【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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288. これで攻略のために必要な条件は全てクリアされましたわ

 ターニャがどうやってループ開始より前の時代に影響を与えたのかが概ね判明した所で、夕呼は説明を再開した。

 

夕呼「そろそろ話を戻すわよ。もう一度この図を見てほしいんだけど」

 

 夕呼は樹形図に再び注目を促した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

夕呼「この白銀とクラエル神の遭遇以降から現在まで、図に分岐を書いてないけれど、これ本当に一つも分岐してないのよ」

 

マキューズ「既に統合済みということでありますか?」

 

夕呼「いいえ、BETAがやっているのと違って統合した形跡も無いから最初から並行世界が生まれてないわ。アヌビス様、これは神々の御業ということで間違いないかしら?」

 

アヌビス神「X,XXXX. XXXXX(うむ、我が神は最初にステークに声を掛けた際に世界に()()()()をかけたのだ。勧誘の返事を聞きに行く際に並行世界分岐した全てのステークに聞きに行く羽目になるのは面倒であるゆえな)」

 

ステーク「……あっ、あの時か!」

 

 ステークは最初にクラエル神と遭遇した際の時間停止がただの神アピール演出ではなかったことに思い至った。しかも理由は返事を聞く際に面倒だからと随分気軽な用途だ。

 

アヌビス神「XXX,XX,XX,XX(そして七圏守護神(ハーロ・イーン)合同のBETA征伐作戦においても、(マイスター)達を確実に1つの世界に集結させるため、また僅かな可能性による敗北の分岐世界を作らないため、分岐抑制はそのままとなっている)」

 

 七圏守護神(ハーロ・イーン)合同のBETA征伐作戦開始時点で分岐可能世界になっていると、まずクラエル神が環境を整えたはじまりの星が存在する並行世界が無数に存在することになるのが問題だ。これにより全く別の世界に(マイスター)を送り込んでしまうミスが発生しうる。

 更に、送り込むべき世界自体が間違っていなかったとしても、トピアが送り込まれた世界が時間経過で無数に分岐してしまい、その中の一つにしか次のサティを送り込めない。トピアとサティが合流出来た世界と出来なかった世界に分岐してしまうわけだ。トリオ工場長以降も同様で、結果として(マイスター)が七人揃った世界から一人もいない世界まで分岐してややこしいことになる。

 (マイスター)達の集結後に分岐可能になっていた場合、やはりある程度の確率で敗北という結末になり得るのだから、そちらに分岐する並行世界が発生する。(マイスター)達の技術がBETAに鹵獲された世界というのも甚だ危険であるため、そんなものは無い方が良いというわけだ。無論ほぼ確実に勝てる見込みがあってのことなので、縮退炉を搭載したインファクトリを苦戦させる天使の光輪(エンジェル・ハイロゥ)級が出てきたのは神々の想定外である。

 

夕呼「アヌビス様、この世界にはそれに加えて並行世界統合に対する抵抗力があるようですけれど、それは分岐抑制とは別ということで宜しいかしら?」

 

アヌビス神「X,XXX. XXXX(然り、その力を発揮しているのは七つの楔の塔の方だ。あれが名前通りに世界の境界を確定させているために統合侵食を()()()()()なっている)」

 

トピア「ああ、あれそんな効果もあったんですね」

 

 元々はじまりの星でもBETAの存在が邪魔して世界間の通行が阻害されていたのを楔の塔によって打破することが可能になっていた。また、阻害されていない状態でも移動コストを軽減する効果もあるようだった。

 楔の塔は世界を安定させる効果があるらしく、その辺りの性能については思っていた以上に有用なようだ。

 

 ところで統合侵食を受けないのではなく()()()()()。その意味を最初に察したのはターニャだった。

 

ターニャ「つまり横浜ハイヴ以降侵食が発生していないのは、頭脳(ブレイン)級という接点からしか入ってくることが出来ないからでしょうか?」

 

アヌビス「X. XXX,XXX(然り。楔の塔が無ければ宇宙全体が並行世界と統合されてしまい、あれだけでは済まなかったであろう)」

 

 となれば、神々が事前に統合侵食を防止する楔の塔を建てさせていなければ横浜ハイヴだけでなくこの世界丸ごと既に論理和統合によるBETA被害を受けていたことになる。

 匠衆(マイスターズ)の意向でこの世界の00ユニットの開発を差し止めていたこともあり、予め並行世界戦争に備えて防壁を張っていたとは流石の七圏守護神(ハーロ・イーン)だと感心し褒めそやす者が加盟文明代表大使には少なくなかった。しかしこれは誤解である。

 神々、特にクラエル神がそこまで考えていなかったのは、当初の楔の塔がBETAまで教化して技術情報を漏洩する仕様になっていたことからも明らかだ。もっと単純に、このマブラヴ確率時空にBETAがはびこる世界を増やして汚染するのを嫌がっただけだ。00ユニットなどの並行世界に対するリスクを認識していたのは神々ではなく、九十九が主催していた『対BETA戦略研究会』である。

 トピアがそれを説明するべきか九十九に目配せした所、九十九は首……は無いので、胴体ごと横に振ってNOの意向を示した。まあ確かに、七圏守護神(ハーロ・イーン)が意外と行き当たりばったりだと知られて()信仰心が低下するのも問題だ。

 トピアとしては師匠の偉大な先見の明をアピールしたい所だが、本人がその必要無しと言うのならば仕方が無い。師匠の偉大さは胸の内に仕舞っておくことにした。そのあたり結局トピアも勘違いしているので、トピアが説明してもまた別の誤解が生じるだけであった。

 

アヌビス神「XX,XXXX,XXXX(付け加えると、我らの加護を受けた者を送り込むだけでも分岐抑制効果だけなら出せるし、七つの楔の塔を設置してあれば住民に自動で最低限の加護が掛かるためそれを維持出来る)」

 

グレーテル「アヌビス様、それは世界の外部から介入した時点での分岐も防げるということでしょうか?」

 

アヌビス神「X(然り)」

 

 つまりはどれだけ頑張って介入しても分岐が増えるだけでBETAがはびこる世界を一向に減らせないといういたちごっこ状態を回避出来ることになる。

 

トピア「実はかなり大きな効果がありますね?」

 

アヌビス神「XXX,XXX. XX(そもそも七圏守護神(ハーロ・イーン)の管理世界は、基本的に並行世界分岐が発生しないようになっているからな。その仕様に合わせるだけのことだ)」

 

 何故そうなっているかと言えば、単純にその並行世界全てを管理するのが極めて大変だからだ。理想郷の建設者(クラフトピアン)大地の冒険者(テラリアン)が冒険している世界はそれなりに沢山あるが、それでも有限の数だからどうにか目が行き届くのだ。

 特に七圏守護神(ハーロ・イーン)は最近までパワーリソースが不足していたので、無限に増えていく確率時空の管理など到底出来たものではなかった。

 更に管理神への信仰が普及していなかったので、維持コストだけ増えて信仰収入が大して増えず、赤字になるのが目に見えていた。

 そのあたりを考えると、統一信仰も無く無計画に膨れ上がったマブラヴ確率時空の管理神は既に破産して消えてしまったのではないかという疑いすらある。

 

夕呼「加護持ちを派遣するだけで分岐を防げるのは非常に有難いですわね。では、神々の力で並行世界を論理和統合することは?」

 

アヌビス神「XX,XXX,XXX(出来なくはないが、ここが管理下の世界ではないためにかなりの力を消耗してしまうこともあるし、それに加えてあちらに()()がある現状では難しいな)」

 

 マブラヴ世界の管理神ならばそこまでのコストを掛けずに並行世界を統合出来るはずだが、現在所在不明である。

 

夕呼「ではやはりBETAの統合技術を解析する必要がありますわね」

 

 BETAの方から並行世界統合をしていることで並行世界の数を有限に減らしてくれているのは有難いのだが、統合の範囲やタイミングをBETAに握られているのは都合が悪い。それに敵本拠地を攻略したら統合が半端な所で停まってしまいかねないという問題もある。可能ならこちらが主導権を握りたい所だ。

 

ロナルド「それにしても、BETAどもは一体どうやって並行世界統合を実現しているのでしょうな」

 

スチームパンカーのホープ「出所が不明な技術なんだよねぇ」

 

 匠衆(マイスターズ)の技術でもなく、神々でもかなりの力が必要という並行世界統合をBETAがどうやって実現しているかは非常に気になる所で、匠衆(マイスターズ)技術本部の面々は首を捻った。

 とはいえ、夕呼が作った万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)のように神々の奇跡を科学で再現した実例もあるので、不可能ではないのだろうが。

 

夕呼「とはいえ、これで攻略のために必要な条件は全てクリアされましたわ」

 

 アヌビス神の回答を聞いた夕呼の口角がつり上がり、何やらフラグのようなことを言い出した。

 夕呼と同じ天才ルルーシュによる有名な台詞ではあるが、実のところ勝利を確信してこの台詞を吐いた後にイレギュラーな力業で覆されることがかなり多いので、トピア達理想郷の建設者(クラフトピアン)は若干の不安を覚えた。

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