【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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254. 敵に手心を加えて味方を危険に晒すのは最悪の利敵行為ですよ

 名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)中隊長(カンパニーコマンダー)であるマジェリスは近況を語る。

 

マジェリス「あれから2日の動向なんですが、名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)が仲介して新しい資源の取引が無事始まって、顔見知りの商社や輸送業者がイイ感じに儲けてますね。勿論ウチも儲かってますが。それとともに宙賊による襲撃が活性化してます。さりげなくも白々しく被害エリアが接近してきてるんで、逃げない限りは近日中に機動本社ネームレスへの襲撃が発生するでしょう。そんなわけで今外部から人を呼ぶのは危ねえですね」

 

テクス「……それはつまり、例の自称騎士団が資産9割の支払いを有耶無耶にするために宙賊の仕業に見せかけて始末するつもりということでござるか?」

 

カミール「ああ、支払猶予が1ヶ月あるんだったか」

 

マジェリス「でしょうな。まあ探したって証拠は見つからんでしょうが」

 

 生憎アヴェニュー神の世界は科学技術のレベルが高いので、量子演算装置による諜報無双は出来ないのだ。

 

スコア「他の巻き添えと見せかける為に宙域ごと襲撃を活性化させるとはまた無駄に豪気なことをするものだな」

 

ラリー「肝心の支払いはケチってるくせにな」

 

シュミット≪せこいだわね≫

 

モモ王女「ということは対応方針は一つでございますね」

 

トピア「ええ」

 

 トピアは頷き、笑顔で明朗に答えた。

 

トピア「証拠とか要らないんで近づく宙賊を片っ端から消し炭にしましょう」

 

 その単純明快かつ過激なプランに対し、マジェリスは少し考えを巡らせてから言葉を紡いだ。

 

マジェリス「……なるほど、見せしめですか」

 

モモ王女「そうですわ。どうせ捕まえても意味が無いのですから、一人も帰ることが出来ないように全部消してしまいましょう。そしてその残骸全てを治安維持機関に届け出て、名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)に無法な暴力で対抗する愚かさを知らしめるのです。法的には問題無いはずでございましょう?」

 

トリオ「ついでに有益な軍事技術でも回収出来たら儲けもんじゃがの。まあ所詮宙賊じゃし、殲滅優先でええわい」

 

マジェリス「ええ、既に指名手配されているか、もしくは連中が攻撃してきた映像さえ残っていれば、問題無く正当防衛が成立します。命乞いを聞く義務もないので、過剰防衛も無いですね。問題はそれを為す武力なんですが」

 

 機動本社ネームレスはそれなりに自衛装備が整っているが、それでも一企業の防衛力にすぎない。そこらの宙賊程度は返り討ちに出来るが、相手の物量によっては不覚を取ることもあるだろう。

 現状のままでは作戦の遂行に支障が出るので、まずはそこを何とかしてくれということだ。

 

マイン「問題無かろう。名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)は既に我が物だ。それに惑星争奪戦ではレギュレーションで制限してはいるが、我がアヴェニュー神の世界は技術レベル自体は高いからな。出し渋ると犠牲が出かねんぞ」

 

スコア「そうだな、下手に出し渋って鹵獲でもされる方が問題だ」

 

ラリー「いっそ近辺の宙賊が全滅するまで狩り尽くしてやるか」

 

ロゼッタ「内通者の調査は完了しておりますので、設計データや技術情報を流出させられる恐れも極めて低いですわ」

 

霞「はい、全員調査済です」

 

 ロゼッタの言葉に霞も頷いた。つまりESPによる徹底調査も完了しているということだ。

 

トリオ「ならインファクトリ級同様に縮退炉を設置してナノマシン誘電体多層膜、構造強化、Tech互換武装で固めるのが手っ取り早いの」

 

サティ「施工は今護衛についてるインファクトリ18にやらせればいいわね」

 

 ターニャが決着を付けてから2日間、勿論機動本社ネームレスを無防備に放っておいたわけではない。インファクトリ17に交易をさせる一方で、ぬかりなく護衛としてインファクトリ18、19、20をステルス状態で潜ませておいたのだ。

 そのままインファクトリ級に戦わせてもまあ問題はないのだが、脆弱な護衛対象を護りながら戦うよりも護衛対象自体を無双レベルに強化した方が失敗のリスクが低いということだ。

 

テクス「折角だから主砲も設置してしまうでござるか」

 

 あれよあれよと機動本社の重武装化が決定されていく。もはやマジェリスに出来ることは哀れな宙賊共の冥福を祈ることくらいだ。

 

マジェリス「また何とも、やると決めたら手加減が無いですな。有難いことですけれども」

 

トリオ「まあ元々BETAを殲滅する目的で作っとるもんじゃからの。慈悲は無いぞい」

 

トピア「敵に手心を加えて味方を危険に晒すのは最悪の利敵行為ですよ」

 

ターニャ「ですな」

 

マジェリス「いや、全くで」

 

 トピアの頭の中に浮かぶのは最悪の反面教師の一人であるであるマット・ヒーリィ(漫画版)だ。登場するメディアによってはそこまで酷くないのだが、特に漫画版の「撃つなラリー!!」という迷言が有名すぎる。

 部下のジムスナイパーIIが持っているライフルの威力が強すぎて敵兵を殺してしまうからと、まだまだ攻撃能力のあるザクを撃つことを許さず、撃たずに投降させろと部下に無茶振りして無駄死にさせた挙げ句、他の部下に抗議されたら憎しみは何も生まないなどとはぐらかし、一方で見目麗しい整備士やオペレーターには隊長は間違ってないと擁護されたので反省することすら思いとどまってそのまま意志を貫こうとする最悪の大馬鹿野郎だ。明らかに味方よりも敵の命の方を優先しており、兵士としての大前提を完全に無視している。こんなの絶対に上司にしたくない。

 トピアがちらりとラリーの方を見て、健在なことに安堵の表情を見せた。ラリーは何故そういう反応をされたのか全く理解出来ていない。

 

ラリー「……どした?」

 

トピア「いえ、ラリーさんを犠牲にすることがなくて良かったなと」

 

 E&E(エンジョイ&エキサイティング)を信条とするトピアでも流石にネタのために味方を犠牲にするような真似は出来ないし、かといって無難に応用出来るような場面も思いつかなかったのだ。

 ラリーは益々意味が分からず首を傾げたが、ターニャ、九十九、タバサは理由を察した。

 

トピア「そういえば、あの騎士団から加護の没収はもう済んでるんですよね、マインさん?」

 

マイン「ああ、我が神アヴェニューが既に実施済だ」

 

トピア「となれば、業を煮やして自ら襲い掛かってくれればそれで終わりですし、そうでなくても社会的には終わりが間近ですね。或いは()()()()()()()()()()()な予感もしますが。多分このまま期限が来ても支払われないと思うので、その場合は管理委員会を通じて毎日請求しましょう」

 

マジェリス「了解しましたぜ。精々晒し者にしてやりましょう」

 

 惑星争奪戦管理委員会が見届けた惑星争奪戦の敗北ペナルティを履行しない場合、通常ならすぐにも参加資格を剥奪され、その理由が公開されるだろう。もし管理委員会を買収出来ていたら即座に参加資格剥奪にならないだろうが、そこまであからさまな不正を見逃したら惑星争奪戦管理委員会の面子が丸潰れだ。毎日突っつく意味はあるだろう。

 マジェリスが考えるに、宙賊に名も無き中隊(ネームレス・カンパニー)への恐怖を植え付けるのは、こっちを襲っても何一つ得をしないということを分からせるためだろう。その結果どうなるのかはまあ予想が付く。

 

サティ「あとはそれぞれの管理神の世界において存在Xの影響をどのくらい察知・遮断出来るかだけど、そのあたりはどうなのかしらアヌビス様?」

 

アヌビス神「XXX,XXXX(以前は力が足りず対抗出来なかったが、今は検知出来るようにセキュリティレベルを上げているとのことだ)」

 

トピア「でしたらとりあえず大丈夫そうですね。では次に、工場長の世界の近況説明をお願いします」

 

トリオ「うむ」

 

 トピアの呼びかけにトリオ工場長とボルクロ生産部次長が重々しく頷いた。工場長の世界は、今ちょっとした危機なのだ。

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