最後の5つ目の投票権を得たのは、太陽系から20万光年、小マゼラン雲のニキシス星系第4惑星にあるシイレント部族連合だ。シイレント部族連合代表
シイレント部族連合は先進文明でもなく有益な技術を持っているわけでもなく自力でBETAを撃退したわけでもないが、他の理由で特筆すべき点があった。何しろ、シイレント文明の発展度合いは概ね中世くらいに位置するにも拘らず、BETA進出領域のまっただ中にありながらBETAに滅ぼされていないのだ。
こんな所に滅ぼされていない文明があるとは
彼らが珪素生命体であることが判明してから、パーキンソン教授率いる
調査結果は「まず間違いなく白」というものだった。少なくとも資料にある限りでは彼らとBETAの関わりは認められないし、BETAに指示を出すことも出来ない。もしかすると大マゼラン雲から移住してきた後に文明が後退したのではないかという可能性が無くはないが、そこまで疑うと悪魔の証明を要求することになってしまう。
シイレント人は炭素系知的生命体を彼ら自身とは別の生命と認識出来ており、まともに意志疎通と交渉が出来た。割と友好的な方なのだ。そして何より、大マゼランに送られた物資の恩恵を全く受けていない。これは彼らがBETAと無関係という大きな傍証だろう。
つまり彼らは大マゼラン雲同様に金属量が少ない小マゼラン雲で自然に生まれた珪素系知的生命体であり、BETAの基本命令である(珪素)生命体への手出し禁止が実行された結果、侵略されずにぽつんと取り残されただけと見てまず間違いなかった。
ではこれを踏まえて彼らをどう扱うかだが、
トピア「まあ別にどうもしませんが」
カミール「だろうね」
というのがシンプルな結論だ。
そもそも生命体とは言いがたいが善良な
どちらかと言うとシイレント人の生態調査協力を
それに加えて、一つの意見が決定打となった。それは仕様想定外の有益な動作を探すのがライフワークになっている札束魔導士タバサらしい意見であった。
タバサ「これ、BETAやGAMMAが創造主以外の珪素生命体にどういう反応を示すかによっては鬼札になり得るんじゃないかい?」
マイン「……有り得るな」
ターニャ「戦略の幅を広げるためにも確保しておくべきですな」
確かにBETAには珪素生命体に対する手出し禁止という基本命令がある。軍事用と想定されているGAMMAの基本命令がどうなっているかは定かではないが、試さずに切り捨てるのはあまりにも勿体ない。
ともあれ幹部会表決の結果は可決となり、シイレント部族連合はめでたく投票権を得た。
シイレント部族連合代表「本当に宜しいのですか? 我々はBETAの創造主と同じ珪素生命体ですよ?」
トピア「ご冗談を。あなた方は『珪素生命体以外は生命ではない』などと宣う連中とは違います。ならば我々も『炭素生命体以外は生命ではない』などと言うつもりはありません。まあそれとは別に投票権の条件をクリアしているかどうかは意見が分かれましたけれども」
シイレント部族連合代表「……なるほど、
実のところシイレント部族連合は科学がそれほど発展していないために
この投票権付与は結果的にはイバーク・ルク統合体に続いて
なおシイレント人の見た目は地球人と似ているが、黒目が大きく髪の毛が半透明となっている。グイリ・アミアグルの場合は青く透き通るサファイアのような髪の毛が幻想的な雰囲気を出している。
ただし他の星で全く見つかっていないだけあり、珪素生命体の誕生にはかなり特殊な環境条件が必要なようだった。つまりシイレント人は地球人と見た目が似ているにもかかわらず大気組成が合わないので、通信での出席となっている。
当然シイレント文明母星の文化と生態系の調査に臨んだ
ここまでの
・35日目:2001年11月25日(日):6光年:観艦式、銀河進出開始(10光年/日)
・41日目:2001年12月01日(土):60光年:
・42日目:2001年12月02日(日):70光年:ワープエンジンMk.2(400光年/日)完成、量産開始
・48日目:2001年12月08日(土):2,080光年:惑星争奪戦
・50日目:2001年12月10日(月):2,880光年:戦略会議
・85日目:2002年01月04日(金):神聖銀河騎士団壊滅
・111日目:2002年02月09日(土):27,200光年:天の川銀河中央方面の近3キロパーセク渦状腕グ・リグ・リストン星系第1惑星メシエクラ・ライグ到達
・133日目:2002年03月03日(日):36,000光年:白鳥座・鷲座間方向ペルセウス腕ルグニル星系第2惑星イグラクニ到達
・176日目:2002年04月15日(月):53,200光年:鷲座方面の白鳥腕エル・バシウス星系第2惑星アウシアント到達
・206日目:2002年05月15日(水):65,000光年:いて座矮小楕円銀河トワラジウゼン星系第4惑星ヴァンドルフ到達
・231日目:2002年06月09日(日):地球・ルイテンb戦争開戦
・279日目:2002年07月27日(土):約95,000光年:ワープエンジンMk.3(5,000光年/日)完成、量産開始
・295日目:2002年08月12日(月):16万3千光年:大マゼラン雲到達、包囲開始
・302日目:2002年08月19日(月):20万光年:小マゼラン雲ニキシス星系第4惑星到達
・322日目:2002年09月08日(日):地球・ルイテンb戦争終戦
・366日目:2002年10月22日(火):52万光年:大マゼラン攻略会議
となっている。こう見ると土日業務がそれなりにある。これは無人のインファクトリ級が休まず進み続けているのと、技術本部が趣味を兼ねて好き勝手やっているのが原因だ。
また、丁度1周年で天の川銀河ハローの端に到達したのは全くの偶然だ。銀河ハローというのは銀河の周りの希薄な星間物質や球状星団がまばらに存在する球状領域のことで、天の川銀河の場合丁度半径52万光年ほどになっているのだ。
既にBETA進出領域は完全に包囲出来ているが、この銀河ハローの端に到達している艦隊は宇宙の調査とポータル移動経路確保のために今も自動航行で進出と工業化を続けている。
他にも色々と文明はあったが、ここまでに現存が確認出来ている先進文明は
そのような面子を揃えた通信大会議場で、トピアが進行を促した。
トピア「では
ターニャ「は」
ターニャ・フォン・デグレチャフ参謀部長が以前の会議と同様に起立した。その階級章は更に2つ進んで元帥に変わっていた。