大マゼラン銀河攻略艦隊において、主な有人部隊の配置は以下のようになっている。
・東(A/E):ヴァンドルフ部隊、マハトラ=ミエデ部隊
・西(A/W):宇宙の探鉱者連隊、心の友部隊
・南(A/S):地球連合戦闘団
・北(A/N):大地の冒険者戦闘団
・上(A/T):理想郷の建設者戦闘団
・下(A/B):産業の支配者戦闘団
・全体援護及び包囲(C):星屑の聖十字軍
・反応調査:シイレント部隊
・文明・環境調査:中枢の守護者調査中隊、工業の伝道者戦闘工兵隊、惑星の開拓者戦闘工兵隊
・情報処理:心の友
指揮能力では産業の支配者戦闘団が高く、個体戦闘能力では地球連合戦闘団と大地の冒険者戦闘団の強さが有名だ。
しかし大地の冒険者戦闘団はどうしても海賊の流儀と個人技で戦う傾向があるため、連携と損耗の少なさを加味した総合能力では地球連合戦闘団が頭一つ抜けている。また、大量の無人艦隊を使わせるとやはり指揮力に優れる産業の支配者戦闘団や情報の処理と伝達が素早い心の友部隊が強い。
宇宙の探鉱者連隊は操縦技術に優れ、操艦も艦載機操縦もレベルが高い。ただし協調性に欠ける。
理想郷の建設者戦闘団は優秀な分野が個人ごとに違い、割とばらつきが激しい。団長のステークは最強の個人戦力の一角として名高いが、部隊自体はそれほど目立っていない。
星屑の聖十字軍は一旦経験を統合した聖騎士達の能力が一律で高い上に連携が完璧なので安定感がある。
シイレント部隊の反応調査というのは、シイレント人は珪素生命体なのでBETAに惑星を侵略されないことが分かっているのだが、GAMMAはどのような反応を示すかという調査だ。
当面の結果としては、GAMMAには普通に迎撃されることが判明した。やはり軍艦や機動兵器の中にいてはシイレント人が珪素生命体だというのがあちらからも分からないのだろう。かといって宇宙空間に生身で出すわけにもいかない。
次の検証は珪素生命体の居住惑星を発見してからになるだろうが、それまでに敵対的珪素生命体だと認識されるのもまずいので、一通りの確認が終わった後は他の軍勢のあとについて一緒に進軍することになった。
何故敵視の可能性を想定しているかと言えば、恐らくGAMMAは軍用なので、珪素生命体同士で敵対した場合も想定しているだろうからだ。
戦略マップの情報によると大マゼラン雲の残りの半径は約7,000光年で、南側の地球連合基幹艦隊と北側の大地の冒険者基幹艦隊が若干突出している。そこは本来威力偵察艦隊がいるべき位置なのだが、連中は一番槍を譲りたくないらしい。まったくあの戦争狂どもめ、とターニャはため息を吐いた。
まあ戦略には影響がない程度の突出であるし、貴重な戦訓をどこよりも早く本部に送り続けている上にすぐ呼び寄せられる範囲に周辺調査を兼ねた手透きの艦隊を配置しているので特に文句は無いが。
そうした戦略情報や戦訓は各基幹艦隊旗艦へもリアルタイムで送られているため、各艦隊は状況を見ながら概ね適切に動くことが出来ている。
つまり地球連合基幹艦隊は艦これのイベント攻略で自ら先陣を切って貴重な攻略情報をゲットしてくる先行攻略組みたいな重要ポジションだな、と理想郷の建設者の一部は評価していた。大地の冒険者基幹艦隊も同様に突出してはいるが、概ね荒くれ者の集まりなので戦力情報の分析力がどうしても低いのだ。まあこちらはこちらでそういう大雑把な戦い方をする連中の参考にはなっているのだが。
トピア「予行演習はしていましたが、本番でも戦略情報統括システムがしっかり機能してますね。情報が整理されていて大変分かりやすいです」
聖騎士「心の友の皆がいなければここまで早期には実現出来なかったであろうな」
モモ王女「有難いことですわね」
マキューズ「ふふ、我ら一同お力になれて嬉しく思っているでありますよ」
同胞の働きぶりを称賛されたマキューズは、その美しい顔に心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。
大艦隊の統括システムを作るにあたり、当初のプランでは専用の戦略情報解析AIを開発するか、或いは星屑の聖十字軍に任せるというものだったのだが、前者は判断力の要求水準が高いために開発が難航し、後者は人数があまりにも膨大になってしまったのだ。心の友に人間100人分の処理能力があるとして、聖騎士8万人を戦闘指揮所に並べるのは流石に多重半円形テーブルでグループ化するにしても無理がある。
そんなわけで最終的には心の友達に一任することになったわけだが、現状800人体制で6時間回してパンクしていない時点で大成功ということだ。
戦略情報統括センターに詰めている彼らは直接戦っているわけではないが、必要な情報を確実に処理している上に無人艦隊群の指揮をしている者も多く、その貢献度を考えると勲章ものの働きぶりだ。情報処理速度という人間の弱点を補って一緒に戦っている実感がこれでもかとあるので、士気も非常に高い。
マジェリス「お陰様で、戦況としてここまでは至って順調という事がよく分かりますな」
トピア「ええ、同じサイズで性能100倍強化はなかなかのインパクトでしたが、許容範囲内でしょう」
サティ「4500万年の進歩かしらね……慢心せず改良を続けてて良かったわね」
テクス「全くでござるな」
夕呼「いっそ滅亡していてくれてもよかったけどね」
まあ適度な強さで現存している方がこれまで好き勝手やられた分をやり返せるという意味では助かるのだが。
匠衆や加盟文明にとって、現在の珪素生命体やGAMMAの存在価値は精々そのくらいのものである。
九十九「まあそろそろ居住惑星が見つかってもおかしくない頃だから、次が出てくるとしたらこのあたりだネ」
マキューズ「あの巡視船級の上位種、でありますか」
トピア「ええ」
ここまでに観測されたGAMMAは4種類で、情報伝達上必要なので以下のように命名されている。
自力で宇宙を航行し艦艇に対し体当たりと内部侵攻を試みることでミサイルと揚陸艇の役割を兼ねる宇宙突撃級。
自力で宇宙を航行しレーザー攻撃を試みる戦闘機兼攻撃機の宇宙光線級。
連結輪翼級同様に連結して二重回転レーザー反射シールドを形成する円盾級。
そしてそれらの艦載GAMMAを搭載して航行し、自らも大出力レーザー射撃を行う2kmサイズの巡視船級。
二輪戦艦級と同等のサイズでその100倍の性能があるのに何故巡視船扱いなのかと言えば、外側からの観測でもここまで進んだ1,000光年でも有人惑星が未だ見つかっておらず、性能も想定していたほどは高くないので、あれは沿岸警備隊の巡視船程度のものではないかとマインが言い出し、ターニャやマジェリスもそれに同意したためだ。
確かに人が住んでいない周辺宙域まで主力艦を揃えて巡視させるのはコストパフォーマンスが悪い。巡視用にコストが低い船舶を用意するのが妥当だ。匠衆のように同一の艦をひたすら量産して量産効果で押し切るのもありだが、種類を増やしすぎなければハイローミックスで対応する方が普通は割が良いのだ。
結局まだ確定的な結論は出ていないのだが、名前が統一されていないと連絡時に不便であるため、暫定で巡視船級という名前が付けられた形だ。
また、連結輪翼級同様に連結して二重回転シールドを形成する円盾級が何故既に存在するのかという疑問がある。
艦艇の役割を果たす二輪戦艦級相当のGAMMAが存在するのは何も不思議は無いが、車輪個別の回転とリング全体の回転で二重にエネルギー集中を逸らしながらレーザーを反射する連結輪翼級はザンスカールの各種タイヤ型からの発展、つまりトピアが情報を抜かれたために発生したのものの筈だ。それが仮に他のBETAに情報伝達されていたとしても、大マゼランの本国に届くにはあまりにも早すぎる。光速を越える情報伝達手段があるのなら光線通信級なんてものは必要なかったはずだ。また、もし情報が伝わっているならば天使の光輪級同様の精神攻撃を使わないのが不自然だ。
これに関しては九十九情報本部長による一つの推測がある。
九十九「複数の重頭脳級がいたとはいえ、はじまりの星のBETAの新種実用化はペースがあまりにも早すぎた。それに軍隊ともなれば吾輩達同様に自分が使うレーザーに対する防御手段くらいはあってもおかしくない。つまり何らかの原型が元々あったのを流用していたと考えられないかな? それに改めて考えてみると、アレあんまりドッゴーラに似てなかったよネ?」
あんまりドッゴーラに似てなかったと言われればそうですねとしか答えようがない。
連結輪翼級はミッションの討伐対象になっていなかったため実は正式な識別名が判明していない。トピア達が勝手につけた名前のままだ。とはいえ、地球でつけられた各種BETAの名前も別に珪素生命体がつけた正式名称ではないので、それほど気にしていなかったのだが。
GAMMAは一切ミッションの討伐対象として指定されておらず、一つも識別名が分からないので全部自分達でつけるしかない。
そもそもミッションの討伐対象だったとしてもそれで名前を付けるのはクラエル神だと思われるので名前が実態に合っているかどうかの確実性は低い。
要点はGAMMAがはじまりの星のBETAから情報を受け取って連結輪翼級を真似たのではなく、BETAの方がGAMMAの一種である円盾級を真似たのではないかということだ。
ジョンストン卿「しかし、2kmサイズのあれが巡視船クラスだとすると、戦艦のサイズは10倍くらいに――」
A/S統括官「大マゼラン南方面殴り込み艦隊、地球連合基幹艦隊の担当戦域に未確認GAMMAがワープで接近中! 全長およそ20kmです! 数は10万!」
統括官が報告すると同時に情報ディスプレイの一つにその姿が表示された。空間超越レーダーで捕捉したものなので形は大雑把だが、前後長が長い船舶タイプで、とにかくでかい。
トピア「……まさに10倍クラスのが来ましたね」
九十九「性能は10倍じゃあ利かないだろうネ」
マイン「よし、以後20kmクラスを戦艦級と呼称する。戦艦級出現戦域はまず戦力を集中して対応せよ」
戦艦級の出現により、大マゼラン戦線がにわかに慌ただしくなり始めたのだった。