マジェリス「話を戻すぞ。その神聖銀河自称騎士団様がうちのストップ安の株を買い漁ってな。株主権限でお前を騎士団に引き抜くつもりらしい。だが、うちの社員でなければ引き抜きようもねえだろ」
マイン「それ故の懲戒免職処分というわけか。しかし引き抜いてどうするつもりなのだ? そもそもその時我はいなかったであろう?」
マジェリス「まあ騎士称号を上位者権限で奪還したいのと、そもそもの連中の存在意義である『大金さえ払えば(買収して)必ず勝つ』というのを、順番さえ待てばほぼ普通の料金で十割勝つお前が台無しにしてたから目障りだというのもあるだろうな。実際直接対決したらお前が勝ったしな」
マイン「フン、情けない奴らだ」
マジェリス「あとはアレだな……そもそも
マイン「……ふむ?」
言われた言葉の意味が分からず、マインは首を傾げた。
モモ王女「つまり女としてのマイン様を求めている、と?」
マジェリス「そういうことですよ。あいつら金と権力でやりたい放題なんで、当然妻扱いじゃないですし、素直に移籍しても碌な事にならねえんですよ」
モモ王女「万死に値しますわね」
アヴェニュー神「やはり騎士の風上にも置けん連中だな。いいだろう、リアルで痛い目を見せてやれ。この我が許可する」
マイン「は、ハァーーー!?」
都合のいい女として求められていると漸く理解したマインの顔が覿面に赤くなった。マインにはそういった経験どころか、異性との交際経験すら無いのだ。コミュ力が絶望的に低いので。
九十九「意外な反応だネ」
トピア「意外に純情ですねマインさん」
トピアは
というか、モラル水準が低いことで有名なマブラヴ地球に実際に接触してから思ったのだが、一部のBETAに利している連中を除けば実はトピアとしてはそこまで絶望的に低いようには思えなかった。つまりトピアの故郷の地球のモラルはそれにすら劣っていたのではないか。そう考えるとクラエル神がもう先が無い世界と断じていたのも分かる気がしてくるし、状況に強いられてボタンを押しただけとはいえ自ら滅ぼした罪の意識もどんどん薄くなってくるのだから困ったものだ。彩峰一派ほど極端なことを言うつもりはないが、やはり人間にある程度の道徳は必要だ。
モモ王女「ともかく、騎士団による株式占有が50%未満で停まるように買い占めを進めておりますのでご安心くださいませマジェリス様」
マジェリス「つまりは対抗買収を? 今の株価でも億ドル単位にはなる筈ですが?」
モモ王女「ええ、最初に確認したときに45%が他社に占有されておりましたし、更に買い占めが進行中でしたので、念のためこちらでも
マジェリス「念のためで買い占めるほど資金があるんで……いや何だこの買取額!? 頭おかしいんじゃねえの!?」
マジェリスが株の持ち主を照会してみた所、確かに2位の神聖銀河騎士団の占有率46%に対し、1位が49%で今も上昇中であった。
神聖銀河騎士団が1ヶ月以上かけて46%にとどまっているにもかかわらず対抗買収が一気に49%まで進んでいるからくりは、
ちなみに期間が過ぎても目標の占有率51%に達しない場合は買取額を90倍に下げて更に焦らせる予定だが、この調子なら問題無く届くだろう。
モモ王女「丁度いい使い道でしたので」
トピア「この世界、地金が高く売れるので資金調達が簡単なんですよね」
現在機動本社ネームレスの横に停泊しているのはインファクトリ11だけであり、他の9隻は資金調達のために銀河の方々に散っていた。
現代日本では正式な刻印があるインゴット以外は売れるルートが限られるが、様々な惑星で採掘をしていてその所有権も流動的なこの世界では成分に問題が無ければ販売可能なルートがいくらでもあるのだ。勿論一気に売りさばくと価格相場の下落が生じるが、売りさばく地方も別々で更に様々な希少資源に分けているし、今必要な資金を得るための一時的な措置なので、そこまで致命的なことにはならないだろう。
ところで
マジェリス「名義がマイン・ストリアニューダになっているようですが?」
モモ王女「この世界の戸籍と銀行口座を持っているのがマイン様だけでしたので、当然そうなりますわ」
マジェリス「なるほど、そう来ましたか……」
マイン「フフ、この
アヴェニュー「うむ、自称騎士団などという木っ端連中ではなく我がマインこそが正当なる
実際の所はモモ王女がマインの口座を借りてやっていたことでマイン自身も関与していなかったようだが、外敵から
マジェリス「まあ、ともかくあの外道連中による買い占めを阻止してくれたのは有難く思います。それで、一応の確認なんですが、そちらとしては今後
敵対的な神聖銀河騎士団に代わって気心が知れているマインが筆頭株主になるのはありがたいことではあるが、ありがとうございますだけでは終われない。それを為す相手、この場合マインではなくモモ王女や
マインは根本的なコミュ力の問題で真意を測りづらいが、彼女が
モモ王女「そうですわね、まず必要最低限の第一目的は、現在
マジェリス「ふむ、聞く限りでは悪い話ではなさそうですが、交易は専門外ですね。伝手くらいはありますが」
この
まず
惑星争奪戦は単なる資源争奪という意味の他に政治的決着手段や或いは興業という側面もあり、ルール無用の戦争を抑止するためにも惑星争奪戦管理委員会が定めたルールを破るのは厳禁である。もし破ったならば参加資格停止に繋がりかねない。つまり神聖銀河騎士団はあくまでそのルールの外、盤外戦術で好き放題やっているわけだ。ルールに「勝ちを譲ってはいけない」とは流石に書かれていないので。
なので
モモ王女「まともな流通業者を紹介していただけるならそれでも構いませんわ。あと人員の移籍については、指揮官の皆様には別の戦場を用意しておりますわ」
マジェリス「別の戦場? ……ああ、さっきマインが言ってたBETA討伐戦争とかいう奴ですか? ふむ……マインが上手くやっていけてるならそっちへの転職はありかもしれんですね」
マイン「どういう意味だ?」
マジェリス「そのまんまの意味ですよ、筆頭株主殿」
マインは軍事的才覚には優れているが、それに反して対人スキルは絶望的に低い。それでも
なお目の前のマインがまさにその最初から敵視していた例である。
マジェリス「いいでしょう。ただ、その前に一つトラブルが発生すると思うんですが」
モモ王女「ええ、神聖銀河騎士団の皆様が言いがかりで決闘でも挑んでくるのでしょう? 望む所ですわ。また返り討ちに、いいえ、今度こそバラバラに解体して差し上げましょう」
マジェリス「ほほう、具体的にはどのように?」
モモ王女「ええ、それに関しましては――」
マジェリスがモモ王女の策を認め、その日のうちに神聖銀河騎士団が言いがかりを付けてきたため、早速神聖銀河騎士団とマインとの惑星争奪戦形式での決闘が決定された。