【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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243. 何だこの陣地は? 真面目にやっているのか?

 

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 ターニャは燃料式発電機の大電力を背景として次に空軍基地を建設、モノ系統のTier2であるポリの製造を開始した。

 ポリは建設補助を目的とした航空ユニットだが、当然このポリの建設機能にもFICSIT技術が流用されている。匠衆(マイスターズ)謹製の建設ロボットほどではないが、それなりの建設速度が出るようになっており、一向に作業が進んでいない騎士団に対し益々差を付けていた。

 

 更にターニャはこのポリを多数引き連れて陸軍工場を3段階目まで建設し、他の設備を整えながらTier3フォートレス3機目が建造出来た時点で敵陣地に進撃を開始した。

 フォートレスは惑星争奪戦の表記基準だと耐久値900で、攻撃力が範囲80+直撃20で射程290mの実弾を秒間1発発射する。火力は合計で100DPSになる。

 これはエネルギー換算で耐久値9MJ、火力1MWになる。クラフトピアライフやTechライフの基準だと耐久値90万、火力10万DPSだ。最後のクラフトピア表記法で統一すると、フォートレスが属する陸軍標準のダガー系統は以下のようになる。

 

・Tier1 ダガー:耐久値15万、防御力(DEF)0、火力41,400DPS、射程180m、移動速度135.00km/h

・Tier2 メイス:耐久値55万、防御力(DEF)4,000、火力201,280DPS、射程60m、移動速度135.00km/h

・Tier3 フォートレス:耐久値90万、防御力(DEF)9,000、火力100,000DPS、射程290m、移動速度115.92km/h

・Tier4 セプター:耐久値900万、防御力(DEF)10,000、火力283,400DPS、射程210m、移動速度97.20m/秒

・Tier5 レイン:耐久値2400万、防御力(DEF)14,000、火力652,680DPS、射程230m、移動速度94.32km/h

 

 Tier3のフォートレスはTier2のメイスにDPSで負けているが、メイスは射程が短すぎる上に耐久力も今ひとつなのでタレットの集中砲火であっさり落とされる。その点フォートレスはダガー系統で最も射程が長いのでダメージを受けにくく、コストと性能のバランスが良い。

 今回マイン側は建設や発電に関しては効率化改造がなされているが、直接戦闘に使うことになる兵器群については全く改造していない。精々フリーズしなくなっただけだ。レギュレーションに適合するようにわざわざ用意するのが面倒というのもあるが、それに加えてここに明らかな性能差があると、実力ではなく兵器の性能差で負けたなどという面倒な言い訳を聞く羽目になるからだ。まあ()()()()()()をされたところで結局勝敗には関係ないのだが。

 

 敵味方の拠点になるコアの耐久値は以下のようになっている。

 

・コア:シャード:耐久値110万

・コア:ファンデーショーン:耐久値350万

・コア:ニュークリアス::耐久値600万

 

 コアの耐久力は実は最大でもセプターより低い。最低クラスのコア:シャードに至ってはフォートレス単体でもわずか11秒で落とせる。3機編成なら4秒もかからない。

 当然コアの前にはタレットが配置してあるが、対空・対地両用ながら威力が最も低く射程も137.5mしかないデュオ、対空用としてはそこそこの性能だが対地攻撃が出来ないスキャッターが配置されているだけだ。中級タレットの入口にあたる射程293.7mの対地砲台ヘイル、電撃を放つアーク、レーザータレットのランサーすら配置されていない。特に射程でフォートレスに伍するヘイルが無いのが致命的だ。

 

ターニャ「何だこの陣地は? 真面目にやっているのか?」

 

 ダメージを防ぐための防壁も最低ランクで、耐久力128万の巨大な銅の壁を今頃並べている所だ。修復機すら設置されていない。ここはむしろただの銅の壁ではないことを頑張ったねと褒める所なのだろうか。ターニャはあまりの酷さに何かの罠を疑ったが、その罠も全く見当たらないためそのままフォートレスを進撃させた。自分で操縦するまでもないほどの戦力比なので、並行して生産・輸送設備の整備を進めながらだ。

 そうすると向こうからターニャへ何やら通信を送りつけてきた。

 

騎士05≪いやいや待て、話し合おう! こっちはまだ準備が出来ていないんだ、正々堂々と戦おうじゃないか!≫

 

 ターニャは眉根を寄せて訝しんだ。こいつは一体何を言っているのだろうか。相手より手早く準備して攻め入るのが惑星争奪戦の肝だろうに、それを準備が整うまで待てとは一体どういうつもりなのか。

 そもそも12対1の条件を付けておいて正々堂々という言葉が恥ずかしげも無く出てくるのは一体何なのか。頭がハッピーなのか?

 

騎士05≪タダでとは言わん、申し出を受けてもらえるのなら正式に私の……妾にしてあげようじゃないか! 今だけの特別扱いだぞ?≫

 

 何か交換条件を出しているつもりなのかもしれないが、そこらの傭兵にも劣る騎士だか自称騎士だかの、正妻でも側室でもない妾になることに一体何の価値があると思っているのか、理解に苦しむ。そもそも戦闘中に降伏以外の言葉を聞く必要が全く無い。ターニャは当然それを無視してフォートレス部隊に進軍を継続させた。

 防壁は既に突破し、その向こうには申し訳程度のタレット群が並んでいるが、まず射程が短いので攻撃すら飛んでこず、アウトレンジ攻撃でフォートレスが壊滅させていく。

 

騎士05≪こら、話を聞けと言うに! お、おのれ卑怯なァー!!≫

 

 当然の結果として、ターニャが指揮するフォートレス部隊は一方的に敵軍のコア:シャードを破壊した。

 何だか卑怯呼ばわりされているが、惑星争奪戦で作業の手際が悪いということは、このように戦力差に直結する。本物の戦争ではないとは言え、惑星争奪戦の基本原則は総力戦であり、生産力と兵站が物を言うのだ。

 

ターニャ「何を言いたいのか欠片も分からんな。まさかとは思うが、基礎の基礎すら知らんずぶの素人なのか? ……いや、それこそまさかだな。少なくとも1年はこの仕事をやっているはずだ」

 

 状況証拠からすると素人以外の何者でもないという判定が出てしまうが、相手が弱いに違いないと判断して油断するのは愚の骨頂だ。ターニャは改めて気を引き締めた。

 

 勝利条件が全てのコアの破壊であるため、初期拠点のコア自体は勝敗に関係ない。なので騎士05はエリア132の味方コアに退避していた。合流することでせめてその拠点の作業速度を上げようという算段……というわけでもなく、破壊される直前にコアの安全装置が働いて一番近い味方コアに自動転送されただけだ。

 それと同時にターニャはエリア096からエリア132へ新たなコアを飛ばした。

 まず最初の拠点であるエリア114にはエリア096に資源を飛ばす発射台を設置しており、これにエリア096での生産力を併せて、次の侵攻に必要な資源が既に確保出来ていたのだ。

 

 

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 ターニャがエリア096を制圧して南東のエリア132に攻め入った時点で、南東側は最低限コアを飛ばすのに必要な資源の4割程度しか溜まっていなかった。

 相手の備蓄資源量が分かるわけではないが、設備の状態から見てどうやら先ほどの騎士団員と同じくらいしか進捗していないようだとターニャは察した。そして先ほどの騎士05の()()()()()()を見ていたターニャは、敢えてオープン回線で相手に通信を送りつけた。

 

ターニャ「さあさあ行くぞ、どんどん行くぞ。騎士団の諸君、そろそろ()()()()()()()は終わりかな? 別に()()()()()を続けてくれても構わないが、それで私を油断させることは出来ないぞ? ああ、それとも本当は強いのに買収されてわざと負けましたと言い訳するための準備かな? そこまでの高度な戦略を展開されると私にはどうしようもないな!」

 

 その言葉で観覧席から笑い声が上がり、これを聞いた騎士達は一様に憤慨したが、ターニャとしては別に煽っているつもりは無い。今回出てきた相手のレベルがマインが想定していたものよりも遙かに低いので、ターニャは敵が数的有利に慢心して相当油断しているか、そうでないのならば何らかの考えがあって無能のふりをしているのではないかと当たりを付けて揺さぶりを掛けたのだ。まあ単なる無能であるという可能性も勿論疑ってはいるが。

 

 しかし騎士達は別に何か考えがあって手を抜いているわけでもないし、スロースターターでもない。今出せる全力を出しているつもりだが、普段の努力を怠っているので哀しいくらいに地力が低いだけなのだ。同じような条件でマインに負けたことがあるのにもかかわらず、「負けるはずがないのに負けたということは、つまりあれは運が悪かっただけだ」と結論づけてそのあと全く反省していなかったのだ。

 騎士団連中のこの現状認識能力の低さは団長であるグリマルドすら頭を抱えている所だ。流石にグリマルドは自分の騎士団の連中の実力が一般傭兵にも劣ることくらいは認識している。しかし彼自身の実力も低く指導能力も無いし、それ以前の問題として表向きは強いことになっているので立場上直接自分達の実力を否定するような言葉をそうそう発することも出来ず、おまけに毎回八百長していてまともな実戦経験すら積ませることが出来ないので、努力の必要性を認識させることが出来なかったのだ。

 マインもターニャも幾ら何でも相手が多少は成長しているものと想定していたのだが、その想定が無駄になっただけの話であった。

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