実空間内における粒子や波動の移動速度が真空中の光速を越えられないという相対性理論の限界を超えるには、幾つかのアプローチがある。
一つは実空間上の任意の二点をペアリングして直結すること。これがポータルやワープゲートの原理だ。空間そのものを繋いでいるため最も移動時間が短い。
いわゆる実空間という紙を折り畳む方式だが、原理上接続すべき両側にゲートを設置しないといけないので、未到達の行き先に対しては使えない。ルーラと同じ使い勝手と言えば分かるだろうか。
次に空間の外に出てしまうこと。これはインファクトリ級航宙工作艦や宇宙戦艦ヤマトと同じ超空間ワープ方式で、細かく言うと超空間ワープにも二つの短縮原理がある。
一つは実空間の直線距離より経路が短い近道になること。ワープゲートに近い理屈だ。
もう一つは超空間では実空間の物理の軛を外れるために光速を越える速度が出せることだ。
次に、単純に一定範囲内の時間を加速すること。マインの世界の加速ドームがほぼこの原理なのだが、これはやや条件が厳しい。
IDタグは仕込めば何とかなるが、惑星規模の重力場に対し自由落下ではなく固定された施設にしか使えないのだ。
そしてもう一つは、超空間ワープの後者に近い原理で、実空間での光速を変動させることだ。光速を越えられないのなら光速の方をもっと速くしてしまおうという理屈である。
光速不変の原理はどこへ行ったと言われそうだが、そもそも光速というのは伝達媒体によって、つまり真空中、空気中、透明物体中といった条件によってそれぞれ変動する。ならば超空間の特性を研究して真空中よりも光が速くなる環境条件を実空間内に人為的に作ってしまえば良いのだ。そして現在の
この実空間の物理特性を変化させることによる超光速航法(※厳密に言うと
これまでの
・Mk.1:10光年/日。Factorio工業、FICSIT、
・
・Mk.2:400光年/日。安全管理上の理由で
・Mk.3:5,000光年/日。Mk.2に加えてテクスの世界のワープ技術や各超科学世界の軍事技術や先端技術まで取り入れブラッシュアップしたもの
・Mk.4(試作):10万光年/日。ベルカ航法を併用して超空間での移動速度を更に強化したもの
となっている。ベルカ航法を併用するMk.4は移動性能は抜群に高いがまだ試作段階であり、完成していない。何が問題かと言えば、
そろそろレールガンの話に戻ると、レールガンMk.4 Type G/XLはこのベルカ効果の導入により通常の光速の突破を可能としていた。そしてこの動作原理の変更により通称ベルカ砲とも呼ばれているのだが、
レールガンMk.4/XLのタレットとしての性能を前のバージョンと見比べると以下のようになる。
■名称:Meisters レールガンMk.3 Type G
・サイズ:5m×5m×4m
・砲身:64口径7.62cm、砲身長4.88m
・弾頭:ルミナイト製装弾筒付翼安定徹甲弾(A型)、2kg指向性重水素弾頭弾(N型)から任意選択
・消費電力:740MJ×0.5射/秒=370MW (※2.5倍モードでは1.49GW)(A型)、840MJ×0.5射/秒=420MW (※2.5倍モードでは1.82GW)(N型)、ただし消費電力と威力をもっと下げることも可能
・運動エネルギー変換効率:99.0%
・初速:徹甲弾で11.3km/秒=マッハ33.1
・運動エネルギーから破壊力への変換効率:95.0%
・威力:6千万DMG=601.92MJ(A型)、最大114兆DMG=1.14PJ(N型)
・射程:大気圏内では160km。真空中では速度が減衰しないためおよそ無限
・実用射程:5km~10km(地平線)
・連射速度:秒間消費電力が規定内に収まる範囲で0.5射/秒~2射/秒の間で調節可能 (※2.5倍モードでは最大5射/秒)
・弾数:無限
・備考:G元素カフェ1、6/9を少量使用、重力ブレーキにより反動軽減
■名称:Meisters レールガンMk.4 Type G/XL
・サイズ:20m×20m×16m
・砲身:64口径30.5cm、砲身長19.52m
・弾頭:時空勾配推進システム・自動追尾システム・ベルカエフェクター・使い捨て核融合炉内蔵型640kgルミナイト製追尾徹甲弾
・消費電力:64GJ×0.5射/秒=32GW (※2.5倍モードでは139GW)、初速や仮想実体化維持時間設定により変動
・加速力:0.4c/秒2相当、ただし相対性理論による計算上の質量増加で徐々に減じられ、ベルカ効果で最大10倍の倍率が掛かる
・最高到達速度:7.86c(発射から2.5秒後)
・運動エネルギーから破壊力への変換効率:95.0%
・威力:発射から2.5秒後以降で273
・射程:仮想実体化維持時間に準ずる。維持2.5秒なら12.5光秒、維持5秒なら37.5光秒
・弾数:無限
・備考:G元素カフェ1、6/9を少量使用、重力ブレーキにより反動軽減
サイズがおよそ4倍になり、体積と重量は64倍。従来のN型弾頭と比べて消費電力は86倍程度で、最大威力は2万4千倍になっている。
何故ここまで極端に燃費が向上したのかと言えば、一つは砲弾に発電機関を内蔵しているためだ。と言うよりも、砲弾を自力で加速させる方式になったために必要な電力を砲弾の方に内蔵せざるを得なくなったのだ。そのためレールガンを設置している本体側の電力は射出時の電磁加速と重力ブレーキ程度しか使わない。
砲弾で使用する電力は殆どが120万km/秒2という馬鹿げた加速を実現するべく時空勾配推進システムをフルドライブさせるためのもので、100TJほど必要になる。これは砲弾の中に入るバッテリー程度では土台無理なエネルギー量で、このために核融合炉が必要になった。
100TJというエネルギー量は重水素が200gもあれば足りるが、これを2.5秒で使いきるのは核融合発電というよりも核爆発に近い。なので超高効率光電変換フィルタと冷却システムで2.5秒どうにか動かせる程度の使い捨ての炉になる。
使い捨て核融合炉の燃料になる重水素は仮想実体化のもので十分だ。仮想実体化燃料による電力は通常1%しか利用出来ないが、使い捨て用途に限り100%の出力が利用可能だ。
どういうことかと言えば、通常は仮想実体化燃料で発電を行う場合は、核融合を行って電力に変換し、一旦バッテリーやフライホイールに電力を蓄積し、制限時間による仮想実体化解除で1%だけ残った確定電力をシステムに流すようになっている。そうしないとシステムに流れた電力やそれから変換された運動エネルギーなどが途中で消失して様々な不具合が発生するからだ。
しかし砲弾が命中するまでの時間が仮想実体化解除時間より短ければ、電力99%消失による不具合は起こりようがない。仮想実体化重水素弾頭弾が額面通りの威力を発揮したあとに実体化解除で運動エネルギーや熱エネルギーが急速に消失しても破壊という結果は変わらないのと同じ原理だ。加熱や破片が飛び散る速度は0になっても、衝突して変形させたものが逆再生で戻ったりはしないのだ。
そしてよく見てみれば、最終的な運動エネルギーはその使い捨ての核融合炉で生み出したエネルギーよりもはるかに大きい。これは重力場による加速はいわゆる落下なので、加速対象がどれだけ重くても加速に必要な重力自体は変わらないせいだ。リンゴと鉄球が同時に落着する万有引力の法則と同じである。
ところでこのベルカ砲の威力だが、実はベルカ効果の倍率とは無関係だ。ベルカ効果倍率10倍にして通常の光速の10倍近くまで加速した砲弾でもベルカ効果倍率等倍の通常環境で通常の光速近くまで加速した砲弾と威力は変わらない。その代わり、加速に必要な力学的エネルギーも変わっていない。
質量兵器の着弾時の威力というのは要するに作用・反作用の法則によって0まで減速するために必要なエネルギーと同じなので、標的に与えるインパクトは加速時に受けた力そのままでしかないということだ。
つまりベルカ効果が作用するのは実際には光速だけではなく、
映像を10倍早送りにしただけのような状態であり、挙動としては時間加速に近い。ボクシングの試合の録画を10倍早送りで再生すれば10倍速で再生されるパンチ一発の威力が100倍になるかと言えば勿論そんなことは無いということだ。
砲弾の口径はMk.4 Type G/XLで漸く30.5cm、ドレッドノート級の主砲と同等のサイズだが、これはMk.3 Type Gまでが機動兵器に搭載する前提のもので、電磁加速では砲弾が軽いほど小さい電力で高い初速が出るためだ。今回大きくしたのはメインを砲弾自身の重力加速に切り替えたためである。
Mk.4 Type G/XLも一応
同じくサイズの問題で、ハイヴに突入する際にも狭い道を通れないという意味で搭載が躊躇われるが、そもそもハイヴ内では加速距離も取れないし、加速出来たとしてもこんな威力の武装は必要無いのであまり考慮する必要は無い。
レールガンMk.4 Type G/XLはまずMk.3 Type G同様に電磁力によって射出されるが、その後が違う。射出された砲弾に内蔵されたベルカエフェクターが起動して時空の速度倍率を変動させ、更に時空勾配推進システムが重力場を形成して自らを
ベルカ砲の砲弾はある程度の追尾機能があるのでミサイルの一種でもある。ただしミサイルタレットの現バージョンはまた別の特性があるので、タレットとして統合されたわけではない。
今回敵艦のラザフォード場に突き刺さった砲弾は約1秒で到達しているため、ベルカ砲の加速力からすると与えられた運動エネルギーはおよそ光速の0.4倍相当だ。実際の速度はベルカ効果と相対性理論により変わってくるが、運動エネルギーは変わらないので、この数字で威力を計算する。
ルミナイト製30.5cm徹甲弾の重量がおよそ640kgなので、これに相対性理論抜きで0.4c相当の速度を与えると1/2×640×(0.4×299,792,458)2 = 4.60EJ。これに破壊力変換効率0.95をかけて4.37EJ = 43
これに対して標的が
・
・
・
なので、
逆に
さて、速度の話に戻るとベルカ砲の加速度は0.4c/秒2
このため、1秒で光速の0.4倍相当の運動エネルギーを与えられた場合に計算上の質量増大を加味した速度は0.384c、2.5秒で光速の1倍相当の運動エネルギーを与えられた場合の実際の速度は0.786cにとどまる。
更にベルカ効果で見かけ上はそれぞれ10倍して1秒後に3.84c、2.5秒後に7.86cとなる。
レールガンMk.4 Type G/XLの弾種は現在徹甲弾しかないが、当初は128kg指向性重水素弾頭弾(N型)や128kg対消滅弾頭弾(P型)なども候補にあった。しかしいずれも実装は見送られる結果となった。
前者の重水素弾頭は爆発エネルギーが72.3PJ程度でしかなく、爆発力がMk.3 Type Gの64倍になったことで指向性に問題が出る上に弾頭重量が減ることで却って運動エネルギー分の威力が減るという逆転現象を引き起こしたので、プラン検討の時点で実装を見送られた。
後者の対消滅弾頭は核融合に比べ質量からエネルギーへの変換率が159倍になることで11.5EJになる。威力的には十分で、貫通とは別に内部爆発によるダメージを期待出来る。
反物質の確保については、通常の対生成現象を利用する場合でも物質・反物質のペアが生成されるので、物質・反物質合計質量と等価の電気的エネルギーで製造が可能だ。それに加え、現在では仮想実体化でも反物質の生成が可能になっているため、実体化時間を限定した運用なら大幅に電力コストを削ることが出来る。
そういうわけでこちらのP型砲弾は試作はされたのだが、試射実験で見事に爆発事故を起こした。
どういうことかというと、まず構造上対消滅弾頭弾は電子と陽電子を同量封入しているのだが、特に陽電子の方は電磁力によって真空中に保持せざるを得ない。そうしないと物質粒子に触れた瞬間に対消滅を起こして爆発するからだ。そしてその保持機構が電磁加速の慣性力と瞬間的電磁干渉に耐えられなかったという、考えてみれば十分あり得る事態であった。
幸い実験は宇宙空間で無人艦の遠隔操作によって行われていたので死人は出なかったが、結局の所反物質はレールガンの弾頭に使うにはあまりにも危ないということで採用を見送られる結果になったのだ。
大分長くなったが、そのベルカ砲の徹甲弾が命中したことで敵艦がどうなったかと言えば。
オペレーター「レールガン命中! 平均250発でラザフォード
映像上の目視観測によると、ベルカ砲の30.5cm徹甲弾は射出側からは赤方偏移で赤く見えている。敵の方からは逆に青方偏移して青く見える筈だが、真空中の光速を越えているため当然見えたときには既に着弾しているだろう。
ラダビノッド「ふむ、概ね想定通りの威力を発揮しているようだな」
一文字「
オペレーター「敵艦隊の主砲斉射、来ます!」
オペレーターの言葉にやや遅れて、敵艦隊から無数の青白い光条が伸びて味方艦隊に直撃、情報ディスプレイに表示されている味方艦隊の後方表面近くの損害がまた増えた。敵側としてはレーザーで少しでも砲弾を迎撃しようという意図もあったのだろう。
10万対500万という数の比率からして1斉射で全滅しそうにも見えるが、相手の布陣にも厚みというものがあるし、こちらの陣形は防御重視の球形陣なので相手との位置関係によっては味方艦が邪魔になって射線が通らない場合もある。
また、
人間のスケールで考えると身長1.8mに対し銃弾の直径が9mm前後。身長の1/200程度のスケールになる。つまり
そのため1斉射で壊滅はさせられず、まだ6万体程度が残存している。
一文字「損害の増加は?」
オペレーター「味方艦轟沈1,194隻、大破2,418隻、中破4,557隻です!」
ラダビノッド「ふむ、レーザー主砲の反射に比べれば損害は少ないが、決して無視出来るほどではないな」
一文字「ですね」
オペレーター「敵増援を感知! 数は……およそ30万体、まだ増えます!」
GAMMAの増援を察知したオペレーターが悲鳴を上げるようにその数を報告した。
相手が30万体やその倍でも500万隻の基幹艦隊が全滅させられることはまずないが、こちらは全方位を警戒しているために一点集中で中枢を狙われると旗艦を落とされるリスクがある。
一文字艦長は考え込む前に状況確認の問いを返した。
一文字「味方無人艦載機群の位置はどうか?」
オペレーター「味方無人艦載機群、現在約1億機が
一文字「十分だ。フィールド外の無人艦載機群は直ちにレールガンとミサイルタレットを起動、斉射せよ! ミサイルの弾種はP/Jだ!」
レールガンが通用することは分かったが、それに加えて早急に敵艦隊を沈めないと増援の到来で更に損害が積み重なる状況になっているため、一文字艦長は味方艦隊の到着を待たずに艦載機による攻撃命令を下した。