カミール「そう言えば加盟しているのは先進文明の方が少なかったな」
シュミット≪アシレちゃんが普通に話についてきてるからうっかりしてただわね≫
そう、見た目がダイオウイカであるアシレが普通に理解しているのでうっかり見逃していたが、
夕呼は通信画面の大使達の表情を見て、大半がグイリ同様に理解出来ていなさそうなことを確認すると、気を取り直して説明を試みた。
夕呼「……そうね、まず可能性分岐を考慮すると、歴史が一本道ではなく、樹形図状になるのは分かるかしら? この分岐が無数にある所為で並行世界が無限に増えるのだけれど」
夕呼がタブレットを使ってスクリーンに下から上へ伸びる樹形図を描画し、樹形図の隣に下から上への大きな矢印を書いて、「外から見た時間進行」と書き加えた。
しかしこの説明ではグイリや通信画面の向こうの面子の多くはまだ理解に苦しんでいるようであった。
夕呼はやや苛立った表情になった。理解してもらわないと困るが、かと言って一人一人丁寧に説明する時間は無いのだ。
そこに夕呼の焦りを理解した九十九がアシストに入った。
九十九「あー、分岐と並行世界の概念がよく理解出来てない諸君もいるようだネ。では例えば運次第の勝負をするとしよう。並行世界とは、そこで勝利という結果になった場合と敗北という結果になった場合が分岐してそれぞれ別の世界として続いていくという概念だヨ。分岐した先でも世界のあらゆる場所で勝負に限らずそのような分岐が発生して、結果として無限の並行世界が誕生するわけだネ」
グイリ≪おお、なるほど!≫
この九十九の説明でグイリを含む9割以上が理解した顔になった。まだ一部は今ひとつ理解出来ていないようだったが、個別に質問を受け付ける時間は無い。
九十九「あまり時間をかけたくないが、理解しないまま行動されるのはまずいからネ。もし分からない場合は今すぐ文明防衛艦隊担当に問い合わせてくれたまえ。個別に答えてくれるだろう。理解出来ないままだとあとで大変なことになるから見栄は張らない方がいいヨ」
次に九十九が執った手段はアウトソーシングだ。個別に説明する時間が無いのなら複数の担当に業務を振ればいい。
丁度それぞれの文明の担当になっていてホットラインも引かれている文明防衛艦隊担当
なお一番多かったのは
これについては
特にクラフトピアレガシーワールドやテラリアンの世界などは、大量に存在しても大丈夫なように明らかに通常の宇宙と構造が異なっているので、全く別物であることが分かりやすいだろう。
九十九「うむ、理解出来たようだネ。では夕呼君、続きをお願いするヨ」
夕呼「……ええ、助かるわ。じゃあ以降この図で真ん中の一直線のラインを今のこの世界に繋がる分岐と定義するけれど、この確率時空での特殊事情として、分岐に加えてちょっと複雑なループが発生してたのよ」
九十九「補足するとループとは一定条件で時間が巻き戻されてやり直しになってしまう超常現象のことだヨ」
夕呼は九十九のアシストを受けながら純夏と00ユニット、白銀 武と因果導体についての説明を始めた。
夕呼「実証出来たわけじゃないんだけど、まず発端はH22横浜攻略作戦である
夕呼は樹形図の途中に「
フガル「その願いとは?」
夕呼「もう一度幼なじみの白銀 武に会いたい、というものよ。その白銀がこの時点で死んでたから大分ややこしいことになったんだけどね」
白銀。話をよく聞いていれば、夕呼は先ほどからその名前を出していたことが分かる。大使達の視線がステークに集中した。
そして純夏が心配なあまり冷静さを欠いていたステークは、ここで違和感に気付いた。
ステーク「先生……?」
夕呼はステークの疑問に微笑みを返すだけにとどめ、続きの説明を始めた。
夕呼「続けるわよ。その願いの影響で、この世界では既に死んでいた白銀 武が、他の並行世界から欠片を集める形で2001年10月22日に突如存在するようになったわ。意味が分からないと思うけどこれは事実よ。そしてそれ以降、鑑 純夏が白銀 武と結ばれない限り白銀 武が死亡するたびに2001年10月22日に巻き戻るループが発生していた」
夕呼は樹形図の赤い部分を分岐させて分岐先にリロードアイコンを書き、その1つに「2001年10月22日に戻る」と書き込んだ。
トピア「なるほど、分岐のある世界にループが発生する場合は外側の時間軸を基準にループも位置を戻さずに続きに書き連ねた方がすっきりするんですね」
九十九「日付基準だと戻って分岐の繰り返しで毛玉のようになってしまうだろうネ」
スコア「他の並行世界に移動した場合、この樹形図で真横に移動するだけというのは分かりやすいな。並行世界間で日付がずれていてもそれはループの時期によるもので、外から見た時間進行基準だと実は全くずれていないわけだな?」
トピア達もループと分岐をそれぞれ理解はしていたが、ループ中の分岐については殆ど考えていなかった。
しかし考えてみれば00ユニットというのは並行世界の00ユニットと計算リソースを共有するシステムなので、ループ中の00ユニット完成以降に分岐が発生しないと本領を発揮出来ないことになるのだ。そして00ユニットが完成したパターンはまず因果導体の武が存在する世界にしかない。必然的にループしながら分岐することになるわけだ。
夕呼「私達にとって幸運だったのは、白銀 武だけが巻き戻し前の記憶を持ち越していたことね。それをきっかけに鑑 純夏をベースとした00ユニットの完成にこぎ着けることが出来たわ。そして00ユニットと
夕呼は樹形図を分岐させて片方を非ループ状態を示す青の線に戻して「ループ脱出条件成立」と記入し、
この分岐を見て、鋭い者は意味を察したが、そうでない者は割と脳天気な感想を述べていた。
グイリ≪巡り会うためにループを繰り返したのですか。それは何ともロマンチックと言いますか……≫
ロナルド「しかしそのお陰で、その世界の我々は勝つまで試行錯誤を繰り返すことが出来た、ということですね」
アシレ≪まさに愛が地球を救ったのでゲソねぇ≫
一方、既に経緯を知っている
テクス「ループ脱出条件を満たした世界と満たせなかった世界が分岐することで、ループは消えずにずっと残るわけでござるな」
トリオ「その最後の
夕呼「そう、BETA大戦の勝敗とループ脱出条件が無関係だから、ループを脱出しても人類が勝利した世界と敗北した世界があることが問題なのよ」
夕呼は樹形図で
サティ「ループを抜けていてなおかつ00ユニットがBETAに鹵獲されている場合、そこからループが発生しないから00ユニットをBETAに研究される時間が発生してしまう、ということね?」
夕呼「そういうこと。可能性で分岐する世界なのだから、
マイン「……そこまで分かっていて何故そんなものを作った?」
夕呼「それと引き換えにでもしなければ人類勝利の可能性が0に等しかったからよ。遠い未来の脅威を危惧して明日の命を諦めるわけにはいかないわ」
本当に夕呼がBETAの並行世界進出のきっかけを作ったとしか言いようがないではないかと責めるマインの視線が、他に方法が無かったという夕呼の視線とぶつかった。そこに珍しくターニャが割って入った。
ターニャ「総軍大元帥閣下、地球戦線はそのくらいありとあらゆることをしなければ、滅亡を待つだけだったのです。そしてその世界の香月博士は、今回の問題の原因を作ると同時に地球の勝利という結果もたぐり寄せております。そこから現在へ繋がっているのですから、あながち失策とも言いきれないでしょう」
実際ターニャは地球戦線で勝利をたぐり寄せるために誰よりも苦労していたのでその大変さが身に染みている。まあその苦労の半分が地球人類の結束の無さのせいだというのは全く笑えないが。
トピア「まあ要は今から我々が全ての世界のBETAを絶滅させれば全てが片付くわけですから、問題無いでしょう。勝利ルートで安定した発展基盤を確保した後で並行世界の脅威に備えるというプランだったとしても、形を変えておおよそ目標は達成出来ています」
マイン「フン、まあいい。説明を続けるがいい」
今の状況に至るのに結果的に必要だったと言われては、文句を付けたマインも引き下がらざるを得なかった。
ダグ「あー、ちと質問宜しいですかの? この世界がその
グイリ≪それは私も思いました≫
ステーク「ああ、そこはオレが説明する」
ステークが挙手し、以前