最初に突入した
現在の陣形は基本の球形陣。つまり直径にすると4,240km程になるが、30万kmに比べれば1%程度の差なので、艦隊全てから敵までの距離がおよそ1光秒と言って良い。
太陽系のスケールで言うと太陽から地球までの距離が1天文単位=8.3光分なので、1光秒は宇宙規模では割と至近距離だ。光学計測も1秒しかずれないので、目で見て射撃戦が出来る距離である。
参考までに海王星軌道が平均30天文単位=4.2光時間、エッジワース・カイパーベルトが30天文単位=4.2光時間~50天文単位=6.9光時間、オールトの雲の最外縁部が10万天文単位=1.6光年になる。
あと
元第9番惑星の冥王星が近距離観測から準惑星扱いになっており、これを数に入れると10番目が魔王星というのはトップ世界と同じだが、実はこれは
さて、現在の
また、奇襲のために封じていた空間超越レーダーをここで初めて使用している。流石にここで使わないとワープアウト時に何と衝突するか分かったものではないからだ。
ただしワープイン前とワープアウト前に空間超越レーダーを使っただけで、ワープイン前にワープアウト地点近くに対して二重空間超越レーダーを使うようなことはしていない。進出速度が1日に5,000光年ということは100光年進むのに30分近くかかる。30分前に今からお邪魔しますよと予告しては戦闘準備を整えて待ち伏せされてしまう可能性が高いからだ。
一文字「全艦主砲斉射! 旗艦周辺のみ
一文字艦長が攻撃開始命令を下すと、つつがなくワープアウトした
艦隊司令はラダビノッドだが、細かい艦隊運用は基本的に一文字艦長に任されている。というのも、この艦隊の有人艦は
宙域に存在したGAMMAはラザフォード
はじまりの星で
ラダビノッド「何秒もった?」
オペレーター1「平均しておよそ0.01秒です」
一文字「100倍程度の強度はあるようですね」
ラダビノッド「重機と軍艦の差か、それとも開発年代による技術差か……それでも今の我々にとっては誤差だな。GAMMAのフィールド耐久力測定結果を総司令部へ送信せよ」
オペレーター1「了解」
耐久力テストとして集中砲火せずに1条だけレーザーを浴びせる標的を10体ほど確保したのだが、そのいずれでも主砲レーザーは0.01秒前後でGAMMAのラザフォード
あちらのフィールド耐久力が10
一文字「このまま楽に終わってくれれば良いのですが」
ラダビノッド「地球戦線ではBETAですら常に我々の想定を超えていたのだ。まだ油断は出来んよ」
一文字「ええ、勿論です。忘れてはいませんよ」
一文字艦長は手袋と軍帽を整え、改めて気を引き締めた。
この宙域のGAMMAは大型艦タイプだけでも10万体ほどいたが、流石に
しかし後列の方は反撃する余裕があったらしく、更に
オペレーター2「敵主砲レーザーが無人艦105隻に命中。バリアと塗膜で防御しましたが、火力が集中した3隻が小破しました」
オペレーター3「こちらの主砲レーザーが一部反射されて無人艦5隻に命中、それぞれ防御を抜かれて中破しています」
一文字「今の最大出力主砲を返せるのか……防壁の方も大分強化されてますね」
ラダビノッド「ふむ、防壁を張った個体は仕留めたかね?」
オペレーター3「集中砲火により防壁の隙間から攻撃が通ったため撃沈出来ました」
ラダビノッド「まあ回転するリングを多重に巻いているだけだからな。今の相手への対処はそれで問題あるまい。中破した艦の自動修理は可能か?」
オペレーター3「問題ありません。1分で復帰します」
ラダビノッド「宜しい」
オペレーター4「敵艦載個体の発進を確認、重
一文字「ディストーションレーザーを迎撃モードで起動せよ」
オペレーター4「了解、ディストーションレーザー、スタンバイ」
艦載機に接近された艦が無数のレーザー砲を起動すると、それぞれのレーザータレットのシャッターが開いてレンズが露出、発射されたレーザーがその直後から急激に曲がった。Meisters レーザータレットMk.5 Type G/Lの曲射モードだ。その性能を前のバージョンと一緒に並べると以下のようになる。
■名称:Meisters レーザータレットMk.4 Type G/L
・サイズ:4m×4m×4m
・射程距離:140km
・消費電力:6.40MJ×4.8射/秒=30.7MW (※2.5倍モードでは133MW)
・変換効率:99.0%
・威力:30.4MW=3,040,000DPS (※2.5倍モードでは7,600,000DPS)
・ミラー動作半径:400m
・備考:G元素カフェ1、6/9、13を少量使用
■名称:Meisters レーザータレットMk.5 Type G/L
・サイズ:4m×4m×4m
・射程距離:大気圏内500km、真空中1光分
・消費電力:100MJ×4.8射/秒=480MW (※2.5倍モードでは2.08GW)
・変換効率:99.0%
・威力:475MW=4750万DPS (※2.5倍モードでは1億1880万DPS)
・空間歪曲動作半径:1km
・備考:G元素カフェ1、6/9、13を少量使用
レーザータレットMk.5は急造品のMk.4と違って開発期間を十分確保出来たので、設計を突き詰めてかなり性能が上がっている。威力で15.6倍、大気圏内射程は3.57倍になっており、特に大気圏外での射程距離1光分=1800万kmが際立っている。何故ここまで伸びたかと言えば、動作原理が主砲の縮小版になっているからだ。つまり小規模ながらファイバーレーザーを束ねた構造になってアンチプラズマリングと量子演算素子も組み込まれている。
また、量子演算機の演算余力を活かして偏差射撃にも対応している。これは1光分の距離ともなると二重空間超越レーダーの観測情報を加味しても1分後の位置を予測して狙わなくてはならないためだ。
しかしここまで実装した所で問題が発覚した。ここまで威力を上げると、そのエネルギーで誘電体多層膜反射ミラーが溶けるのだ。冷却と修復装置により辛うじて蒸発を避けることは可能だが、熱で鏡面が曲がってしまっては照準が定まらない。
基本的に舷側に装備するようになっているレーザータレットから発射されるレーザーを曲げることが出来なければレーザーが対応出来る射角が激減し、インファクトリ級の対空迎撃力が大幅に低下してしまう。そこで新たなプランとして上がったのが、重力操作とワープ機関の応用による空間歪曲式レーザー照準システムだ。
ラザフォード
このため、レーザータレットMk.5は『ディストーションレーザー』という通称で呼ばれることが多い。
結果としてミラー要らずになったことで、舷側レーザー砲を起動したままワープするとミラーを置き去りにしてしまう問題が無くなり、微妙に利便性が上がった。
一方トピアは念願の曲射レーザーが実現出来て大満足であった。流石にまだ発射された光線が標的を自動追尾することはないが。
なお二重空間超越レーダーの原理を応用すればもっと遠くを撃てないこともないのだが、電力コストパフォーマンスが今ひとつ良くないのと、艦載機クラスはともかく艦艇クラスにはレーザーに対する防御手段がありそうなので、長距離攻撃は基本的に他の武装でまかなう形となっている。
ともあれ、そのレーザータレットMk.5から発射された曲射レーザーが接近する敵艦載個体を捉え、片っ端からボイルして爆散させた。威力は十分だ。
オペレーター4「敵艦載個体の殲滅を確認しました」
一文字「やはり幾らか耐久力が高いようですが、こちらの艦載機の出番はまだ無さそうですね。不満が溜まりそうだ」
ラダビノッド「まあ彼女達は切り札だし、無人機でも一度出すと回収の手間があるからな。もう少し我慢していてもらおうじゃないか」
インファクトリ級が無双していて艦載機の出番が無いという問題はあるものの、大マゼラン銀河中心殴り込み艦隊の緒戦は各方面で問題無く進行していた。