【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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278. 語源が『理想郷の建設者(クラフトピアン)』と全く同じなのが実に不愉快ですね

 ウルジマルク文明の歴史の続きだが、遊牧民族が頂点を取ってから時代が下ると、家畜の改良を進める方向で文明が発展した。農業を発展させて食料を賄うのではなく、家畜の生産効率を上げる方に舵を切ったのだ。この試みは成功し、ウルジマルク人はより大きな人口を支えられるようになった。そのため家畜を改良するための生物学はより発展した。

 そうしてウルジマルク人はあらゆるインフラを家畜に頼るようになった。地球で言えば自動車の代わりに時速100kmで走る改造馬を、飛行機の代わりに時速1,000kmで飛ぶ改造鳥を使役するようなものだ。何とも遊牧民族(テイマー)ならではの発想であった。

 

 ウルジマルク文明がある程度発展し、人々の生活に余裕が出てくると、ここに大いなる敵が立ちはだかった。その名は動物愛護団体である。命を弄ぶのは良くないという妙な倫理観が芽生えてしまい、これが一大ムーブメントになったのだ。

 そうは言っても今更生命線である家畜全てを放棄しては社会が成り立たない。そこで研究者達が出した回答は、生物を改造するのが駄目なら生物ではないものを新たに作ればいいというものだった。

 この時代には元素周期表の概念が既にあったので、研究者達は珪素の代わりによく似た特性でしかも大量にある炭素を使うことを考えた。そして彼らの一点特化とも言える生物学の英知を結集すれば、炭素ベースの家畜を無から創造することが可能だった。

 彼らは自らの被造物を『労働力(マスニフ)』と命名した。そしてこの惑星における生物とは珪素生物のことなので、炭素ベースなら同じように動いたとしても生物ではないと言い張ったのだ。地球や他の機械文明で言う所のロボット扱いだ。

 炭素生命体から見るとそうはならんやろと思う所だが、彼らの倫理観ではこれがあっさり通った。何しろ彼らの感覚では炭素生命体自体が天然に存在しない完全人工物なのだ。人工的には既にある程度の知能を持たせることにすら成功していたが、これはあくまで科学の結晶であって、炭素は安易に化合し変化するため自然環境において知的生命体まで進化することはあり得ないという()()が通用していた。

 視点を逆にしてみると、地球の環境では珪素生命体が存在しないので、人工的に珪素生命体の製造に成功したとして、自然に発生し得ないそれが従来の生命の定義内に収まるかどうかみたいな話なのだ。

 

 それはそうとこの動き、社会の現実を無視した無茶な要求に対して回答があまりにもあっさり出てきたように思わないだろうか。一過性の流行ならば落ち着くまでのらりくらりかわす対処も可能な筈だ。

 それもその筈、実はこの研究の()()は動物愛護ではない。因果関係からすると動物愛護の方が()()なのだ。

 彼らは元々家畜の根本的効率化研究をしており、長期的には炭素系で一から作り直した方が良いという結論を出していた。軽くて大量にあって化学反応しやすいからだ。

 しかしこの研究には大きな問題があった。珪素系家畜産業の既得権益だ。全く違う系統の技術に市場を荒らされると見た家畜産業界の妨害により、炭素ベースの家畜などというものは全くの夢物語とされ、商業化がおよそ不可能になっていたのだ。地球で言うとエジソンがテスラの商売を邪魔するために交流電流は危険だぞと喧伝したようなものだ。そういう意味ではウルジマルク人もやはり人間であった。

 そこで一計を案じた研究者達は、動物愛護団体の言い分を広めることでむしろ珪素系の命を弄ぶのはよくないという方向に話を持っていき、それならばこんな方法がありますよと台本通りに研究成果を持ち出してきたというのが実際の流れだ。

 妨害をくぐり抜けるために都合のいい建前をでっち上げてこうなったわけなので、もしかすると家畜産業の妨害が無ければウルジマルク文明でも炭素生物が生命の一種として扱われていたかもしれない。

 

 それから労働力(マスニフ)を作る技術は益々発展し、それまでの家畜以上に様々な利便性を発揮して生活を向上させていった。

 なおウルジマルク人は珪素生命体であるため炭素生物を食べても栄養にならないので、食肉は相変わらず珪素系の家畜を使うか、珪素系培養肉を食べるしかなかった。彼らは元々が遊牧民族や遊牧民族に文化的に吸収された民族の末裔なので、珪素植物だけを食べて済ませるという発想は無かった。

 

 更に時代が下って人口が増えると、労働力(マスニフ)の燃料であるG元素(ゲド)が不足するようになった。何しろG元素(ゲド)には致命的な問題があった。構成素材としてはともかく、燃料として使うと完全に消えてしまうのでリサイクル出来ないのだ。

 既に家畜の大半を労働力(マスニフ)に切り替えていたことが彼らの首を絞めた。同じ性能を出すにも重量が軽い分だけG元素(ゲド)の消費量が少ないというのが労働力(マスニフ)の特徴なのに何故そうなったのかと言えば、労働力(マスニフ)は消化器官を持たないため食事によるエネルギー補給が出来ず、普通の家畜と違ってG元素(ゲド)が無ければ全く動けないのだ。まあ仮に消化器官があったとしても労働力(マスニフ)が食べるべき炭素系食料が存在しないのでそちらの用意が必要なのだが。

 そういうわけでG元素(ゲド)を消費しないタイプの家畜や労働力(マスニフ)、そしてその飼料の研究が進められるようになったのだが、いかんせん性能も機能性も低く、この時代のウルジマルク人にとって満足出来るものではなかった。地球で言えば化石燃料が枯渇したのでこれから中世文明に戻りますと言われて現代人が納得するかと言えば難しいのと同じだ。

 G元素(ゲド)の消費を抑制するプランがうまくいかないため彼らは慌てて採掘効率の向上を試みたが、急場しのぎにしかならなかった。更に次の段階として惑星外からの採掘を試みるべく宇宙開発が始まったが、具体的な成果を得る前に内戦が起きた。政府軍と反政府軍の戦いだ。

 

 双方労働力(マスニフ)を使った内戦は短期的には更にG元素(ゲド)の消費を加速させたが、長期的には人口が大幅に減ったことで帳尻が合った。

 というか、実のところこの内戦自体が政府による口減らしとガス抜き、そして反政府活動家のあぶり出しのための自作自演であった。ただし最終的に政府軍が負けたというのが彼らの想定外であった。

 そういう事情のため、ある程度戦力を拮抗させるために軍事技術が反政府軍に横流しされており、どちらの軍も生体レーザー兵器を運用していた。そして中盤までは生産力の差で政府軍が優勢だったのだが、追い詰められた反政府軍が少ない戦力を補うために自動化に舵を切り、元々生殖能力を持たなかった労働力(マスニフ)に自己増殖・自己進化機能を組み込んだことで一気に勢力を盛り返した。

 この時点で最大のものは体長が2kmほどで、大出力レーザーと対レーザー二重回転シールドを備えて敵を蹂躙するようになっていた。つまりは巡視船(パトロール)級GAMMAや天使の光輪(エンジェル・ハイロゥ)級BETAの原型である。

 しかし戦術を理解出来るほどに労働力(マスニフ)の思考能力を高めるとしばしば暴走事故を引き起こすようになったため、完全に支配下に置くための改良が重点的に進められた。珪素生命体こそが創造主であり主であるという刷り込みだ。そして全ての労働力(マスニフ)にそれを刷り込むのは面倒なため、省力化のために思考能力のある上位存在とその命令で動くだけの大量の下位存在を分けて、上位存在だけに刷り込んでいった。家畜はその群れの長だけを手なずけてそいつに統率させればいいという発想であり、BETAの箒型指令系統の原点がここにある。

 

 反政府軍は内戦(じゃあくなポケモンバトル)の勝者となり、革命政府を名乗った。

 

 内戦終結から約100年後、革命政府は旧政府側の研究だった宇宙開発を引き継いで衛星から資源を持ってくることでエネルギー問題がひとまずの解決に至った。

 つまりはその研究の進展を待つだけで問題は解決だったので、この戦争は兵器の発展以外の意味が全く無かった。むしろ宇宙開発研究を遅らせたとすら言える。そのため、旧政府の研究を引き継いだだけという事実はエネルギー問題が一段落するまではひた隠しにされた。

 

 そこから更におよそ1,000年後、今後を見据えて労働力(マスニフ)にエネルギー採掘と輸送を含む全ての労役を任せる一大自動化計画、理想郷(エベクライデ)計画が発表され、実行された。革命政府も研究を引き継いだだけとはいえ、問題の本格的解決のために取り組んではいたのだ。

 この自動操業に携わる労働力(マスニフ)はひとたび惑星や衛星に降り立つとまず上位存在の監督下で地面を掘り進んで地下茎構造の坑道を構築し、現地の資源で採掘力となる下位存在を増やす。そして採掘力が一定水準を超えて余るようになれば隣接地域に採掘拠点を増やしていく。

 隣接採掘拠点の統率は上位存在と下位存在の中間に当たる中位存在が担当する。中位存在に知性はほぼ無く、想定外の事態への対応は上位存在の判断に委ねる形になる。

 各採掘拠点はほぼ鉛直のマスドライバーを作ってレーザー推進で物資パッケージをウルジマルク軌道上へと飛ばす。そしてウルジマルク軌道上のステーションが物資パッケージを受け取って軌道エレベーター伝いに地上へと降ろす。マスドライバーは物資パッケージを飛ばすだけではなく、新しい上位存在と初期採掘力を梱包して次の採掘惑星・衛星に飛ばすのにも使う。

 なおウルジマルクの軌道ステーションも軌道エレベーターも全部労働力(マスニフ)なので肉の塊だ。

 この自動採掘システムの上位存在は、完全に手放しで活動させるため、暴走や離反の危険性を極力排除するために採掘と輸送に必要無い軍事などの知識は全て削除されている。中位存在に知性が無いのも同様の離反対策だ。

 この自動化システムはプロジェクトの名前からそのまま理想郷の建設者(サマサ・ヴォ・エベクライデ)と命名された。つまり地球で言う所のBETAの正式名称がこれになる。

 

 

 

ラリー「え、あいつら理想郷の建設者とか呼ばれてんの? あのツラで?」

 

リテリア「あれがサマサ・ヴォ・エベクライデとかいうツラかぁ?」

 

タバサ「あー、美醜については種族によって感じ方が違うから一旦置いておこうか。それはともかく、文明の破壊者にそのような名前が付けられているのは皮肉なものだね」

 

ターニャ「まあ味方からは英雄、敵から見れば悪魔扱いというのはよくあるものですが」

 

 実際ターニャも前世では味方からは銀翼突撃章持ちの『白銀』、敵からは『錆銀』や『ラインの悪魔』などと呼ばれていたものだ。

 

トピア「しかしあれですね、『理想郷の建設者(サマサ・ヴォ・エベクライデ)』って、語源が『理想郷の建設者(クラフトピアン)』と全く同じなのが実に不愉快ですね。よりによってBETAと肩書きが同じとは」

 

九十九「全くだネ」

 

ジョンストン卿「ハハハ、お分かりいただけたかね」

 

 特に原初のクラフトピアンであるステークに至っては理想郷の建設者(サマサ・ヴォ・エベクライデ)を討ち滅ぼすために理想郷の建設者(クラフトピアン)になったなどというよく分からないことになる。

 しかも他の文明を破壊して回ってまで理想郷の建設者(サマサ・ヴォ・エベクライデ)の連中が築き上げたものが理想郷(ユートピア)かと言われれば全くそのようには見えない。

 今度はトピア達理想郷の建設者(クラフトピアン)が先ほどのマブラヴ地球人達と同じように納得いかない表情をすることになったのだった。

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