【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

270 / 387
270. バケモンどもめ、人類の力を見たか!!

 攻撃命令を受けた無人のTOM(トム)が垂直発射形式のミサイルタレットのロックを外し、そこから太く短いミサイルを各機80発ほど一斉に発射した。発射されたミサイルはその直後に球形のフィールドに包まれてすぐに消えた。

 だがそれから数秒後、約2光秒先の戦艦(バトルシップ)級の集団の周囲に数え切れないほどのミサイルが突如出現し、爆発。まばゆい閃光が集団全てを覆い尽くした。

 

 今使用した武装はMeisters 巡航ミサイルタレットMk.3 Type G。レールガンMk.3 Type Gが核弾頭を使用可能になったことで影が薄くなってしまったミサイルタレットMk.2 Type Gの次のバージョンである。

 

 

■名称:Meisters 巡航ミサイルタレットMk.2 Type G

・サイズ:5m×1m×1m

・弾頭:8kg指向性爆薬弾頭(D型)、10kg通常爆薬弾頭(E型)、2kg指向性重水素弾頭(N型)から任意選択

・威力:536万DMG=53.6MJ(D)、最大669万DMG=66.9MJ(E)、最大114兆DMG=1.14PJ(N)

・消費電力:0MJ/発 (※2.5倍モードでは5MJ/発)、N型弾頭のみ保持冷却と起爆加熱に電力が必要なため100MJ/発が別途消費

・間接射撃射程:200km

・直接射撃射程:5km~10km(地平線)

・連射速度:0.2射/秒 (※2.5倍モードでは0.5射/秒)

・弾数:無限

・備考:見敵必殺モード搭載、垂直発射設置可能、G元素カフェ1を少量使用

 

 

 

■名称:Meisters 巡航ミサイルタレットMk.3 Type G

・サイズ:5m×4m×4m

・弾頭:32kg指向性爆薬弾頭(D型)、30kgS-11(エスイレヴン)指向性爆薬弾頭(S型)、8kg指向性重水素弾頭(N型)、8kg対消滅弾頭(P型)から任意選択

・飛翔形式:時空勾配推進(G)と空間跳躍(J)から選択

・威力:2144万DMG=214.4MJ(D)、62億8千万DMG=62.8GJ(S)、456兆DMG=4.56PJ(N)、最大7(けい)1900兆DMG=719PJ(P)

・消費電力:1MJ/発

・間接射撃射程:無限

・直接射撃射程:観測可能な限り

・連射速度:0.2射/秒 (※2.5倍モードでは0.5射/秒)

・弾数:無限

・備考:見敵必殺モード搭載、垂直発射設置可能、G元素カフェ1を少量使用、ミサイル本体に共通で使い捨て核融合炉、時空勾配推進システム、二重空間超越レーダー、小型ワープエンジンを内蔵

 

 

 

 見て分かる特徴として、まずランチャーとミサイルが4倍太くなっている。体積としては16倍だ。しかしそれぞれの弾頭の炸薬搭載量と威力は4倍程度にしか増えていない。これは内蔵する機構がかなり複雑になったからだ。レールガンMk.4/XLのベルカエフェクターの代わりにワープエンジンを載せた形だ。

 このワープエンジンも核融合炉と同じで、超空間に入って出てくる1往復分しか使えない使い捨てタイプだ。それでもワープエンジンは複雑な機構なのでかなりスペースを取り、そのため体積が16倍になっても炸薬が4倍にしかならないという事態になったのだ。

 しかしミサイルに核融合炉を搭載したため発射時の電力を自前でまかなえるようになり、タレットを搭載する本体側から電力をチャージする必要が無くなった。消費電力はミサイルタレットMk.2 N型弾頭のわずか1/100だ。最大発電量が300GWに限られるTOM(トム)に搭載するにはありがたい仕様だ。何しろフル装備ではレールガンMk.4 Type G/XLも搭載して最大139GW消費するし、更に迎撃用のレーザータレットMk.5 Type G/Lでも電力を使うので、電力に余裕がないのだ。

 

 弾頭は4種類に増え、指向性のないE型通常爆薬弾頭が廃止されてS型のS-11(エスイレヴン)指向性爆薬弾頭へと変更された。また、P型の対消滅弾頭が追加された。威力の調整幅が非常に広いと言える。

 対消滅弾頭はレールガンでは電磁加速に反物質保持機構が耐えられず不採用となったが、こちらでは重力加速とワープで運搬する原理上慣性力がほぼ掛からないため暴発の危険性が低く、採用となっている。

 

 それで一文字艦長が指示したP/Jというのはこの対消滅弾頭(P)を空間跳躍(J)させて敵艦直近に飛ばすということなので、いざ敵にやられるとたまったものではない。AWF(アンチワープフィールド)を展開して侵入阻止(ホームセキュリティ)ドクトリンを徹底していなければインファクトリ級の艦隊ですらあっという間に壊滅してしまうだろう。

 

 対消滅弾頭の攻撃力は額面上は7(けい)1900兆ライフ相当だが、威力の都合上指向性が確保出来ないので実際にはその半分も効果があれば良い方だ。便宜上半分弱の3(けい)5000兆ライフ程度のダメージが入るとして、戦艦(バトルシップ)級のラザフォード(フィールド)の耐久値1(がい)ライフを削るには2,778発ほど必要になる。

 

 TOM(トム)に搭載されたレールガンとミサイルをDPSで比較してみよう。

 まずTOM(トム)のウェポンベイは上下合計で2,000m2。ここにレールガンMk.4 Type G/XLを1つ乗せて400m2使い、レーザータレットMk.5 Type G/Lを50基搭載すると更に200m2使う。残りは1,400m2なのでミサイルタレットMk.3 Type Gは87基搭載出来ることになる。まあ実際にはレイアウトの都合でもう少し少なくなるのでとりあえず標準で80基の巡航ミサイルタレットMk.3 Type Gを搭載するものとする。

 レールガン1基を2.5倍モードで使うとして、秒間1.25発で1.25×43(けい)7000兆=54(けい)6250兆DPSになる。

 ミサイルタレット80基から対消滅弾頭を2.5倍モードで80×0.5=40発/秒発射するとして、140(けい)DPSになる。

 同じ400m2で比べるとミサイルタレット25基相当なので43(けい)7500兆DPS。レールガンの方が25%程威力が大きい。しかしレールガンは消費電力が膨大であるためあまり大量には乗せられない。

 

 逆に威力に大差無いのになぜ消費電力が膨大なレールガンを搭載しているかと言えば、AWF(アンチワープフィールド)が働いているエリアでは味方もワープ出来ないので、つまりJモードの空間跳躍ミサイルを撃てないのだ。

 空間跳躍ミサイルの利点は相手に迎撃されにくいことであり、それは命中しやすいというだけでなく、自爆しにくいというのが最大のポイントだ。対消滅弾頭が至近距離で爆発すると艦載機だけでなく艦隊そのものにさえ影響が出てしまう。

 そのためAWF(アンチワープフィールド)内でも問題無く使える武器としてベルカ航法型のレールガンを搭載しており、全力を発揮するためにAWF(アンチワープフィールド)の外にわざわざ移動してからミサイルを撃ち始めたわけである。

 ちなみに前衛艦隊がAWF(アンチワープフィールド)展開の例外になっているのも、AWF(アンチワープフィールド)を展開したままでは空間超越レーダー観測も出来ないからだ。ややミノフスキー粒子にも似た使い勝手を感じる。

 

 さて、反射されてしまうレーザーは戦艦(バトルシップ)級に使えないのでミサイルとレールガンを全力斉射して194(けい)6250兆DPSを発揮するとして、ラザフォード(フィールド)を突破するのに51秒ほどかかる。

 艦載機単独で戦艦を相手にして1分掛からないのであればそれは優秀と言ってもいいのだが、時間をかければかけるほど反撃で味方艦隊がダメージを受けるのでなるべく早く処理したい。そこで1対1ではなくAWF(アンチワープフィールド)の外に出ているTOM(トム)1億機を総動員して戦艦(バトルシップ)級の残存と援軍併せて40万体程度を攻撃することを考えてみる。

 レールガンは射線が通っている相手にしか当たらないのでミサイルのみを使うことにすると、1対1では69秒かかるが、総掛かり1億対40万では0.28秒という数字が出てくる。実際には撃ってから届くまで数秒かかるのでDPS上の計算でしかないが、それでも数秒で片付けられるのなら味方の損害は極めて限定される。

 

 そして実際それを叩き付けた結果、まず残存6万体が対消滅弾頭の爆発の嵐に揉まれて見事に砕け散った。

 1分ほど遅れて到着したGAMMA援軍はやや多めに50万体ほどであったが、即座に叩き込まれた約80億の対消滅ミサイルの前には1秒ももたずに同じく宇宙の塵となった。艦載機を展開する暇も無い。毎度お世話になっているランチェスターの法則が数の暴力に微笑んだ結果だ。ケンシロウ、数の暴力はいいぞ!!

 なお超空間を経由して飛ばす原理上、跳躍ミサイルをワープアウト前の相手に当てることも実は出来るが、超空間にデブリを増やしたくないので可能な限り実空間で仕留めている。

 

オペレーター「GAMMA艦隊合計60万体撃滅! 残存反応並びに増援ありません!」

 

門兵1≪やったぜェ!!≫

 

門兵2≪バケモンどもめ、人類の力を見たか!!≫

 

 敵艦隊撃滅成功とあって、TOM(トム)のパイロット達が次々に快哉を叫んだ。

 というのも、現在出撃しているTOM(トム)は全て人を乗せていないが、一部の隊長機は地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団多脚戦車機甲連隊が遠隔操作している。

 そもそも生産力がオーバーフロー気味な匠衆(マイスターズ)において、簡単に補充が利かない人的資源というのは非常に貴重なのだ。なので決戦に備えて阿頼耶識改の接続が必要ないTOM(トム)に関しては既に量子通信型の遠隔操縦が基本になっており、凄乃皇(すさのお)同様に宇宙最速理論(スピードスターオーシャン)の艦内に操縦席が設置されている。これは副次的に、もし撃墜されても次の機体とペアリングし直せばいくらでも補充が利くという利点がある。

 

一文字「艦載機回収始め! ……とりあえず空間跳躍ミサイルも有効でしたね」

 

ラダビノッド「うむ、()()()()()な。一休みしたい所だが、相手がBETA以上に学習することを考えると、おちおち休んではいられんのが辛い所だな。……よし、戦力評価速報はこんなものだろう」

 

 ラダビノッドは新種GAMMAの戦力評価速報に署名し、一旦ローカルデータベースに保存してから総司令部の戦略情報統括システムへ転送した。これは戦闘記録詳細にラダビノッド以下艦隊司令部要員の見解を添えたものだ。

 見解は戦闘中から戦闘後に暇を見てはメモした程度の情報を集積したものだが、熟練者が揃った地球連合(ユナイテッドアース)基幹艦隊による戦闘記録は貴重だ。この戦訓を共有すれば他の艦隊の戦いが大分楽になるだろう。一応戦闘中にも随時送ってはいるのだが、速報版はそれらを一旦集積して分かる限りで不正確な部分を添削したものだ。より正確な正式版はもっと落ち着いてからになる。

 そう、戦訓を得るためならば、魔術機連隊も機を見て出しておくべきなのだ。

 TOM(トム)と違って遠隔操作に対応していない魔術機の衛士達は、温存されて出番が無いのをやや不満げにしているのが通信画面上の表情から分かっていた。

 地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団は今や匠衆(マイスターズ)全軍でもNo.1を争う精鋭部隊だ。ラダビノッドや一文字からすると、いざというときには頼るが、死亡リスクが無いわけではないので明確な運用方針も無しに適当に使い潰すわけにはいかない。そのためどうしても未知の敵相手には運用が慎重になっていたのだ。だが、当たってみた感触からして、()()()()()()()にやられることはまずあるまい。

 

一文字「敵の迎撃が激しくなりましたが、この次の恒星系に珪素生命体が居住可能な惑星がある筈です。艦の修復が終わって味方艦隊が到着したらそこまでは進軍したい所ですね」

 

 この珪素生命体が居住可能な惑星とは、シイレント人の居住可能環境を調査した結果出てきた条件に照らし合わせたものである。BETAやGAMMAの創造主たる珪素生命体(シリコニアン)の居住可能環境と一致しているかは今のところ不明だが、何らかの珪素生命体が生息している可能性は高い。

 なおここまで1,000光年ほどの進出でその条件に該当する惑星は200ほどあったのだが、文明を持つ生物が住む星は0であった。一応原始人的な存在はいたので、もしかすると文明が退行したのではと調査を行ったが、先史文明の痕跡は無かったし、BETAから物資を受け取ってもいなかった。

 

ラダビノッド「ははは、君は欲張りだな。……エーベルバッハ中将、次の進軍後は魔術機隊にも出てもらうぞ?」

 

アイリスディーナ≪は、地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊は全機いつでも出撃出来ます≫

 

ラダビノッド「うむ、大いに結構。()()()()は心置きなく使ってくれたまえ」

 

アイリスディーナ≪了解! 地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊、次は()()()()するぞ!≫

 

 アイリスディーナの号令に対し、待ってましたという声の合唱が通信の向こうから聞こえてきた。流石はデグレチャフ元帥お墨付きの最精鋭だ。戦意が溢れるほどに漲っている。

 ラダビノッド達はその様子に頼もしさを覚えた。ラダビノッドも当初は若者達を戦場に出すことにかなり抵抗があったのだが、地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊員達はもはや自分達と故郷の未来のために自らの意志で戦場に出て自らの意志で戦っている。その精強さは今や銀河に轟くほどで、悲壮な様子など欠片も無い。ならば一騎当千の戦士達をこれ以上引き留めるのは過保護であり、失礼というものだ。見送るのも大人の務めというものだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。