使徒である以上はそうと言えなくもないな?」

 

 マイン達の言葉が独特すぎるので、中隊長(カンパニーコマンダー)は使命だとか使徒だとかそういう部分をただの装飾語だと判断してとりあえず保護者であると断定した。

 

マジェリス「そうか、仕事中に私用で連れてくたぁ、子が子なら親も親だな! ちょっと見た目がいいからっていい気になんなよ!?」

 

 マインもアヴェニュー神も見た目だけで言えば誰が見ても美形であるが、中隊長(カンパニーコマンダー)も別に不細工ではない。フツメンくらいだ。

 

アヴェニュー神「貴様下手に出ていれば調子に乗りおって! これ以上我が使徒を馬鹿にするのなら我が怒りが()()()になると知るがいい! そして貴様は想像を絶する悲しみに包まれることになるだろう!」

 

マジェリス「俺が文句を言ってるのはオメーもだよ馬鹿野郎! いいから()()()()()()()とっとと出てけ!」

 

 駄目だ、ブロンティスト共(こいつら)に任せていては一向に話が進まない。そもそも余計な罵倒はともかく社会原理の筋としては向こうの方が正論だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。そう考えたトピアはモモ王女に目配せし、モモ王女はそれに頷いた。

 

モモ王女「初めましてマジェリス・コランダム中隊長(カンパニーコマンダー)様。わたくしはテラリア王国の王女、モモ・グラニス・テラリア。マイン様の()()()()でございますわ」

 

マジェリス「テラリア王国ぅ? 聞いたことねえですが、その王女様が何のご用で?」

 

モモ王女「はい、この本社の状況と、あなたの()()からして、わたくし達が調べた情報からの推測がおおよそ正しいと確信いたしました。貴方、マイン様を()()()()となさっていらっしゃいますね?」

 

 モモ王女がそう指摘すると、マジェリスは覿面に眉をしかめ、口をへの字に結んだ。

 

モモ王女「マイン様が姿を消してすぐに名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)の株価が急落しております。そこを買い叩かれましたわね? そのついでにマイン様の身柄を求められているのでは?」

 

マジェリス「はあ……戻ってこなきゃあ有耶無耶になってたんですがね。タイミングが悪いぜ」

 

マイン「ということはやはり何かあったのか中隊長(カンパニーコマンダー)! その事情、我らに話してみるがいい! 力になるぞ!」

 

 マジェリスの発言がマインを思ってのものだったことに気付いたマインが激しく食いついた。そこまで分かっているのなら抵抗は無駄だと判断したマジェリスは、心底嫌そうな顔をして事情を語り始めた。

 

マジェリス「いやあれはな、俺もわりぃんだよ。ここのところはお前が勝つことを前提に資金繰りしてたからな。無敵のマインが負けるはずがねえってな。リスク管理がおざなりになってた。まあ当然1回や2回負けたくれぇでどうにかなるようにはしてなかったんだが、お前がいなくなった途端に金融機関が一斉に貸し渋りや貸し剥がしを始めやがってな。資金繰りが焦げ付いてるところを()()()()()に買い叩かれたわけだ。まあその根回しも奴らの仕業だろうが、証拠がねえ」

 

マイン「あの騎士団? ……あの自称騎士団か!」

 

トピア「何ですかその自称騎士団って?」

 

九十九「また何とも弱そうな名前だネ」

 

マジェリス「!?」

 

 ぬいぐるみらしき何かがやたら渋い声で喋ったことに驚いたマジェリスが二度見すると、トピアに抱えられたままの九十九がぴこぴこと腕を振って応えた。

 気になりすぎるが、話が進まないのでマジェリスは一旦それを流した。

 

マイン「以前我に名指しで惑星争奪戦を挑んできた連中だ。まあ家柄と騎士称号しか自慢するものがない連中だったから、まとめて返り討ちにしてやったがな」

 

マジェリス「おう、まあ正式名称は神聖銀河騎士団っていうんだが、その名前に反して勝利を金で買ってることがこの業界では有名でな。裏では八百長騎士団とも呼ばれてたぜ。そのお得意の八百長取引を蹴った上で、代わりに少しでも勝率を上げてやろうと煽って1対12のハンディキャップマッチを開催してな。それでまとめて返り討ちはなかなか痛快だったぜ。同時に無敵の騎士(ナイト)マインの名前は銀河に轟いたわけさ」

 

モモ王女「まあ、流石はマイン様ですわ」

 

サティ「本当に常勝無敗だったのね」

 

マイン「フフフ、それほどでもない」

 

 マインはいつもの調子で形だけ謙遜した。

 マジェリスは()()()()()があちらでは意外とまともな人間関係を構築出来ているようだと察して目を細めた。後方父親面である。

 

アヴェニュー「うむ、我も見ていたが、普通なら負けようがないほどのハンデの代わりに騎士称号を賭けさせて、エセ騎士共の騎士称号を剥ぎ取ってやったのは実に愉快であったぞ」

 

 アヴェニュー神は自身を信仰しているマインの一族を元々気にかけてはいたが、BETA討伐イベントに送り込む(マイスター)として明確にマインを選んだのはこの一件が原因だ。

 

マジェリス「ああ、あいつら実力はねえくせに家柄と金に物を言わせて本物の騎士称号を持ってたからな。それを一斉に失ったせいで今度は『神聖銀河()()騎士団』って呼ばれててな。逆恨みだがまあ恨むのは分からんでもない」

 

モモ王女「12対1で負ける程度の実力なのですから、元々騎士の称号など不相応だったのですわ」

 

サティ「……ちょっと待って? ということはマインったら自称騎士(ナイト)じゃなくて本物の騎士(ナイト)称号を持ってるの? しかも12個も?」

 

トピア「つまりはマインさん一人で十二騎士(トゥエルヴナイト)……? 何ですかそれカッコイイ!」

 

マイン「貴様ら騎士(ナイト)の魅力に気付くのが遅いぞフハハハハ!」

 

 なるほどそういう視点で見てみれば、(実力で勝ち取った12倍の)騎士(ナイト)に絶大な信用があるのは当然だと当初繰り返していたのも分からなくもないし、(やりたい放題の自称騎士団よりは)マインの方が余程謙虚かもしれない。肝心の事情説明が抜けていたため意図が誰にも伝わっておらず、非常に残念なことになっていたが。

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