【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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289. 既に存在している者ならば部外者ではないというとんちだね。よく考えたものだ

夕呼「攻略すべきはここの並行世界侵略を始めた起点世界なのだけれど、ここは強固なロックがかかっていて、統合侵食防止、分岐抑制に加えて()()()()()()()まで設定されてるのよ」

 

 夕呼は樹形図の攻略目標世界を指し示しながらクリアすべき問題点について述べた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トリオ「単純に出力でごり押しは出来んのか?」

 

 トリオが言っているのは、ワープエンジンの出力がAWF(アンチワープフィールド)を大幅に上回れば強引に突破出来るのと同じ事は出来ないかということだ。

 

夕呼「難しいわね。周囲の並行世界、いわゆる防壁世界にも同じロックを掛けて相互干渉することで多重ロックになってるのよ。今回のBETAはなかなか慎重路線のようね」

 

テクス「それでは、どうやってその多重ロックがかかった世界に進軍するのでござる? 互いにロックしているのなら問題の世界のどこにも入れなさそうでござるが」

 

夕呼「部外者侵入禁止の条件なら、万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)憑依(ポゼッション)モードで発動すれば侵入出来るわ」

 

グレーテル「ポゼッションモード? 所有ですか?」

 

夕呼「憑依の方よ。()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()と同じ原理、と言えば分かるかしら?」

 

ステーク「オレに……? あ、エクストラ世界のオレにこっちの意識を憑依させたやつか!!」

 

トピア「ああ、数式を取りに行くのに使った奴ですね?」

 

 話題に出ている並行世界転移装置とは、エクストラ世界の白銀 武の欠片をかき集めてオルタネイティヴ世界で実体化していた因果導体白銀 武を一旦未観測の確率の霧に戻すことでオルタネイティヴ世界から消失させ、エクストラ世界の白銀 武に憑依融合させる形でエクストラ世界に送りつけるというなかなか豪快な装置だ。

 憑依とは言うが、意識や記憶だけでなく身体能力も軍隊で鍛えた方の武のレベルになっていたので、実際には存在自体の一時的上書きに近い。そのついでなのか、書類を入れた封筒程度は世界をまたいで持ち運べる。

 

タバサ「ははあ、なるほど。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というとんちだね。よく考えたものだ」

 

 システムの穴を突くことを生きがいとするタバサも、夕呼の発想に唸った。禁止ルールをすり抜けられるのであれば、強固な防壁を突破出来る可能性は高いだろう。

 

夕呼「まあBETAがこの世界に干渉する際に横浜基地の頭脳(ブレイン)級を接点として利用出来たのも、恐らく似たような原理によるものだからね」

 

 ある意味BETAが攻略のためのヒントをくれたようなものだと夕呼は言う。

 

九十九「しかしあの装置は対象世界を明確に知っている人物にリンクさせる必要があるはずだが……ああ、そういうことかネ」

 

夕呼「ええ、これを使うわ」

 

 説明の序盤でテーブルに置いてそのままの『知性の眼鏡』に九十九が注目すると、それを夕呼が再び手にした。

 

ステーク「そうか! なんか違和感があると思ったら!」

 

九十九「色々詳しい筈だよネ」

 

 夕呼がステークを以前のように白銀と呼ぶのも、やたら状況を把握出来ているのも、既に『知性の眼鏡』を自分で試していたせいだったというわけだ。

 

トピア「何となくそんな気はしてましたが……カミールさんは大分混乱してましたけど、それ使って大丈夫だったんですか?」

 

 最初にその影響を受けたカミールは、一時期人格が変わるほど混乱していたのだ。ただで済むとは思えない。

 

夕呼「情報が雪崩れ込んできてかなりストレスは掛かるけれど、事前に覚悟があれば耐えられる程度のものよ。まあ……あたしは天才だから参考にならないかもしれないけどね?」

 

 夕呼は自信満々の笑みで答えた。

 

カミール「まったく、無茶をする」

 

夕呼「今回の事態に関係のある並行世界に存在していて知識量も豊富な人物といえばあたしでしょう? それに、万が一あたしが倒れても、白銀が治してくれるという程度のことは考えているわ」

 

ステーク「いやまあ治しますけど……」

 

 天才アピールをしつつ自らの行動の必要性とリスク対策を述べる夕呼だが、やや冷静になってきたステークから見ると、自らの研究結果により引き起こされた事態に対する責任感から来る行動であることが理解出来た。

 

夕呼「攻略の手順としては、まず魔導衛士達には『知性の眼鏡』で並行世界の記憶をインストールしてもらうわ。特に防壁世界はその世界の自分の周囲以外は情報が取得出来ないから却って探しやすいわよ」

 

ターニャ「……この段階で一人ずつ試して様子を見た方が良さそうですな」

 

トピア「ですね」

 

 ターニャとトピアは顔を見合わせた。

 あらゆる並行世界の記憶が流れ込むとすると、他の世界で悪事を働いている人物がそちらの人格に引っ張られないかが問題になる。

 例えば沙霧や駒木は原作オルタネイティヴ世界でクーデターをやらかしている。ただし彼らについてはこちらの本人達がそのクーデターの問題を反省して正道を進むべく励んでいるので、今更それほど影響はないだろう。今の沙霧達ならばそのくらいの信頼感はある。

 次にリィズ。ループ開始以降にリィズが生き残っている世界の攻略を任せることになりそうだが、東ドイツ国家保安省(シュタージ)で洗脳された経験があるとするとやはり邪悪な人格になっている可能性が高い。しかもこちらのリィズは人生経験が浅く人格がやや幼いので、抵抗力に疑問がある。

 そしてテオドール。彼は原作世界でテロリストの元締めをやっているのだ。こちらのテオドールの人格はまともだし抵抗力もそれなり以上にありそうだが、それは別にテロリストとしての所業を反省した結果ではない。テロリストになった理由がどれだけ闇深いかに左右されそうな所がある。

 

 他の人員はそういった問題は少なそうだが、あらゆる並行世界で悪事を働いていないかは分からないし、原作で死んでいた者も多い。仮に原作で死んでいなくてもBETAと関わるどこかの世界では死んでいるだろう。自分がどうやって死んだかを知るストレスは軽視出来ない。

 

テクス「意図して情報を取得出来るのならば、BETAがどうやって並行世界を統合しているかを知ることは出来ないのでござるか?」

 

夕呼「勿論試したけれど、情報がブロックされていてどうしても引き出せなかったのよね。防壁世界で自分の周囲以外情報を引き出せないのも恐らくは同じ原因よ」

 

 『知性の眼鏡』でその情報が取得出来るのなら本拠地に攻め入る際に調査や分析の手間が省けるのだが、そう簡単には行かないようだ。

 

夕呼「次の手順として、その並行世界の記憶を持った魔導衛士達が轟雷の万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3/Sでそれぞれゆかりのある並行世界に突入する。そこで地球上の全てのハイヴを殲滅して、代わりに七つの楔の塔を建設し、00ユニットを保護してもらうわ。あとは並行世界統合の状態を観測するための観測機器も持っていってもらうわよ」

 

 万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3/Sに関する性能諸元が画面に表示される。これは要するに、元々轟雷に搭載されているワープエンジンMk.3/Sの世界間移動機能を解放したものだ。

 ワープエンジンと世代を合わせるために初代万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)に改めてMk.2とつけられており、こうなると万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.1は存在しないことになるのが少々紛らわしい。

 ともあれ、元々ワープエンジンMk.2以降は万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の技術が取り入れられているので、Mk.3/Sもわずかな改修で世界間移動に対応可能なのだ。

 

サティ「突入に轟雷を使うのは人機一体で機体ごと持ち込むためよね? 憑依(ポゼッション)形式ではどういう形になるのかしら?」

 

 万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)の開発過程でサンプルデータ収集のために自分の故郷世界に何度も迅雷ごと移動したサティが最初にそこに気付いていた。当初は管理神公認(マイスター)だけが自由に故郷世界に移動出来たが、人機一体中は機体を装備品として持ち込めたのだ。憑依(ポゼッション)で装備や手持ち品を持ち込めるのはこれに近い。しかし機体ごと持ち込む場合、閉所に転移したりすると大惨事になるのではという懸念がある。

 

夕呼「憑依(ポゼッション)と同時に機体はインベントリに入るように調整してあるから大丈夫よ」

 

サティ「ぬかりないわね」

 

マキューズ「住民の保護はどうするのでありますか?」

 

夕呼「楔の塔の建設が終わった時点で万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)が通常モード……以降こちらを転移(トランジション)モードと呼ぶわよ。転移(トランジション)モードでもその世界に進入出来るようになる筈だから、その時点でそれぞれの星系のインファクトリ級を向かわせた方がいいでしょうね。こちらには万能転移機関(ユニバーサルワープエンジン)Mk.3を搭載するわ」

 

マキューズ「承知したであります!」

 

 マキューズ達心の友(イバーク・ルイエ)は阿頼耶識改による人機一体に対応していない。ソケットに接続すれば電気信号による直接操作は可能なのだが、生命体と違って魔法やエンチャントの恩恵を受けることが出来ないため、十分に戦力を発揮出来ない。今回の場合も憑依(ポゼッション)モードで機体を持ち込むことが出来ない。

 しかし救助が必要な段階では転移(トランジション)モードでインファクトリ級やTOM(トム)を持ち込めるというのならば、膨大な数の無人艦・無人機の運用はむしろ心の友(イバーク・ルイエ)の得意分野だ。救助活動に大活躍出来るだろう。

 やりたいこととやれることが合致したマキューズ達は、またやる気を漲らせていた。

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