3番目に
惑星アウシアントにBETAが到達したのは地球時間で5,500年程前だ。意外なことにそれ以降、アウシアント人はBETAを駆逐するでもなく半ば共生のようなことをしていた。どういうことかというと、放っておいても増えまくるBETAを捕食して食料にしていたのだ。まさかのBETA牧場である。
BETAは地球人を生物と見なしていないので戦争をしているつもりが無かったが、アウシアント人はBETAを食料として見ていたのでやはり戦争をしているつもりが無かったのだ。
何故そんなことが出来たのかと言えば答えは簡単で、アウシアント人はでかくて強いのだ。例えばアウシアント連合代表
アシレは会議場に来ておらず、通信で出席している。大きすぎるというのも理由の一つだが、
アウシアント人は水棲生物であるため、巨人と形容するのもちょっとイメージから遠い。触手が沢山生えている、と言葉にするとレトロな火星人を想起するが、大きさも含めて実際の見た目はダイオウイカに近いのだ。
必然的にその声帯が発する音は水中でも通りやすい超音波領域となっており、地球人やそれに近い種族が聞き取るのは困難だ。なので他の種族に通じる言語を習得したとしても音が高すぎて聞き取れず、通信する際についでに波長変換を介するようになっている。名前も当然超音波発音なので、名前を認識するだけでもまず可聴域まで周波数を下げる必要があった。
そういったコミュニケーション手段の根本的な差違があるため、もしESPや念話術式が無かったなら、アウシアント人に知性があることに気付くのにすら時間が掛かったことだろう。
更にアウシアント人は超能力のようなものも使う。というか、実はこれが魔法だった。しかも体内器官で自らマナを生産していた。BETAを放牧するだけあってBETA並に出鱈目な生物だ。
ついでに言うならアウシアント人は性別としては雌雄同体なのだが、この程度で驚くには他の特徴のインパクトが大きすぎた。
惑星アウシアントではBETAがまず地上だけで採掘を開始しており、その後も水中に適応するのに苦労した。そして既に述べた通り、アウシアント人は水中に限りBETAを捕食するほどの力を持っていた。ほぼ一方的にBETAを食料とする種族は天の川銀河広しといえども他に存在せず、かなりの異彩を放っていた。アウシアント人に死傷者が全く出なかったわけではないが、狩りをやっていてたまに事故が起きる程度の割合だ。
しかしアウシアント人には地上での活動能力がほぼ無いのでハイヴを攻略することが出来ず、そもそも勝手に増える獲物としてBETAは有用ですらあったので、ハイヴを攻略するどころか適度にハイヴを作らせて溢れるBETAを美味しくいただく方法論がすっかり出来上がっていた。
アウシアントは宇宙進出どころか地上進出もほぼしていない水中文明である。惑星アウシアントでは海の比率が9割を超えており、進化の過程で地上に上がらずに水中で文明を築いたのだ。そのためアウシアントというこの星を現す言葉も、大地に由来する
惑星アウシアントの現在の人口はおよそ1億人で、巨体のため元々少ないだけでBETAとの開戦から比べるとむしろ大幅に増えている。
結局の所、アウシアント文明が先進文明にカテゴライズされないのは、何かに躓いて発展しなかったわけではない。道具に頼らなくても十分強いので文明を発展させる必要が無かっただけなのだ。圧倒的強者ムーブである。
この対応に困ったのは
ならばということで、元々魔法を使う文明なのだから膨大な食糧需要を賄うために魔法の小麦畑と農園、交配所、料理用設備を提供することにした。惑星アウシアントの大気中にはアウシアント人自身が生み出したマナが満ちていたので好都合であった。
アウシアント人はこれに驚喜した。何しろ水中文明なので、火を使った料理やスープという概念が無かったのだ。食材にちょっと手を加えるだけでこんなに味が変わるとは思ってもみなかった。
強酸を珍味扱いするあたり地球人とは大幅に味覚のずれがあるので独自の方向に発展していくことになったが、エンチャントによるおいしさ向上効果は有効なようだった。
ともあれ、BETAの捕食者というとんでもない肩書きをひっさげて投票権を得たのがこのアウシアント連合であった。
勿論アウシアント人達はその魔法技術で
シュミット≪へえ、そうするとまた別系統で倍率を掛けられるのね。流石はアシレちゃんね。オバチャン感動だわ≫
アシレ≪そうなんでゲソ。お、こっちの調理法もいけるじゃなイカ? 料理というものは奥深いでゲソね≫
これはアウシアント人が元々こんな喋り方をしているわけでも翻訳機が余計な語尾をつけているわけでもない。どうも近頃のアウシアントでは
続いて4つ目の投票権を得たのは、太陽系から65,000光年、いて座矮小楕円銀河のトワラジウゼン星系第4惑星ヴァンドルフを発祥とするヴァンドルフ連邦代表だ。数少ない先進文明の一つである。
ヴァンドルフ連邦代表
彼らは比較的地球人に近い人種であるが、マハトラ=ミエデ 二重帝国人よりもう少しだけ遠かった。地球人同様に頭と四肢があったが、それに加えて尻尾が生えていた。全身に体毛が生えており、顔は犬によく似ていた。一言で言えばケモ度が高めの犬獣人である。例の階段で言えばLv2.5~3くらいだが、文明度が高いので服は着ている。
ヴァンドルフ連邦はBETAとの接触から41年が経過しており、BETAに陸地の半分ほどを占領されたが、人口は現在50億人ほどで、当初から2割ほどしか減っていない。
というのも、ヴァンドルフ連邦は地球より宇宙進出が進んでおり、衛星とのラグランジュ・ポイントに多数のスペースコロニーを作る段階に達していた。また、リサイクル技術や小惑星などから採掘する技術も発達しており、自給自足が成立していた。
そのため、地上の人間をスペースコロニーに避難させることで人口の多くを保全することに成功していたのだ。そちらの技術発展を優先したため軍事技術は地球よりやや低いが、文明の保全がほぼ安定していたので、最終的にBETAを自力で撃退出来ていた可能性は低くない。
ところで
ヴァンドルフ連邦はその優れたスペースコロニー建造技術でもってBETAの被害を受けた文明の保護に寄与している。これには特にユーラシアが大分住みにくくなった地球が助かっている。
彼らは独自の兵器である程度BETAに対抗することが出来ていた他、地球人と体格が比較的近いため、迅雷の阿頼耶識改に適合することが可能だった。更に全員が1.8Gの星で育っているため、兵士としてもなかなか精強である。
なおヴァンドルフ連邦人は犬獣人と言っても色々な犬種がいるが、ダグ・バウアー大使はポメラニアンである。毛色は白で、まるで綿毛のようだ。
実はこの毛色は老齢による白髪である。つまりダグ・バウアーは結構なおじいちゃんなのだが、トピアのスキル『熟練トレーナー』の妙技には抵抗出来ず、よくもふもふされていた。
また、ヴァンドルフ連邦人は全身もふもふなのでアヌビス神より撫で心地が良いとトピアに評されており、アヌビス神が地味にショックを受けていた。