【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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271. 千却万雷(コール・グレーター・サンダー)、プログラム……ドライヴッ!

 5光年ほどのワープを経て、地球連合(ユナイテッドアース)基幹艦隊と召集した9個無人基幹艦隊は次の恒星系外縁へと到達した。

 地球連合(ユナイテッドアース)基幹艦隊は先の戦闘で幾らか数を減らしてはいたが、戦略予備からの到着を待つと時間が掛かるので、補充は他の呼び寄せた無人艦隊からの徴用で済ませた。なので合計で5000万隻には届いていない。

 今回の艦隊の並びは球形陣ではなく立方陣だ。魔方陣のことではない。5000万隻弱を20km間隔で立方体状に並べて、1辺7,370kmほどの整然とした立方体状にしているのだ。

 侵入阻止(ホームセキュリティ)ドクトリンを運用する陣形としては、防御の厚みの均一さから球形陣の方が無駄が少ないのだが、複数の基幹艦隊を統合した上で損害無しで防ぎきる前提ではなく味方の損害に応じて隙間を埋めたり補充したりするプロセスを前提とすると、防御力が若干落ちるとしても形としてシンプルな立方陣の方が対応力が高いのだ。

 ワープアウトの順番は、ほんの僅かな差だが艦隊外側の前衛艦が先となっている。これは中央部の艦が先にワープアウトするかもしくは完全に同時だと、艦隊中央部を真っ先に攻撃されるリスクがあるからだ。

 

ラダビノッド「ふむ、待ち伏せか」

 

一文字「そのようで」

 

 前方を見ればGAMMA艦隊が整列しており、先ほど総司令部で大盾(タワーシールド)級と命名された大型防壁、更に宇宙突撃(スペースデストロイヤー)級や宇宙光線(スペースレーザー)級まで展開済みなので既に戦闘準備を終えているようであった。

 準備が終わっているので、早速GAMMA艦隊は艦砲射撃を開始し、艦載個体は地球連合(ユナイテッドアース)基幹艦隊に向けて移動し始めた。

 数はまた大幅に増えて戦艦(バトルシップ)級が800万体、1個基幹艦隊規模を超えている。味方が1個基幹艦隊のままここを訪れたならかなりの損害を被ったかもしれない。あちらも戦力の逐次投入をやめて恒星系の総戦力で迎撃することにしたようだ。

 また、恒星系外縁部、太陽系で言うオールトの雲に相当する広大な小惑星群がすぐ側にあるため、それを考慮に入れると相手に地の利があるかもしれない。

 

ラダビノッド「ならば()()()()発進! 地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊も()()()()()せよ!」

 

アイリスディーナ≪了解! 地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊、出撃! 全武装使用自由(オールウェポンズフリー)! 繰り返す、全武装使用自由(オールウェポンズフリー)!≫

 

一文字「艦載機の展開が終わるか、もしくは敵のワープの兆候を捉えるまでAWF(アンチワープフィールド)の展開は待て! レーダー手は敵の挙動を見逃すな! 全艦は味方機に留意してレールガンとP/Jミサイルで攻撃を開始せよ!」

 

 一文字艦長の号令で5000万隻弱がベルカ砲と空間跳躍対消滅弾頭ミサイルの一斉攻撃を開始する中、地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊が次々に出撃していった。数は108のままなので増えていない。これは地球出身者で匠衆(マイスターズ)に加入した衛士が増えていないわけではなく、地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団とはまた別の部隊を作ったのだ。そのため地球連合(ユナイテッドアース)基幹艦隊に所属している魔術機は現状108機だけであり、AWF(アンチワープフィールド)の展開状況にかかわらずいつでも出撃出来るように全て宇宙最速理論(スピードスターオーシャン)に搭載されていた。

 

 では一文字艦長がAWF(アンチワープフィールド)の展開を保留したのは何故か。

 

 まず地球連合(ユナイテッドアース)戦闘団魔術機連隊が出撃させた機隊は迅雷、その四型である。

 迅雷四型は参型に比べて形状はそれほど変わっているように見えないが、実際にはそれなりにパワーアップを遂げている。大雑把に言って、攻撃力(ATK)魔法攻撃力(MATK)が10倍、防御力(DEF)が16倍になっている。攻撃力関係は魔道具の研究結果、防御力(DEF)は構造強化倍率の向上によるものだ。

 これで魔導銃剣弐型2000改+99を使用してマナサイフォンを掛けた収束攻撃で1520億DPS、最終防御力(DEF)は647万になる。

 確かに強くなっているし、術式の起動により更に戦力は上昇するが、しかし()()()()()()()では(けい)の桁が平然と出てくる現状のインフレについて行けているとは到底言えない。

 そこで注目していただきたいのが、迅雷四型で形状が変更されている兵装担架と跳躍ユニットだ。

 

 迅雷の兵装担架には、Gイレイザーの時に述べたように元々インベントリ機能が付いている。四型ではこれを拡張して、Gイレイザーよりも更に大型の専用拡張装備(オプション)を格納出来るようにしたのだ。この特別格納枠は7()()スロットとなっている。

 従来のインベントリでは長軸120mを超えるようなものを収納することが出来ず、精々TOM(トム)くらいの大きさが限界だったのだが、これを倍に拡張して長軸240mまで入るようにしたわけだ。全高180mの凄乃皇(すさのお)四型でも余裕で入る大容量だ。とはいえ格納しているのは凄乃皇(すさのお)ではない。

 

 一例として、厳しい訓練をくぐり抜けた魔導衛士の中でもエースの一人に数えられるリィズ・ホーエンシュタイン少佐の様子を見てみよう。

 

リィズ「千却万雷(コール・グレーター・サンダー)、プログラム……ドライヴッ!」

 

 リィズがキーワードを唱えると、視界の端にある拡張装備(オプション)一覧で『(とどろき)』のステータスが『承認』から『接続実行中』に切り替わった。

 これに伴い兵装担架のインベントリが起動して足元に空間接続ゲートが開いた。直径240mの大型ゲートだ。

 そしてその中から、巨大な人型の何かがせり上がってきた。デザインは武御雷(たけみかづち)やダイゼンガーにも似た鎧武者風となっているが、サイズが10倍以上でかく、腕を組んで仁王立ちしたその姿は、いかにもティンパニの行進曲(マーチ)が似合いそうな堂々たるものだ。これが迅雷四型用の決戦用拡張装備(オプション)、その名を決戦用大魔導鎧・(とどろき)という。

 

 つまり一文字艦長がAWF(アンチワープフィールド)の展開を保留にしたのは、AWF(アンチワープフィールド)がこの決戦用大魔導鎧である轟の召喚に必要な空間接続ゲートの展開を阻害してしまうからだ。

 

 轟の頭頂部が開いてガイドビーコンが伸び、迅雷四型の跳躍ユニットに繋がると、迅雷四型が引き寄せられるように降りていく。

 

リィズ「パイルダー! オンッ!!」

 

 頭部の中に用意されている迅雷専用座席に着座、跳躍ユニットをソケットに挿入し、ロックを掛けて完全に固定すると同時に展開していた頭部が閉じられた。

 この「パイルダーオン」は勿論トピア達理想郷の建設者(クラフトピアン)に教わったものだ。せり上がってくる巨大ロボットの頭に()()()が合体する様はまさにそれだろう。

 なお試作機のデモンストレーションでトピアは「ファイヤーオン」と言っていた。グレートの場合はどちらかと言えばグレートがインフィニティの頭部に刺さった状態に似ているが、そこは気分だ。グレンラガン方式の名乗りを上げても良いし、別に何も言わなくても合体(ドッキング)プロセスは進むので、各自好きなようにやっている。

 

 マブラヴのデザイナートークによると、戦術機の跳躍ユニットの構造は元々0083の試作三号機ステイメンがアームドベース・オーキスとドッキングする際に使用するバーニア付きテールバインダーが由来であり、魔導戦術機である迅雷もそれを継承している。なので、それを先祖返りさせて迅雷四型では本当に合体(ドッキング)出来るようにしたわけだ。

 

 跳躍ユニットを固定すると接続認証プロセスが始まり、進捗バーが瞬時に伸びきってそのバーの下のメッセージが『未認証:不明なユニットが接続されました』から『認証済:決戦用大魔導鎧・(とどろき)』に切り替わる。これは接続したのが正規品の迅雷と正規品の轟で間違いないかの確認プロセスだ。接続間違い防止の他に、盗難防止の意味もある。

 続けて接続したユニットのステータス診断が走る。こちらは、精神接続して問題無い状態であるかどうかの事前チェックだ。それも完了して、進捗バーの下に大きく『起動準備完了』のメッセージが出た。

 

リィズ「起動(ウェイクアップ)轟雷(グレーター・サンダー)!」

 

 リィズが起動を宣言すると迅雷四型の跳躍ユニットを経由して轟との阿頼耶識改接続が有効になり、その瞳に光が灯った。これと同時にリィズの視界も迅雷視点から轟雷視点に切り替わり、機体ステータス表示も迅雷のステータスが畳まれて轟雷のステータスに切り替わった。

 リィズが機体の状態を確認すると、拡張装備(オプション)一覧では『(とどろき)』のステータスが『人機一体』に切り替わっており、その他のステータス情報も全て異常なしを示している。エンチャント設定は標準的な『魔導』になっている。

 特にすぐに目に付く所には縮退炉Minuteモード400EW発揮中と表示されている。これは、縮退炉の出力が不安定になったら真っ先に対応しないと不味いからだ。

 

 こうして迅雷と決戦用大魔導鎧・轟が合体(ドッキング)して起動するのが丁度迅雷の10倍の大きさになる頭頂高215m、全高233mの()()()()()()轟雷(ごうらい)だ。ガンバスターとほぼ同スケールで縮退炉を搭載した()()()()である。

 

リィズ「戦闘モードオールグリーン! シュヴァルツ9、敵艦隊の掃討を開始します!」

 

 リィズが操る轟雷は腕組みを解いて両拳を互いに打ち付けると背面兵装担架に手を伸ばし、兵装担架はリィズに眼前の艦隊を討滅するための武器を差し出した。

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