燃料問題が解決してご機嫌のトピアが次の議題を提示する。
トピア「もう一つあります。重
トリオ「専門家?」
サティ「そういえば相談がどうとか言ってたような?」
トピア「本日のゲストはこちら!」
トリオとサティが注目する中、トピアはおもむろに金色に光るモンスタープリズムを取り出し床に投げつけた。通常のモンスタープリズムは銀色だが、金色の状態は
アヌビス神「XXX, XXX(我こそはアヌビス、クラエル神に仕える
モンスタープリズムが発した煙が晴れるとともにその場に犬頭の神が現れ、言語自体は不明だが直接意味が理解出来てしまう声で語りかけてきた。
気のせいではないレベルで空気が澄み渡り、食堂が荘厳な雰囲気に包まれる。これがゲームや映像作品であればBGMが神秘的なものに変わっているところであろう。
トリオとサティは目を瞠った。
トピア「はい、事前に
アヌビス神「X,XXX, XXX(やめ、やめないか、 我には神の威厳というものがクゥーン)……」
二人が目を瞠ったのも無理は無い。その荘厳な雰囲気の中で、アヌビス神はトピアにムツゴロウスタイルで撫で回されていた。荘厳な空気はそのままでハートマークのようなエフェクトが見え隠れしており、台無しであった。
しかも今保護と言ったか? つまり神を殴ってモンスタープリズムに入れたのか? 一体
なおこの撫で回しの技巧はテイマースキルTier3、『熟練トレーナー』の応用である。まさにペット扱いであった。
トピア「ほらべーえべえべえべえ」
アヌビス神「クゥーンクゥーン」
クラウザースタイルも交えて暫く撫で回しが続き、アヌビス神が仰向けの服従ポーズになってお腹を撫でられ始めたところでトピアが満足してその手を止めた。アヌビス神はもはや地声で甘えた声を出していた。神とは。
トピア「それでアヌビス様、話は聞いておられたと思うので、ミッション報酬の件をどうにか出来ませんか?」
相変わらず神に対して言葉だけは丁寧なトピアであったが、直前の無礼三昧のお陰でそれが表面上だけなのは明らかである。
アヌビス神「……X, XXX. XXX(オホン、まずその二人にそなたと同じ権能を与えることは出来ぬ。特に外敵により世界が不安定な今はな)」
アヌビス神はゆっくりと立ち上がり、咳払い一つで何事もなかったかのように仕切り直して話し始めた。
ツッコみたい気持ちが無いわけではないが、サティとトリオは武士の情けでこれまでの惨状を見なかったことにした。
トピア「つまり?」
一方トピアは何も出来ないとは言わせんとばかりに両手の五指をわきわきさせて意味のある返答を促し、返答によってはまた尊厳を破壊されると察したアヌビス神は震え上がった。
アヌビス神「XXX! XXXX. XX, XXX(その手つきをやめよ! その問題をどうにかするための方策はクラエル神より授かっておる。そこな二人、我が前へと来るが良い)」
トピア「だそうです、どうぞ」
サティ「……いいのかしら?」
トリオ「儂らが言っても仕方なかろう」
神との関係に疑問を抱きながらではあるが、二人はアヌビス神の前に立った。そのアヌビス神はトピアにクライミングスタイルでまとわりつかれた状態である。何も言うまい。
アヌビス神「XXX. XXX(まずはレベルとステータスを与える。これは
アヌビス神が手をかざすと、二人は何かの力に包まれた。そして自らの力を自覚する。
サティ「……とは言ってもレベル1からになるようね。今のところ普段と全然変わりないわ」
トリオ「これから上がるだけでも大きな違いじゃろ」
アヌビス神「XXX, XXX(次に、以後は成長の石板による強化を認めるものとする)」
トリオ「ふむ、成長の石板……とは何じゃ?」
成長の石板という聞き覚えの無いワードにトリオとサティが首を傾げたため、トピアがそれについて説明を始めた。
トピア「成長の石板はアヌビス様に捧げることでライフ、マナ、スタミナのいずれかのステータスを伸ばすものですね。最大30回強化で、1回当たりライフとマナが+50、スタミナが+10されるので結構大きな効果がありますよ」
サティ「それはありがたいわね」
トリオ「レベルに加えて益々死ににくくなるということじゃの」
少し前ならライフが+50と言われてもどの程度の意味があるのかサティ達には分からなかったが、今現在ではLv.1でライフが100となっているので、+50でも十分効果があることが察せられた。
レベルがあるだけでスキルが解放されていないので戦闘用の力としては微妙だが、ちょっとしたMOBの襲撃に怯えなくて済むのは安全対策上は勿論のこと作業効率的にも大きな意味があるし、戦うとしてもスキルを使わず通常攻撃だけで立ち回る前提のエンチャントの組み方というのもある。引き換えにスタミナゲージが0になるのでスタミナポーションが手放せなくなるが。
トピア「というわけでこちらが成長の石板の現物になります。80枚ずつあるので、20段階まで強化出来るはずです。石板強化の振り直しは幾らでも可能なので、現時点で必要な項目に振ってください」
サティ「あら、悪いわね」
トリオ「世話になるぞい」
大量の石板を受け取ったサティとトリオは迷わずライフに全て突っ込んで1,000上昇させた。ライフが100から1,100まで増えたのでこれだけで11倍の頑強さになったわけである。今後Lv.60まで上げても石板未強化状態のライフは395なのでまだまだ恩恵は大きい。
なお1段階当たりの成長の石板の要求数は4枚で、80枚で20段階進められるわけだが、同一項目に振り続けるとコストが21段階目から8枚、26段階目から16枚に上昇して、30段階分だと累計200枚の成長の石板が必要になってしまう。このペースでは400枚持ち込んだ在庫が2人分で尽きてしまうため今回は5人分確保出来る20段階分の支給となった。それでも7人目の石板が0枚になるが、その頃までには石板の調達を何とかして、最終的には全員30段階強化に持っていきたいところである。
アヌビス神「XXX, XXX. XXX(最後に、ミッション達成報酬を我が与える。内容は以下の選択肢から選ぶがよい)」
トピア「えっ、選べるんですか?」
今までに無い特別対応にトピアは驚きを露わにした。
アヌビス神が提示した今回の重
1. レベル上限+10
2. 任意の場所に任意の種類の高純度資源鉱脈を設置出来る回数+10
サティ「2番ね」
トリオ「これはどう考えても2番じゃろ」
そのあまりの効果に選択の余地は無く、原理がどうとかいうのは既にどうでも良くなっていた。
クラフトピア由来の人工岩盤であれば枯渇した鉱脈を復活させることは可能だが、鉱脈を増やすことまでは出来ないのだ。そして増やした鉱脈をFICSITの半永久採鉱機で採掘すればそのシナジーは絶大である。
トピア「これは私でも迷うくらいなので、大量生産に強いお二人だと尚更ですよね」
サティ「あなたは戦闘力を伸ばしてよ?」
何やらトピアも鉱脈の方に興味を示しているが、現状の最強戦力であるトピアの強さは全員の生残性に直結するため、サティは念のため釘を刺した。
トピア「分かっておりますとも。でもステータスが伸びすぎると基礎
サティ「そこの調整は任せるわ」
トピアがステータス上昇に伴うアセンの調整に悩み始めたが、そこは専門知識を持っているトピアに任せた方がいいだろうとサティは一任した。決して面倒になったわけではない。
トリオ「何はともあれ生産力はあればあるだけええぞ」
アヌビス神「XXX, XXX. XXX(ふむ、有意義な選択肢になっているようだな。本来は我が神殿でこの話をするつもりだったのだが)……」
アヌビス神が犬顔の表情を不満げに歪める。荘厳な空気溢れる空の神殿で大変ありがたい恩寵を授ける偉大なる神、その名はアヌビス! ……となる予定が、実際はトピアに捕獲されてこの有様であった。
トピア「まあまあ、アヌビス様のありがたみは私が十分に理解してますから」
アヌビス神「XX(そなた)……」
同じ上司に使われている同僚のよしみというのもあるだろうが、こう見えてトピアは意外とアヌビス神に対する信頼が篤い。アヌビス神は己の狭量さを恥じた。
トピア「というわけでアヌビス様、お疲れ様でした」
だが
トピアは話が終わるやいなやアヌビス神にモンスタープリズムを再使用した。
アヌビス神「XX, XXX(そなた、もう少し神の扱いというものをだな)!?」
かくして偉大なるアヌビス神は再びモンスタープリズムの中へと消えていった。再捕獲の場合は耐久を削らなくても100%成功するので楽なものである。
トリオ「神の扱いが雑じゃのう」
サティ「というか収納する必要あったの?」
トピア「いや、目を離した隙に水没して死んでたら目も当てられないじゃないですか」
トピアが言っていることの意味が分からずサティ達は疑問符を浮かべたが、実際のところ、出しっぱなしにしていたペットや家畜が目を離した隙に水死するというのはよくあることなのだ。これはアヌビス神でも起こりうる事態である。なのでトピアはモンスタープリズムから出したものは忘れないうちに収納することにしていた。
あとインベントリ内のアヌビス神にしか任せられない蒸着プロセスにおける石板振り直しという極めて
サティ「そこもペット扱いなのね」
トピア「保護した以上は安全管理が大事です!」
トリオ「うん、まあそういうことにしておくわい」
ともあれ、ミッション報酬が貰えない問題は無事に解決したのであった。アヌビス神の尊厳を除いて。