【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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239. この保護占領(ホワイトナイト)戦略、まさに騎士(ナイト)の名に相応しい

マジェリス「話を戻すぞ。その神聖銀河自称騎士団様がうちのストップ安の株を買い漁ってな。株主権限でお前を騎士団に引き抜くつもりらしい。だが、うちの社員でなければ引き抜きようもねえだろ」

 

マイン「それ故の懲戒免職処分というわけか。しかし引き抜いてどうするつもりなのだ? そもそもその時我はいなかったであろう?」

 

マジェリス「まあ騎士称号を上位者権限で奪還したいのと、そもそもの連中の存在意義である『大金さえ払えば(買収して)必ず勝つ』というのを、順番さえ待てばほぼ普通の料金で十割勝つお前が台無しにしてたから目障りだというのもあるだろうな。実際直接対決したらお前が勝ったしな」

 

マイン「フン、情けない奴らだ」

 

マジェリス「あとはアレだな……そもそも()()()()()()()()()()()んだよお前は」

 

マイン「……ふむ?」

 

 言われた言葉の意味が分からず、マインは首を傾げた。

 

モモ王女「つまり女としてのマイン様を求めている、と?」

 

マジェリス「そういうことですよ。あいつら金と権力でやりたい放題なんで、当然妻扱いじゃないですし、素直に移籍しても碌な事にならねえんですよ」

 

モモ王女「万死に値しますわね」

 

アヴェニュー神「やはり騎士の風上にも置けん連中だな。いいだろう、リアルで痛い目を見せてやれ。この我が許可する」

 

マイン「は、ハァーーー!?」

 

 都合のいい女として求められていると漸く理解したマインの顔が覿面に赤くなった。マインにはそういった経験どころか、異性との交際経験すら無いのだ。コミュ力が絶望的に低いので。

 

九十九「意外な反応だネ」

 

トピア「意外に純情ですねマインさん」

 

 トピアは理想郷の建設者(クラフトピアン)になる前に散々そういう扱いを受けていたので、冷めたものである。

 というか、モラル水準が低いことで有名なマブラヴ地球に実際に接触してから思ったのだが、一部のBETAに利している連中を除けば実はトピアとしてはそこまで絶望的に低いようには思えなかった。つまりトピアの故郷の地球のモラルはそれにすら劣っていたのではないか。そう考えるとクラエル神がもう先が無い世界と断じていたのも分かる気がしてくるし、状況に強いられてボタンを押しただけとはいえ自ら滅ぼした罪の意識もどんどん薄くなってくるのだから困ったものだ。彩峰一派ほど極端なことを言うつもりはないが、やはり人間にある程度の道徳は必要だ。

 

モモ王女「ともかく、騎士団による株式占有が50%未満で停まるように買い占めを進めておりますのでご安心くださいませマジェリス様」

 

マジェリス「つまりは対抗買収を? 今の株価でも億ドル単位にはなる筈ですが?」

 

モモ王女「ええ、最初に確認したときに45%が他社に占有されておりましたし、更に買い占めが進行中でしたので、念のためこちらでも()()()()買い占めを開始したのですわ」

 

マジェリス「念のためで買い占めるほど資金があるんで……いや何だこの買取額!? 頭おかしいんじゃねえの!?」

 

 マジェリスが株の持ち主を照会してみた所、確かに2位の神聖銀河騎士団の占有率46%に対し、1位が49%で今も上昇中であった。

 神聖銀河騎士団が1ヶ月以上かけて46%にとどまっているにもかかわらず対抗買収が一気に49%まで進んでいるからくりは、()()()()()()()()()()1()0()0()()()()()()()()()()()()()()という破格すぎる条件を提示していることだ。露骨な札束ビンタであり、これで売らないのは余程の情弱だろう。2倍や3倍なら神聖銀河騎士団ご自慢のお金の力でも対抗出来たが、100倍ともなると流石に不可能であり、まさに資本の暴力と言えた。

 ちなみに期間が過ぎても目標の占有率51%に達しない場合は買取額を90倍に下げて更に焦らせる予定だが、この調子なら問題無く届くだろう。

 

モモ王女「丁度いい使い道でしたので」

 

トピア「この世界、地金が高く売れるので資金調達が簡単なんですよね」

 

 現在機動本社ネームレスの横に停泊しているのはインファクトリ11だけであり、他の9隻は資金調達のために銀河の方々に散っていた。

 現代日本では正式な刻印があるインゴット以外は売れるルートが限られるが、様々な惑星で採掘をしていてその所有権も流動的なこの世界では成分に問題が無ければ販売可能なルートがいくらでもあるのだ。勿論一気に売りさばくと価格相場の下落が生じるが、売りさばく地方も別々で更に様々な希少資源に分けているし、今必要な資金を得るための一時的な措置なので、そこまで致命的なことにはならないだろう。

 ところで名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)筆頭株主の名義をよく見てみると、匠衆(マイスターズ)にはなっていなかった。

 

マジェリス「名義がマイン・ストリアニューダになっているようですが?」

 

モモ王女「この世界の戸籍と銀行口座を持っているのがマイン様だけでしたので、当然そうなりますわ」

 

マジェリス「なるほど、そう来ましたか……」

 

マイン「フフ、この保護占領(ホワイトナイト)戦略、まさに騎士(ナイト)の名に相応しい。見事な仕事だと感心はするがどこもおかしくはないな」

 

アヴェニュー「うむ、自称騎士団などという木っ端連中ではなく我がマインこそが正当なる騎士(ナイト)と示すこの所業、見事と言うほか無いな。そもそもこの我を信仰しておらぬ連中のどの辺りが神聖だというのか」

 

 実際の所はモモ王女がマインの口座を借りてやっていたことでマイン自身も関与していなかったようだが、外敵から名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)を守る保護占領(ホワイトナイト)の名義人になる当人もその保護者もそれを喜ばしく思っているようだ。

 

マジェリス「まあ、ともかくあの外道連中による買い占めを阻止してくれたのは有難く思います。それで、一応の確認なんですが、そちらとしては今後名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)をどう扱うおつもりで?」

 

 敵対的な神聖銀河騎士団に代わって気心が知れているマインが筆頭株主になるのはありがたいことではあるが、ありがとうございますだけでは終われない。それを為す相手、この場合マインではなくモモ王女や匠衆(マイスターズ)が何を目的としているのかくらいは現状のトップとして確認せざるを得ないところだ。マインの名を以て行う以上は間違いなくあの連中よりは遙かにマシな扱いにはなるだろうが。

 マインは根本的なコミュ力の問題で真意を測りづらいが、彼女が名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)にかなりの愛着を持っているのはマジェリスも知っていることだ。だからやむにやまれぬ事情とは言え、そんな彼女に懲戒免職を言い渡すには酒の力が必要だったのだ。そして実際に通告したらあのマインが涙目で絶句するという予想以上の反応だったので、マジェリスもかなり心苦しかった。マインが行方不明になった際に周辺の状況を調査したので、ただのサボりではないことくらいは元々分かっていたのだ。

 

モモ王女「そうですわね、まず必要最低限の第一目的は、現在匠衆(マイスターズ)で流用している名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)由来技術を正式に使用許可していただくことですわ。それ以外には、希望者にはこちらで働いていただくことと、あとはこの世界との交易窓口になっていただければ有難いのですが」

 

マジェリス「ふむ、聞く限りでは悪い話ではなさそうですが、交易は専門外ですね。伝手くらいはありますが」

 

 この名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)との交渉は他とは前提条件が違う。

 まず名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)は流通業者ではないため独自の流通網を持っていない。ならばその本業に活かそうと考えた場合でも、この世界で行われている惑星争奪戦ではレギュレーションの範囲内の武装しか使えないため、匠衆(マイスターズ)のもたらす過剰な軍事技術はレギュレーションに合わせて改めて調整しないと有効に機能しない。また、戦場となる惑星で採掘出来る資源をどう運用して戦うかという兵站が肝になるため、無尽蔵の資源を持ち込むことも出来ない。つまりは匠衆(マイスターズ)が提供出来るものがおよそ相手の業種と合っていないということだ。

 惑星争奪戦は単なる資源争奪という意味の他に政治的決着手段や或いは興業という側面もあり、ルール無用の戦争を抑止するためにも惑星争奪戦管理委員会が定めたルールを破るのは厳禁である。もし破ったならば参加資格停止に繋がりかねない。つまり神聖銀河騎士団はあくまでそのルールの外、盤外戦術で好き放題やっているわけだ。ルールに「勝ちを譲ってはいけない」とは流石に書かれていないので。

 なので名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)とは取引材料が少ないと見た匠衆(マイスターズ)も他とは違って金銭的に技術使用権を購入することを視野に入れていたのだが、組織ごと購入する予定までは当初は無かった。しかし他の腐った組織に買収されそうになっているともなれば話は別である。

 

モモ王女「まともな流通業者を紹介していただけるならそれでも構いませんわ。あと人員の移籍については、指揮官の皆様には別の戦場を用意しておりますわ」

 

マジェリス「別の戦場? ……ああ、さっきマインが言ってたBETA討伐戦争とかいう奴ですか? ふむ……マインが上手くやっていけてるならそっちへの転職はありかもしれんですね」

 

マイン「どういう意味だ?」

 

マジェリス「そのまんまの意味ですよ、筆頭株主殿」

 

 マインは軍事的才覚には優れているが、それに反して対人スキルは絶望的に低い。それでも匠衆(マイスターズ)では上手くやっていけており、莫大な資金をつぎ込んでマインの古巣に救いの手を差し伸べるくらいなのだから、最初から敵視でもしない限りは人間関係の大きな問題は発生しないだろう。

 なお目の前のマインがまさにその最初から敵視していた例である。

 

マジェリス「いいでしょう。ただ、その前に一つトラブルが発生すると思うんですが」

 

モモ王女「ええ、神聖銀河騎士団の皆様が言いがかりで決闘でも挑んでくるのでしょう? 望む所ですわ。また返り討ちに、いいえ、今度こそバラバラに解体して差し上げましょう」

 

マジェリス「ほほう、具体的にはどのように?」

 

モモ王女「ええ、それに関しましては――」

 

 マジェリスがモモ王女の策を認め、その日のうちに神聖銀河騎士団が言いがかりを付けてきたため、早速神聖銀河騎士団とマインとの惑星争奪戦形式での決闘が決定された。

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