オペレーター「司令官、最終作戦発令されました!」
ラダビノッド「宜しい、
一文字「了解、確認完了次第全艦突入開始します!」
大マゼラン雲の包囲最前線。ラダビノッド大将の号令を受けた一文字少将の命令で
地球の代表艦としてこの名前はどうかという意見も国連からは上がったのだが、命名を任された一文字艦長の感性を優先してそのまま採用となった。もっと酷かったら流石に却下されていたが、まあ許容範囲だろう。
現在の
ラダビノッド大将が抗睡眠術式の確認を念押ししたのは勿論
Mk.4のサイズはMk.3と変わっていないが、その魔導核の数はMk.3の4つから大幅に増えて1,024個という異次元の領域に到達している。もはや人間の目で数えるのは不可能だ。というよりも、OSと並列タスク管理という要求機能を遅延無く十全に実現するためにはこのくらいのコア数が必要だったのだ。
乱れが無いのはある意味では当たり前だ。基幹艦隊の有人艦は基本的に1隻もしくは数隻程度にとどまるからだ。まず人間が操艦する500万隻の艦隊で思い通りの艦隊運動が出来るわけがないし、足並みを乱すくらいなら有人艦には他の基幹艦隊を指揮してもらった方が良いからだ。
むしろ旗艦すら無人の完全無人艦隊の方が多い。何しろ基幹艦隊の数だけでも200億あるのだ。有人艦全てを旗艦にしても全く足りないくらいであった。
この様子は
相手の
ラダビノッド「精々連中には前祝いの花火になってもらおうじゃないか」
一文字「ええ、我々の働きは地球からも見られているわけですし、益々頑張らないわけにはいきませんね」
何の前祝いかと言えば、地球圏統一政府誕生記念だ。現在の地球は未だ統一国家とはなっていないが、統一のための手続きは進みつつある。
契機は155日目の2002年03月25日(月)、ジョンストン卿がとりまとめたマハトラ=ミエデ 二重帝国の電撃的建国発表である。わずか3週間、実に迅速な判断であった。英断と言っていい。
まあ地球は地球で200近い数の国があるので、その中から一人の代表大使を出しただけでも大したものではあるのだが、しかしジョンストン卿と英国はそれでヨシとはしなかった。
何をしたかと言えば、マハトラ=ミエデ 二重帝国建国発表に合わせて同日に
この発表は地球の国際情勢を揺るがす一大事であった。国連における二大派閥は英国・オーストラリア・東欧連邦と米国・日本帝国・中華民国となっているわけだが、米国派二番手の日本帝国が英国派トップの英国と婚姻外交をしようというのだ。
とはいえ、何も日本帝国が米国を裏切って勝手に話を進めたという話ではない。水面下で全ての国連安保理常任理事国の内諾を得た上でのことだ。
そもそも現在の常任理事国は地球圏統一という方向性自体にはほぼ合意していて、どういう方法でやるかの合意がなかなか形成出来なかっただけなのだ。
そしてたたみかけるように同日、国連総会に地球圏統一政府樹立のための決議案が提出された。フランスも含む常任理事七箇国の連名であった。もうこの時点で有無を言わせずやるぞと言っているのに等しい。
タイミングとしては千載一遇の好機であった。千年いがみ合い続けてきた二大帝国が、
そして日本帝国の皇子と英国王女の婚約とは、まさにその先鞭を付けるものであった。
手順はこうだ。まず英連邦加盟国多数に首長と認められる英国王族と最も長い歴史を持つ日本の皇族を結婚させてその血筋を一つにする。それ以外にも皇帝家や王家のある各国は積極的に婚姻政策を進め、最終的におよそ8世代後までには全家の血筋を一つにまとめる。
28=256なので8世代もあれば地球上にある全ての国家の血統を吸収出来るだろうという計算だ。
つまりはあらゆる民族の血を取り入れ、あらゆる国と血統的な繋がりがある
言うなればかつてハプスブルク家がやったような婚姻政策を地球全体規模にしたようなものだ。ハプスブルク家の時には近親婚が過ぎて色々と問題もあったが、今度は様々な民族の血統を取り込むのだから血が濃くなり過ぎることも然う然うあるまい。
今時血統支配は時代錯誤ではないか、と思われるかもしれないが、要点はそこではない。必要なものは
誰しも全くの異民族に上に立たれるのは何をされるか分からないという不安感がつきまとう。突然有能な異星人が地球を平和に統治してくれることになっても、なんか嫌々支配されている感が拭えないだろう。逆に血筋的に繋がりのある同じ主君を仰ぐのであれば、元は他の国の人間であっても間接的に同族意識が生まれるというものだ。
そのため地球皇帝家に実権はなく、象徴君主制という形を取ることになる。求めているものが実務的政治力ではないからだ。
英国が日本の皇帝家を相手に選んだのはそのためでもある。日本帝国皇帝家は伝統的に政威大将軍への全権委任に慣れているということだ。
そして地球皇帝の名の下に国連から継承した議会によって政治の実務を進めるのだ。