【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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242. 敵の一鍾を食むは吾が二十鍾に当たる、だったか? とはいえ、インパールは御免被るが

 そんなわけで、ターニャの北東側、エリア096に陣取った騎士団員がもたもたと仕事をして打ち上げ準備の1割~2割程度しか進んでいない状態で、それなりの資材を積んだターニャのコア:シャードがそこに攻め入った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ルール上は飛行中のコアに攻撃することは禁止とされているが、着陸直後からこれに攻撃することは可能だ。しかし準備が出来ていなければ当然即迎撃など出来ない。

 襲撃にまごつく騎士団員を無視して、コアのリンク機能でエリア096の拠点に瞬時に移動したターニャは近場で石炭と砂と鉛を採掘出来る地帯へと向かった。

 

 まずターニャは石炭鉱脈に機械式ドリルを15基設置した。機械式ドリルは銅12だけで建設可能な20m×20mの自動採掘設備で、1区画10m×10mあたりの基本採掘速度が0.1物資単位、4区画分で0.4物資単位だ。この物資単位は勿論FICSIT基準のfrではなく、惑星争奪戦基準のものだ。具体的にはここでの1物資単位=184.32frになる。そして採掘対象による速度係数が掛かり、石炭の採掘速度係数が0.8なので4区画分で0.4×0.8=0.32物資単位/秒になる。今回の目標は4.0物資単位/秒で、計算上は機械式ドリル13基で=4.16物資単位/秒になるが、実際には4区画全てが鉱脈で埋まっていないドリルもあるので15機必要になった。

 この機械式ドリルにノーマルのコンベアを繋いだ。長さ10mあたり銅1で建設可能で、物資運搬速度は4.1物資単位/秒だ。

 そのコンベアの終点に黒鉛圧縮機を設置した。これは銅75と鉛30から建設出来る20m×20mの設備で、石炭2単位から黒鉛1単位を生み出す。機械式ドリルと同じ重力傾斜発電で動くので外部電力不要だ。電力が要らない代わりに0.67黒鉛/秒というやや遅いペースでの生産となるため、3つ設置して2.0黒鉛/秒にペースアップさせた。これに必要な石炭が4.0物資単位/秒となる。

 これで外部電力不要で2.0黒鉛/秒を生産する設備が整ったので、黒鉛圧縮機の出力をコア:シャードに接続して貯蔵出来るようにする。これはこの工場で生産する黒鉛が建設資材目的で、建設資材はコアに貯蔵してある在庫から出てくるためだ。

 さしあたって必要なのは30黒鉛/秒なので15秒で目標量が生産出来る。その15秒を待つ間に次の設備の用意をする。

 

 次にターニャは石炭鉱脈に機械式ドリルを4つ設置し、そこからノーマルのコンベアーを伸ばしてその終点に火力発電機を2つ設置した。

 機械式ドリルの石炭採掘速度は0.32物資単位/秒なので、これを4基で1.28物資単位/秒だ。

 ドリルと発電機を繋ぐのはノーマルのコンベアーで、運搬速度は4.1物資単位/秒だ。

 火力発電機は銅25と鉛15から建設可能な10m×10mの設備で、石炭を0.5物資単位/秒消費して600kWの出力を得る。2つで1.0石炭/秒消費の1.2MWだ。

 この3段階で全て石炭1.0物資単位/秒を満たしているため、これで確保した発電量は1.2MWになる。

 発電設備に関しては、現状では蓄電設備を設置していないため、満額の電力が必要なくてもそれぞれの発電機に石炭供給0.5物資単位/秒をクリアしないと電力が途切れ途切れになってしまうことに注意が必要だ。

 

 次にターニャは機械式ドリルを砂地に5基、鉛鉱脈に6基設置した。採掘速度係数が砂は1.0、鉛は0.9のため、砂を0.4×1.0×5=2.0物資単位/秒、鉛を0.4×1.0×6=2.16物資単位/秒で採掘することになる。

 砂と鉛のドリルからそれぞれコンベアを伸ばし、その終点に溶解炉を設置した。

 溶解炉は銅60、鉛30、黒鉛30で建設出来る20m×20mの設備だ。黒鉛圧縮機で先に製造を開始していた黒鉛30をここで使うことになる。消費電力360kWも先の火力発電機から拝借する。

 溶解炉は2.0砂/秒+2.0鉛/秒→2.0メタガラス/秒の加工を行う。メタガラスは黒鉛と同じようにコア:シャードに貯蔵する。

 

 次に黒鉛の余りを使って銅18、黒鉛10でチタン鉱脈に20m×20mの空気圧ドリルを設置する。これは機械ドリル同様に外部電力が不要で採掘ペースが1.5倍だが、機械式ドリルと違ってチタンの採掘が可能というのが最も大きな違いだ。このチタンもコア:シャードに貯蔵する。

 

 次に銅30と鉛25で20m×20mのシリコン溶鉱炉を建設、更にそれに付随する採掘設備を建設する。消費電力300kW、加工は1.5石炭/秒+3砂/秒→1.5シリコン/秒だ。このシリコンもコア:シャードに貯蔵する。

 

 ここまで細かい単位の作業をしてきたが、メタガラス、チタン、シリコンが手に入ったことでここからの工程は爆発的に規模が拡大する。

 

 ターニャは銅15とメタガラス10を使って油脈に機械ポンプを設置、パイプで繋いでその隣に()()()()()()を設置した。

 この燃料式発電機はFICSITのものを惑星争奪戦レギュレーションに合わせて再設計したもので、サイズは元が20m×20mだったのに対し30m×30mと大きくなっている。建設コストは銅100、鉛100、チタン150、黒鉛30、シリコン80だ。これは同サイズの差動発電機より若干要求コストが高い程度だ。

 参考までに、中隊(カンパニー)製でも神聖銀河騎士団製でも火力発電機は固形燃料しか使えない上に出力は石炭で600kWだ。水を併用する上位機種となるタービン式発電機でも石炭で3.3MWに過ぎない。セルプロ環境で最高の出力を誇るインパクトリアクターでも出力は63MWで、しかも燃料と冷却水の確保に手間が掛かる上に一度停止したら再起動がすこぶる面倒だ。

 これらに対し、ターニャが設置した燃料式発電機はまず原油をそのまま使えているし、1基あたり100MWの電力を叩き出している。破格の性能と言えるだろう。

 これは勿論FICSIT技術の賜物である。本来のFICSIT燃料式発電機は150MWを誇るのだが、カテリウムの代わりに銅、鉄の代わりにチタンといったその場で得られる原料から建造出来るように、また未精製の原油をそのまま投入しても内部で精製して機能するようにカスタマイズしたため、出力性能が2/3まで低下している。150MWから精製電力30×12/40=9MWを引いて更に代替原料による性能低下と安全余裕を見て2/3の100MWという形だ。

 原型よりサイズが大きいのは、代替建材の影響と精製機能を一体化で組み込んだことの相乗効果だ。

 水を一緒に投入して希釈燃料レシピを使えばもっと資源効率が上がるのだが、惑星争奪戦は資源効率より時間効率の方が大事であるため、ポンプと発電機1つずつだけで成立する簡便さが優先とされ、この形になっている。

 惑星争奪戦適応型燃料式発電機の燃料消費は原型と同じ12m3/分 = 0.2m3/秒。精製前の原油の量では1.5倍して0.3m3/秒になる。これに対し、機械ポンプの採掘性能が6.6m3/秒。機械ポンプ1基だけで22基もの燃料式発電機を稼働出来てしまう。その総出力は2.2GW。実にインパクトリアクター35基分である。これだけでエリア一つ分の電力を十全にまかなえてしまう。

 

 無論この発電機がレギュレーションに違反していないことは事前に確認済であり、また判定員に文句を付けて却下されたグリマルドが顔を赤くしていた。

 

 ターニャが最初にエリア096を選んだのは、三方の敵陣の中でもここが最も資源が豊富だからだ。

 コアが資源の正確な位置を探査出来るのは半径1,000kmまでだが、隣接エリアあたりでも採掘可能な資源の種類程度は分かるのだ。エリア096にはトリウムを含むセルプロ型惑星で使う資源の大半が揃っている。乗っ取って本拠地にしてしまうのに好都合だ。まあ要するに一石二鳥ということだ。

 

ターニャ「孫子曰く、敵の一鍾を食むは吾が二十鍾に当たる、だったか? とはいえ、インパールは御免被るが」

 

 敵から奪えば万事解決などと考えて自前の兵站をおろそかにすると、むしろ自軍の動きが敵の動きに左右されることになり、兵站が安定しなくなる。前提として自前の兵站は当然必要だ。

 ともあれ、最初の陣地の隣に明らかに格下の敵が保有する好条件の土地があるのだから、むしろ幸運な部類の初期配置ではないかとすらターニャは思っていた。

 もし敵軍12人が協力してこのエリアを守る場合は幾らか苦戦しそうだとも思っていたが、一体何を考えているのか未だに1人分のコアユニットしか見当たらないのでその心配も無さそうだ。

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