ラダビノッド「周辺戦力を召集する。まずは直近の9個基幹艦隊だ」
オペレーター「了解!」
新種のGAMMAこと
だが敵のワープアウトの方が早い。手透きの味方艦隊が駆けつけるまで数分はかかるだろう。その時間差分は1個基幹艦隊500万隻で耐えなければならない。
一文字「まず艦載機隊、無人の
オペレーター「了解」
炉の安全半径とは、仮にインファクトリ級が一撃で爆沈した場合に縮退炉の爆発の影響を強く受ける範囲だ。消耗前提の無人艦載機で、節約する必要も無いので出せるだけ出してやれということだ。
無人
しかし
一文字「前衛艦は縮退炉をオーバードライブ、防御に全出力を集中せよ」
オペレーター「前衛艦、オーバードライブSecondモードへ移行開始。移行完了まで残り57秒」
インファクトリ級の主機関である縮退炉は通常航行ではHourモードの26.4EW出力だが、戦闘時にはMinuteモードの400EW、緊急時にはSecondモードの6.23ZWまで上げることが出来る。ただし縮退炉の特性でHourからSecondへの移行に59分、MinuteからSecondへの移行に59秒かかる。この移行時間を見越して事前に調整しておかなければならないのだ。
そして主砲の全力が100EWなので、攻撃に関してはわざわざSecondモードにする必要は無い。してもいいのだが、機関に大きな負荷が掛かりやや不安定になる上に制御を外れてから1秒しか対処時間を取れないので、最悪爆発してしまう可能性がある。これは無人艦だからこそ気軽に使えるのだ。
なお前衛とは言葉通り正面というわけではなく、球形に展開した艦隊の外側付近に並んだ艦のことを指す。
宇宙艦艇の展開は三次元だ。なので水上艦同様の輪形陣では穴だらけだ。そのため防御の厚みを確保するためには球形に並べることになる。そしてここに航空機のコンバット・ボックスを組み合わせて迎撃に死角が出来ないようにする。とはいえレーザー砲の死角がほぼ無いのでそれほど複雑な並べ方にはならない。これが
一文字「次に、前衛以外は主砲発射用意。まず敵艦隊の1標的に対して1,000隻単位で、シールドの隙間を狙って主砲の集中砲火を浴びせる。それで問題無く撃沈出来れば対象を分散させるが、その効果次第で武装を変更する」
オペレーター「了解」
相手の内包エネルギーが単純に1,000倍であればラザフォード
一文字「……そろそろだな。前衛艦を除き
オペレーター「
艦隊の陣形と状態を示す情報画面に
それが広がりきったあたりで、
オペレーター「敵艦隊接近、本基幹艦隊内部へのワープアウトを失敗し、後方にワープアウトします。敵艦隊中心は距離2光秒、方位178、俯角3!」
オペレーターの報告と共に
これは大マゼラン雲の銀河座標軸東西南北上下を基準として艦隊を中心にローカル化したもので、方位は北から反時計回りの天球経度、仰角・俯角が天球緯度に相当する。
ローカル化と言いつつ方位・仰角・俯角が銀河座標軸基準なのは、艦隊が向いている方向というのを定義しづらいからだ。
まず球形陣のような防御重視陣形では全艦が放射状に球面の外側向きになる。全艦向きがバラバラなのだ。これは推進機の向きが限定される反作用推進ではなく時空勾配推進を採用しており、艦がどこを向いていてもあらゆる方向に加速可能だから出来ることだ。
そして旗艦の向きを基準にするには旗艦の向きを艦隊所属全艦がリアルタイムで参照し続ける必要があり、即応性がやや低下する上に何らかの原因で旗艦の向き情報をロストした場合などに混乱が生じる。
ただそれはそれで旗艦を主観とする方位が分かりづらくなるため、
一文字「前衛艦以外は主砲旋回、敵艦隊出現方向へ指向」
一文字の号令を受けて全艦の主砲が大マゼランの南側を指向した。
無論主砲塔の旋回速度は十分な性能を確保してあり、180°の旋回に1秒かからない。有人艦でも砲塔だけなら人員への回転慣性がかからないので配慮の必要が無いのも利点だ。
ただし艦の下方向には撃てないので、そこは艦自体の方向を調整する必要がある。
ラダビノッド「やはり戦術の概念があるか……
一文字「ですね。無ければ大損害を受けている所だ」
ラダビノッド司令官と一文字艦長は情報ディスプレイから視線を逸らさないまま参謀部の先見の明と技術本部の開発力を称賛した。
一見理想的な防御力を誇る球形陣だが、ワープ機関を持った艦船同士の機動戦では、陣形の内側にワープアウトされたら意味が無いという大きな弱点を抱えている。そして現在のインファクトリ級はこれに対する対抗装置を備えているのだ。それが先ほど一文字艦長が展開を指示していた
ワープは恒星系外進出のためにほぼ必須の技術だが、艦隊戦の常識も覆してしまう。
これまでにマインと参謀部がシミュレーターを使ってワープ機関有りの艦隊指揮演習を繰り返した結果、やはり陣形内部へとワープアウトされる特攻戦術が一番損害を受けるという結果が出た。人間が乗っているならそんな特攻は幾らか躊躇うだろうが、無人機やBETA、GAMMAならば話は別だ。これを何とかしなければ戦力で上回っていても万が一があり得る。そのためまずこれを防ぐべしとして提唱されたのが
しかし陣形をどう組んでも至近距離の殴り合いによる危険は大して変わらず、特に旗艦が危険に晒される問題が如何ともしがたいので、これを根本的に解決するために開発されたのが
そしてその
一文字「主砲斉射!」
ワープアウトした
1,000条もの100EWレーザーが直撃したことでその
オペレーター「敵
一文字「よし、同様に次のターゲットに攻撃を浴びせろ!」
撃沈数が5,000よりやや少ないのは、前衛艦が攻撃に参加せず防御に集中しているためだ。
しかし次の攻撃ターゲットを絞ったときには他の
各艦は防壁リングの隙間を狙って
反射されたレーザー光線が基幹艦隊前衛艦に到達し、そして貫通した。1条ならば容易く防げただろうが、複数が集中したのがまずかった。
オペレーター「前衛艦502隻、その他5,156隻轟沈しました! 更に大破艦10,072隻、中破艦21,263隻!」
一文字「主砲斉射やめ! 全艦ベルカ砲スタンバイ! 照準完了次第斉射せよ! 大破・中破艦はまず防御と修復に専念だ!」
オペレーター「了解!」
インファクトリ級の主砲が効かずに逆に大損害を被るという事態に陥ったが、一文字艦長の指示は冷静であった。3万5千隻程度行動不能にされたところで全体の1%にも満たないし、既にレーザーが効かない場合への備えがあったからだ。
その指示によりインファクトリ級各艦に上下合計8門備えられたレールガンMk.4 Type G/XL、通称ベルカ砲が敵艦を指向し、巨大な砲弾を射出した。左右方向に背負い型配置で設置された荷電粒子砲の更に上の段に背負う形で2基ずつ設置されたものだ。
射出された砲弾は