ターニャはエリア099をあっさり制圧し、続けてコア:ニュークリアスで乗り込んだエリア100も全く苦労せずに制圧した。
エリア099は開発を始めたばかりということでまだギリギリ分からなくもなかったが、エリア100の防御陣地もエリア131程度でしかなかったので、Tier4セプターの5機編成であっさり制圧した。
ターニャとしては惑星争奪戦の開始から1時間以上経過しているのに未だにこの程度の備えしかしていないことに疑問を禁じ得なかった。おまけに他のエリアからの支援物資が飛んで来た形跡すら無いのだ。
ターニャ「もしや無駄に資源を投入させて縦深防御で兵站を疲弊させるつもりでは……それにしたってこの環境では意味が無いのだがな」
実際ターニャはこの2エリアの制圧のためにほぼ全力の資源投入をしているし、進むためには毎回コアを飛ばさなければならないので資源を浪費していると言えなくもない。また、ここから更にエリア154あたりに攻め入るとすると、一般的な戦争概念からすると工業地帯からの距離が離れて兵站で不利になるようにも見える。
しかし、
具体的にはエリア097、116、117で生産した資源を一旦エリア096に送って、工業地帯と資源集積地を兼ねるエリア096から最前線に資源を送ることで、工業地帯4つ分の生産力を戦闘エリアに供給し続けることが可能になっている。一旦集積しているのは、毎回最前線に合わせて全部の工場エリアからの送り先を変更するのは面倒だからだ。
時間を優先したためそれほど大規模ではないが、これは
欲を言えば二正面、三正面に全力で対応出来る規模の生産量ではないことが惜しまれるが、現状の戦力分布では移動無制限のエリア153経由でエリア117を狙われる以外にリスクがほぼ無いので二正面にすらならない。実際ターニャはエリア099と100で戦闘している間に側面を突かれて二正面の形になることを警戒し、エリア117には
総じて、その辺りを勘案しても縦深防御は有効な戦略とは言いがたい。前進する方針を否定するような判断材料は今のところ何一つ無いと言えるだろう。逆に慎重を期して四正面に耐えられるくらいの生産力を整備した場合、今進めば隙だらけでしかない相手の準備が整って一正面くらいはまともに戦えるようになってしまう恐れがある。そうなった場合の方が面倒だ。
そうなると前進一択なのだが、それを決定するに至り、もしかすると今の自分はかつてのダキア戦で戦列歩兵の対空陣形を無駄に警戒して後退した副隊長くらい間抜けに見えているのではないか、とターニャは気付いた。場合によっては敢闘精神の欠如を疑われるのではないか。
全体を把握出来ない以上はある程度の慎重さが必要なのだが、しかし外から見ている者は全体が見えているので、どうしても印象が変わってしまう。志村後ろ状態という奴だ。
ターニャは色々と考えた結果、これ以降は最低限の対応力を確保してほぼ最短手順で片付けることを決めた。
トピア「あっ、デグさんが何かに気付いた様子ですね」
九十九「相手を警戒しすぎていたことに気付いたのかな?」
タバサ「思い切って前進し始めたから、多分そうなんだろうね」
タリサ「もう警戒はいいのか?」
マジェリス「いや、あれは侵攻速度重視に切り替えちゃいるが油断はしてねえな。いつでも二正面に最低限対応出来る程度の余力を残しながら前進してる。警戒しすぎて相手の設備が整う時間を与える方が厄介だと判断したんだろうな」
タリサ「そういうもんか……」
前線のミッションでも色々な都合で対応時間が限られる場合があるので、そういう判断も確かにあるなとタリサは深く頷いた。
同時にこのおっさん誰だろうとも思っていたが。
ターニャはエリア119、137に最低限の資源でコア:シャードを飛ばし、続けてエリア154にTier3フォートレスを建造出来る程度の資源を搭載したコア:ニュークリアスで侵攻、制圧。更にエリア155にもコア:ニュークリアスを飛ばしてTier4セプターで制圧した。更にエリア191にコア:シャードを飛ばしてエリア204と216を同様に制圧すると、資源の備蓄量が大分減ってきたので、備蓄の回復を待つ間にここまでのルートで最も資源が豊富なエリア154の工場整備を開始した。
エリア154の工場整備を完了すると同じ手順でエリア192、193を経由してエリア194、195を制圧、次にエリア139、103を経由してエリア67、68を制圧、エリア049、032を経由してエリア019、010を制圧。エリア068を工場整備して、これを完了するとエリア051、034、022経由でエリア012、024、025、039を制圧、また一旦休んでエリア024の工場整備を進めた。
資源補給を兼ねた工場整備を挟んで侵攻した上に相手の人数が多かったため、エリア012で漸くダガー系Tier5レインの出番があったが、まあ苦戦はしなかった。
そしてエリア024の工場整備が終わった時点での勢力図が以下のものだ。
この時点でコアの数は35対1となっており、ここまで一切騎士団員同士の物資支援が無かった。まさか知らぬというわけもあるまいにひどいものだ。
というか、ここまでにターニャがフルスペック工場を7箇所作っているのだから、合計すればターニャのおよそ半分の建設速度がある筈の騎士団連中は3箇所程度はフルスペック工場を完成させていないとおかしい。だが連中は徒に戦力を分散させて各個撃破されており、その殆どの労力が無駄になっている。
ターニャ「流石に最後の砦くらいはまともに抵抗してくれるのだろうな?」
流石に序盤から多人数で整備を続けてきたと思われるエリア211くらいはまともな防御陣地になっていると期待したいものだが、どうだろうか。或いはエリア153経由で主要工業地帯であるエリア117にカウンターを仕掛けてくれてもいいのだが。
ターニャはコア:シャードを飛ばして移動無制限エリア210を占拠し、続けてその隣のエリア211に資源を満載したコア:ニュークリアスで乗り込んだ。
そのエリアはこれまでのエリアとは異なり、コア:ニュークリアスにボールトが8つ併設されていた。
更に工場がそれなりに整備されていて加速ドームも設置されており、エリア特有の資源の豊富さもあいまって、一戦戦い抜く程度の生産力はありそうだった。
防壁は最上位のサージ合金になっており、修復プロジェクターも備えられているのでかなりの耐久力がありそうだ。
タレットも整備されていて、上位で最も手軽でありながら火力も高いサイクロンや最長射程625mを誇るフォーシャドウが敷き詰められていた。
更に機動ユニットはダガー系最上位、Tier5のレインが12機並んでいた。その佇まいは堂々としたものだ。
騎士01≪ここから先は一歩も通さぬ! 我等神聖銀河騎士団の力を見るがいい! 団歌斉唱ーッ!!≫
ターニャ「やはりただのアホだったか……」
ターニャはその期待外れぶりにため息を吐いた。
何が間違っているかと言えば、騎士団側のコアが湖の中の小島に配置されており、レインをその小島で建造していることだ。小島はほぼ騎士団側の設備で埋まっているのでターニャのコアがこの小島に配置されることはない。そしてこの湖は水深がかなり深いため、
ターニャは何やら歌い出した騎士団を無視して悠々と電力確保、ポリ製造、2.5倍速化、海軍リッソ系Tier5オムラの建造を進め、10隻建造した時点で進軍を開始した。何しろ敵軍のユニットが島から出られないので、ここまで何の妨害もないのだ。
・陸軍ダガー系Tier5 レイン:耐久値2400万、
・海軍リッソ系Tier5 オムラ:耐久値2200万、
インファクトリ級航宙工作艦の原型としてお馴染みのオムラは、海軍ユニットであるために広くて深い水たまりがないと使いようがないという運用上の重大な欠点を抱えているが、使える条件さえ整えばその性能はレインをも凌駕する。特に顕著なのがその攻撃性能で、インファクトリにも受け継がれた艦橋一体型旋回レーザー砲塔がレインにやや勝る火力で射程はレインの2.7倍という圧倒的な性能を誇っているのだ。正面から当たった場合にどちらが勝つかは火を見るより明らかだろう。
何よりここの地形は湖両岸から両コアまでの距離が500m以下で、オムラの最大射程は620mだ。距離を適切に調整すればフォーシャドウ以外の攻撃は受けないし、コアにも一方的に攻撃出来ることになる。この地形条件で何故オムラを建造しなかったのか。ターニャ側のコアの湖岸から620m以内に設置されるか分からなかったとしても、せめて空軍から選ぶべきではないのか。ターニャでなくとも理解に苦しむというものだ。
騎士01≪お、おのれ卑怯な! 尋常に勝負せよーッ!!≫
ターニャ「……むしろ何故そんな所でレインを建造した?」
騎士02≪レインにはレインで応えるのが騎士の誇りであろうが!≫
ターニャ「ああ、うん、付き合っていられんな」
つまりどうにか島に乗り込んでそこでレインを建造して決闘に挑めというつもりだったのか。なるほど自称騎士の意味の分からない理屈を理解しようとすること自体が不毛だったなとターニャは諦めた。
射程が違いすぎる上に相手は湖に阻まれて距離を調整する事すら出来ないため、戦闘というよりは一方的な蹂躙となったのは言うまでもない。
……だがそのまま終わるかに見えた最後の最後、敵軍のコア:ニュークリアスが異常な耐久力を見せていた。その不自然さにターニャは眉根を寄せた。
騎士11≪マインの悪魔め! これが我等の
ターニャ「巣穴に引き籠もりながら言われても、手も足も出ないのはそちらの方だろうとしか言いようがないのだが……?」
マインの悪魔とかいう呼び名は何だか前世のライン戦線を思い出して引っかかるものがあるが、それはそれとして。
既に周辺の機動ユニットも砲台も工場も発電所も貯蔵庫も壊滅してコアだけとなっているので、反撃が全く飛んでこない。しかしその硬さだけが異常だ。本来の耐久力600万の10倍はオムラの主砲レーザーを叩き込んでいるのにいまだに大した損傷も無く持ちこたえているのだ。
しかしなるほど、
この世界の神はアヴェニュー神だが、事前に確認した限り、連中は神聖と名を掲げている割にアヴェニュー神の信徒でもない。むしろ徹底的にやってやれと本神に言われたくらいだ。ということはだ。
ターニャ「まさかこんな所にも存在Xの魔の手が届いていたとはな」
存在X一派に関して、
というのも、マブラヴ世界の恭順派を存在Xが支援していたが、連中は明確に存在Xを信仰していないし、存在Xは恐らくマブラヴ世界の管理神でもない。そもそも連中が支配する統一歴世界ですら、人々が存在Xやその一派を意識して信仰していたかは大分怪しい。しかしその信仰力を存在X一派が享受出来ないのであれば、わざわざ恩寵を与えて支援する意味が無い。だから何らかの方法で受け取っているはずなのだ。
ここで引っかかるのが
この際、存在X一派がそれらの宗教の神を詐称しているのか、それともそれらの宗教が邪神と知らずに存在X一派そのものを崇めているのかは関係ない。問題は連中のリソースの供給源が思ったよりも豊富かもしれないということだ。
ともあれ、マブラヴ世界の神の所在は判明していないが、存在Xを警戒しているアヴェニュー神の世界にまで手を突っ込んでくるとは、リィズの件の仕返しのつもりだろうかとターニャは訝しんだ。